○小川友里奈1) 柴田佐都子2) 松本明日香2) 池田吉史3) ステガロユ ロクサーナ2) 大内章嗣2)
1)新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔生命福祉学専攻博士後期課程
2)新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔生命福祉学講座
3)上越教育大学大学院学校教育研究科特別支援教育領域
キーワード 知的障害者 歯磨き指導 視覚支援 実行機能 就労継続支援事業所
【目的】 先行研究において障害者福祉施設通所知的障害者(知的障害者)を対象に歯磨き行動を実行機能の点から評価し,「計画的遂行」「開始・終了」に弱さが認められたため,視覚支援媒体(絵カード)を用いた歯磨き指導による口腔衛生状態の改善効果を評価してきた。本研究では,知的障害者を対象に絵カードを用いた週1回,計6回の歯科衛生士による歯磨き指導を行い,その効果を口腔衛生状態と歯磨き支援量によって調べた。
【対象および方法】 新潟市内の就労継続支援B型事業所1施設の通所者7名(平均年齢31.9±7.3歳)を対象として,歯科衛生士は東京都立心身障害者口腔保健センターの絵カードを実行機能支援のため一部改変し,20カ所に分けた刷掃部位を順に示しながら指導・支援を週1回,計6回行った。同時に「自分で磨く」から「拒否」の7段階で支援量を評価した。口腔衛生状態の評価はOHI のDebris Score(DS)を用いた。DSによる評価は6回の指導の8週前,2週前および2週後,8週後に行った。また,6回の指導1週間前と指導1週間後には歯科衛生士による指導なく絵カードの提示のみでの歯磨き支援の効果を評価した。統計解析は反復測定による分散分析とt検定を用いた。(新潟大学倫理審査委員会承認番号2019‒0320)
【結果および考察】 6回の指導を経て1週間後での絵カードの提示による歯磨き時ではDSが他の評価時点と比べて有意に減少していた(p<0.05)。また,歯磨き支援量は指導の初回に比べて最終回で有意に減少した(p<0.05)。
【結論】 実行機能を考慮した絵カードによる歯磨き部位の提示と歯科衛生士による歯磨き指導は,知的障害者の口腔衛生状態を改善し,支援量を軽減させ,歯磨き行動の計画的遂行を補う可能性が示唆された。
○枦 美帆1) 川野美来1) 鎌田真由美1) 神之田理恵1) 鉛山光世1) 西 恭宏2)
1)鹿児島大病院 臨床技術部 歯科衛生部門
2)鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科 口腔顎顔面補綴学分野
キーワード 口腔機能低下症 サルコペニア 舌圧
【目的】 近年,全身状態と口腔機能低下の関連が注目されている。口腔機能のみではなく,サルコペニアやフレイルの評価も行い,患者に示すことができれば有効な指導ができると考え,私たちは実践してきている。今回,これらの計測データから口腔機能と身体機能の関連について報告する。
【対象および方法】 2020年2月から2023年3月までに当院義歯インプラント科に来院し,本研究に同意した53~89歳の患者246名を対象とした(鹿児島大学疫学研究等倫理委員会承認190165疫)。口腔機能低下症の検査は代替検査を含めて11項目を行い,サルコペニアの検査項目は四肢骨格筋量,歩行速度,握力として2019年に改定されたサルコペニア新診断基準にて診断し,各口腔機能検査とサルコペニアの関係について検討した。統計はspearmanの相関分析,χ²乗検定,Mann-whitney U test,2項ロジスティック回帰分析を行った。
【結果および考察】 口腔機能低下症は174名,サルコペニアは43名であった。サルコペニアの有無は,口腔機能検査の中では舌圧との相関が最も高く,2項ロジスティック回帰分析でも舌圧のみが有意に関連した。サルコペニア該当者の割合は20kPa未満の低舌圧者が正常舌圧者より有意に多く,低舌圧者の割合はサルコペニア該当者が健常者より有意に多く,その舌圧値も有意に低かった。これらのことから,サルコペニアは口腔機能面では舌圧と関連が深く,舌圧値はサルコペニアの予想指標になりえることが示唆された。
【結論】 サルコペニアやフレイルの検査と口腔機能検査をともに実施することは,口腔を含めた運動と栄養の指導に有益な情報になると考えられ,口腔機能だけでなく身体機能も含めた評価・支援を継続していくことにより患者のQOLを高めると考えられた。
○佐久間愛1,2) 麻生幸男1) 福井 誠2) 日野出大輔2)
1)医療法人社団ワンアンドオンリー 麻生歯科クリニック
2)徳島大学大学院医歯薬学研究部口腔保健衛生学分野
キーワード 動機づけ評価質問票 モチベーションスケールスコア 行動変容 歯周基本治療
【目的】 健康寿命の延伸とともに歯科においては歯周病の予防が重要視されている。歯周治療では患者の健康行動の維持が必要不可欠であり,その継続はしばしば困難を要する。モチベーションが高い歯周病患者ほど口腔内の健康状態が良好であり,口腔衛生管理の遵守に影響を与えることが報告されている。本研究の目的は歯周基本治療前後のモチベーションを評価することにより,患者の口腔健康に対する意識変化から歯周組織状態の改善に及ぼす効果を明らかにすることである。
【対象および方法】 静岡市の歯科診療所に来院した歯周疾患を有する20~64歳の初診患者221名を対象とし,歯周病患者の動機づけの程度を評価したモチベーションスケールスコア(MSS, Pac A et al, Community Dental Health, 2014)を用いて,歯周基本治療前後の患者の口腔健康に対する意識,口腔衛生状態および歯周組織状態を評価した。解析にあたってはPCR20%およびBOP10%,PISA130.33をカットオフラインとして,対象患者を2群に分けて分析した。なお,本調査については徳島大学病院生命科学・医学系研究倫理審査委員会の承認(承認番号:3684-1)を得た。
【結果および考察】 ベースライン時に歯周状態が不良な患者群(>BOP10%)ではMSSが有意に低かったが,歯周基本治療後では両群のMSSに有意な差は認められなかった。一方,歯周基本治療後の口腔衛生状態が良好な群(<PCR20%)ではMSSが有意に高かったことから,モチベーションの高さが歯周病患者の口腔衛生の遵守度に影響することが示唆された。
【結論】 成人の歯周基本治療において,患者のモチベーションが口腔健康管理に深く関与することが示唆された。
○新井 恵1) 平野裕子2) 秋山恭子1)
1)埼玉県立大学保健医療福祉学部健康開発学科口腔保健科学専攻
2)埼玉県立大学保健医療福祉学部看護学科
キーワード 臨老式死生観尺度 歯科衛生学生 質問紙調査
【目的】 歯科衛生教育における生と死に関する教育方法を検討するための資料を得ることを目的とした。
【対象および方法】 2021年4月にA大学口腔保健科学専攻の1年生から4年生123名を対象として,死別経験の有無,平井らの臨老式死生感尺度(以下,DAI)による質問紙調査を実施した。尺度は第1因子「死後の世界観」,第2因子「死への恐怖・不安」,第3因子「解放としての死」,第4因子「死からの回避」,第5因子「人生における目的意識」,第6因子「死への関心」,第7因子「寿命観」の計27項目で構成され,7件法で回答する。DAIの平均値の算出,2群間の比較にはMann-WhitneyのU検定,3群間の比較にはKruskal-Wallis検定を実施した。埼玉県立大学倫理審査委員会の承認を得て実施した(第20100号)。
【結果および考察】 有効回答76名のうち,死別経験ありは35名(46.1%)で,なしは41名(53.9%)であった。DAIの平均値は,第1因子3.59,第2因子3.41,第3因子4.67,第4因子4.68,第5因子3.96,第6因子4.16,第7因子4.49であった。DAIの各因子について死別経験で有意差はなかった。学年間では,第4因子「死からの回避」で2年生と3年生に比べて4年生が有意に高かった(p<0.01)。第5因子「人生における目的意識」では,2年生に比べ4年生が有意に高かった(p<0.01)。4年生はヒューマンケアやいのちを見つめ直す授業を継続的に受けて,生と死を考える機会があるが,自らは死を回避したい傾向があった。
【結論】 死別経験はDAIの全因子に影響を与えていなかった。歯科衛生学生は大学の授業で生と死についての知識を得るが,自らは死を回避したい傾向が明らかになった。
○横澤恵美1) 梶谷明子1) 橋本美代子1) 佐々木禎子1) 三浦留美1) 小畑協一3) 武田斉子2,4) 伊原木聰一郎3) 飯田征二2)
1)岡山大学病院医療技術部歯科衛生士室
2)岡山大学学術研究院医歯薬学域顎口腔再建外科学
3)岡山大学学術研究院医歯薬学域口腔顎顔面外科学
4)岡山大学病院頭頸部がんセンター顎口腔再建外科
キーワード 口腔外科 システム 周術期等口腔衛生管理
【目的】 歯科衛生士未介入の診療科に参入することで,歯科衛生士として診療科,病院全体に貢献するだけでなく,勤務しやすく合理的,簡素的な業務システムを確立することを目的とした。
【概要】 口腔外科の入院患者や外来患者に対し,歯科衛生士による積極的な周術期等口腔衛生管理を行うシステムを構築し評価を行った。
【経過および考察】 電子カルテ上に歯科衛生士枠を作成し,既存の院内コンサルテーションシステムを用いて歯科衛生士介入依頼ができるように構築した。診療報酬を把握するため周術期関連の保険点数,算定要件の一覧表を作成,電子カルテ端末脇に設置し,担当者にも配布した。歯科衛生士が行った処置を担当歯科医師が容易に確認し算定できるように外来用と入院用でチェック方式の用紙を作成,担当医に渡すようにした。介入患者の管理方法としてリストを作成し,担当歯科衛生士が共有できるようにした。業務分担として,病棟・外来業務で各1人ずつ配置できるようなシフト制にした。上記システムで稼働を始めた令和4年10月から令和5年2月までの4カ月間で,入院患者は34件で外来患者は109件であった。内訳は手術が30件,化学療法/放射線治療が49件であった。当初口腔外科担当歯科衛生士は2名だったが,現在は3名で円滑に業務共有ができるようになった。また,歯科衛生士介入によって口腔外科で多くの算定が可能となり,診療報酬の面で診療科,病院に大きく貢献できた。
【結論】 周術期口腔衛生管理システムを口腔外科で構築し円滑に介入できた。今後は入院期間の短縮や病状回復の一助となるような更なる業務内容の改善・検討が課題となる。
○小松美保1) 三浦嘉麿2) 本藏陽平3) 成田德雄4) 里見徳久1) 山内健介5)
1)気仙沼市立病院歯科口腔外科
2)みうら歯科クリニック
3)気仙沼市立病院耳鼻咽喉科
4)気仙沼市立病院脳神経外科
5)東北大学大学院歯学研究科 病態マネジメント歯学講座 顎顔面口腔再建外科学分野
キーワード 病診連携 隣接医学 off-JT 医科歯科連携
【目的】 近年,歯科衛生士は要介護高齢者や障害者への口腔機能管理に関わる機会が増えている。当地域においても高齢化率は40%を超え,歯科衛生士の職域も診療室内だけでなく病院・行政・介護施設等(以下各施設)と多様になっている。しかしながら,各施設で勤務する歯科衛生士の多くは卒後に医科の知識を学ぶ機会が限られ,全身疾患や薬剤に対しての知識が乏しい。今回われわれは歯科医療従事者の医科的知識の向上を図ることを目的に歯科衛生士を含む多職種に対し「みんなのための隣接医学講座」(以下本講座)を開催したので報告する。
【概要および方法】 本講座の対象は当地域で歯科医療に従事する者の中でも若年層とした。内容は医科領域と歯科領域で相互に関連する疾患・薬剤と,各医科分野の最新のトピックスとし,2022年11月に第1回の講座を脳神経外科の医師,2023年2月に第2回として耳鼻咽喉科の医師が行った。
【経過および考察】 本講座では歯科医療従事者の不足していた知識を補え,中規模病院の医師・歯科医師を直接知ることにより,情報共有や相談しやすい環境作りができた。また,他職種とのネットワークの構築が可能となり,若年層の歯科衛生士は多職種との協同講座に参加することでoff-JT(off the Job Training)での人材育成へと繋がった。
【結論】 本講座は,各施設に勤務する歯科医療従事者が中規模病院の医師から医科的知識を得ることができ,多職種連携,医科歯科連携,病診連携について考える機会となった。また,医療,介護の現場で歯科衛生士が求められている役割を他職種との交流から学ぶことができ,自身の役割を見出しやすく自己効力感を高めることができた。今後は,本講座を広く周知し,地域歯科医療全体が進展できるような活動とすることが重要である。
○橘谷玲香 荒木弘子 泊 紀美 朝田萌映 木田莉里佳 長谷川莉彩 野田夕加 中村真之介
伊勢赤十字病院
キーワード 医療安全 歯科衛生士 インシデント報告
【目的】 当科の歯科衛生士によるインシデント報告を分析し,今後の医療安全向上に役立つ情報を収集することを目的とした。
【対象および方法】 2018年4月~2023年3月の5年間で歯科衛生士が関与したインシデント報告を調査し,再発例について検討を行った。倫理審査承認番号:ER2023-10
【結果および考察】 歯科衛生士自身による報告が23例,歯科医師による報告のうち歯科衛生士が関与したものが6例であった。報告した歯科衛生士の経験年数は1~3年が10例,4~6年が6例,7年以上が7例であった。インシデントレベルは0が12例,1が8例,2が5例,3aが4例で,3bおよび4,5はなかった。内容は予約・事務連絡の不備が7例,患者間違い4例,皮膚・粘膜の損傷と歯・補綴物の損傷が3例ずつ,技工物の間違い,アレルギーの確認不足,歯科材料関連がそれぞれ2例ずつあり,その他6例であった。改善策(重複あり)としては手技の改善・注意が9例,患者本人への確認7例,カルテ確認および他部署や周囲への周知が5例ずつ,ダブルチェック3例,患者への説明および器具の配置変更が2例ずつあり,その他患者リスト作成,パンフレット作成,印象トレーへの氏名記入をそれぞれ1例ずつ認めた。同一インシデントの再発は3例みられ,すべて改善策を当事者本人の注意とした例であり,そのうち2例では再再発も認めた。ダブルチェックや器具の配置変更,患者リストやパンフレット作成では再発はなかった。
【結論】 チェックリストの作成など具体的な改善策をたてられない場合は,少なくとも半年ごとに過去の事例を共有して医療安全の意識を高めることが必要と考えられた。
○河本裕美子1) 日野聡史2) 菊池結花1) 稲垣杏菜1) 阪井礼1) 尾澤みなみ1) 内田大亮2)
1)愛媛大学医学部附属病院 診療支援部
2)愛媛大学医学部附属病院 歯科口腔外科・矯正歯科
キーワード 口腔ケア 病棟看護師 勉強会
【目的】 当大学病院では,歯科口腔外科・矯正歯科外来で初診時の口腔ケアを実施し,入院中の日常的な口腔ケアは病棟看護師が担当している。口腔ケアの使用物品や手技,方法を均一化するため,病棟看護師が開催している口腔ケアコアスタッフ勉強会に参加して感じた課題と情報交換の必要性について報告する。
