熱測定
Online ISSN : 1884-1899
Print ISSN : 0386-2615
ISSN-L : 0386-2615
吸着熱および分光学的測定による粉体表面上の吸着現象の解明
長尾 眞彦
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 26 巻 1 号 p. 9-20

詳細
抄録
粉体表面で起こる吸着現象を吸着熱測定と各種の分光学的測定によって解明した。金属酸化物粉体表面に対する水の吸着熱を評価し,酸化物によってエネルギー的に均一な表面をもつものと,不均一な表面をもつものとがあることがわかった;ZnO,Cr2O3,SnO2,MgOは前者に属し,TiO2,ZrO2,Al2O3,SiO2は後者に属する。また,水酸基化されたZnO,Cr2O3,およびSrF2表面では水の二次元凝縮が起こり,これは均一表面上での吸着水分子間の強い横の相互作用によることを吸着熱データより明らかにした。さらに,銅イオン交換したゼオライトが室温で窒素を強く吸着するという特異な現象を,吸着熱測定とIRやXAFS,発光スペクトルなどの分光学的測定とを組み合わせて解明した過程を紹介した。モルデナイトあるいはZSM-5型ゼオライト中のイオン交換された銅イオンが室温での窒素吸着の有効なサイトとしてはたらいていることをつきとめ,さらに,この銅イオンはイオン交換後(2価の状態)の試料の熱処理によって1価に還元された銅イオン種(Cu+)であることを明らかにした。これによって,マクロ的な熱測定とミクロ的な分光法との併用の有用性を示した。
著者関連情報
© 日本熱測定学会
前の記事 次の記事
feedback
Top