1970年頃,青森県に外国から輸入された肉用繁殖牧場の牛群に眼の疾患が流行し,検査の結果Moraxella bovisによる伝染性角結膜炎(IBK)と診断された。
さらに,1972年頃から,全国16道県の牧場で,IBKの発生が認められ,その防除対策が必要となった。そこで,各地への伝搬方法を検討するため,1970年に青森県でIBKの発生があった肉用繁殖牧場A牧場およびその周囲の牧場のIBKの発生状況を,臨床,細菌および病理学的に調べた。その結果,A牧場では,その後もIBKの流行が繰り返えされ,さらにその周囲の牧場もこの菌に汚染されていることが明らかとなった。これらの汚染牧場の無症状牛の眼の分泌液からM. bovisが分離された。このことは,昆虫などを介してIBK発生牧場から周囲の牧場に広がり,また,無症状の保菌牛の移動にともない,全国的に広がったものと推察された。