【概要および方法】 口腔ケアコアスタッフ勉強会において,歯科衛生士が歯科で使用している物品および口腔ケアの観察ポイント,評価方法について説明し病棟看護師からの質問に答え,その課題を抽出した。
【経過および考察】 病棟看護師より「口腔ケア用ジェルの必要性は感じているが,コスト面で患者からの理解が得られず使用できていない」,「意志疎通の取れない患者に対しての口腔ケア評価方法がわからない」という相談が上がり,病棟看護師と連携して口腔ケアを行うためには,手技の均一化だけでなく,口腔ケア用物品購入のコスト面について患者の理解が得られるよう体制を構築しておかなければならないと感じた。口腔ケアコアスタッフ勉強会後,病棟看護師より継続的に統一した口腔ケアを徹底することができたと報告があり,病棟で行う口腔ケアについて看護師からの質問を得る機会や定期的な情報交換の必要性を感じた。
【結論】 口腔ケアの重要性が認知され,口腔ケアの依頼が年々増加することに伴い,病棟での対応が難しいケースが増加している。病棟看護師と歯科衛生士が定期的に情報交換することで相互理解を得られ,専門性をより高め,質の高い口腔ケアを提供することが可能となる。
○唐澤登紀子
医療法人社団健聖会 くりはし歯科豪徳寺診療所
キーワード 唾液検査 口腔ケア意識 行動変容
【目的】 患者自身が口腔ケアを行い口腔内環境を整える事は非常に重要であるが,患者の行動変容を促すのは容易ではない。そこで当院での取り組みにおいて,患者の行動変容および口腔内環境の改善に繋がった例を報告する。
【症例の概要】 当院では2021年4月からアークレイ社製唾液検査装置(SillHa®)を導入し,初診患者に検査受診の案内を実施,希望された患者が本検査を受けている。本装置は検体として唾液を用い,虫歯菌,酸性度,緩衝能,タンパク質,白血球,アンモニアの6項目それぞれ0から100のスコア値で表示され,患者の口腔内状況を数値化することができる。症例は40代女性,歯石除去を目的に来院された。口腔内所見は縁下歯石を認め,PCR 35%,BOP 36%であった。書面で患者の同意を得た。
【結果および考察】 唾液検査を実施した結果,歯周病リスクの項目であるタンパク質が85,白血球が86,齲蝕リスクの項目である虫歯菌が52,酸性度が81であり歯周病と齲蝕のリスクが高い事が示唆されたため唾液検査結果も利用した指導を行った。本指導を受けた患者の約1か月後の再来院時検査所見はPCR 5%,BOP 9%であり大幅な改善が見られた。初診前後でのセルフケアの変化をヒアリングしたところ,フロスおよび歯間ブラシの適切な使用に加え,唾液検査の結果に基づき勧めた食後のキシリトールガムの摂取が習慣となっている事が判明した。唾液検査により数値で口腔内環境を表すことで説得力を増した指導が患者の口腔ケア意識を向上させた主な要因として考えられる。また歯科衛生士の立場からも,口腔内環境を数値化し把握することにより患者に合わせた指導をすることができると考える。
【結論】 患者の行動変容に数値化で表示する唾液検査を用いた指導は有用であると考えられた。
○森塚未紗 田村有梨沙 石﨑未祐 豊田安奈 川﨑佳代子 高野美紀 安藤 妹 小寺裕子 伊藤敏恵 谷口美奈子
幸町歯科口腔外科医院
キーワード オーラルケアシステム 1年歯科健診 唾液検査
【目的】 若手歯科衛生士がオーラルケアを行うにあたり患者から信頼を得られるシステムを模索した。
【概要および方法】 当院でオーラルケアを希望した患者を対象に,当院で新たに企画したオーラルケアシステムを実施した。これを「1年歯科健診」と題し,年1回,歯周組織検査・パノラマレントゲン検査・細菌数測定検査・プラークコントロールレコード・口腔内写真撮影に加え唾液検査を行った。検査結果は後日歯科衛生士により対象患者に説明した。実施評価として,若手歯科衛生士(卒後5年以内)の1日あたりのオーラルケア担当患者数をシステム開始時と1年経過時で比較した。
【経過および考察】 当院では若手歯科衛生士が3名(卒後3〜5年)在籍している。この3名のオーラルケア担当患者数はシステム開始時平均で7.8人/日であったが,1年経過時は9.0人/日へと1.2人/日増加した。これは唾液検査装置を1年健診へ導入した事とデータを用いた説明が患者とのコミュニケーションの円滑化,患者のモチベーションアップに繋がったためだと考察する。特に本活動で用いた唾液検査装置(SillHa®:アークレイ社)は操作が簡単でありながらも,歯の健康,歯ぐきの健康,口腔清潔度など口内環境を多項目で示すことができるため,若手歯科衛生士でも使いやすく,測定項目の説明が行えることが患者からの信頼を得られやすくなったのではないかと考察する。
【結論】 唾液検査を取り入れた「1年歯科健診」は,口腔内を数値化しその変動を追うことができることから,患者からの理解も得られやすい。そのうえ操作が簡単で多項目測定が可能な機器であれば,その結果に基づくコミュニケーションもとりやすく,若手歯科衛生士でも患者から信頼が得られやすいオーラルケアシステムとなりうることが示唆された。
○久保田和代
クボタ歯科クリニック
キーワード 唾液検査 カウンセリング 指導
【目的】 患者の継続的な歯科受診を実現するためには,患者各々の生活環境や生活習慣についてヒアリングを行い,患者各々に則したカウンセリングを通して適切な指導や健診を行う事が重要である。そこで当院での唾液検査とプラーク検査を活用したカウンセリングの取り組みについて報告する。
【概要】 当院では2019年4月からアークレイ社製唾液検査装置SillHa®を導入し,現在は2回目来院時の全ての患者に唾液検査を受けていただいている。患者とのカウンセリングはこの唾液検査及びプラーク検査の検査結果を元にカウンセリングおよび指導を実施している。
【方法】 初診時に次回来院時のメニューの1つに唾液検査を実施する旨を全患者に説明し承諾いただく。次回来院した患者に唾液検査を実施し,得られた検査結果を元に1時間のカウンセリングおよび指導を行う。検査方法は,3mLの精製水を用いて口腔内を10秒間すすぎ,吐出してもらった液を検体とし,検体をスポイトにて採取し,試験紙に滴下し,装置に試験紙をセットして開始ボタンを押すだけの操作となっており,患者にもスタッフも簡易な操作である。検査は6項目を1度に検査可能で,むし歯菌,酸性度,緩衝能,白血球,タンパク質,アンモニア,のスコア値を図示したグラフが約5分で得られる。この結果を元に生活環境や生活習慣についてヒアリングを行い,カウンセリングおよび指導を行う。
【考察】 当日中に結果が得られ,口腔内の状態を数値化することで,カウンセリングおよび指導に納得感が得られているものと考えられる。
【結論】 カウンセリング及び指導を行うにあたり,アークレイ社製唾液検査装置SillHa®を用いて口腔内を数値化して用いることで納得感が得られ,患者の口腔内への意識向上をもたらすことができたと考えられる。
○村山裕子1,2) 小山安徳1,2,3) 増田光莉1) 福崎恵理子1) 金子未奈1)
1)医療法人社団徳昌会 パラシオン歯科医院
2)太陽歯科衛生士専門学校
3)東京歯科大学 衛生学講座
キーワード 唾液検査 医科歯科連携 予防歯科 健康増進 行動変容
【目的】 当歯科医院では,患者自身が口腔内に関心を持つことにより,治療や予防,健康増進に積極的に取り組むことの一環として唾液検査を導入している。検査をすることで患者およびスタッフにどのような意識変化や影響があったかを調査し,検査の有用性を検討した。
【対象および方法】 使用装置は唾液簡易検査装置SillHa®(アークレイ社製)で,唾液中のむし歯菌,酸性度,緩衝能,白血球,たんぱく質,アンモニアを測定し,数値化した。2021年11月〜2022年2月に来院し,当歯科医院では初めて検査した成人を対象とし,検査結果説明後にインターネットにて調査を行い89名から回答が得られた。またスタッフ14人(歯科医師,歯科衛生士,歯科助手)にも調査を行った。本調査はアークレイ株式会社倫理委員会の承認を得ている。
【結果および考察】 検査について「全く知らなかった」が69.7%,「聞いたことはあるがよく知らなかった」を含めると84.3%と認知度は低かった。検査結果を受け,「歯磨きをきちんとやろうと思った」「定期検診の必要性を感じた」「改善方法を知りたい」が多く,緩衝能を知ることで「生活習慣や食生活を見直したい」という意見があり,デンタルフロスや歯間ブラシ,洗口剤などのセルフケアグッズの導入にも前向き傾向であった。スタッフにおいては,患者に説明ができるよう口腔内環境に理解が深まり,自身の口腔ケアを通し健康について見直すきっかけとなった。
【結論】 近年,予防歯科が定着し,口腔からの健康,医科歯科連携が広がりつつある中,数値化することで現状把握および未来予測につながる唾液検査は,現在,一般にはそれほど周知されていないが,簡便であり,“気づき”を与えることで口腔ケアを能動的に行うきっかけとして有用であると考えられる。
○星合愛子1,2) Shin Yujeong1,2) 高澤維月1,3) 星合泰治2) 岩本 勉2)
1)明海大学保健医療学部口腔保健学科
2)東京医科歯科大学医歯学総合研究科小児歯科学・障害者歯科学分野
3)東京医科歯科大学医歯学総合研究科口腔健康教育学分野
キーワード 舌がん 小線源治療 口腔健康管理
【目的】 舌がん患者の小線源治療の状況,口腔内状態および口腔清掃状況の調査を行い,同患者の口腔健康管理を検討することを目的とする。
【対象および方法】 対象は,小線源治療を施行した舌がん患者5名である。小線源治療状況を調査し,口腔粘膜炎がピークを迎える小線源治療2週間後に口腔内状態と口腔清掃状況を確認した。(東京医科歯科大学歯学部倫理審査委員会承認番号D2021‒074)
【結果および考察】 対象者の年齢;平均70.3±10.3歳,小線源の種類;198Au3名,192Ir2名,処方線量;70.0~97.3Gy,Eliers Oral Assessment Guide;プロトコール3,口腔粘膜炎;Grade2~3,口腔内湿潤度;平均28.0±2.1,Decayed Missing Filling Teeth;最大28最小13,反復唾液嚥下テスト;平均2.2±2.2回/秒,舌運動;舌尖が下唇を超えず偏位なし,O'LearyのPlaque Control Record;平均82.6±26.7%,唾液中細菌;特記事項なし,刺激時唾液量;最大12mL最小3mL,唾液pH;平均7.2±1.4,唾液緩衝能;正常,1日の歯磨き回数;0回,清掃補助用具の使用;なし,であった。以上から,小線源治療後2週間後は,口腔粘膜炎など急性放射線性障害が原因で,口腔衛生状態が不良となり,舌運動と嚥下機能が低下していることが確認できた。小線源治療が口腔健康管理に及ぼす影響を明らかにするためには治療前後の口腔状況の精査が必要である。今後,症例数を増やし,さらなる検討を行う予定である。
【結論】 口腔粘膜炎が強く出現する小線源治療2週間後の口腔健康管理において,口腔状況の把握とプロフェッショナルケアが重要であることが示唆された。
○谷地柚香1) 長谷川博美1) 藤田亜沙美1) 杉藤雅孝2)
1)市立長浜病院
2)すぎとう歯科クリニック
キーワード デノスマブ 薬剤関連顎骨壊死(MRONJ) 口腔衛生管理
【目的】 近年,骨粗鬆症や癌の骨転移に対してビスフォスフォネート(BP)やデノスマブなどの骨吸収抑制薬が使用されており,高い治療効果を発揮している。しかし,その反面,歯科治療においては薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)を引き起こすことも報告されている。今回,口腔衛生管理でMRONJの改善を認めた症例を経験したので報告する。
【症例の概要】 患者は73歳男性。前立腺癌,多発肺転移,多発骨転移に対して当院泌尿器科でホルモン療法中である。ランマーク®(デノスマブ)投与予定のため,投与前の口腔内評価を目的に当科紹介となった。発表に際して本人の同意を得ている。
【経過および考察】 当科初診時,パノラマ画像にて右下6,8の歯根周囲に透過像を認めたため,翌週に同部位の抜歯が行われた。また,口腔衛生管理も実施していくこととなった。抜歯窩の上皮化を確認し,ランマーク®の投与が開始された。抜歯後8カ月で右下8相当部舌側に直径2mm程度の骨露出を認めた。骨露出部は徐々に拡大を認めたが反復腐骨少量除去術および口腔衛生管理で対応した。抜歯後4年,腐骨の自然脱落を認め,同部の粘膜が上皮化していることを確認し,現在に至るまで骨露出は認めていない。近年,MRONJに対しては外科的療法を推奨しているが,今回の症例では保存的療法で対応し良好な経過を得た。
【結論】 定期的な口腔衛生管理を行ったことが,MRONJの早期発見や進行抑制に寄与した。MRONJの患者は継続的な口腔衛生管理も重要となるため,歯科医師,歯科衛生士および主科の医師との密な医療連携が今後の課題であると考えられた。
○阪井 礼1) 日野聡史2) 本釜聖子2) 武田紗季2) 河本裕美子1) 菊池結花1) 稲垣杏菜1) 尾澤みなみ1) 内田大亮2)
1)愛媛大学医学部附属病院 診療支援部
2)愛媛大学医学部附属病院 歯科口腔外科・矯正歯科
キーワード 周術期口腔機能管理 高齢者 有病者
【目的】 急性期病院における周術期口腔機能管理は,患者の退院と同時に終診となるケースが多く,単なる歯周清掃に終始してしまうことが問題となっている。今回われわれは,退院後も継続した周術期口腔機能管理を行い,良好な結果が得られた症例を経験したので,その概略を報告する。
【症例の概要】 症例は90歳,男性。既往歴には,糖尿病,狭心症,心房細動,脳梗塞などがあった。肝細胞癌の手術目的に当院外科に入院され,周術期口腔機能管理のために当科を受診された。初診時のPlaque Control Record(PCR)は88.6%で,口腔衛生状態は不良であった。近在歯科医院で製作された義歯では咀嚼困難感があり,きざみ食を摂取していた。また,入院時の血清アルブミン値は,2.8g/dLであった。周術期口腔機能管理計画を立案し,歯周清掃に加えて抜歯,上下部分床義歯の増歯増床修理を行うことに同意を得た。
【経過および考察】 周術期口腔機能管理として,全身疾患と歯周病の関連,歯周清掃の重要性を説明し全顎的に清掃を実施した。歯ブラシの選択方法,使用方法,義歯の清掃方法を含めたセルフケアの指導をしながら,抜歯と義歯修理を行った。その結果,歯周ポケットからの出血や残存歯の動揺度は改善し,PCRは57.1%へと改善した。食事は常食を摂取可能となり,血清アルブミン値も3.5g/dLへと上昇した。
【結論】 今回,肝癌治療を契機に積極的な歯科治療を含めた周術期口腔機能管理を実施したことで,口腔機能のみならず栄養状態も改善し良好な結果が得られた症例を経験した。
○土田果穂1) 河島美帆1) 安藤千賀子1) 佐久間 恵1) 永嶺愛美1) 大塚智子1) 盛 啓太2) 百合草健圭志1)
1)静岡県立静岡がんセンター歯科口腔外科
2)静岡県立静岡がんセンター臨床研究支援センター統計解析室
