熱測定
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熱力学の授業
定年後の省察と一つの教卓実験
松尾 隆祐
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2005 年 32 巻 1 号 p. 20-25

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抄録
熱力学は大学において物理化学や一般化学の一部として教えられ,学生が後の学年で科学や工学の専門分野に進んだとき必要となる基礎教科の一つである。熱力学の講義において,第2法則を導入する方法に,伝統的なカルノー・クラウジウス・ケルビン・プランクの方法,カラテオドリーの公理論的方法,キャレンの形式,ボルツマンの統計的定義とギブズの統計力学がある。著者は初等熱力学において,伝統的なカルノー・クラウジウス・ケルビン・プランクの方法とボルツマンの初等統計力学の組み合わせがもっともわかりよい方法であると考える。エントロピー概念の難しさは,日常体験の中にエントロピーが保存量として振舞う熱現象を見ることがないという事実に由来するとの考えにもとづき,例外的にエントロピーが保存される過程として,ゴムの伸縮にともなう温度の可逆的変化を測定する実験を考案した。この実験によって,状態量としてのエントロピーの存在を推察し,高分子の無秩序構造に由来するボルツマンの統計的エントロピーの意味を理解することができる。
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