比較眼科研究
Online ISSN : 2185-8446
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28 巻
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総説
  • 佐々木 正治
    原稿種別: 総説
    2009 年 28 巻 p. 1-6
    発行日: 2009/12/28
    公開日: 2013/08/24
    ジャーナル フリー
    国際臨床視覚電気生理学会(International Society of Clinical Electrophysiology of Vision; ISCEV)が網膜電図(Electroretinography; ERG)の初版のプロトコールを公表したのは、今から20年前のことである。このプロトコールはヒト臨床のERGの記録条件に関して記載したものである。一方、最近は動物領域でもERGを記録する際はISCEVのプロトコールに準じるのが当然とも思えるようになってきている。最新のISCEVプロトコールは、2008年7月のISCEVの年次大会において承認され、2009年に論文として公表されている。本稿では、「ISCEVのERGプロトコールの内容」、「2004年版から2008年版プロトコールの主な変更点」を述べ、最後に「まとめ」として、本プロトコールを動物実験に応用する際の考慮すべきポイントについて補足する。
    Editor's pick

原著
  • 本田 真由美, 印牧 信行, 平田 比登美, 市川 陽一朗
    原稿種別: 原著
    2009 年 28 巻 p. 7-13
    発行日: 2009/12/28
    公開日: 2013/08/24
    ジャーナル フリー
    最近、突発性後天性網膜変性の診断に有用な犬専用の簡易検査装置としてメラン100が発売された。突発性後天性網膜変性,遺伝性網膜変性などの網膜疾患では、視覚障害を示すものの、瞳孔の対光反射を認める症例に遭遇することがある。今回、瞳孔の対光反射を示す視覚障害またはその疑いがある犬27頭54眼を用いて、メラン100の臨床的評価を行った。対象犬の検査眼は威嚇試験/眩目試験の成績から、Group 1:+/+、Group 2:-/+、Group 3:-/-、Group 4:+/-の4群に分けた。メラン100の成績は「Normal」、「Abnormal」、「No response」の3反応型に分類して評価した。すなわち「Normal」は赤色光、青色光に対してともに瞳孔径4mm以下の完全縮瞳を、「Abnormal」は青色光のみに対し4mm以下の瞳孔を示す不完全縮瞳を、「No response」は赤色光、青色光ともに4mmを超えた瞳孔を示す無反応または減衰した縮瞳を定めた。供試犬は12犬種成犬25頭と雑種2頭であった。「Abnormal」と「No response」を示す症例眼はすべての群でみられた。「Abnormal」はGroup 1で14眼(14/23 60.9%)、Group2で6眼(6/17 35.3%)、Group 3で8 眼(8/12 66.7%)、Group 4で1眼(1/2 50.0%)を、「No response」はGroup1で3眼(3/23 13.0%)、Group 2で10眼(10/17 58.8%)、Group 3で4眼(4/12 33.3%)、Group 4で1眼(1/2 50%)を認めた。Group 1と2は眩目試験(+)であったが、の頻度はGroup1で高く、「Normal」「Abnormal」「No response」の頻度はGroup 2で高かった。またはGroup 3とGroup 4では認められなかった。検査眼の多くは網膜疾患または白内障で占めた。白内障眼の「Abnormal」の頻度は25眼中の13眼(52%)で、これは網膜疾患症例眼とほぼ同等のものであった(14/25眼、56%)。「Normal」は網膜疾患症例眼ではなく、白内障眼で観察された。以上から、メラン100は瞳孔の対光反射を示す網膜変性症例ばかりでなく白内障症例においても網膜光受容体機能の評価に有用である可能性を示した。
症例報告
  • 岡村 孝之, 植田 芳英, 田中 翔, 佐伯 雄輔, 坪井 優
    原稿種別: 症例報告
    2009 年 28 巻 p. 15-20
    発行日: 2009/12/28
    公開日: 2013/08/24
    ジャーナル フリー
    雄のビーグル犬において、9歳9ヶ月齢時に視覚障害が疑われたため、眼科学検査を含む経過観察を実施した。その経過中、10歳4ヶ月齢時に四肢不全麻痺が発症し、予後不良と判断されたため、安楽死の後、病理学検査を実施した。
    眼科学検査では、両眼ともに散瞳し、視覚に関する反射反応を消失していたことから、視覚喪失と診断された。眼底検査では、視神経乳頭周囲の黄色化像が認められた。病理学検査では、視神経乳頭の陥凹ならびに乳頭周囲の網脈絡膜萎縮が認められ、左右の視神経で、リンパ球、形質細胞およびマクロファージの浸潤、視神経線維の変性・萎縮が顕著に認められた。また、脳および脊髄においても、囲管性細胞浸潤が広範囲に認められ、第5胸髄では、顕著な肉芽腫性炎症が認められた。
    これらの結果から、本症例は、眼型の肉芽腫性髄膜脳脊髄炎(GME)として発症し、これにより視神経が著しく障害され、視覚を喪失したものと考えられた。最終的には、脳・脊髄にも病変が及ぶ播種型GMEに移行し、これにより四肢の不全麻痺が生じたものと考えた。
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