キーワード 高齢者 大腸癌 スクリーニング 多職種 フレイル
【目的】 がんのような高侵襲手術では周術期に合併症が起こりやすく,適切な多職種の介入による周術期管理が必要とされている。特に75歳以上の高齢者では,口腔ケア,身体・嚥下リハビリ,栄養管理の一連の介入が重要である。近年,口の衰えがタンパク質摂取量の低下,全身の筋肉量の低下に関連することがわかってきた。これらの点をふまえ,がん患者の術前における口腔内評価と全身状態の関連性,および周術期の合併症等について調査することとした。
【対象および方法】 がん専門病院単施設で,2022年4月から12月に,大腸癌手術を行った75歳以上の患者95名を対象とし,口腔内評価と嚥下機能,身体のフレイル,栄養状態との関連について後向きに検討した。術前評価にて口腔状態が良好な患者と口腔状態が不良な患者の2群に分け,それぞれの身体状態,栄養状態,手術項目や術後合併症,入院日数等について解析した。
【結果および考察】 嚥下リハビリ介入必要性の評価(p=0.0192),フレイル評価(J-CHS基準)(p=0.0094)で有意差をみとめたが,簡易栄養状態評価表(MNA®)(p=0.0790),術後合併症の有無(p=0.7461)入院超過日数(p=0.2987)では有意差を認めなかった。術前の口腔内評価は,嚥下機能,フレイルなどの術前の身体状態と関連している可能性が示唆された。全例で多職種による評価と介入が行われており,術後項目との関連は確認できなかった。術前の口腔内評価は,摂食・嚥下障害,フレイルと関連する可能性があるため,今後はより詳細な項目の口腔内評価を行い,口腔評価と全身状態の関連についての研究を継続していく。
【結論】 術前評価での口の衰えは,嚥下や全身状態の衰えと関連する可能性がある。
○上田和美1) 高阪貴之2) 吉本美枝3) 福岡智子4) 小澤純子5) 松本香織6) 東 万紀子7) 神出 計8) 樺山 舞8) 池邉一典2)
1)はぐくむ歯科クリニック
2)大阪大学大学院歯学研究科 有床義歯補綴学・高齢者歯科学講座
3)大阪歯科大学大学院医療保健学研究科
4)大阪府歯科衛生士会
5)大手前短期大学 歯科衛生学科
6)京都九条病院 看護部歯科衛生課
7)大阪府能勢町福祉部健康づくり課
8)大阪大学大学院医学系研究科
キーワード 多職種連携 健康寿命 口腔機能 一体的実施
【目的】 健康寿命の延伸には全身疾患や老年症候群の予防とともに,口腔機能の維持・向上が重要となる。この度,大阪府能勢町と協働し,高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施の一環である能勢町健康長寿事業(のせけん)に参画し,歯科衛生士らが地域介入支援を行ったので報告する。
【概要および方法】 能勢町の高齢化率は42.1%(2020年)と全国平均(28.7%)より非常に高い。そこで町では健康寿命の延伸を目指し,令和2年より大阪大学医学系研究科と共同して「のせけん」を展開,医療専門職による認知・身体機能測定と保健指導,および毎日の血圧測定・記録を励行している。令和4年度より口腔機能の低下予防に向けた介入効果検証のため大阪大学大学院歯学研究科が参画して,歯科医師による歯科検診および口腔機能測定を実施,その後に歯科衛生士が個別の歯科保健指導を行った。更に,地域に出向いて健康教育を実施した。
【経過および考察】 行政の理解と協力を得て多職種の活動が見える緊密な関係性を構築し,保健事業と介護予防の一体的実施推進に参画でき,地域在住高齢者に対するオーラルフレイル予防の取組みを口腔機能に応じた個別指導(551名へ実施),および地域へのアウトリーチによるポピュレーションアプローチにより推進することができた。口腔機能測定後に歯科衛生士による口腔機能低下の対策指導および即時フィードバックを実施することで,口腔機能の維持向上が全身の健康に及ぼす影響について,対象者に歯科保健指導を行う機会が得られた。
【結論】 医療専門職・歯科専門職・行政の相互理解と有機的な多職種連携により,効果的かつ効率的に保健事業を展開できた。今後も一連の取組みを継続することが,健康寿命の延伸につながると考えられる。
○津秋杏佳 松葉沙耶果 田中美佳 柴沼理加 鈴木結衣 佐野江美 石上大輔 友木里沙 青木暁宣
松戸市立総合医療センター 歯科口腔外科
キーワード 多職種連携 多職種チーム 医科歯科連携 病院歯科衛生士 口腔衛生管理
【目的】 当院は診療科34科600床の急性期病院である。2020年1月より予定入院患者に対する歯科介入システムを導入し,周術期に関わる歯科依頼は増加したが,それに該当しない入院患者に対する口腔衛生管理の依頼は少なかった。そこで,栄養サポートチーム(以下NST),呼吸ケアサポートチーム(以下RST),緩和ケアチーム(以下PCT),骨粗鬆症リエゾンサービス(以下OLS)に参加し,口腔衛生管理の必要性を啓発するとともに,必要な患者に対して歯科介入を行った。チーム医療の中で歯科衛生士の役割と今後の課題を明確にすることを目的とし,2022年度の歯科介入割合と活動内容について報告する。
【概要および方法】 2022年4月から2023年3月までの1年間にNST,RST,PCTが介入した全患者を対象とした。回診時に歯科医師・歯科衛生士による口腔内スクリーニングを行い,歯科介入が必要と判断し,医科主治医からの介入許可を得た患者数を後方視的に調査した。なお,OLSは当院での活動が開始された2022年11月から2023年3月までの5ヵ月を対象期間として調査した。
【経過および考察】 対象患者のうち歯科介入を行った割合はNST76%,RST95%,PCT51%,OLS76%であった。各多職種チームに参加し,医科主治医やリンクナース等に全身疾患と口腔衛生の関連と必要性を啓発したことで,院内での認識が高まったと考える。
【結論】 口腔衛生管理が必要な患者に介入するためには,引き続き多職種チームへ参加し,院内勉強会等の啓発活動が重要である。今後の課題は,歯科受診を必要と判断する基準を医科歯科間で統一するために共有のアセスメントツールを運用し,同じ視点をもって情報共有および口腔衛生管理を行うよう連携を図りたい。
○薄波清美 小野塚留美子 中島由佳里 有間智巳 湯本まゆみ 竹内由美子 小出生真 水澤 晃 渡辺康弘 石田浩二
特別養護老人ホームよねやまの里
キーワード 口腔衛生管理 誤嚥性肺炎予防 完全側臥位法 食支援 嚥下機能訓練
【目的】 介護施設において,口の中にため込んだりむせたりと摂食嚥下機能が低下している状態で経口摂取を継続している重度要介護高齢者の食事介助は負担が大きく,介護現場に更なる悪循環を引き起こす一因となる。歯科衛生士が口腔衛生管理で得た情報を多職種連携で行う食支援に活用することで,嚥下機能の改善と介護負担の軽減につながった実践例を紹介する。
【症例の概要】 80代女性。当施設入所中に尿路感染症を発症し入院。2週間後,摂食嚥下機能が低下した状態で退院。退院後の水飲みテストでは嚥下ができず判定不能となるも,食べる意欲が強い様子から家族および主治医を含む多職種で検討し,経口摂取の努力を続ける判断となった。なお,今回の発表についてご家族の同意を文書で得た。
【結果および考察】 姿勢ケアでは完全側臥位法を取り入れ誤嚥予防を図った。その上で歯科衛生士は,食前に口腔乾燥や痰がらみ等の観察を行い,超やわらかめの歯ブラシで舌・頬・口蓋粘膜の口腔衛生管理と共に,刺激に対する反応や反射を確認した。食事介助では,口腔機能や嚥下力の強さと飲み込んだ後の口腔内残留の状況を観察し,嚥下を補助するために口角を引く等の介助を行った。口腔衛生管理の実施において得た情報は,カンファレンスで嚥下調整食やトロミの濃度および食事姿勢を決定する際の判断に活用された。3カ月後の水飲みテストでは,嚥下開始までの時間が当初の27秒から4秒にまで短縮され,摂取エネルギー量も退院当初の4倍にあたる1日平均915kcalに増加した。
【結論】 完全側臥位法を活用した口腔健康管理は,重度要介護高齢者ケアにおいて安全かつ効果的に嚥下機能の改善を図りえる手段であり,多職種連携での経口摂取継続の取り組みにおいて,歯科衛生士が実施する口腔健康管理の果たす役割は大きいと考える。
○小山田貴子
医療法人渓仁会 札幌渓仁会リハビリテーション病院
キーワード 多職種連携 チーム医療 口腔健康管理
【目的】 当院は2017年6月に開院した,3病棟(155床)全てが回復期リハビリテーション病棟である。歯科はなく常勤歯科衛生士1名が入院患者全ての口腔健康管理を行ってきた。回復期リハビリテーション病棟では,適切な栄養管理の下に日常生活の自立度向上を目指し,その一環として経口摂取,感染予防などの観点から口腔健康管理にとり組む必要がある。開院以来,歯科衛生士が中心になり多職種に働きかけを行い,歯科衛生士と多職種が連携した口腔のシステムづくりを行ってきたので,現状と課題を報告する。
【概要および方法】 開院時より医師,言語聴覚士,管理栄養士,歯科衛生士がチームとなり,全職員を対象に摂食嚥下・口腔ケアサポーター養成講座を行ってきた。歯科衛生士は口腔に関する基本的知識と評価方法,口腔ケアの実際について3回の講義と修了テストを行い,全職員が共通の知識習得を目指した。現在は,看護師が患者の口腔内を観察し,入院時とその後は月1回ROAG(Revised Oral Assessment Guide)評価を行っている。評価導入時は事前に歯科衛生士が講義と指導を行い評価の均一化を図った。患者の口腔内情報や口腔ケア用品の選定については,簡単に情報共有できるように工夫し実技指導も行った。
【経過および考察】 回復期リハビリテーションでは,口腔健康管理をチームで行う重要性が全職種に理解されつつある。現在,当院では食後の口腔ケアは看護,介護スタッフだけではなく理学療法士,作業療法士,言語聴覚士も日常的に行い,口腔健康管理が退院支援の課題の一つと考えるようになっている。
【結論】 回復期リハビリテーションにおいて,口腔健康管理に果たす歯科衛生士の役割は大きく,多職種と協働し患者の社会復帰支援に関与できることを強調したい。
○土本里帆1) 芝辻豪士1) 中津沙矢佳1) 小牧実央1) 西尾英莉1) 河野陽子1) 大脇利美1) 安岡大介2) 織田彩夏2) 足立了平1)
1)ときわ病院歯科・歯科口腔外科
2)ミライノデンタルクリニック
キーワード 非協力小児 全身麻酔 定期歯科受診 歯科保健指導 歯科治療
【目的】 非協力小児の歯科治療は全身麻酔下で行われる事も少なくない。また,治療後も継続的な定期歯科受診での予防処置が不可欠であるが,治療後に定期的な歯科受診が行われているかを調査した報告は無い。そこで今回我々は,非協力小児に対する日帰り全身麻酔下歯科治療の実態と治療後の定期歯科受診に関して調査を行った。
【対象および方法】 対象は,H31年4月からR4年3月までの期間に,当院で全身麻酔下において歯科治療を受けた非協力小児とし,年齢,治療回数,処置歯数を調査した。さらに,紹介元の30歯科医院に治療後の定期受診の有無についてアンケートを行った。定期受診のある群とない群でう蝕歯数に差があるかWilcoxonの順位和検定を行い,う蝕歯数と定期受診率の相関の有無を検討した。倫理審査承認済:R4-3
【結果および考察】 対象者は120名(男児48名,女児72名),初診時の平均年齢5.1±2.1歳,平均治療回数2.3±1.4回,平均処置歯数7.5±4.4歯であった。アンケートで有効な回答が得られた96名のうち,定期歯科受診のある者50名(52%),ない者46名(48%)であった。定期受診のある群とない群でう蝕歯数には有意な差は認めず,う蝕歯数と定期受診率には相関関係はなかった。う蝕を有する非協力小児では,う蝕リスクの高さ,さらにう蝕が発生した際の治療の困難さから,フッ素塗布を含めた予防処置やブラッシング指導・食事指導等の歯科保健指導は必須と考えられる。
全身麻酔下歯科治療後には,う蝕歯数に関わらず定期歯科受診の必要性を含めた歯科保健指導は重要であることが示唆された。
【結論】 全身麻酔下歯科治療後の非協力小児には,う蝕歯数に関わらず定期的な歯科受診の必要性を含めた歯科保健指導が必須である。
○鈴木 瞳1) 杉本久美子1) 高澤維月1,2) 吉田奈永1) 吉田直美1)
1)東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科医歯理工学専攻 口腔健康教育学分野
2)明海大学 保健医療学部口腔保健学科
キーワード 高校生 口腔保健行動 口腔保健知識
【目的】 口腔健康の維持には,口腔保健に関する正確な情報を得て,適切な口腔保健行動に活かす能力が重要であり,自律的な口腔健康づくりへと移行する学齢期では特に重要となる。本研究では,高校生を対象とした質問紙調査から,口腔保健に関してどの程度正確な情報を有しているか,その知識状況と口腔保健行動との関連について検討した。
【対象および方法】 北海道内の某高等学校1年生239名を対象に,無記名の自記式質問票を配布し,研究協力への同意が得られた者から回答を得た。調査項目は,歯科用語・口腔保健関連情報の認知度,口腔保健行動,口腔保健への関心についてとした。本研究は東京医科歯科大学統合教育機構倫理審査委員会の承認を得た(C2022‒012)。
【結果および考察】 233名より回答を得た(回収率97%)。歯科用語のうち「歯科矯正」「口臭」等の審美や対人関連に関する用語の認知率が高い一方で,「舌苔は口臭の原因」「頬杖は歯並びに影響」等の関連知識の認知率は低かった。口腔保健知識の高い群では,歯間清掃用具の使用者,歯磨剤を意識的に選択する者が有意に多く,口腔保健に関する知識を得ることが,良好な口腔衛生習慣,口腔衛生への意識に繋がる可能性が示された。また,定期歯科受診者では,有意に口腔保健知識の認知度が高く,甘味飲料の摂取頻度が少ない等の良好な口腔保健行動が示され,定期受診の重要性が示唆された。
【結論】 高校生においては,審美・対人関連の歯科的テーマへの関心が高く,これらを組み込んだ口腔健康教育の有用性が示唆された。さらに,口腔保健に関する高い知識が良好な口腔衛生習慣につながり,定期歯科受診が知識獲得に重要であることが示され,この世代から定期歯科受診を促進し,幅広く詳細な歯科情報を提供する必要性が示唆された。
○白水雅子1,2) 田中佑人2,3) 小原理絵4) 三木貴子4) 児玉秀樹4) 中村隆志1)
1)大手前短期大学歯科衛生学科
2)特定非営利活動法人アダプテッドスポーツ・サポートセンター
3)大阪歯科大学附属病院障がい者歯科
4)西宮北口歯科口腔外科
キーワード 口腔機能 障がい者 啓発活動 咀嚼能力測定 かかりつけ歯科医
【目的】 近年,口腔機能の低下が食生活や全身の健康に大きな影響を与えることが報告されている。そこで,小児や高齢者の口腔機能管理に重点が置かれるようになったが,障がい者に向けた対策は未だ十分とはいえない。本研究は,障がい者スポーツイベントの参加者およびその家族に,咀嚼機能と食品摂取状況の調査を実施し,咀嚼を通じた食と栄養の支援を行うための状況把握を目的とした。
