CaO添加量を変えた6種類の都市ごみスラグの示差熱分析を,昇温速度をさまざまに変えて行った。CaO量の少ない四つの試料ではガラス転移と二つの結晶化による発熱ピークが見られたが,結晶化のピークは昇温速度が遅くなるにつれて重なって観測された。一方,CaO量の多い二つの試料では結晶化のピークは一つだけ見られた。結晶化の活性化エネルギーを見積もるために,DTAの微分曲線の最初のピーク温度を利用した修正Kissinger式の定式化を行った。求めた活性化エネルギーは塩基度の増加とともに低くなる傾向が見られた。十分に結晶化させた試料の結晶相の同定を粉末X線回折で行った。CaO量の少ない四つの試料ではシュードワラストナイト,アノーサイト,アルバイトが主要相であったのに対し,CaO量の多い二つの試料はほとんどゲーレナイト単相からなっていた。その挙動はシリカ-アルミナ-カルシア三元系平衡相図から予想されるものである。CaO量の少ない四つの試料を部分的に結晶化させたものの解析から,CaO量のより少ない二つの試料の初晶はシュードワラストナイトであったのに対し,より多い二つの試料の初晶はゲーレナイトであった。