2023 年 7 巻 s1 号 p. s5-s8
藤本蚕業歴史館(長野県上田市)は蚕種製造企業であった藤本蚕業の所蔵資料を保管する文書館である。所蔵資料は2009年、その保存整理、目録化が図られたものの、その後10数年間にわたり、活用がなされないまま現在に至った経緯がある。本研究はその資料を含めた諸資源の活用、資料のデジタルアーカイブ化に向けて取り組んだ実践的活動を報告し、デジタルアーカイブ化の課題、その解決策を提起するものである。根本的な乖離をもたらす社会的背景には、知識消費(マスコミュニケーション)型社会のレジームがデジタルアーカイブ化への展開を阻害する構造的要因として認められる。これらの課題を解決するため、デジタルアーカイブ活動を知識循環型に転換する「地域デジタルコモンズ」モデルにより、デジタルアーカイブを発信者中心の活動モデルから学習者中心の体系・環境に組み立て直す作業に実践的に取り組んだ。