【方法】 2022年11月の障がい者スポーツイベント参加者とその家族74名(男性31名,女性43名,平均年齢46.7歳±21.6歳)を対象とした。咀嚼機能は,咀嚼能力測定用グミゼリーを用いて評価した。調査項目は,性別,年齢,かかりつけ歯科医の有無および摂取可能食品とした。統計学的分析は,Spearmanの順位相関係数,Kruskal-Wallis検定を用いた。大手前短期大学研究倫理審査:20220708-倫理59
【結果および考察】 咀嚼測定スコアの平均値は,6.4であり,そのうち口腔機能低下症の該当基準値以下の者は1名であった。咀嚼測定スコアと摂取可能食品スコアとの間に弱い正相関がみられた。調査では,かかりつけ歯科医をもつ者は81.1%であり,性別では女性が,かかりつけ歯科医を持つ割合が高くなる傾向を示した。かかりつけ歯科医を持つ群は,持たない群と比較すると,摂取可能食品スコアがやや高くなる傾向がみられた。
【結論】 かかりつけ歯科医を持つ者は,摂取可能食品スコアがやや高値となり,かかりつけ歯科医を持つことは,口腔機能の維持に有効であることが推察された。障がい者は,複合的な要因から,摂食や嚥下に障害が認められる場合があるため,障害の種類や程度,日常生活能力にあわせた個別のセルフケアやかかりつけ歯科医による口腔機能管理が求められる。
○日比野理香子1) 荒木美穂1) 中嶋さつき1) 松本沙織1) 西田理恵1) 大島小帆里1) 山田小枝子1) 川口千治2) 野村玲奈2) 長屋優里菜2)
1)朝日大学歯科衛生士専門学校
2)朝日大学医科歯科医療センター
キーワード 口腔衛生管理 看護職 介護職 アンケート調査
【目的】 本校では,2022年度より北京大学口腔医学院と「日本と中国における高齢者介護に係る介護職員および高齢者自身の口腔健康管理に対する意識の比較」の共同研究を行っている。今回は,日本の高齢者施設職員の口腔衛生管理に対する意識調査を実施した。この調査から,職種によって口腔衛生管理の目的や効果に対して意識の違いがみられ,興味深い結果を得たので報告する。
【対象および方法】 朝日大学医科歯科医療センターで訪問する8つの高齢者施設の職員176名に対し,口腔衛生管理の目的や観察するポイント,使用する清掃用具など,16項目で質問紙法による質問紙調査を行い,その結果を看護職と介護職とで回答の割合を比較し、その差を考察した。なお,本研究は朝日大学倫理審査委員会で承認を得ている(第34012号)。
【結果および考察】 口腔衛生管理の目的では,「感染予防」が看護職100%,介護職88.0%,「誤嚥性肺炎の予防」が看護職97.6%,介護職83.4%とともに高い割合を示したが,ケアの際観察するポイントでは,「口腔乾燥」が看護職80.5%,介護職33.6%,「舌苔の汚れ」が看護職73.2%,介護職49.6%の値となり,職種間で差がみられた。また,使用する清掃用具は「スポンジブラシ」が看護職80.5%,介護職43.2%,「保湿剤」が看護職63.4%,介護職10.4%と違いがあった。これらの結果から,職種により手技および対応に関する意識に差がみられた。
【結論】 本研究より,口腔衛生管理に対する看護職と介護職の意識の違いを知ることができた。この意識の差を踏まえ,より適切な口腔衛生管理を実施するため,さらに看護職と介護職の双方が参加する,定期的な研修の機会を設けるなど歯科の介入が必要であると考える。
○仲程尚子1) 安慶名つや子2) 平良 牧子3) 大城 工2) 野村義明4)
1)沖縄協同病院 リハビリ室
2)中部協同病院
3)協同にじクリニック歯科
4)上海理工大学光化学・光材料研究院
キーワード 急性期病院 口腔衛生管理 誤嚥性肺炎 粘膜ブラシ 口腔清掃
【目的】 当院で実施した先行研究結果から,粘膜ブラシでの口腔清掃はガーゼやスポンジブラシでの口腔清拭と比較して唾液分泌量増加と口腔細菌数減少の効果が高く,舌圧刺激が可能で口腔機能回復への有効性が示唆された。本研究では粘膜ブラシ使用の効果を発熱,CRPで評価し誤嚥性肺炎予防の効果を検討した。
【対象および方法】 2019年8月から12月までの間に某急性期病院内科病棟に入院した患者18名を対象とし,粘膜ブラシ使用群と口腔清拭群(対照群)に割付けを行った。看護師が1日1回,粘膜ブラシ群にはライオンエラック®510Sを使用し,対照群はガーゼまたはスポンジブラシを使用し口腔ケアを実施した。舌上の細菌数と唾液湿潤度を割付け日と10日後に測定した。血清CRP値と体温は看護記録から抜粋した(承認番号2019‒19号)。
【結果および考察】 口腔内細菌数,血清CRP値,体温は,口腔清拭群(対照群)が粘膜ブラシ使用群に比べて有意に減少した(p<0.001)。脳神経外科入院患者の誤嚥性肺炎の院内発症は粘膜ブラシ使用群で軽減し,28日以内の誤嚥性肺炎の再入院も軽減していた。粘膜ブラシ使用による口腔細菌の効果的な減少がCRPと発熱の減少につながったと推測される。粘膜ブラシは,舌乳頭へも清掃効果が及び,弾力性の高い毛先が舌を圧迫し舌圧強化につながった可能性が推測される。舌圧の強化は嚥下機能改善,口腔内細菌の誤嚥防止,肺炎や呼吸器感染症の予防に効果があるとの報告があるが正確なメカニズムを解明するためには更なる研究が必要と考える。
【結論】 粘膜ブラシによる口腔清掃は誤嚥性肺炎を効果的にできる可能性が示唆された。
○葛 幸子 永野伸一
永野歯科医院
キーワード 認知症患者 口腔健康管理 傾聴 キーパーソン
【緒言】 当歯科診療所は往診・訪問診療の専門ではないが,依頼により歯科訪問診療・訪問歯科衛生指導を行なっている。今回,口腔衛生状態の回復が困難な認知症患者の居宅への訪問症例を発表する。尚,発表にあたっては家族の同意を得ている。
【症例の概要】 患者:88歳女性,要介護度2,障害高齢者の日常生活自立度B2。既往歴:高血圧,心房細動,心不全,脳塞栓,認知症。口腔内所見:上顎総義歯,下顎はブリッジによる欠損補綴,口腔乾燥あり,食渣多量。
【経過および考察】 2019年3月上顎前歯ブリッジの支台破折の為,総義歯を作製した。完成前に脳塞栓で入院の為,入院先へ往診し装着した。5月自宅へ退院した。7月「訪問看護から口の中に僅かな出血があるので歯科に診てもらうよう言われた」と夫より依頼あり,同日往診した。止血していたが口腔衛生状態がかなり不良の為,口腔健康管理を開始し,その後担当となる。2回目訪問時「口の中の状態がいいなら往診を打ち切りたい」と介護のほとんどを担っている夫から希望あり。義歯に対する不満が改善されないことからの不信感と経済的不安からと考えられた。不満の一つである義歯着脱についてはスムーズに着脱する方法を指導した。8月外来診療にて義歯修理を行ない,咬合を安定させた。その後依頼は途絶えていたが,12月出血があると夫より依頼あり。歯周病からの出血であること,口腔ケアが必要であることを伝えた。義歯が安定したことや夫の話を傾聴する事で不信感がなくなったと考えられ,週1回の訪問で継続となるが,口腔衛生状態は良好とは言えない。
【結論】 高齢者の口腔健康管理にあたり,より信頼関係を築く為には,経済的不安も考慮した対応が必要である。居宅の場合,良好な口腔衛生管理を継続する為にはキーパーソンの存在が重要である。
○湯淺麻衣子 尾崎清香 宮本浩樹 外川健史 原田丈司
関西労災病院
キーワード カンジダ 緑膿菌 急性骨髄性白血病 口腔管理
【目的】 急性骨髄性白血病に対する緩和支持療法中には,汎血球減少による発熱,貧血,易出血性を伴う免疫不全状態に陥ることがある。今回,急性骨髄性白血病患者の口腔内からカンジダ(C.albicans)と緑膿菌(P.aeruginosa)が同時に検出されたが,積極的な口腔ケアにより,緑膿菌の全身感染症や口腔カンジダ症の深在性真菌症を予防できた1例を経験したので報告する。
【症例の概要】 78歳の女性。急性骨髄性白血病に対する緩和的支持療法中。汎血球減少や発熱に対して,輸血や抗生剤を投与していたが,汎血球減少,発熱,摂食不良による入院中に,口腔内に疼痛を伴う広範囲の糜爛や痂皮が認められ,摂食不良が改善しないため,口腔衛生管理目的に介入となる。
【経過および考察】 口腔内の細菌培養同定検査によりC.albicansとP.aeruginosaが同時に検出された。口腔カンジダ症の診断の下,口腔内の糜爛や白苔に対して,アムホテリシンBシロップを投与したが,疼痛のため自己での含嗽や内服が困難で奏効しなかった。疼痛抑制に,リドカイン塩酸塩ゼリーを頻回に塗布し,口腔ケアの回数を増やすことで,口腔衛生状態は改善し,ミコナゾールゲルに変更することで,口腔カンジダ症も改善した。緑膿菌に対しては,抗生剤のタゾバクタム・ピペラシリンを適宜投与し,全身感染予防に努めたため,発熱や摂食不良も改善し,汎血球減少も安定した。
【結論】 血液培養検査では細菌や真菌は検出されなかったが,免疫不全状態のため,日和見感染症を発症するリスクを考慮し,積極的に口腔ケアに介入した結果,緑膿菌の全身感染症や口腔カンジダ症の深在性真菌症の予防とともに,口腔ならびに全身状態の改善に寄与できた。
○柿本 薫1) 麻生幸男1) 小川智久2)
1)医療法人社団ワンアンドオンリー 麻生歯科クリニック
2)日本歯科大学附属病院総合診療科
キーワード 2型糖尿病 地域医療連携 地域糖尿病療養指導士 糖尿病療養指導士
【目的】 2型糖尿病は,歯周病などの口腔疾患と相互に関連があるといわれている。口腔衛生管理を行い,来院患者の持つ既往歴に対しての知識向上と他職種との連携の必要性を感じるなかで,地域糖尿病療養指導士の取り組みに賛同し参加したプロセスを紹介したい。
【概要および方法】 糖尿病療養指導士とは,糖尿病患者の療養指導向上を図るために設立されたもので,講習会では質の高い療養指導を行う者の育成,認定を行い,患者を取り巻くチームの一員として日常診療に活かすことが目的である。糖尿病療養指導士には,一般社団法人日本糖尿病療養士認定機構による日本糖尿病療養指導士と,地域ごとに定められた地域糖尿病療養指導士がある。2020年,静岡中部糖尿病療養指導士講習会(静岡中部糖尿病療養指導士養成運営委員会主催)に参加した。講習会は全7回で,糖尿病の概念から治療,療養指導の座学,ケーススタディでは様々な職種の医療者とのディスカッションを行った。その後,認定試験を受けた。
【経過および考察】 糖尿病の知識習得により,改めて患者の様相を観察したり,既往歴や常用薬などを確認したりしていくと,歯科受診者のうち糖尿病やその合併症に罹患している患者が少なくないことがわかった。そして,対象者の口腔は慢性的な歯肉の炎症や口渇,う蝕の進行など,口腔疾患のリスクが高い傾向にあった。
【結論】 2型糖尿病と歯周病はともに生活習慣病であり,疾患の影響は全身に及ぶ。口腔においては,歯周治療や歯周病のリスク管理が求められることは言うまでもない。患者の高いQOLのために他職種との地域医療連携を綿密に行い,生涯にわたりフレイルのない生活を送るサポートを,歯科からも積極的に行っていくべきである。
○永野伸一
永野歯科医院
キーワード 舌癌 白板症 長期経過
【はじめに】 当歯科診療所の病理診断で白板症と診断し,経過を辿った2症例の詳細を発表する。なお,発表に際しては本人,家人より許可を得ている。
【症例の概要】 1例目は全身状態やその他の条件から経過観察となり8年目に死亡した症例と,2例目は患者の外来観察期間が空き,初期治療を逃してしまって進展した症例である。
【経過】 症例1 )初診時X年,88歳認知症の女性。老人保健施設から義歯の調整を依頼される。X+1年,担当の歯科衛生士が舌の右側に白色病変を発見した。外来にて病理検査を施行し,白板症の診断にて経過観察となる。X+4年,病変は増大。X+7年,がんの様相を示す。この時点で余命は1〜4年と家族に説明した。家人の希望により積極的な加療はしないことになったが,死後の家族のケアを目的として抗がん剤の塗布を行う。X+8年死亡。舌がんが直接の死亡原因とはなっていないと思われる。症例2 )初診時X年,71歳の女性。X+1年,当院の病理検査で白板症の診断をする。半年ごとの経過観察となる。初期は半年ごとに外来で経過を見ていたが,X+4年から2年間ブランクがあき,X+6年に患者は外来を受診した。病理検査で歯肉癌の診断。専門病院にて手術を施行する。その後,当院にて残存歯の治療をしながら経過観察をしている。X+7年の現在にて,再発の兆候はない。
【結論】 それぞれの患者にいろいろな事情がある。患者を取り巻く多くの状況を考慮しないと,理想的ながん治療が行われるとは限らない。開業医は,患者の家族を含め多くの配慮を行う必要があると考える。
○首田千尋 東川久代 山村真由美 新谷麻美 沖田奈々葉 水野絢菜 岡田真里奈 村山智子
金沢医科大学病院 医療技術部
キーワード 咽頭がん 化学放射線療法 口腔粘膜炎 リスク因子 栄養
【目的】 頭頸部がん化学放射線療法(以下,CRT)の口腔有害事象では,口腔粘膜炎が必発する。咽頭がん患者のCRTによる粘膜炎リスク因子を明らかにし,栄養管理について調査した。
【対象および方法】 対象は,2019年4月~2022年3月,頭頸科より周術期等口腔機能管理の依頼があった咽頭がん患者(上咽頭2名,中咽頭9名,下咽頭10名),化学療法(CDDP)+強度変調放射線治療(IMRT)の併用療法21名,平均年齢65.1±8.3歳(男性19名,女性2名)とした。調査項目は,BMI,血液データ(WBC,NEUT,TP,ALB),口腔領域放射線照射野の有無,口腔状況,口腔衛生状態(PCR値)について,治療前のデータを電子カルテより抽出した。粘膜炎はCTCAEv3.0を用いてGrade2以上を発症群,Grade1以下を非発症群の2群に分類し,最も重症化した時期を調査した。2群間の各因子と,放射線量10Gyごとの血液データの変動をカイ二乗,t検定にて統計解析した。粘膜炎発症群については栄養と口腔管理を調査した。金沢医科大学病院研究倫理審査委員会承認番号No. H324
【結果および考察】 21名中発症群は8名,非発症群は13名であった。2群間の比較では,照射野の有無とPCR値において有意差を認めた(p<0.05)。血液データは40~60Gyで低値を示し,この時期にもっとも粘膜炎が重症化していた。TPとALBでは有意差がなく栄養状態は維持されていた。発症群の8名中5名が経口摂取を併用しながら治療を完遂できた。よって,口腔衛生管理の徹底と口腔支持療法が,経口摂取支援に繋がったと考えられる。
【結論】 咽頭がんCRTの口腔粘膜炎リスク因子には,口腔領域放射線照射野と口腔衛生不良が挙げられた。口腔粘膜炎発症時には,口腔衛生の維持と栄養管理を考慮した口腔支持療法が重要である。
○園山愛弓1) 片岡正文2) 元木崇之2) 稲葉温子3) 原 一樹4) 和田麻美5) 香々美仁志6) 川上敦史7) 岡崎 景8) 大澤俊哉1)
1)岡山済生会総合病院 患者サポートセンター
2)岡山済生会総合病院 外科
3)岡山済生会総合病院 看護部
4)岡山済生会総合病院 薬剤部
5)岡山済生会総合病院 栄養科
6)岡山済生会総合病院 リハビリテーションセンター
7)岡山済生会総合病院 情報管理課
8)岡山県歯科医師会 学術部
