Cardiovascular Anesthesia
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巻頭言 第27回学術大会
原著
  • 當別當 庸子, 山本 香, 松本 弥子, 板東 悠太郎, 橋爪 勇介, 加藤 道久
    原稿種別: 原著
    2023 年 27 巻 1 号 p. 3-11
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2023/09/26
    ジャーナル フリー

    【目的】クリオプレシピテートの副産物であるクリオ上清(CSP)の投与方法に関する報告は少ない。今回,胸部大血管手術において,CSPを離脱後ではなく人工心肺回路に先行投与する効果を後ろ向きに調査した。

    【方法】2010年から2014年までに当院で行われた低体温下胸部大血管手術時にクリオプレシピテートを投与した患者を対象に,CSPを人工心肺離脱後に投与した患者をA群,人工心肺回路に先行投与した患者をB群とし,復温時フィブリノゲン(Fbg)値や輸血量などを後ろ向きに調べた。

    【結果】最終的にA群25例,B群42例を解析した。復温時Fbg値はB群で有意に高く,術中新鮮凍結血漿使用総量(FFP)と術後赤血球液使用量(RBC)の減少がみられた(13.2±2.9 単位 vs 10.3±3.0 単位,P<0.001;1.8±2.5 単位 vs 0.6±1.2 単位,P<0.01)。重回帰分析では術中FFPへの影響因子が復温時Fbg値とCSP投与,術後RBCへの影響因子が術後APTTであった。

    【結論】低体温下胸部大血管手術時に,CSPを人工心肺回路に先行投与すると離脱時Fbg値や術後凝固因子が高く維持され,術中FFPと術後RBCが削減された。

症例報告
  • 岩田 良佳, 伊藤 史織, 辻 和也, 岸本 杏珠, 吉田 裕治, 北方 悠太, 平間 大介, 羽生 道弥
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 27 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2023/09/26
    ジャーナル フリー

     異所性右鎖骨下動脈(aberrant right subclavian artery:ARSA)は,右鎖骨下動脈が大動脈弓の最終枝として分岐する比較的稀な大動脈弓分枝の発生異常である。ARSAの外科的治療は食道や気管の圧迫症状が出た場合などに考慮されるが,定型的な術式は確立されておらず,麻酔科医は事前に術式や再建法について理解しておく必要がある。今回我々は,ARSA・左右総頸動脈共通幹・左椎骨動脈分岐異常といった複数の弓部分枝異常があり,術中所見により術式や再建の要否が変更し得る症例を経験した。右上肢や後方脳循環の虚血を回避できるよう,どのような状況でも継続的に観血的動脈圧や脳灌流圧,脳組織酸素飽和度をモニタリングできる準備をしておくことが必要不可欠である。

  • 小松 明日香, 勝又 祥文, 岩田 英樹, 田所 司, 重松ロカテッリ 万里恵, 三浦 友二郎, 河野 崇
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 27 巻 1 号 p. 19-23
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2023/09/26
    ジャーナル フリー

     肺動脈カテーテルは心臓手術の周術期管理で,血行動態の迅速かつ正確な把握のために重要な役割を果たしており,現在でも多くの施設で用いられている.一方で術後死亡率低下には寄与しないとされ,症例を絞った使用の推奨に加え,周術期の安全使用が求められる.

     今回我々は,僧帽弁形成術後に肺動脈カテーテル縫い込みを疑い,再開胸手術で安全に抜去できた症例を経験した.縫い込みの可能性を常に念頭に置くことは重要であり,少しでも疑えば抜去を中止すべきである.また,術中の確認方法については未だ明確にされておらず,今後より安全な確認方法を検討する必要がある.

