2007 年 34 巻 3 号 p. 113-119
天然(N)状態,変性(D)状態と構造的に区別される状態であるモルテングロビュール(MG)状態はいくつかの蛋白質の変性の平衡論的な中間状態として発見された。MG状態は,N状態と同程度の2次構造を持ったコンパクトな球状であるが3次構造は大きく揺らいでいる。最近,我々は等温滴定熱量計を用いて,蛋白質のpH転移に伴うエンタルピー変化を評価する手法として等温酸滴定熱量測定法(IATC)を開発した。本法を用いて,シトクロムcのN状態からMG状態へのpH転移を直接熱量計で観測し,N状態からMG状態への転移は小さいエンタルピー変化を伴う2状態転移であることを確認した。またシトクロムcのN状態からD状態への熱転移を高精度DSCで解析することで,転移の際にMG状態が観測されることを示した。