抄録
交替条件付き期待値(ACE)は探索的データ解析における強力な武器である.それはもともと,回帰と相関の文脈において(説明変数と応答の関連が最も強いという意味において)最適な,説明変数および応答の変換を求めるために考案された.ACEの成功は主として次の2点に依っている.第1の要点は条件付き期待値を推定するために散布図の平滑化を利用したことである.第2の要点は多次元平滑化における次元の呪いを避けるために後退あてはめを導入したことである.こうした要点からACEの適用は連続値をとる変数の場合に制限されそうであるが,実際には散布図の平滑化は絶対不可欠のものでなく,ACEは離散値をとる変数にも適用できる.ここではカテゴリカル・データの解析におけるACEの種々の適用を考察する.とくに,分割表の解析におけるACEと正準(相関)解析の関係に注目し,ACEが正準解析の結果の妥当性の評価,およびより細部に踏み込める解釈を提供し得ることを示す.