  • 森村 太一, 西澤 英雄, 藤本 潤一, 七尾 大観, 木村 康宏, 大和田 玄, 金子 尚樹, 江島 隆平
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 27 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2023/09/26
    ジャーナル フリー

     急性大動脈解離による臓器虚血が脊髄に限局する場合の治療方針は確立していない。今回我々は,偽腔閉塞型Stanford A型急性大動脈解離で翌日手術を予定していた患者が,血圧依存性の対麻痺をきたした症例を経験した。手術までの間,収縮期血圧の上昇を抑え,脊髄灌流圧を維持する目的で脳脊髄液ドレナージを実施したところ,対麻痺の改善を認めた。翌日上行弓部置換術およびオープンステントグラフト内挿術を施行した。術後も脊髄灌流圧70 mmHgを維持するよう脳脊髄液ドレナージを継続し,最終的には自力で歩行するまで回復した。厳重な降圧管理を要する急性大動脈解離の術前に脊髄虚血徴候が出現した際は,脊髄灌流圧を保つために脳脊髄液ドレナージが有用となる可能性が示唆された。

  • 小林 紗雪, 安部 恭子, 木村 哲
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 27 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2023/09/26
    ジャーナル フリー

     30代女性。重症妊娠高血圧症のため妊娠33週で硬膜外麻酔併用脊髄くも膜下麻酔下に緊急帝王切開術を施行した。術前から軽度呼吸困難感と低酸素血症を認めた。術後胸部レントゲン写真で肺うっ血を認め,心臓超音波検査で左室拡大を伴うびまん性左室収縮能低下を認めた。血液検査でNT-proBNPが上昇していた。カテコラミン投与と非侵襲的陽圧換気療法により心機能は正常下限まで改善した。最終的に周産期心筋症と診断された。周産期心筋症における軽微な心不全症状は,健常妊産婦も訴える症状に似ているが,心不全の診断や治療介入を適切に行うためには,心臓超音波検査やNT-proBNP検査を早めに行うことが重要である。

  • 谷川 義則, 坂口 嘉郎
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 27 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2023/09/26
    ジャーナル フリー

     右小開胸minimally invasive cardiac surgery(MICS)に合併した再膨張性肺水腫(re-expansion pulmonary edema:RPE)は重篤な術後合併症であるが,明確な治療戦略は示されていない。われわれは,右小開胸による大動脈弁置換術後のRPEに対して食道内圧を用いた経肺圧を指標として人工呼吸管理を施行した症例を経験した。患者は術後10日目に人工呼吸器より離脱可能であった。RPEに対する経肺圧を指標とした肺保護換気の有用性が示唆される。

  • 宮西 真央, 日下部 良臣, 森 芳映, 平岩 卓真, 平井 絢子, 室屋 充明, 内田 寛治
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 27 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2023/09/26
    ジャーナル フリー

     心移植において,高齢者から提供された心臓が冠動脈疾患を合併していることがある。拡張型心筋症と診断された32歳男性に対して50歳代男性をドナーとする脳死心移植が施行された。移植4週後の冠動脈造影で三枝病変を認め,移植5週後に心拍動下冠動脈バイパス術を施行した。術中,心臓脱転に伴う低血圧に対してノルアドレナリンを増量すると最大126回/分の頻脈が出現した。フェニレフリン持続投与に変更すると,頻脈は改善し血行動態は安定した。移植後の心臓は除神経状態にあり,薬物に対して通常と異なる反応を示す。本症例はノルアドレナリンが原因と考えられる著明な頻脈を経験したが,薬剤調整を行うことで術式変更を行うことなく心拍動下手術を完遂することが可能であった。

  • 鈴木 ちえ子
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 27 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2023/09/26
    ジャーナル フリー

     不完全房室中隔欠損症(incomplete atrioventricular septal defect:iAVSD)を有する高齢患者の僧帽弁置換術(mitral valve replacement:MVR)後に,広範囲弁周囲逆流(paravalvular regurgitation:PVR)を生じた症例を経験した。PVRは,自己心拍再開直後の術中経食道心エコー(transesophageal echocardiography:TEE)評価にて大動脈弁と僧帽弁の間に認めたが,吸い込み血流はなく,加速のない垂直に噴出する像を呈しており,通常の所見と異なっていた。評価の為に灌流圧を上昇させると,それに伴い逆流量は増加した。再度,弁輪全周を観察したところ,前交連部から初発部にかけて連続する広範囲PVRを認めた。修復の方針となり心停止下に病変を検索したが,縫合離開を認めなかった。所見の乖離を受けて,術者とTEE画像を見返し検討した結果,TEE評価に基づいて修復が行われ,PVRの消失を得て手術を終了した。広範囲PVRの発生は,縫合離開が原因ではなく,iAVSDの構造的および組織的特徴が関与したと考えられた。

