比較眼科研究
Online ISSN : 2185-8446
Print ISSN : 0286-7486
ISSN-L : 0286-7486
ワークショップ
ラットにおける網膜電図の測定と麻酔薬の影響
池田 孝則日高 正泰大森 礼子成瀬 信次宮沢 英男久野 博司
著者情報
ジャーナル フリー

1995 年 14 巻 3-4 号 p. 3-4_161-3-4_168

詳細
抄録

ラットにおけるERGの測定法につき,その再現性および麻酔薬の影響について検討した。ラットはERG検査前2~3時間暗順応させた。ついで,エーテル麻酔下で腹位に保定し,角膜表面麻酔(ベノキシール点眼)を施した。コンタクトレンズ型の記録電極を角膜上に,また針電極を不関電極および接地電極として額と耳に付けた。覚醒後,眼から30cmの距離に設置したキセノンフラッシュを用いて,単発の光刺激(0.6 J)を与え,ERGを誘発させた。記録は,日本光電製のNeuropack Four Miniを用いて,High cut 1 kHz, Low cut 1 Hz, 感度200 mV/div., 送引速度20μsec/div. で行った。22例のラットでのa波およびb波の振幅は,それぞれ446±55μVと971±116μVであり,前者の潜時は18.7±0.9 msec, 後者のそれは55.7±4.0 msecであった(平均値±標準偏差)。これらの変動係数は,振幅では12%, 潜時では5ないし7%であったことから,振幅に比して,潜時はより安定したパラメータと思われた。また,5例のラットのERGを,記録日を変えて3回測定した時のaおよびb波の潜時と振幅の変動係数はほとんどが10%以下であり,ほぼ良好な再現性が認められた。

ペントバルビタール(40 mg/kg, ip)麻酔の影響を,5例を用いて調べた。投与前の値と比較した場合,振幅にはa波で6%, b波で20%の減少が,また潜時にはa波で26%, b波で14%の延長が認められた。ペントバルビタール麻酔はERGのa波およびb波に対して影響を与えることが確認された。

さらに,エーテル麻酔を使用しないで保定する方法についても検討し,この条件下でもほぼ1時間の暗順応で安定したERGが測定可能であった。

本方法により,a波およびb波のほぼ安定した振幅および潜時が得られ,一方ペントバルビタール麻酔の影響も検出できた。ゆえに,網膜に対する被験物質の影響を電気生理学的に検出するために,本方法は非常に有用と考えられた。

著者関連情報
© 1995 Japanese Society of Comparative and Veterinary Ophthalmology
前の記事 次の記事
feedback
Top