キーワード がん診療連携拠点病院 周術期等口腔機能管理 医科歯科連携 地域連携 多職種連携
【目的】 当院は歯科標榜がないため,周術期等口腔機能管理を地域の歯科医療機関と連携して行っている。2021年より歯科衛生士が企画の中心となり,よりスムーズな連携を目的とした医科歯科連携推進研修会を開催している。今回は参加者アンケートの結果を基に今後の展望について紹介する。
【概要および方法】 現在まで「地域で取り組む周術期等口腔機能管理」「化学療法と口腔管理」「食道がん・胃がんの手術と口腔管理」をテーマに多職種が専門的且つ明快にZoomで講義を行い,終了後は参加者へGoogleアンケートを実施した。
【経過および考察】 アンケート回収率は50%であった。延べ参加者数は166名で,内訳は歯科医師58名・歯科衛生士83名・その他の医療従事者25名であった。研修内容については「非常に有意義だった・有意義だった」が100%,実務に役立つかは「非常にそう思う・そう思う」が100%,次回以降の参加希望は「ぜひ参加したい・参加したい」が98%であった。研修時間は「ちょうど良い」が84%であったが,13%の者が「長い」と回答し,平日夜よりも休日開催を希望された。自由記載では「講義がわかりやすかった」「多職種連携がよく理解できた」「医科歯科連携推進のため研修会を継続してほしい」等の意見が多く挙がった。内容については高い満足度が得られたが,日時の検討が必要と思われた。また,歯科衛生士の目線で企画することで,わかりやすい内容で提供できたと考えられた。アンケートにより参加者の声を内容へ反映できていることも,満足度に繋がっていると思われた。
【結論】 歯科標榜のない病院にとって歯科医療機関との連携は,相互理解の意味も大きい。今後も地域のニーズに応えられるよう様々な意見を勘案して研究会を実施し,包括的な医科歯科連携の実現を目指したい。
○井上菜月1) 河田尚子1) 竹林香菜1) 宮井沙也加1) 佐々木香奈栄1) 福田怜央1) 服部洋一1,2)岸本裕充1,2)
1)兵庫医科大学病院歯科口腔外科
2)兵庫医科大学医学部歯科口腔外科学講座
キーワード 薬剤関連顎骨壊死 ポジションペーパー改訂 オーラルマネジメント
【目的】 抜歯は薬剤関連顎骨壊死(medication-related osteonecrosis of the jew,以下MRONJ)発症における最大のリスク因子と考えられてきた。しかし,2023年に改訂される顎骨壊死検討委員会ポジションペーパーでは,抜歯の原因となる局所感染がより重要なリスク因子として捉えられている。当科では,MRONJの原因となる骨吸収抑制薬使用中の患者へのオーラルマネジメント(以下OM)として,歯科医師による抜歯などの歯科治療だけでなく,歯科衛生士も加わって専門的口腔清掃などを行い,局所感染予防に努めている。
【概要および方法】 MRONJ発症の有無に関わらず,歯科衛生士は全顎的な歯周管理を徹底することで,MRONJ発症,重症化の予防に努めている。また,手術前後の専門的口腔清掃として,歯だけでなく骨露出部周囲の洗浄,ワンタフトブラシを用いたセルフケアなどの患者教育を行う。一方,歯科医師は抗菌薬の処方やMRONJ患者の侵襲的歯科治療を行い,術後に顎欠損を生じた患者に対して顎補綴を用いた咀嚼嚥下のリハビリテーション,義歯調整を行う。
【経過および考察】 MRONJは重症化すると咀嚼障害をきたし,QOLを著しく損なうこともある。MRONJは手術で治療可能な症例が多くなってきているが,手術困難な症例の場合は,歯科医師と歯科衛生士の連携によるOMでの保存的治療によって局所感染を制御することがきわめて重要と考える。
【結論】 口腔清掃だけでなく,歯科治療を含めた包括的な介入を行うOMはMRONJ発症や重症化の予防に重要な役割を果たす。
○田中祐子1) 波多野朱里1) 市川順子2) 水上美樹1) 西澤加代子1) 作田妙子1) 富田浩子1) 戸原 雄1) 山田裕之1) 菊谷 武1)
1)日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック
2)日本歯科大学東京短期大学歯科衛生学科
キーワード Virtual Reality(VR) 摂食嚥下リハビリテーション 歯科衛生士教育 臨地実習
【目的】 歯科衛生士学生が摂食嚥下リハビリテーション(嚥下リハ)を体験するために,嚥下リハのVirtual Reality(VR)動画を視聴し,知識を得て臨床を体験するという新しい臨地実習システムを構築し,その有用性を明らかにすることを目的とした。
【対象および方法】 対象は,臨地実習終了後の某歯科衛生士養成学校3年生45名とした。調査は,嚥下リハの理解におけるVR動画視聴前後での主観的評価の変化とVR動画視聴後の外部観察評価の内容について検討を行った。本研究は,令和4年度歯科衛生臨床研究助成金を受けた。日本歯科大学生命歯学部倫理審査委員会の承認を得て行った(NDU‒T2022‒15)。
【結果および考察】 主観的評価のVR動画視聴前後の比較では,嚥下リハの理解について,視聴後は「理解できた,ある程度理解できた」が97.8%となり,VR動画が歯科衛生士臨地実習に応用できる可能性が推察された。VRが嚥下リハの理解に役立つかでは,「役立つ,ある程度役立つ」が視聴後は100%となり,VR動画の視聴が嚥下リハの理解に役立つことが確認できた。嚥下リハの評価や訓練の指導,ミールラウンド,外部観察評価の理解,VE・VFでの歯科衛生士の役割では,視聴後は「あまり理解できなかった」が少数ではあるが存在したため(2.2~6.7%),知識を応用し評価する項目では,VR動画視聴前の学生への教育が重要であることが推測された。客観的評価は,評価項目によっては必要な情報がVR動画から得にくい可能性が伺われた。
【結論】 VR技術を応用した嚥下リハ臨地実習における新しい歯科衛生士教育手法は,嚥下リハにおいて一定の知識を得ることが可能であった。学生がより深い理解を得るためには,事前教育の充実を行うことにより,知識の向上に寄与すると考えられる。
○秋山恭子 戸田花奈子 新井 恵
埼玉県立大学健康開発学科口腔保健科学専攻
キーワード 臨地実習 代替授業 COVID-19 歯科衛生士養成教育
【目的】 COVID-19感染拡大に伴い2020・2021年度は臨地実習が制限された。A大学でも臨地実習を代替する様々な授業を実施したがその効果は検証できていない。本研究ではコロナ禍の代替授業を評価し,臨地実習の実施が困難な状況において,学生が求める教育やサポートを明らかにすることとした。
【対象および方法】 2020・2021年度にA大学の4年次歯科衛生学生であった60名を対象に,2022年11月に,研究協力依頼メールにアンケートURLを掲載し,同意した者のみがGoogleフォームの無記名アンケートに回答した。アンケートは授業内容(講義,演習・実習,国試対策,自己学習)別に,代替授業での学習意欲向上,自身の学習課題の検討,課題解決,臨床経験の補完度,満足度に関して6段階で評価させた。代替授業実施期間に感じていた不安やストレスは自由記載とした。本研究は埼玉県立大学研究倫理委員会の承認を得て実施した(通知番号21097)。
【結果および考察】 24名(回答率40%)より回答が得られ,21名(2020年度卒10名,2021年度卒11名)を分析対象とした。いずれの評価項目においても肯定的な回答が多かったのは,演習・実習,国試対策であった。卒業年度別のMann-Whitney U検定およびχ2検定での評価項目の分析では統計学的有意差を認めなかった。自由記載では,臨地実習の経験が少ないことへの不安の訴えが最も多かった。また就職後の心配,先を見通せないことへのストレスに関する意見もあり,代替授業とともに学生の不安感に対するメンタルケアの重要性が示唆された。
【結論】 臨地実習の代替授業として,A大学4年次生は演習・実習や国試対策の評価が高く,卒業後の就職への不安に対するメンタルケアも検討が必要である。
○戸田花奈子1) 植野正之1) 鶴田 潤3) 品田佳世子2)
1)埼玉県立大学健康開発学科 口腔保健科学専攻
2)東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 生命理工医療科学専攻 口腔疾患予防学分野
3)東京医科歯科大学 統合教育機構
キーワード 歯科衛生士 多職種間実践 多職種連携
【目的】 多職種間の実践や認識に関連する要因を解明する。
【対象および方法】 複数の歯科衛生士養成機関の卒業生を対象に郵送法による無記名自記式質問票調査を実施した(2021年4~6月)。質問票では勤務実態に関する項目のほか,多職種間実践および認識に関する項目を含む全20問を設定した。本研究は東京医科歯科大学歯学部倫理審査委員会の承認を受け実施した(第D2017‒027号)。
【結果および考察】 質問票を配布・回収した471名中,無回答項目がなく,現在歯科衛生士として就業している128名を分析対象とした。20問の質問項目を用いカテゴリー主成分分析を行ったところ,「多職種間実践」(第1主成分)と「多職種間実践の用語,概念理解」(第2主成分)が抽出された。成分得点の平均で2分したものを従属変数,勤務実態項目等を説明変数として二項ロジスティック回帰分析を実施した。その結果,第1主成分では「認定取得の有無」と有意な関連が認められた(Odds ratio:2.79, p=0.04)。また,第2主成分では「修業年数」(Odds ratio:10.36, p=0.04)および「就業場所」(Odds ratio:2.62, p=0.02)と有意な関連が認められた。これらの結果から,卒前の学習過程で多職種間実践の概念を学ぶことにより,卒後のIPW実践のハードルを下げることができると推測された。
【結論】 卒後歯科衛生士を対象として,多職種間実践や認識に関する質問票調査を実施したところ,多職種間実践には「認定資格の有無」が,多職種間実践の用語,概念理解には「修業年数」,「就業場所」が関係していることが明らかになった。
○荒木萌花1) 小倉千幸2) 遠藤眞美3) 伊藤 梓3) 倉持恵美4) 中村広恵5) 奈良小百合5) 堂本直美5) 高柳篤史3,5,6) 山岸 敦6)
1)東京都歯科衛生士会
2)日本歯科大学東京短期大学
3)日本大学松戸歯学部障害者歯科学講座
4)茨城県歯科衛生士会
5)高柳歯科医院
6)東京歯科大学 衛生学講座
キーワード 動画SNS 口腔保健 セルフケア 情報リテラシー
【目的】 現在,ソーシャル・ネットワーキング・サービス(以下,SNS)での情報発信が活発に行われており,動画による情報も高頻度で見られるようになった。口腔保健情報を広域に発信する手段の1つとして動画を活用することを目的に,視聴されるための要素の一部である動画時間と投稿頻度について調査を行った。
【対象および方法】 調査対象は,SNS動画共有サービスYouTubeJPの無料動画とした(調査日2023年3月11日)。検索語は“はみがき”虫歯 予防”歯周病 予防”とし,視聴回数上位30本の総視聴回数,動画時間(短め:5分未満,長め:5分以上),発信者の属性は一般と歯科医療者に分類した。さらに,上位10名の発信者の動画投稿頻度を調査した。
【結果および考察】 検索語の総視聴回数(万回)は,“はみがき”53837,“虫歯 予防”405,“歯周病 予防”740であった。動画時間(短め,長め)は,“はみがき”23本,7本,“虫歯 予防”16本,14本,“歯周病 予防”10本,20本であった。動画投稿者の属性は,“はみがき”は一般が多く,“虫歯 予防”歯周病 予防”は歯科医療者が多かった。動画の投稿頻度(本/1ヵ月)は,“はみがき”21.6,“虫歯予防”14.9,“歯周病予防”13.1であった。視聴回数の多い動画の特徴は,短時間,はみがきの習慣化を目的とした繰り返し視聴可能な内容,投稿者の更新頻度が高いことであった。長時間で疾患の特徴や治療内容の説明が多い動画は1回で完結となり視聴回数が増加しなかったが,視聴者の目的と一致すれば視聴されることも示された。
【結論】 動画には習慣化の補助的役割や知識取得のために視聴される分野が考えられ,情報伝達の1つとして活用するためには情報の質を確保し,視聴者のニーズに合わせた内容や動画時間で作成することが望まれる。
○袋布行子1) 芦田麗子2) 神 光一郎2)
1)大阪歯科大学大学院医療保健学研究科
2)大阪歯科大学医療保健学部
キーワード 未就学児 口腔機能発達不全症 保護者の認識
【目的】 生涯にわたって食べ物を自身の歯で噛むためには,乳幼児期から学齢期にかけての良好な口腔・顎・顔面の成長発育および適切な口腔機能の獲得が重要とされている。そこで本研究では,幼児の日常生活行動と口腔機能発達不全症との関連を明らかにすることを目的とし検討を行なった。
【対象および方法】 大阪府A市内の市立認定こども園25園に通う1〜5歳までの幼児を対象に,その保護者に対して自記式質問紙を配布し,研究に同意を得られた保護者から回答を得た。なお本研究は,大阪歯科大学医の倫理委員会の承認(大歯医倫第111197‒0号)を得て,科学研究助成事業の分担研究の一環として実施した。
【結果および考察】 調査対象者3,033名のうち,調査協力の同意が得られた被調査者の有効回答者数は2,339名(有効回答率77.1%)であった。質問紙の回答では,5歳児の発音・発語に関して「聞こえ辛い」は11.2%であった。また,どの年齢においても約20%の幼児が頻繁に口呼吸をおこなっていた。食事のスピードは同年齢幼児との比較で,「遅い」幼児が3~5歳で20%を超えていた。固い物でも食べることができるかについては,「食べることができない物もある」は3歳児25.7%,4歳児18.1%,5歳児17.5%であった。「殆ど食べることができない」は3歳児0.6%,4歳児0.8%,5歳児0.6%と僅かながら存在することが明らかとなった。
【結論】 本調査より,口腔機能発達に問題を抱える5歳以下の幼児が一定数存在することが明らかとなった。健全な成長発達に対する歯科による支援を早期から行うためには,保護者の正常な口腔機能への認識や口腔機能発達不全に対応できる歯科保健医療の受け入れ態勢の確立が必要である。
○望月秀代1) 髙野 円1) 佐藤 絢1) 名生幸恵2)
1)麻生キッズデンタルパーク
2)日本歯科大学生命歯学部小児歯科学講座
キーワード Early Childhood Caries(ECC) リスク管理 CAMBRA®
【目的】 低年齢(3歳未満)児における多数歯齲蝕はEarly Childhood Caries(ECC)の中でも重篤である。抑制下での治療を目にした保護者が,その後の歯科治療継続を敬遠することもあり,その対応には多角的な視点からの配慮が求められる。ECCによる健康への影響を最小限に留め,患児にとって最良な対応を模索するために,小児歯科専門歯科診療所での多数歯齲蝕を有する低年齢児の口腔管理の1例を報告する。
【症例の概要】 初診時1歳9カ月の男児。齲蝕治療を希望して来院した。上顎両側乳中切歯,左側乳側切歯および両側第一乳臼歯は齲蝕症第2度と診断された。上下顎前歯部に叢生が認められ,PCRは21.9%であった。本症例を報告するにあたり,患児の保護者より同意書にて同意を得た。