  • 河上 唯史, 小林 克也, 上田 桂子, 竹森 健, 三井 誠司, 本郷 卓, 池崎 弘之, 竹田 晋浩
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 27 巻 1 号 p. 55-59
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2023/09/26
    ジャーナル フリー

     大動脈弁位機械弁の間欠的な開閉障害から生じる大動脈弁閉鎖不全症(AR)を発症した患者において,経胸壁心エコー(TTE),経食道心エコー(TEE),X線による弁透視では診断に至らなかったが,集中治療室でのモニタリング中に動脈圧波形の変化から間欠的なARの残存を発見し,再弁置換術となった症例を経験した。機械弁の人工弁機能不全が間欠的に生じる症例はこれまでも稀に報告されてきた。開閉障害の頻度により重症度は様々であるが,間欠的であった開閉障害が固定されてしまうと致命的な血行動態の悪化をきたす危険があり,早期発見が重要になる。一般的に人工弁機能不全を診断する手法としては,TTE, TEE, X線による弁透視などが用いられるが,間欠的に生じている症例では検査のタイミングによっては異常所見を見逃す可能性がある。本症例は集中治療室にて観血的動脈圧モニタリングを実施しており,間欠的にDicrotic notchが消失し拡張期血圧が低下するという特徴的な橈骨動脈圧波形の変化が診断に有用であった。

  • 武智 大和, 木下 真央, 須藤 和樹, 小原 潤也, 井上 敬太, 佐和 貞治
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 27 巻 1 号 p. 61-65
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2023/09/26
    ジャーナル フリー

     Mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis, and stroke-like episodes (MELAS)は脳卒中症状を特徴とし,多様な臓器症状を合併するミトコンドリア病であり,周術期管理は注意が必要である。全身麻酔導入後に経食道心臓超音波検査(transesophageal echocardiography:TEE)によって右房内疣贅の消失を確認し,開心術を未然に回避した症例を報告する。症例はMELASを既往に持つ38歳の女性,植込み型ペースメーカー留置中で発熱があり,血液培養検査においてグラム陽性桿菌が検出された。術前TEEにおいて右房内の巨大疣贅を認めた。循環状態は安定していたため,9日後に開心術の予定とした。全身麻酔導入後のTEEで,術前に認めた右房の巨大疣贅の消失を認めた。麻酔科,心臓血管外科,循環器内科と協議し,疣贅による肺血栓塞栓症を疑った。手術室から退室し,胸部造影CT検査で右肺動脈幹の肺塞栓を認め,経カテーテル的に疣贅を摘出した。全身麻酔導入後にMELAS患者の右房内疣贅消失を確認し,未然に開心術を回避できた。

  • 小林 加奈, 浅野 貴裕, 藤岡 奈加子, 加藤 真奈美, 梶浦 貴裕, 三谷 真由
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 27 巻 1 号 p. 67-72
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2023/09/26
    ジャーナル フリー

     Fallot四徴症に対する姑息術に,Blalock-Taussig短絡手術の代替手段として右室流出路ステント留置術がある。今回,右室流出路ステント留置術により高度三尖弁逆流を生じ,右心不全となった2症例を経験した。右室流出路ステント留置術では麻酔導入時やカテーテル操作時の無酸素発作,ステント留置後の肺血流増加により血圧低下をきたす場合がある。今回の2症例は三尖弁へのステントの干渉やカテーテル手技に伴った三尖弁損傷から高度の三尖弁逆流が生じ,血圧低下をきたした。右室流出路ステント留置術では医原性の三尖弁逆流も念頭において麻酔管理を行う必要がある。

  • 立花 怜, 大石 博史, 荒井 理歩, 長岡 治美, 長崎 晶美, 古田 美奈子
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 27 巻 1 号 p. 73-78
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2023/09/26
    ジャーナル フリー

