2022 年 6 巻 1 号 p. 35-40
本稿の目的は、近年急速に社会的な関心の対象となりつつある「マンガ原画」のアーカイブについて、とりわけ2010年代以降の状況を報告することである。マンガ文化と社会の関係性という背景にも触れつつ、ここでは特に、文化庁によるマンガ原画アーカイブ事業における具体的な実践を紹介する。アーカイブが公的な事業として展開しているという事実は、マンガ文化に対する社会的な評価が変化してきたことを示す一方、アーカイブ作業の現場で顕在化する脆弱性や膨大さといったポピュラー文化の本質は、そうした性質とは真逆の形で定義付けられていた近代以降の「文化・芸術」概念を揺さぶり、拡大させていることもわかるだろう。