Cardiovascular Anesthesia
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症例報告
喀血を伴う部分肺静脈還流異常合併妊婦の麻酔経験
和久田 千晴 川島 信吾杉村 翔小林 賢輔中島 芳樹
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2024 年 28 巻 1 号 p. 129-134

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抄録

 先天性心疾患を合併する妊婦は,妊娠経過に伴う循環血液量や心拍出量の増大により循環動態が大きく変化する。今回,妊娠中に喀血をきたした部分肺静脈還流異常症の1例を経験したので報告する。症例は36歳女性。19歳で部分肺静脈還流異常症と診断された。前回妊娠時に喀血があり,気管支動脈塞栓術を施行した。妊娠34週に喀血と呼吸困難感のため救急搬送された。来院時,呼吸困難で仰臥位がとれなかった。血液検査で貧血を認めたが,凝固能は正常範囲内であった。胸部CT検査で右上肺静脈は奇静脈に流入し,右主気管支にほぼ内腔を閉塞する血餅を認めた。部分肺静脈還流異常症に伴う肺血流増加に加え,妊娠に伴う循環血液量や心拍出量の増大により喀血が生じたと推測された。妊娠継続は困難と判断され,緊急帝王切開術を行うこととした。呼吸苦で仰臥位になれないことや術後の疼痛に伴う呼吸・循環動態の変化を懸念し,麻酔方法は硬膜外麻酔併用全身麻酔を選択した。術中の循環動態は大きく変動することなく,手術は終了することができた。

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© 2024 一般社団法人 日本心臓血管麻酔学会
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