比較眼科研究
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短報
豚眼を用いたin vitro短期ドライアイモデルにおけるドデカハイドロスクワレン(スクワラン)の角膜保護効果の評価
長谷川 貴史山本 孟坂本 雄二
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2019 年 38 巻 p. 3-8

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抄録

Dodecahydrosqualene(DHS、スクワラン)の角膜保護効果をin vitro豚眼短期ドライアイモデルで評価した。角膜障害のない新鮮豚眼を180分間乾燥させるとともに60、90、180分の点眼間隔で、人医領域において使用実績のあるひまし油(CO)もしくはDHS含有人工涙液を0.5%、1%、5%濃度で点眼した。COもしくはDHS含有人工涙液のすべての濃度において点眼間隔が延長するにしたがって、メチレンブルー(MB)染色スコアー、角膜から抽出したMBの吸光度(MB吸光度)、ならびにリサミングリーン(LG)染色濃度の値は増大したが、同一濃度と同一点眼間隔のCOとDHS含有人工涙液の角膜保護効果は類似していた。しかし、0.5% と1% DHSの180分間点眼間隔と5% DHSの60分間点眼間隔においては、同一条件のCOよりも角膜保護効果が良好であった。加えて、5% DHS含有人工涙液の60分間隔点眼処置眼においてはMB染色スコアー、MB吸光度値、ならびにLG染色濃度値すべての項目において対照眼と統計学的に有意差が認められなかった。病理組織学的には、DHSの60分点眼間隔処置眼における角膜上皮細胞の状態は5% COの同一処置条件眼と比較してより対照眼の角膜上皮細胞のそれに類似していた。以上の所見から、DHSは乾性角結膜炎のような涙液膜異常を有する症例の治療に適用される人工涙液の代替油脂製剤として利用可能であることが示唆された。

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© 2019 Japanese Society of Comparative and Veterinary Ophthalmology
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