2023 年 27 巻 1 号 p. 43-47
心移植において,高齢者から提供された心臓が冠動脈疾患を合併していることがある。拡張型心筋症と診断された32歳男性に対して50歳代男性をドナーとする脳死心移植が施行された。移植4週後の冠動脈造影で三枝病変を認め,移植5週後に心拍動下冠動脈バイパス術を施行した。術中,心臓脱転に伴う低血圧に対してノルアドレナリンを増量すると最大126回/分の頻脈が出現した。フェニレフリン持続投与に変更すると,頻脈は改善し血行動態は安定した。移植後の心臓は除神経状態にあり,薬物に対して通常と異なる反応を示す。本症例はノルアドレナリンが原因と考えられる著明な頻脈を経験したが,薬剤調整を行うことで術式変更を行うことなく心拍動下手術を完遂することが可能であった。