Cardiovascular Anesthesia
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講座
心臓血管外科手術における希釈式自己血輸血の基本的事項と実際
甲谷 太一 川口 昌彦
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2024 年 28 巻 1 号 p. 49-53

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抄録

 自己血輸血には,貯血式,回収式,希釈式の3種類が存在する。同種血輸血を減量し,副反応を回避できるという利点により,貯血式および回収式自己血輸血は心臓血管手術の周術期においてよく用いられる。しかし希釈式自己血輸血(Acute Normovolemic Hemodilution:ANH)に関しては,日常臨床で十分に普及しているとは言いがたい。本邦の研究によると,2016年から2019年に行われた心臓血管外科手術のうち,ANHが行われた症例は約5%と報告されている。

 ANHは心臓血管外科手術領域において数々のエビデンスが存在しており,2021年の米国胸部外科学会ガイドラインにおいてANHはClass Ⅱaでの推奨となっている。また貯血式や回収式と比較してANHはその血液採取方法より,心臓血管外科手術において麻酔科医が主体となって行う手技であるといえる。

 ANHの実施方法や利点,問題点,禁忌などの基礎的な内容から,心臓血管外科手術におけるANHの有用性に関するエビデンス,止血凝固能の保持に関して報告する。

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© 2024 一般社団法人 日本心臓血管麻酔学会
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