1994 年 13 巻 3-4 号 p. 3-4_165-3-4_169
サルの網膜組織の光顕用標本作製法について検討した。剖検開始後約30分経過したカニクイザルの4眼球を1.5%グルタールアルデヒドと1%ホルムアルデヒド混合液に固定し,固定10分後に同固定液を硝子体に注入した。その約1時間後にカミソリを用いて眼球を矢状方向に2分割した。さらに2日間同固定液に固定した後,黄斑部網膜を15×4 mmの大きさに切り出した。これら網膜組織をパラフィンおよび光顕用樹脂(GMA, JB-4® Polyscience Inc.)に包埋し,スチール性替刃を用いて3ミクロンに薄切をした後,ヘマトキシリン-エオジン染色を施して鏡検した。通常のホルマリン固定材料をパラフィンに包埋して作製した標本には,網膜や脈絡膜の剥離,褶曲形成または亀裂等のアーチファクトが観察されることが多いが,今回用いた固定液ならびに固定法によりこれらアーチファクトは大幅に改善された。また,GMA標本はパラフィン標本に比べ保存性に優れ,特に神経線維等は明瞭に観察できた。