比較眼科研究
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N-Methyl-N-Nitrosoureaによるラットの網膜障害
桑村 有規竹川 晃司久世 博川合 是彰
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1995 年 14 巻 1-2 号 p. 1-2_7-1-2_14

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抄録

アルビノラット(Slc: SD)にN-Methyl-N-Nitrosourea (MNU)を40および60mg/kgの投与量で腹腔内に単回投与して網膜障害を惹起し、眼底検査、網膜電位図(ERG)記録および病理組織学検査を経時的に行った。眼底検査では、40mg/kg群の投与後21日と28日に両側性に網膜動脈の狭細化がみられ、60mg/kg群ではさらに眼底の反射性亢進および視神経乳頭がより明確に観察・記録される例が投与後7日から35日までみられた。ERG記録では、40mg/kg群でa、b波振幅の低下およびb波潜時の延長ならびに律動様小波の消失が投与後1日から認められ、28日以降は回復する傾向にあった。60mg/kg群ではa、b波振幅の低下および消失が投与後1日からみられ、35日まで持続していた。網膜の病理組織学検査では、40mg/kg群で投与後3日に外顆粒層の核の配列の乱れがみられ、視神経乳頭から約2mmの位置で測定した網膜非外顆粒層に対する外顆粒層の厚さの比率(ONL比)が減少していたが、投与後35日には回復していた。これに対して、60mg/kg群では、投与後1日に既に重篤な外顆粒層の核濃縮や杆体錐体層の好酸性均質化がみられ、2日にはさらに病変は進行し、21日にはこれらの層は消失していた。さらに、21日以降では内網状層および内顆粒層で空胞が観察された。ONL比は投与後1日から低値を示し、3日には著しく減少し、21日には外顆粒層の消失に伴い0と算出された。以上に述べたMNUによる網膜の変化は、視神経乳頭付近で著しかった。

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© 1995 Japanese Society of Comparative and Veterinary Ophthalmology
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