     HIT抗体(血小板第4因子-ヘパリン複合体抗体)陽性患者に対し,アルガトロバンとメシル酸ナファモスタット併用での人工心肺を用いた心臓手術を経験した。胸骨切開後にアルガトロバン0.2 mg/kgの静注および10 μg/kg/minの持続投与を開始し,人工心肺開始時からメシル酸ナファモスタット120 mg/hrの持続投与を併用した。活性化凝固時間(ACT)を400秒以上となるようにアルガトロバンを増量したが,人工心肺および回収式自己血輸血システム回路内に血餅が生じた。また人工心肺終了30分前にアルガトロバン,人工心肺終了時にメシル酸ナファモスタットの投与を終了したが,人工心肺離脱後より止血困難となり大量輸血を要した。ACT回復を認めたのは人工心肺離脱から6時間後であった。

     人工心肺離脱後に止血困難とならないためにアルガトロバン及びメシル酸ナファモスタットを使用する際は,異なる活性化剤による複数のACT測定器を使用することで人工心肺開始時期を適切に判断し薬剤調整することが重要である。ただし投与量や投与開始時期に関しては議論の余地があり,今後の症例の蓄積が必要である。

  • 佐藤 俊, 伊藤 淳, 長谷川 佑介, 舟橋 優太郎, 田中 捷馬, 大石 和佳子, 内田 寛昭
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 27 巻 1 号 p. 79-85
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2023/09/26
    ジャーナル フリー

     経皮的僧帽弁形成術(Transcatheter Mitral Valve Repair:TMVR)を施行する際,手技を容易にする目的で,電気的除細動(Electrical Cardioversion:EC)で頻脈を呈する心房細動などの心房性不整脈を洞調律に復帰させることがある。しかし,近年報告されている心房性機能性僧帽弁閉鎖不全症(Atrial Functional Mitral Regurgitation:AFMR),特に高度の頻脈を有する重症例にECを安全に行えるかどうかを推測するのは困難である。症例は80歳代の女性。心拍数140 bpmの心房粗動で僧帽弁弁尖が離開していた。TMVR施行時,ECにより80 bpmの洞調律に復帰したが僧帽弁弁尖の離開が拡大し循環虚脱に陥った。心臓ペーシング(Cardiac Pacing:CP)レート120 bpmにより僧帽弁弁尖の離開が縮小し循環動態が回復した。ECによる急激な心拍数低下により左房,左室の充満が過度に増加し,心房性に心室性の機序が重なりさらなる僧帽弁弁尖の離開の拡大を引き起こしたと考えられた。CP後心拍数の増加に加え左房収縮の回復が僧帽弁弁尖の離開の縮小に寄与したと考えられた。高度の頻脈を呈する心房性不整脈を伴う重症のAFMRにおいて,心拍数調節や洞調律復帰を企画する場合,ECの適応を十分に検討し,EC施行の際には循環動態破綻の危険性を考慮し,CPによる迅速な心拍数管理ができる準備を整えておくことが重要と考えられる。

  • 井上 理紗, 高田 善章, 奥迫 諒, 清水 春菜, 江村 尚悟, 呉 晟名, 片山 桂次郎, 髙崎 泰一, 黒崎 達也, 児玉 裕司, 佐 ...
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 27 巻 1 号 p. 87-92
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2023/09/26
    ジャーナル フリー

     心臓血管手術中の経食道心エコー(transesophageal echocardiography : TEE)による口腔~胃からの出血を6例経験した。出血部位は食道壁や胃噴門部小弯側が多かったが,出血の程度や損傷が発覚するタイミングは様々であった。心臓血管手術中のTEEでの観察は稀に出血の原因となる。特に心臓血管手術では体外循環のためのヘパリン化や術後抗凝固療法といった出血を助長する因子が多い。機械的損傷の発見が遅れると思いがけない大出血になり,循環の乱れや凝固系の破綻に繋がり得るので注意が必要である。また,抗凝固薬の使用や食事再開が遅れるために,合併症の発生や入院治療の延長の可能性もある。今回経験した6症例を検討し出血を来した要因を考察した。

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