【経過および考察】 初診時に実質欠損を含む多数歯齲蝕を認めたが,低年齢による治療困難を考慮し齲蝕部位へのフッ化ジアンミン銀溶液塗布,同時にCAMBRA®による口腔管理を開始した。4歳時に乳前歯部にコンポジットレジン修復,臼歯部にグラスアイオノマーセメント修復を行い,処置後は2-3ヵ月に1回,9歳に至るまで定期受診している。定期観察中はリスク評価を行い,視診・エックス線検査にて新たな齲蝕の発生・再発の有無を確認している。CAMBRA®は齲蝕ハイリスク児に有用なツールであり,これに基づいた歯科衛生士による食生活指導,口腔衛生指導で良好な食習慣および口腔清掃状態を維持している。
【結論】 ECC罹患児に対し本人のレディネスや保護者の心理的負担も考慮した長期的な治療計画を策定し,齲蝕進行抑制と併行して口腔内環境の改善を図ることは患児の来院を中断させない有効な対応の一つであると考えられた。
○掛端由衣子1) 杉山祐美子1) 山口景子1,2) 小村真妃1) 立花晶子1) 道尻紋佳1) 浅木美智子1,3)
1)青森県歯科衛生士会
2)八戸保健医療専門学校
3)湯の里にのへ
キーワード 幼稚園児 保育園児 保護者 保健行動 生活習慣
【目的】 青森県歯科衛生士会では,平成28年度より,保育園児・幼稚園児の保護者に対して歯科保健行動に関する質問紙調査を行っている。令和2年度青森県の3歳時むし歯有病率は20.7%あり,県内市町村において様々な取り組みをしているものの改善されない状態である。そこで今回は,A町の保育園児・幼稚園児の保護者を対象に歯科保健行動や生活習慣についての質問紙調査を実施した。
【対象および方法】 令和3年度6月~7月に,青森県A町幼稚園2園,保育園5園の保護者364名に歯科保健行動に関する質問紙調査の協力を依頼した。364名のうち有効回答238名,回答率65.4%であった。質問項目は,歯の健康状態,生活習慣と歯科保健行動,生活環境に関する内容で,2020年本学会にて発表した保育園児保護者の歯科保健行動状況把握のための質問紙調査と同様の物を使用した。保護者に質問紙調査を行うにあたり,文書で同意を得た。
【結果および考察】 質問紙調査で,69.7%の保護者がむし歯予防について知りたい,と答えている。また,60.9%の保護者がむし歯予防のための食生活について知りたい,と答えており,むし歯予防に関心があることが示唆された。家庭での歯科保健行動では,フッ化物配合歯磨剤の使用や仕上げ磨き等取り組んでいる事が伺えた。しかし,歯科医院での定期健診受診は33.6%,歯科医院での歯磨き指導を受けたことがある,と答えたのは34.0%と低かった。予防の知識を知りたいと思っていても,歯科受診行動には結びついておらず,家庭での予防は行っていても,個々の口腔状態に応じた歯科保健指導を受けていないと考える。
【結論】 今後,保護者が歯科医院を定期健診し,むし歯予防を意識してもらえるような指導や情報提供をしていきたい。
○湊 真理子 萩原麻美 久保田一政
重症心身障害児施設中川の郷療育センター
キーワード 重症心身障害児 口腔健康管理 多職種連携
【目的】 当重症心身障害児施設では,歯科は週1回の開設であり,非常勤の歯科医師および歯科衛生士が施設入所者を診療している。今回,重症心身障害児施設に勤務する非常勤歯科衛生士が病棟入所者に対して効果的な口腔健康管理を実施するための工夫について紹介する。
【概要および方法】 S県にある重症心身障害児施設は,重度の肢体不自由および知的障害のための医療型障害児入所施設として1997年に開設された。開設当初から現在まで歯科は週1回の診療である。歯科衛生士は,勤務時間内で入所者に対して口腔管理と診療についての業務を行わなくてはならない。
【経過および考察】 2022年度の歯科受診者は70名であった。主な疾患は,脳性麻痺と重度知的障害の重複疾患であり,コミュニケーションは困難である。ほとんどの患者が過緊張,過開口,不随意運動および咬反射を認めるために口腔ケアは非常に困難である。口腔ケアは看護師だけでなく,他職種職員も実施しているが,それぞれの入所者に適した方法が把握されていないのが現状である。歯科衛生士が病棟で職員と話ができるのは,限られた時間にとどまるため,効率よく入所者に関する口腔内の状況を連絡するために看護師と協力して「口腔管理・ケアカード」を作成した。記録用紙の活用により,それぞれの入所者についての口腔内の状況を効率よく伝達できるようになった。また,看護師から歯科衛生士への連絡も容易になり,入所者の口腔内の状況に改善が認められた。
【結論】 施設における口腔ケアは,さまざまな職種の職員が実施している。今回,看護師と協力して「口腔管理・ケアカード」を作成,活用したことにより,歯科からだけでなく,看護師から歯科衛生士への連絡も容易になり,入所者の口腔内の状況に改善が認められた。
○野中麻衣1,2) 相原喜子1) 後藤君江1) 犬飼順子1)
1)愛知学院大学短期大学部専攻科(口腔保健学専攻)
2)愛知学院大学短期大学部歯科衛生学科
キーワード 若年者 口腔機能 口腔衛生状態
【目的】 若年者の口腔機能の現状と,口腔機能と口腔衛生状態の関連を明らかにすることを目的とし,A短期大学部学生の口腔乾燥,舌圧,口唇閉鎖力,および口腔内細菌数を測定し検討したので報告する。
【対象および方法】 本研究への参加に同意の得られたA短期大学部歯科衛生学科2年生105名(19.2±0.4歳)を対象とした。「口腔内細菌数」は口腔内細菌カウンタ®,「口腔乾燥」は口腔水分計ムーカス®,「舌圧」はJMS舌圧測定器TPM-01®,「口唇閉鎖力」はりっぷるくん®を用いて測定した。本研究は,愛知学院大学短期大学部倫理委員会(承認番号22‒008)の承認を得て行った。
【結果および考察】 「口腔衛生状態不良」22.3%,「口腔衛生状態良好」77.7%であった。「口腔乾燥」と「舌圧」は口腔機能低下症の診断基準に比較し高値であった。「口唇閉鎖力」は,18歳女子平均値の10.6Nに比し7.5Nであった。「口腔内細菌数」,「口腔乾燥」,「舌圧」,および「口唇閉鎖力」の間に相関は認められなかった。「口腔内細菌数」と「口腔乾燥」,「舌圧」,および「口唇閉鎖力」についてχ2検定を行った結果,それぞれの群間に有意な差は認められなかった。「口腔内細菌数」と「舌圧」との関連についてFisherの正確確率検定を行った結果,「口腔衛生状態」と「舌圧」との間に有意な関連が認められた(p=0.038)。これらの結果より,若年者における舌圧と口腔衛生状態の関連が示唆された。
【結論】 小児と高齢者への介入のみならず,若年者における口腔機能の低下を示す兆候を早期に発見し,すべてのライフステージで口腔機能の維持・促進を進めていく必要があると考えられた。
○伊西口初音 鈴木一吉 稲垣幸司 犬飼順子
愛知学院大学短期大学部専攻科(口腔保健学専攻)
キーワード 歯ぎしり くいしばり 患者への対応
【目的】 歯ぎしり,くいしばり症状がある者に対し,生活習慣,保健行動およびストレス状況を調査することで,歯科臨床で可能な対応や提案を検討した。
【対象および方法】 対象は,歯ぎしり,くいしばりの自覚症状がある愛知県在住の4名(22歳男性1名,21歳男性1名,21歳女性2名)とした。2022年7月に生活習慣,保健行動およびストレス状況について質問紙法調査とインタビュー調査を実施した。なお,本研究は,愛知学院大学短期大学部倫理委員会(承認番号22‒004)の承認を得て行った。
【結果および考察】 歯ぎしり,くいしばりの自覚症状は,睡眠と覚醒との関連はなく,ストレスの自覚とも関連がみられなかった。対象者は,マウスピース(スプリント療法)に対する知識や関心が低く,装着時に不快感を抱くこともあり,マウスピースに対する抵抗があった。対象者の背景因子をインタビューした結果,歯科臨床として考えられる対応としては,患者の歯ぎしり,くいしばりに対する考え方や思いに合わせた口腔衛生指導,呼吸法,咀嚼筋のマッサージ,睡眠指導,心療内科や睡眠外来への紹介等が考えられた。歯ぎしり,くいしばりの自覚,他覚症状がある者に対して,まず患者の疾病に対する解釈モデルを把握し,患者の考えや気持ちに寄り添った姿勢を歯科衛生士がみせることにより,患者自身の歯ぎしり,くいしばりについての理解と関心が向上すると考える。
【結論】 本研究結果より,患者自身の歯ぎしり,くいしばりに対する考えや気持ちは多様化していると考えられた。患者に合った対応をするためにも,知識や関心がない状態で治療を提案するのではなく,まずは,患者の背景因子を聞き出し,歯ぎしり,くいしばりを理解してもらうことが重要であると考えられた。
○小木曽真弥 児玉弓子 水口洋子 大関慧子 中村瑞希 松木晴香
一般財団法人日本口腔保健協会
キーワード 職域口腔保健活動 特定健診質問票 咀嚼状況 口腔保健状況
【目的】 特定健診質問票に咀嚼に関する項目が設定され,職域口腔保健活動(以下,本活動)においても口腔機能に着目した支援の重要性が高まっている。そこで,質問項目における咀嚼状況と口腔保健状況を調べ,その関連性について検討した。
【対象および方法】 調査対象者は,2022年度の某事業所における本活動参加者1,266名(男性649名,女性617名)とした。参加者には事前に咀嚼状態,歯口清掃習慣,定期的歯科健診受診の有無等に関する聞き取り調査を行い,咀嚼状態は特定健診の質問項目(何でも噛める,噛みにくいことがある,ほとんど噛めない)を用い「何でも噛める」を咀嚼良好者,「噛みにくいことがある,ほとんど噛めない」を咀嚼不良者とした。歯の状態は視診により診査し,歯肉の状態はCPI代表歯法を用いて「健康」「歯肉炎」「歯周炎」「進行した歯周炎」に分類した。対象者には調査報告にあたり同意を得て実施し,データの取り扱いは個人が特定されないよう匿名化した。
【結果および考察】 参加者全体の咀嚼状態は,咀嚼良好者1,116名(88.2%),咀嚼不良者150名(11.8%)であったが,年齢が高くなるに伴い咀嚼不良者の増加傾向がみられた。咀嚼不良者は咀嚼良好者に比べ,現在歯数が少なく,歯の状態では「未処置歯あり」,「喪失歯あり」,「喪失歯の未補綴歯あり」の割合が高く,歯肉の状態では「進行した歯周炎」の割合の高いことが認められた。また,咀嚼不良者は「歯みがき回数1日1回以下」,「定期的歯科健診受診なし」の割合の高いことが認められた。
【結論】 今回の調査結果から,職域口腔保健活動参加者の咀嚼不良者には歯科受診勧奨とオーラルセルフケア等の支援の必要性が認められ,特定健診質問票における咀嚼不良者においても同様のフォローアップ指導が必要であることが示唆された。
○有渡根亜希子 貞松佳代乃 麻生幸男
医療法人社団ワンアンドオンリー 麻生歯科クリニック
キーワード う蝕予防管理 う蝕リスク評価 フッ化物局所応用 キシリトール 洗口剤
【目的】 当院ではリスク評価に基づくう蝕管理ツールであるCAMBRATMによるリスク管理に基づくう蝕管理を実施しているが,う蝕発症率の低減については検討されていない。本研究の目的はう蝕リスクの高い患者に対して化学療法を行った場合のう蝕発症率(DFT指数)を評価することにより,化学療法の有効性を調査することである。
【対象および方法】 2009年4月~2016年10月に当院受診した成人患者を対象に後ろ向き調査を行った。CAMBRATMにてリスク評価を行い,主訴改善のみの不定期来院患者56名をグループ1,ハイリスク患者982名のなかで定期管理患者926名のうち,化学療法なし群206名をグループ2,化学療法あり(1回のみ)151名をグループ3,化学療法あり(2回以上)569名をグループ4とし,それぞれの1人平均DFT増加数を比較した。化学療法はすべて認可された国内製品のみを使用し,クロルヘキシジン洗口,フッ化物局所応用,キシリトールのいずれかとし,一つでも使用した場合を1回とした。解析方法はMann-WhitneyのU検定を使用した。
【結果および考察】 主訴改善のみのグループ1の一人平均DFT増加数が0.59本に対して,定期管理グループ2は0.43本,グループ3は0.40本,グループ4は0.34本であった。また,グループ1とグループ4との間に統計学的に有意な差を認めた(p<0.001)。これより定期管理患者に対して化学療法を用いることによりう蝕発症が抑制され,化学療法の有効性が示唆された。また,化学療法の回数においてもより多く使用することが効果的であると考えられた。
【結論】 う蝕リスクの高い患者に対して化学療法を用いて適切な定期管理を行なえば,う蝕発症が抑制されることが示唆された。
○小林柚帆1) 佐藤 南2) 安達奈穂子3) 品田佳世子3)
1)東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科口腔疾患予防学分野
2)平塚市健康こども部健康課
3)東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科口腔疾患予防学分野
キーワード 自己効力感 高校生 口腔保健行動
【目的】 高校生の自律的な生活習慣の確立には自己効力感が影響すると考えられている。自己効力感とは,行動を効果的に遂行できる可能性を自らが持っていると認知することである。自己効力感とう蝕リスクとの関連についての報告はあるが,高校生の時期における報告は少ない。しかし,高校生は,自分の口腔の状態を適切に認識し,口腔保健行動を実践する必要があると考えられる。そこで,高校生を対象に,口腔保健行動と自己効力感との関連性を調査し,口腔保健の推進の検討を目的とした。
【対象および方法】 対象は,横浜市某私立高等学校2・3年生,広島市某私立高等学校2年生,計530名である。8項目(回答者の属性,学校歯科健診結果,歯磨きや食習慣,生活習慣や生活状況,歯科受診歴,口腔の健康観,歯磨きや口腔の認識,自己効力感)についての質問紙調査を行った。これらの関連をカイ二乗検定で検討した。なお,本研究は,東京医科歯科大学歯学部倫理審査委員会の承認を得たうえで実施した(承認番号:D2022‒020)。
【結果および考察】 自己効力感が高い群と低い群で有意な差がみられたのは,デンタルフロスを使用している割合,間食をする割合,歯の健康に気を使っている割合,「1本1本注意して歯を磨く」者の割合,「歯ぐきの色が気になる」者の割合,の5項目であった。自己効力感が高い者は,適切なセルフケアや生活習慣が口腔疾患の予防につながることを経験から理解できていると考えられ,自己効力感の高さと口腔保健行動への意識の高さは関連している可能性があると考察される。
【結論】 歯磨きや食習慣,口腔の健康観,歯磨きや口腔の認識に関する項目は自己効力感と関連すると考えられた。一方,学校歯科健診,生活習慣や生活状況,歯科受診歴に関する項目は自己効力感と関連は認められなかった。
○福田昌代 江﨑ひろみ 高橋由希子 山城圭介 宮澤絢子 氏橋貴子 浅枝麻夢可 西保亜希 吉田幸恵
神戸常盤大学保健科学部 口腔保健学科
キーワード 高齢者 オーラルフレイル 口腔機能 低栄養
