計算機統計学
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ベキ正規分布のパラメータの推定 : 推定量の漸近挙動について
後藤 昌司山本 成志井上 俊昭
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1991 年 4 巻 1 号 p. 45-60

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抄録
ベキ正規変換は,線形モデルを想定する標準的な統計的方法において,一般に想定される(i)モデルの加法性,(ii)誤差の分散一定性,(iii)(応答)観測値の正規性の仮定を満たすように,観測値の尺度を変換することを意図している.ベキ正規変換の実地の適用では,(1)変換後に想定モデルの線形性や加法性を狙う接近法と,(2)想定モデルの誤差の正規性あるいは正規変換前の観測値の(原測定尺度上の)分布,すなわちベキ正規分布を同定する接近法がある. 本報告では,ベキ正規変換の基礎にある理論分布としてベキ正規分布を紹介し,その特性について簡単に述べる.次に,ベキ正規分布のパラメータの最尤推定量の漸近挙動を評価する.とくに,変換パラメータ(λ)と変換後に顕在化する打ち切り点kの打ち切り正規分布の母集団パラメータ(平均μと分散σ^2)の最尤推定量の漸近分散および相互の漸近共分散を微小σ近似法で評価し,kの変化に伴う挙動を吟味する.これらの結果より,kが大きくなるにつれてμとσ^2の最尤推定量の漸近分散(共分散)はkと無関係となり,λの最尤推定量のみがそれ自体の漸近分散およびμとσ^2の最尤推定量との漸近共分散に影響を及ぼすことが明瞭になる.さらに,ベキ正規変換に絡む諸種の問題,とくに変換パラメータの解釈について触れる.また,ベキ正規変換が尺度不変性をもたないことから,その変換を調整した規準化変換の一般式を提示する.
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© 1991 日本計算機統計学会
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