比較眼科研究
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原著
瞳孔の対光反射を示す視覚障害またはその疑いがある犬でのメラン100の臨床評価
本田 真由美印牧 信行平田 比登美市川 陽一朗
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2009 年 28 巻 p. 7-13

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抄録

最近、突発性後天性網膜変性の診断に有用な犬専用の簡易検査装置としてメラン100が発売された。突発性後天性網膜変性,遺伝性網膜変性などの網膜疾患では、視覚障害を示すものの、瞳孔の対光反射を認める症例に遭遇することがある。今回、瞳孔の対光反射を示す視覚障害またはその疑いがある犬27頭54眼を用いて、メラン100の臨床的評価を行った。対象犬の検査眼は威嚇試験/眩目試験の成績から、Group 1:+/+、Group 2:-/+、Group 3:-/-、Group 4:+/-の4群に分けた。メラン100の成績は「Normal」、「Abnormal」、「No response」の3反応型に分類して評価した。すなわち「Normal」は赤色光、青色光に対してともに瞳孔径4mm以下の完全縮瞳を、「Abnormal」は青色光のみに対し4mm以下の瞳孔を示す不完全縮瞳を、「No response」は赤色光、青色光ともに4mmを超えた瞳孔を示す無反応または減衰した縮瞳を定めた。供試犬は12犬種成犬25頭と雑種2頭であった。「Abnormal」と「No response」を示す症例眼はすべての群でみられた。「Abnormal」はGroup 1で14眼(14/23 60.9%)、Group2で6眼(6/17 35.3%)、Group 3で8 眼(8/12 66.7%)、Group 4で1眼(1/2 50.0%)を、「No response」はGroup1で3眼(3/23 13.0%)、Group 2で10眼(10/17 58.8%)、Group 3で4眼(4/12 33.3%)、Group 4で1眼(1/2 50%)を認めた。Group 1と2は眩目試験(+)であったが、の頻度はGroup1で高く、「Normal」「Abnormal」「No response」の頻度はGroup 2で高かった。またはGroup 3とGroup 4では認められなかった。検査眼の多くは網膜疾患または白内障で占めた。白内障眼の「Abnormal」の頻度は25眼中の13眼(52%)で、これは網膜疾患症例眼とほぼ同等のものであった(14/25眼、56%)。「Normal」は網膜疾患症例眼ではなく、白内障眼で観察された。以上から、メラン100は瞳孔の対光反射を示す網膜変性症例ばかりでなく白内障症例においても網膜光受容体機能の評価に有用である可能性を示した。

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© 2009 Japanese Society of Comparative and Veterinary Ophthalmology
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