【目的】 人生100年時代を迎えるにあたり,我が国はフレイル対策を推進している。中でも栄養維持と口腔の定期的管理はフレイル,サルコペニアの予防に大きく繋がるとされている。そこで,今回は低栄養の早期発見ツールとして用いられている簡易栄養状態評価表を用いて,低栄養と口腔機能等の関連について検討し,オーラルフレイル対策としての低栄養質問票の有効性について検討したので報告する。
【方法】 対象は65~92歳の76名(男性18名,女性58名:平均年齢76.1±6.3歳)である。低栄養質問票は6項目の簡易栄養状態評価表(MNA®-SF)を,オーラルフレイル質問票は,Oral Frailty Index-8(OFI-8)を使用した。口腔機能は,嚥下機能はEAT-10を用い,残存歯数,最大舌圧値,オーラルディアドコキネシス/pa/,/ta/,/ka/,舌左右運動の速さを測定した。各質問票の結果は2群に分類し,MNA®-SFと各質問票との関連はχ二乗検定,実測値との関連はMann-Whitney U検定を用いた。(神常短研倫第22-1号)
【結果および考察】 栄養状態が良好でない者は有意にオーラルフレイルの危険性が高く,嚥下機能に問題あることが示された。口腔機能実測値においては,栄養状態が良好でない者は最大舌圧で有意に低値を示した。その他の口腔機能との関連性は認められなかった。今回,MNA®-SFとOFI-8との関連性が認められたことから,どちらか一方に疑いが生じた場合は,もう一方の可能性を考慮し早期に対応する必要があることが示された。また,MNA®-SFと最大舌圧との関連が認められたことから,舌圧の重要性が示された。
【結論】 MNA®-SFによる低栄養質問票はオーラルフレイル対策に有効であることが示唆された。
○萱野綾華1,2) 王丸寛美3) 和田尚久2,3)
1)九州大学病院医療技術部歯科衛生室
2)九州大学大学院歯学府総合歯科学講座総合診療歯科学分野
3)九州大学病院口腔総合診療科
キーワード 高齢者 口腔機能検査 SOC
【目的】 高齢者の「心理・社会的要因の評価」および「口腔機能の評価」から早期に口腔機能低下予防を可能とする因子について検討することを目的とした。
【対象および方法】 〈対象〉当科にて定期管理を含む歯科治療を行う50歳以上の患者〈取得情報〉患者因子(年齢,性別,BMI(kg/m2),歯数,義歯の有無),口腔機能低下症7項目,ストレス対処力調査票(Sense of Coherence-13,以下SOC)〈分析方法〉各項目の関連をカイ二乗検定,Fisherの正確確率検定,Mann-WhitneyU検定を用いて分析し,有意水準は5%とした。〈倫理審査〉九州大学医系地区部局臨床研究倫理審査委員会承認済み(許可番号:2022-211)
【結果および考察】 対象患者は66名(平均年齢74.15±8.97歳,男性29名,女性37名)。歯数は,咬合力,舌口唇運動機能,舌圧と有意に関連し,義歯の有無は,年齢,咬合力,舌圧と有意に関連した。義歯有りや歯数20本以下の患者は,咬合力,舌圧が基準値以下になる可能性が高いと示唆された。またSOCはBMIと有意な関連を認め,ストレス対処能の低い高齢者の平均BMIは20.3であり,厚生労働省が提唱する高齢者の目標BMI21.5よりやや低い結果となった。今回は口腔機能低下とSOCに直接的な関連は見られなかったが,義歯や歯数が口腔機能に関わる項目に複数関連したことから,口腔機能の低下は義歯の有無や歯数減少に強く影響する可能性があると考える。また,現時点でSOCはフレイルに関与するBMIとの関連のみであるが,今後も他項目との関連について調査を進めたい。
【結論】 今回の調査では,義歯や歯数が口腔機能の項目に複数関連し,ストレス対処能が低いとBMIの低下を招くことが示唆された。
○櫻井千莉1) 合場千佳子2) 市川順子2) 相澤直依2)
1)東京都立心身障害者口腔保健センター
2)日本歯科大学東京短期大学歯科衛生学科
キーワード 施設介護職員 口腔ケア 歯科衛生士 指導用媒体 非対面型指導
【目的】 介護保険施設では,介護職員が主に口腔ケアを担っているのが現状である。口腔ケアの指導を受けた経験のある職員が多いなかで,標準化された方法で口腔ケアを行っている職員は少ない。本研究では,介護職員の口腔ケアの実態を調査し,その結果をもとに動画・リーフレット(以下,媒体)を活用した歯科衛生士による指導を実践し,さらに,指導前後の介護職員の行動の変化や意識を評価し,媒体を活用した指導の有効性を明らかにすることである。
【対象および方法】 同意の得られた特別養護老人ホーム介護職員52名を対象に,無記名自記式質問票調査を実施した(東短衛‒283)。調査期間は,2022年8月に口腔ケアの実態等を含む指導前調査,同年12月には作成した媒体を郵送にて配付した。配付後,2023年1月に指導後の調査を実施した。媒体には,口腔内観察から口腔清掃用具の使い方,非協力的な利用者への口腔ケアのポイントを作成した。また,非対面型指導前後の口腔ケアの実施方法や口腔ケアに対する意識の変化について,χ2検定を行った。
【結果および考察】 事前調査では,口腔ケアの指導を受けたことのある職員は77.5%で,そのうち歯科衛生士より指導を受けた者が58.1%であった。介護職員の口腔ケア内容は,歯磨きやうがいが97.5%と高く,舌の清掃は65.0%であった。媒体を活用した指導後では,口腔内観察や舌の清掃を行う職員が有意に増加し(p<0.05),口腔ケアの問題点が解決した職員が66.7%であった。媒体の活用を評価する者は75.6%と最も多く,動画を取り入れた情報提供の有用性が示された。
【結論】 歯科衛生士として専門的な指導をする際には,事前に介護保険施設の実態を把握することの重要性と,媒体を活用した指導が有効であることが示唆された。
○木原万由子1) 中村次代1) 小幡純子2)
1)九州大学病院医療技術部歯科衛生室
2)九州大学大学院歯学研究院口腔機能修復学講座歯科保存学研究分野
キーワード 薬物性歯肉増殖 歯周基本治療 薬剤変更
【目的】 某大学病院歯科では,医科と併科で来院される有病者が多く,多数の薬剤を服用しているケースがある。歯科衛生士は,患者の全身症状や服薬等を理解した上で,口腔衛生管理を行っていく必要がある。今回,薬物の副作用により起こる歯肉増殖患者へ介入し,歯周ポケットの改善が図れた症例について報告する。なお,本症例の発表については患者本人により同意を得ている。
【症例の概要】 51歳女性。現病歴は全身性エリテマトーデス,主訴は歯茎の腫れで医科と併科受診された。初診時,歯肉増殖が認められ,服薬が多数あり,歯科医師により歯肉増殖症と診断された。歯科医師とともに歯周基本治療を行い,初診時と再評価時の歯周精密検査の結果を比較し,口腔衛生管理を継続した。
【結果および考察】 初診時,全27歯のうちPPD4mm以上の歯が21歯あり,BOP4%,PCR32%であった。歯周基本治療を開始し,TBI,SC後PPD4mm以上の歯が12歯あり,SRPへ移行となった。血小板,白血球の数値が回復した際にSRPを実施した。歯肉切除術は患者の希望により行わず,医科主治医に薬剤の影響について相談し,免疫抑制剤ネオーラルからプログラフヘ変更となった。これにより,歯肉増殖症が改善し,セルフケアが容易になることで患者のモチベーションが向上し,健康な歯肉に回復した。8カ月後の再評価時は,全27歯のうちPPD4mm以上の歯が4歯あり,BOP0%,PCR5%という結果で初診時と比較して歯周ポケットが改善した。
【結論】 本症例では,歯周基本治療および薬剤変更を依頼したことが歯肉増殖症の改善となり,歯周ポケットの改善につながった。患者の全身症状や服薬等を理解した上で,口腔衛生管理を行っていくことが重要であると示唆された。
○堂満愛弓 古賀喬充 原口篤子 瀬戸山智香
公益社団法人昭和会いまきれ総合病院
キーワード 開口部形質細胞症 口腔粘膜病変 専門的口腔ケア
【目的】 開口部形質生細胞症(plasmocytosis circumorificialis以下PC)は人体の開口部粘膜に発症する稀な炎症性疾患である。診断基準がなく除外診断によって診断を進めるため,診断に苦慮することがあり,治療法は多岐にわたり長期経過を辿ることもある。今回,口腔粘膜に生じたPCに対して,専門的口腔ケアと共に精神的サポートを図り治療を支持し得た症例を経験したため報告する。
【症例の概要】 患者は75歳,女性。口腔粘膜の広範なびらんの精査依頼で当科を受診した。初診時,下唇,歯肉,頬粘膜及びに舌に発赤とびらんを認め,強度の接触痛により口腔衛生状態は不良であった。会話や食事時の接触痛によりQOLの低下を来していた。同意書を得て行った。
【経過および考察】 臨床所見から自己免疫生水疱症や口腔扁平苔癬などが鑑別診断に挙がり検査を行った。病理所見から口腔扁平苔癬が疑われたため,ステロイド軟膏外用とアズノール含嗽を指導し,口腔清掃不良に対してブラッシング指導と専門的口腔ケアを実施した。治療介入後も症状の改善は得られなかったため,再度口腔粘膜から組織生検を行った。数回の生検を繰り返すことからPCを疑い,タクロリムス軟膏の外用を開始したところ,症状は軽快した。過去の報告と同様,本症例においてもPCの診断に苦慮し病悩期間は6ヵ月と遷延した。治療に対する拒否感が度々生じたが,症状に応じたセルフケアの指導と共に精神的サポートを図ることで治療を支持することができたと考える。
【結論】 近年,がん化学療法に対する支持療法的口腔ケアの重要性が認知されているが,本症例のような難治性口腔粘膜炎の場合にも,診断に至るまでの患者の不安や苦痛は強く,専門的口腔ケアと共に精神的サポートを図ることが重要である。
○古田久美子 小手川雄一 坂本ゆり 廣岡昌史 日浅陽一
愛媛大学医学部附属病院 総合診療サポートセンター
キーワード 入院前支援 多職種連携 専属配置 周術期口腔機能管理
【目的】 当院では,患者の口腔ケアを実践することで,口腔内合併症を予防し,患者・家族の苦痛緩和,QOLの維持・向上を目指すことを目的に,総合診療サポートセンター(以下,TMSC)での入院オリエンテーション時に入院支援看護師による口腔ケアスクリーニングを実施している。口腔ケアスクリーニングシートで3点以上になった場合は,歯科衛生士が口腔ケアの説明を行い,口腔ケアの同意確認後に,口腔ケアチーム受診に繋げている。2016年11月より診療科を限定した対応を標準化するため,歯科衛生士がTMSC専属配置となった。今回,その有用性および今後の課題について報告する。
【概要および方法】 2015年4月~2023年3月に入院オリエンテーションにおいて,歯科衛生士による口腔ケア説明を実施した件数および診療科別歯科衛生士介入状況と周術期等口腔機能管理計画策定料の算定状況について後ろ向き調査を実施し,TMSC専属歯科衛生士配置前後の分析を行った。
【結果および考察】 歯科衛生士が専属配置となった2016年11月以降,口腔ケア説明件数は増加傾向であり,2022年度においては専属配置前の約3倍の介入件数となっていた。介入件数を診療科別にみると,専属配置前のオンコール対応期間においては,限定した診療科のみの対応であったが,専属配置後は周術期口腔ケア対象となる様々な診療科への介入が可能となり,周術期等口腔機能管理算定件数が増加した。
【結論および今後の課題】 TMSCで歯科衛生士が口腔ケア説明を行うことで歯科介入率は年々増加しており,周術期等口腔機能管理算定件数は増加傾向である。今後は周術期口腔ケアによる合併症予防効果の検証,また患者満足度についての調査を検討していく。
○佐藤夏澄1) 須田玲子1) 柴田由美2,3) 山口麻子1) 坂本奈津季1) 村上雅彦4) 大塚耕司4) 五藤 哲4) 有吉朋丈4) 山下剛史4)
1)昭和大学病院 病院歯科
2)昭和大学歯科病院 歯科衛生室
3)昭和大学大学院保健医療学研究科
4)昭和大学食道がんセンター
キーワード 食道がん 周術期等口腔機能管理 OHAT
【目的】 食道がんは術前化学療法を行ったのちに手術を行うことが多く,手術後の合併症を予防するために,化学療法開始前から歯科が関わり,口腔内環境を清潔に保つことが重要とされている。今回,食道がん患者の周術期等口腔機能管理の効果を明確にする目的で実態を調査した。
【対象および方法】 2020年1月から2022年3月までに周術期等口腔機能管理を実施した食道がん患者のうち,Oral Health Assessment Tool(以下OHAT)を用いて口腔内状態を評価した119名を対象とした。患者背景,歯科介入回数・内容,口腔内状態(OHAT)などの情報を診療録から後方視的に調査した。本研究は昭和大学における人を対象とする研究等に関する倫理委員会の承認を受けて実施した(承認番号:3419)。
【結果および考察】 男性93名,女性26名で平均年齢は68歳であった。術前化学療法の平均回数は1.8回で,化学療法中に口腔清掃を実施したのは92名,回数は1~5回であった。術前術後の口腔清掃は全員に実施した。OHATの合計スコアは,初診時4.1±2.4点(中央値4点),術前口腔清掃時3.3±2.1点(中央値3点),術後口腔清掃時2.9±2.0点(中央値2点)で,それぞれの区間で統計学的に有意差があった(p<0.0001)。項目別では,専門的口腔清掃やセルフケアによって改善可能な項目のスコアは減少したが,歯科治療が必要な項目のスコアの減少はあまり認められなかった。これは,手術までの期間が短く,歯科治療をする十分な時間がなかったためと考えられた。
【結論】 食道がん患者に対し,化学療法開始前からの歯科介入で口腔内環境が改善される可能性が示唆されたため,早期から歯科受診ができる体制を整えることが今後の課題である。
○竹田由香理1) 中村理沙1) 猪野恵美1) 野田さわこ1,2)
1)長崎みなとメディカルセンター
2)長崎大学医療教育開発センター
キーワード 周術期等口腔機能管理 全身麻酔 術後肺炎 口腔衛生管理
【目的】 周術期等口腔機能管理の目的として,気管挿管時の歯牙脱落やその誤飲などの偶発症の回避,術後の感染や合併症予防があげられる。当院においても2014年より歯科衛生士と地域歯科医師会との連携で周術期等口腔機能管理に取り組み,2019年から長崎大学と連携して院内に歯科を開設したことは2022年の本学会でも報告した。今回我々は,院内歯科において術前処置としての動揺歯の固定やマウスガードの作製により手術中のトラブル予防,手術直前後に歯科衛生士が口腔衛生管理を行ったことによる術後感染予防の効果について検証した。
【概要および方法】 1. 調査対象:2022年7月から12月までに周術期等口腔機能管理を行った患者369名。未介入の全身麻酔手術患者427名。2. 診療科:消化器外科,乳腺外科,消化器内科,心臓血管外科,泌尿器科,整形外科,婦人科,耳鼻咽喉科,脳神経外科。3. 口腔内状況:動揺度,口腔清掃状態。4. 術後肺炎の発症件数。
【経過および考察】 周術期等口腔機能管理を行った患者のうち動揺が認められた78件にマウスガード作成32件,暫間固定10件,抜歯1件の処置を行ったことで術中の脱落などトラブルは認められなかった。また94.0%に口腔内の汚染が見られたが,全身麻酔による手術後に発症した誤嚥性肺炎は介入患者で0.5%であり,術前に介入していない患者は1.8%と,術前後に行った歯科衛生士の口腔衛生管理の効果が見られた。
