多糖水溶液は濃度や温度によってヒドロゲルを形成する。アガロース,κ-カラギーナン,ジェランガムのような多糖類は冷却により,熱可逆性ゲルを形成し,ゲル-ゾルおよびゾル-ゲル転移は熱測定により測定することができる。一方,メチルセルロースやカードランのような多糖類は昇温によりゲル化する。メチルセルロースヒドロゲルは熱可逆性ゲルであるが,カードランヒドロゲルは熱処理温度により異なる熱不可逆ゲルを形成する。これらの多糖類とは別に,ザンタンガムやヒアルロン酸のように従来単独ではゲル化しないと報告されていた多糖も,ゲル-ゾル転移温度以上で水溶液を熱処理後,冷却するとゲル化する。本報では,多糖物理ヒドロゲルの熱的性質に関する最近の研究ついて述べる。特に,ゲル化メカニズムに及ぼすゾル状態での熱処理の影響に注目する。