比較眼科研究
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短報
不可逆的視覚喪失に陥った犬の緑内障眼に対するシドフォビル硝子体内注射処置の有効性と合併症に関する臨床評価
松浦 尚哉大高 康裕八巻 敦美工藤 圭介工藤 荘六
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2020 年 39 巻 p. 3-8

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抄録

不可逆的視覚喪失に陥った18犬種の緑内障高眼圧眼に対するシドフォビル硝子体内注射処置の有効性と合併症を臨床的に評価した。抗緑内障降圧薬で眼圧の制御ができない緑内障高眼圧眼54眼に、0.4 %オキシブプロカイン塩酸塩を用いた点眼麻酔下においてシドフォビルを500 μg / 0.1 mlの用量で硝子体内へ注射した(単回処置群;STG)。同処置後、ベタメサゾンリン酸エステルナトリウムを1 mg結膜下注射し、眼圧が25 mmHg以上の眼球には前房穿刺を実施した。最初のシドフォビル硝子体内注射処置後、供試眼の眼圧を14、28、42日目に測定し、それが25 mmHg以上の症例に対して2回目のシドフォビル処置を初回と同じ用量、かつ同じ手法でシドフォビル初回投与14日目に再投与(重複処置群;RTG)するとともに、同28日目においても眼圧が25 mmHg以上の眼球には硝子体穿刺を行って液化硝子体を除去した(重複処置後の硝子体穿刺群;RTHG)。シドフォビル硝子体内注射処置前の眼圧中央値は51.5 mmHgで、STG、RTG、RTHGの眼数(%)と眼圧中央値は、それぞれ43眼(79.6 %)と10 mmHg、8眼(14.8 %)と12.5 mmHg、3眼(5.6 %)と9 mmHgであった。シドフォビル硝子体内注射処置に伴う合併症は眼球癆(11眼 / 20.4 %)、白内障(7眼 / 13.0 %)、ぶどう膜炎(4眼/ 7.4 %)乾性角結膜炎(3眼/ 5.6 %)、潰瘍性角膜炎(2眼 / 3.7 %)、非潰瘍性角膜炎(1眼 / 1.9 %)であったが、身体検査と血液検査において全身的な副作用は認められなかった。シドフォビルの硝子体内注射は、不可逆的視覚喪失に陥った犬の緑内障高眼圧眼に対する救済的処置として有用な臨床手技になりうることが示唆された。

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© 2020 Japanese Society of Comparative and Veterinary Ophthalmology
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