比較眼科研究
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第5回談話会
先天性白内障カニクイザルの行動特性
南 徹弘
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1986 年 5 巻 1-2 号 p. 31-40

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抄録

樹上性の動物である霊長類にとって社会生活を営む上で視覚のはたす役割は大きい。この研究は先天性白内障の子ザルの行動発達と母とのかかわりを明らかにするためになされた。被験体は5ペアのカニクイザルの母子で,そのなかの1ペアが先天性白内障のサルとその母であった。観察は毎週1,2回,1回15分間なされた。本研究には白内障のサルの出生直後から生後18週齢までの母とのかかわりと,その後同居したサルとのかかわりについてまとめられている。白内障のサルは行動発達と母とのかかわりから,わずかな発達遅退はみられたものの,全体としては健常のサルと比較してそれほど大きな違いはみられなかった。また,隔離ザルに通常みられる常同行動は全くみられなかった。しかし,同月齢,あるいはより若い年齢のサルとのかかわりにおいてこのサルは社会的不適応を生じた。視覚の障害は母という保護者とのかかわりにおいてはほとんど問題とならなかったが,より複雑な社会的場面においては大きなマイナスの影響をおよぼすことが明らかとなった。

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© 1986 Japanese Society of Comparative and Veterinary Ophthalmology
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