日本歯科衛生学会第18回学術大会では,韓国から大韓歯科衛生士協会Yoon sook, Hwang(ファン・ユンスク)会長をお招きしてご講演いただきます。この招聘講演に先立ち,今年7月には日本歯科衛生士会吉田直美会長が大韓歯科衛生士協会第45回学術大会にて「日本における歯科衛生士の口腔健康推進の取り組み」について講演されました(図1)。

大韓歯科衛生士協会第45回学術大会にて(2023年7月)
これまで日本歯科衛生士会と大韓歯科衛生士協会では,記念行事や学術大会等において相互に挨拶や講演を通じて交流を続けてきました。しかし,本年は例年とは異なり,来たる2024年に韓国・ソウルで開催される第23回歯科衛生国際シンポジウム(The 23rd International Symposium on Dental Hygiene(ISDH,以下国際シンポジウム))を記念して,同年内の相互交流が実現しました。
本稿では,国際シンポジウムを主催する国際歯科衛生士連盟(International Federation of Dental Hygienists,以下IFDH)の活動と日本歯科衛生士会の国際交流についてご紹介します。

IFDHは1986年に設立され,口腔保健推進という共通理念のもとに,現在は世界30か国余の加盟国の歯科衛生士会が協力して運営しています。日本歯科衛生士会は,IFDHの前身組織である歯科衛生国際連絡委員会(International Liaison Committee of Dental Hygiene(ILC))の発足から参加しています。IFDHのこれまでの実績としては,国際シンポジウムの開催,国際倫理要綱の制定,WHO(世界保健機関)やFDI(国際歯科連盟)をはじめとする世界的な口腔保健組織との連携の確立,査読付き学術誌「International Journal of Dental Hygiene(国際歯科衛生誌)」の発行,世界の歯科衛生士の職業に関連する調査の実施やデータベースの確立,口腔保健推進プログラムや歯科衛生研究への助成事業などが挙げられます。
国際シンポジウムは,IFDHの加盟国のうち選任された国が主催し,加盟国代表者会議(House of Delegates meeting,以下HoD会議)と併せて開催されます。日本歯科衛生士会は,ILC時代の1975年に第5回国際シンポジウム,IFDH設立後の1995年に第13回国際シンポジウムを東京で主催しました。2024年の韓国での国際シンポジウムは,約30年ぶりとなるアジア圏での開催です。
日本歯科衛生士会の国際交流は,1970年代初頭に海外の歯科衛生士の業務や職業人としての方向性を参考にする目的で,歯科衛生士発祥の地であるアメリカの視察から開始しました。その後,国際シンポジウムの主催を皮切りに,情報を収集するだけでなく,発表・討議などを通して発信することが求められました。以後,日本の歯科衛生士は継続して国際シンポジウムに参加しています(図2)。

第21回国際シンポジウム(オーストラリア,ブリスベン 2019年)
日本からの研究発表の数も年々増えており,複数の演題登録が恒例となっています。その中でも,2007年に第1回世界歯科衛生士賞の学生部門で「Dental Hygiene Residential Care in a 3 year Dental Hygiene Education Programme in Japan. Toward Dysphagia Management based on the Dental Hygiene Process of Care」(「3年制歯科衛生士教育における高齢者施設での歯科衛生ケア」─歯科衛生ケアプロセスに基づいた摂食・嚥下指導を目指して─)について,日本の3名が受賞し(図3)講演を行ったことは,大変な快挙でした。同論文は,国際歯科衛生誌に掲載されています。

第1回世界歯科衛生士賞受賞者(第17回国際シンポジウム カナダ,トロント 2007年)
また,IFDHが注力している活動「社会責任プロジェクト」では,日本歯科衛生士会の「Establishing a System for Dental Hygienists Taking Part in Disaster Relief Activities in Japan ~ 日本における災害歯科保健活動のためのシステム構築」の活動報告について,2019年国際シンポジウムで成果発表が行われました。
国際交流が開始された当初から振り返ると,日本国内で歯科衛生士の役割は社会のニーズとともに大きく変化してきました。1989年に歯科保健指導業務が追加され,その後も要介護者の専門的口腔ケア,周術期口腔機能管理,近年では超高齢社会におけるフレイル予防のために口腔機能低下症に対する早期発見や介入など,求められる役割は多岐に渡ります。それに伴い養成教育の高度化も進められ,多方面で活躍する人材が輩出されています。幅広い活動の場で,根拠に基づいた歯科衛生介入を実践するためにより多くの歯科衛生研究がなされることと,口腔保健推進に関する活動が活発に行われることを期待します。
折しもCOVID-19の流行により生活は一変し,臨床,地域保健活動,教育等,それぞれの仕事の場面でも大きな変革が求められました。感染対策の徹底の一環としてWeb会議システムが加速度的に普及し,会議や授業,学術大会までもが対面からオンラインに切り替わりました。海外との往来が途絶えた一方,コロナ禍以前と比較するとオンラインが一般化し,交流が容易になった側面もあります。IFDHにおいても,2021年に設立35周年記念活動の一環として企画されたグローバル・オーラル・ヘルス・サミットが対面開催よりオンライン開催に切り替えられ,各国代表者がオンライン上で集まり,ライブで意見交換がなされました。
我が国においてCOVID-19の感染症法上の位置付けが5類感染症に移行した今,このタイミングで国際シンポジウムが韓国で開催されることは,日本歯科衛生士会の国際交流が転機を迎えているのかもしれません。本年の対面での相互交流を起点に,オンラインシステムを活用して大韓歯科衛生士協会との絶え間のない交流を図り,アジアにおける口腔健康推進のために共に力を合わせて牽引すべく,連携強化につなげたいと考えます。
日本歯科衛生学会第18回学術大会や2024年の国際シンポジウムへの皆様の参加を通して,より多くの知見を共有し,国内外の人々の口腔健康推進に関わるきっかけとなれば幸いです。
(日本歯科衛生士会国際協力委員会 副委員長 宮澤絇子)