比較眼科研究
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ラットの自然発生網膜形成異常とその予備実験的検討
松井 恭子稲垣 覚臼居 敏仁
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1990 年 9 巻 1-2 号 p. 25-30

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抄録

Crj: CD系,16週齢のラット1匹にretinal dysplasia, typical colobomaおよびretinoceleを併発した眼病変を観察した。その眼底像に於いて左右対称に内眼角下側部位に乳頭を含む境界明瞭の灰白色部位,視神経乳頭の拡張および硝子体動脈遺残が認められた。その病理所見は,網膜外顆粒層および内顆粒層のロゼット形成を含む配列異常,視細胞層,色素上皮層および脈絡膜血管の欠損,網膜の眼窩外への嵌入,および硝子体動脈遺残を伴った網膜細動脈のループ形成であった。これら所見の原因として,胎生期眼杯裂閉鎖障害が推察されている8)

そこで我々はこれら病変の成因を明らかにするために胎生期のラットおよびマウスを用い,Ochratoxin Aを投与し実験的に眼杯裂閉鎖障害を起こさせた。得られた病変の組織像は,眼杯内板のロゼット形成および配列異常よりなるfoldingと,内板の外反による色素上皮層および脈絡膜血管の欠損であり,成熟ラットに観察された組織像と一致する所が多かった。

したがって,胎生期の眼杯裂閉鎖障害により視神経の分化が一部障害され,retinal dysplasia, coloboma, retinocele等の眼病変がもたらされるものと考察した。

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© 1990 Japanese Society of Comparative and Veterinary Ophthalmology
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