1999 年 26 巻 2 号 p. 46-53
この15年間に新しい電子スピン共鳴(ESR)法が次々と開発されて,ESRの有用性が種々の領域に拡大している。この解説では,新しいESR法を光合成とそのモデル系の光化学反応に適用した例を示し,それらの長所と短所を整理した。ESRはもともと反応中間体の電子構造に特異な情報を与える手段として用いられていたが,装置の進歩により時間分解能も10ナノ秒と短くなり,多次元法への展開も進んで,溶液中の反応の“その場観測”も可能になっている。ESR法の開発は現在も続いており,高周波ESRやけい光および過渡吸収検出ESRなどの他の手段によるESRの検出法へと展開している。