2024 年 28 巻 1 号 p. 25-31
小児心臓手術で人工心肺離脱後にMUF(modified ultrafiltration)を行う目的は,体外循環手術中に発生する有害な炎症性メディエーターの除去,体外余剰水分の除去と血液(ヘマトクリット,凝固因子,血小板値)濃縮の3つである。このうち人工心肺中の限外濾過(CUF:conventional ultrafiltration)で代替不能で異論のない直接的なMUFの目的は体外水分の除去と血液濃縮に限られる。新生児・乳児では,人工心肺離脱時(MUF前)に高いヘマトクリットが必要とされ,MUF中に人工心肺残血の多くは返血出来ないことが多い。この場合,返血された人工心肺残血分のMUF除水だけでは血液成分の濃縮効果は乏しい。MUF中に凝固因子濃度・血小板値を目標値まで上昇させるには,FFP・血小板製剤の輸血と除水濃縮の組み合わせが有効である。MUFの送脱血ルートの種類とそれぞれの利点・欠点,MUF中のFFP・血小板製剤輸血の方法と注意点,MUF終了時のフィブリノゲン濃度と血小板値を予測する計算式について概説する。