【結論】 周術期等口腔機能管理として院内歯科が介入することは,手術時のトラブル予防や術後感染予防に効果的であることが示唆された。今後も院内歯科において医科歯科連携を充実させ,患者への歯科保健指導や口腔衛生管理を行うことが,病院歯科衛生士として重要な役割と考える。
○猪野奈津美1) 時数智子1) 長沼希保1) 蘇 承翊1) 西 裕美2) 小西 勝3) 柿本直也3) 中岡美由紀1) 河口浩之2) 太田耕司4)
1)広島大学病院診療支援部歯科部門
2)広島大学病院歯系総合診療科口腔総合診療科
3)広島大学大学院医系科学研究科歯科放射線学
4)広島大学大学院医系科学研究科口腔健康科学講座公衆口腔保健学
キーワード 舌癌 組織内照射 放射線療法 周術期等口腔機能管理
【目的】 舌癌に対する組織内照射は根治的治療法の一つとして考えられている。治療期間中は患者自身での口腔衛生管理が困難な環境であるため,専門的な口腔衛生管理が不可欠となる。今回,舌癌の高線量率組織内照射患者に対して周術期等口腔機能管理を経験したため報告する。
【症例の概要】 71歳男性。2022年9月に嚥下時違和感を自覚,10月に抜歯目的に近在歯科受診時,舌縁部潰瘍を指摘され,紹介元にて舌癌の診断を得た。12月術前化学療法第1クール終了時,手術に対する恐怖心から小線源治療の希望があり,1月に当院を紹介受診した。治療前より口腔機能管理目的に歯科衛生士が介入した。
【経過および考察】 初回介入時には治療に伴う口腔有害事象についての説明および,感染予防を目的に口腔衛生管理を行った。治療初日,舌に埋入留置された7本のアプリケーターによる疼痛と舌腫脹により,血液混じりの流涎が継続し,患者のQOL,ADLは著しく低下した。照射期間中は経口摂取不可であり,口腔内の自浄作用は低下した。舌の運動機能低下に伴う誤嚥リスクも高く,口腔衛生管理を週2回実施した。連続した8日間に計60Gyの治療が行われたが,12日間の入院期間中に口腔粘膜炎の発症は認めなかった。退院前は機械的歯面清掃を含む口腔衛生管理と粘膜炎発症時の表面麻酔剤を用いた疼痛コントロール,ワンタフトブラシを用いたセルフケア方法について指導した。治療2週間後,外来受診時にはGrade2(CTCAEv3.0)相当の粘膜炎を認めたが食事摂取は維持されていた。
【結論】 高線量率組織内照射治療において,歯科衛生士の専門的口腔衛生管理は必須であり,患者の精神面への支援も求められる。治療後は晩期障害のリスクもあるため,地域歯科医院と連携した長期的な口腔管理が必要である。
○森岡紗代1) 福田陽子1) 瀬原千織1) 谷脇菊栄1) 戸田紗里奈1) 中澤光博2) 多田晋也2) 末松基生2)
1)明和病院 歯科診療支援部
2)明和病院 歯科口腔外科
キーワード 周術期等口腔機能管理 術後肺炎 リスク因子
【目的】 周術期等口腔機能管理は一般に術後合併症の予防として行われており,食道がんや肺がん術後肺炎の抑制効果が報告されている。院内外科系診療科から当科に年間500例以上の管理依頼があるが,マンパワーの問題もあり事前にリスク因子を把握しハイリスク患者にケアを重点化する方法も重要と考える。今回,当科で術前から介入した全身麻酔手術患者を対象に,術後肺炎を生じる術前リスク因子について後方視的に検討した。
【対象および方法】 対象は2018年4月~2021年3月までに術後肺炎を発症した21名(以下,発症群)と,2021年4月~2022年3月までの術後肺炎非発症患者442名(以下,非発症群)とした。調査項目は年齢・性別・原疾患・術前の口腔環境スコア・喫煙歴の有無・術前握力・術前呼吸機能障害の有無・術後在院日数とし,これらについて2群間の統計学的解析を実施した。発症群に関してはさらに軽快退院群と死亡退院群に分けて検討を行った(承認番号2023-1)。
【結果および考察】 発症群21名はすべて悪性疾患であった。単変量解析においては高齢・男性・低握力が有意なリスク因子として挙げられた。これらに喫煙歴と食道がんの因子を加えて多変量解析を行ったところ,男性・低握力・食道がんの3項目が有意なリスク因子であることが示唆された。また術後在院日数は発症群が有意に長く,さらに発症群の死亡リスクには術前呼吸機能障害と術後自己排痰不可能の2項目が関与していた。以上の結果よりフレイルやサルコペニアが術後肺炎発症およびその重症化に影響している可能性が考えられた。
【結論】 周術期における口腔健康管理開始時には口腔内状況と併せてフレイル等の患者特性を把握し,ハイリスク患者に重点的なケアを実施して術後合併症の予防に繋げることが肝要であると考えられた。
○中村みどり 酒井翔悟
ケンゾー歯科医院酒井
キーワード 精神発達遅滞 経口摂取支援 口腔衛生管理 訪問歯科衛生士 向精神病薬
【目的】 精神科病院に入院している患者の多くは自己管理の低下や向精神病薬の副作用により口腔内環境は不良な状態にあり口腔衛生の支援が必要とされている。今回,誤嚥性肺炎を繰り返し経管栄養となった精神発達遅滞患者に対して,口腔衛生管理,経口摂取支援へ取り組んだ一症例を報告する。
【症例の概要】 27歳男性。現病歴は難治性てんかん,自閉症スペクトラム症,精神発達遅滞。肺炎をきたし急性期病院入院。誤嚥性肺炎を繰り返し経口摂取が進まず,胃瘻造設となり精神科病院へ転入院。経口摂取が出来ないかと訪問歯科診療の依頼があった。なお,本症例の発表に際し,保護者の同意を文書で得た。
【経過および考察】 飲み込みを確認する嚥下内視鏡検査(以下:VE)を施行した結果,安静時の唾液や分泌物を慢性的に誤嚥をしている状態を認めた。歯科医師の指示のもと,看護師による飴なめ,月4回訪問歯科衛生士による口腔衛生管理,喀痰や咳嗽訓練などの間接訓練,少量のゼリーを用いた直接訓練を実施した。頻回に痰吸引が必要な状況であったが,徐々に改善し歯磨きも見守りで実施できるようになった。2回目VEの結果,誤嚥なく唾液貯留が減少しており,お楽しみレベルでペースト食摂取を開始し,10口から20口と徐々に摂取量を増やした。介入から4カ月後,3回目VEでは,粒粥・きざみ食が安全に摂取でき,昼食のみ経口摂取可能となった。介入時:Alb 3.8g/dL,BMI 18.4,4カ月後:Alb 4.1g/dL,BMI 19.2と栄養状態の改善がみられた。
【結論】 訪問歯科衛生士が継続的に介入することによって,摂食嚥下機能の維持・向上,口から食べる喜びに寄与することができたと考える。今後は多職種と連携を図りながら,口から食べる楽しみを継続できるよう目指していきたいと考える。
○西山由夏1) 植田紘貴2) 髙橋麻里子1) 小倉早妃1) 三浦留美1) 谷崎沙織3) 上岡 寛2)
1)岡山大学病院 医療技術部 歯科衛生士室
2)岡山大学学術研究院 医歯薬学域 歯科矯正学分野
3)岡山大学病院 矯正歯科
キーワード 口腔衛生管理 口腔衛生習慣 アペール症候群
【目的】 アペール症候群は頭蓋・顔面骨縫合早期癒合をきたす先天性疾患で,主な症状である上顎骨の劣成長や合指などの影響で自力での清掃に困難を伴う。そのため,口腔衛生習慣の確立には積極的な介入をきっかけとした患者自身の行動変容を要する。アペール症候群患者の口腔衛生管理の確立を目指した1症例について報告する。
【症例の概要】 31歳男性。アペール症候群に由来する上顎後退,下顎劣成長のため外科的矯正治療を受け,保定中であった。両肘の関節の骨性固定や合指のため手指の巧緻性が低く,口腔衛生習慣は週3回であった。そのため口腔衛生管理開始前の口腔衛生状態は,PCR74%,PPD≧4mm23%,BOP45%と不良であった。さらに上顎前歯部唇側を中心に脱灰歯が散見された。
【経過および考察】 脱灰歯の進行抑制と口腔衛生習慣の確立を目指し,口腔衛生管理を開始した。両肘や手指の運動機能不全を考慮した電動歯ブラシの当て方を指導し,口腔衛生習慣の確立のためチェックシートを作成,患者自身による記入を指示した。しかし介入6カ月後の時点で,歯磨きの頻度や口腔衛生状態に改善が見られなかった。そこで,患者の行動変容を促すため,口腔衛生管理の頻度を増やした。その結果,通院に対して十分に理解を示し,定期的な通院を継続することができた。介入1年半後にはPPD≧4mm4%,BOP24%と歯周状態に改善が見られ,脱灰歯も進行せず経過した。歯垢の付着量は増減があり,今後は安定した口腔衛生習慣に繋がる動機付けが必要であると考える。
【結果】 アペール症候群患者の合指に伴う障害を考慮し,行動変容を目的に介入頻度を増やした結果,患者自身の口腔衛生に対する行動変容が認められ,脱灰歯の進行抑制や,歯周状態の改善に繋がったと考えられた。
○髙橋弥生 伊藤さつき 植岡 綾 眞鍋美穂 星川明子 大西明日香 井下祐里 戸田知美
三豊総合病院
キーワード 自閉症スペクトラム障害児 口腔健康管理 行動変容
【目的】 自閉症スペクトラム障害児(以下ASD児)は社会的相互関係の障害,コミュニケーション障害などから歯科治療への対応は非常に困難とされている。そこで,今回当院で口腔健康管理中であるASD児において,障害特性に配慮した個別対応を実施し継続的な口腔健康管理を行った1症例を経験したので報告する。なお本症例発表に際し,患者および家族の承諾を得ており,三豊総合病院倫理審査委員会の承認を得て実施した。(臨床研究番号:19CR01‒112)
【症例の概要】 ASDの15歳女児。近医では5人で抑制し歯科治療をしていたが困難となり,う蝕処置を主訴に来院した。少数の発語あり,踠き拒否をする。当院では個別の心理学的,生理学的,薬理学的アプローチなど行動調整を組み合わせるとともに,保護者には口腔に対する関心を高める支援をした。また,当院で歯科治療困難時には,高次医療機関と連携し全身麻酔下で歯科処置を行った。
【経過および考察】 ASD児のお気に入りの写真やスリーパーなどで環境作りを行い,絵カードによるスケジュールの構造化や数字ではなく名前のカウント法を用い,言葉で褒めるだけでなく,正の強化因子として好きなグローブを与え心理学的アプローチを行った。また,歯科治療時,レストレーナーによる体動コントロールや精神鎮静薬の前投与で薬理学的アプローチなど様々な行動調整が非常に有効であった。歯科治療困難時には,全身麻酔下で行える専門施設との連携が不可欠であり,地域での障害者歯科における連携が重要であった。
【結語】 障害者歯科治療は,個々の発達レベルや行動を十分に理解し,できるだけ適応できる環境で,きめ細やかな個別対応が求められる。また,成長の過程や環境の変化が生じる中で,ASD児の口腔健康管理を継続することが大切である。
○黒田典代 鴻池智恵 中嶋愛里 一二三菜々子 山林真優 藤井真子
公益財団法人天理よろづ相談所病院 歯科・口腔外科
キーワード 新人教育 離職防止 ガイドライン 教育プログラム
【目的】 近年,少子高齢化が進み人口減少への変革期を迎えており人材確保という視点から新人教育は重要である。今回,研修指導者・臨床実地指導者等講習会で得た「新人歯科衛生士技術支援共通ガイドライン」の教育方法を新人採用者の教育モデルとしたので報告する。
【対象および方法】 対象は2020年4月~2022年4月に採用した歯科衛生士4名。方法はガイドラインの育成プラン大項目の業務内容105項目より,病院歯科として78項目を選択し使用した。指導者が項目達成を星取図に記入して業務の計画的な履修を目指した。育成計画時期と履修状況,質問や不安は面談して確認した。その情報は全員で共有し,6か月かけて新人教育を修了とした。後日,質問紙調査を行い今回の取り組みを振り返った(承認番号1303)。
【結果および考察】 調査結果から育成プランについて,「達成すべき項目が一目でわかるので次の目標を立てられた」,「項目が多くて不安だった(新人)」,「個人の未履修の内容が把握できるので該当する症例があるとすぐ指導できた」,「星取図が小さく見辛かった」,「病院歯科の外科処置等,専門的な内容が少なかった(指導者)」という回答を得た。実症例が必要な項目は履修時期の計画が難しいと考察された。育成プランで個人の業務履修状況を全員が早期に把握,指導できた事は忙しい現場で有用であった。「この新人教育を通して,先輩全員に指導して貰えた」,「指導内容に漏れがなく,同期と差がなく成長できる事が嬉しかった」という感想を得た。
【結論】 ガイドラインをモデルにした新人教育で,育成プランを使用した計画的業務履修は一定の効果を得られた。今回の調査結果を基に,新人が早期に仕事への不安を乗り越え自己研鑽に励めるような育成プラン,新人教育のさらなる内容改善に取り組んでいきたい。
○髙田橋美幸1) 頭山高子1) 山本一世1,2)
1)大阪歯科大学歯科衛生士研修センター
2)大阪歯科大学歯科保存学講座
キーワード 歯科衛生士復職支援・離職防止 生涯研修 自己学習研修 口腔内スキャナー 歯科英語実践講座
【目的】 2018年度に厚生労働省からの委託で開設した当センターは5年を経過し,延べ171名の受講生を輩出した。委託の終了に伴い2023年度からは大学独自の事業として,従来の事業(復職支援・離職防止)を継承しつつ,生涯研修を視野に入れ,更なる発展的事業展開を行うことになったので報告する。
【概要および方法】 これまでの専門基礎研修(12コースから選択)と臨床研修(9診療科から選択)の研修時間を凝縮し,より学びやすくした。修了証書発行の基準は専門基礎研修6回以上・臨床研修6日以上とし,日本歯科衛生士会生涯研修の取得も可能である。そして新たに,一年を通じていつでも自由に研修場所として活用できるよう自己学習研修を設けることにした。自らが決めた研修内容に沿ってスペースを借り,必要な器材や動画の媒体などは無料で借用できるシステムとした。
従来行ってきたフォローアップ研修や公開セミナーは引き続き開催予定とし,口腔内スキャナーの講習会や歯科英語実践講座の企画も加えた。さらに歯科衛生士会,歯科衛生士養成校,歯科医院,スタディグループ,歯科関連の企業などのハンズオンセミナーの会場として開放することにした。
【経過および考察】 新たな運営内容についてのリーフレットは,近畿2府4県の歯科衛生士会,歯科衛生士養成校,歯科医師会(大阪府のみ56支部)に郵送した。当校歯学部同窓会,医療保健学部同窓会,大阪府歯科衛生士会の会報発送時に同封を依頼した。加えて,当センター研修生・2022年度卒業の医療保健学部生を対象に新システムの説明会を行い,会員登録を勧めると共に周知を促した。
【結論】 会員登録者が研修の場のみならず,情報交換の場としても本センターを活用し,さらに活躍の幅を広げていけるような運用を目指したいと考えている。
○江﨑ひろみ 宮澤絢子 高橋由希子
神戸常盤大学保健科学部口腔保健学科
キーワード 歯科衛生学生 臨地実習 必要と感じる歯科衛生技術
【目的】 本研究の目的は,臨地実習を経験した学生の診療場面で足りないと感じた診療補助技術に着目し,学生が実習で必要と感じる技術について明らかにし,今後の技術教育への具体的な示唆を得ることである。
【方法】 3年課程の2年次実習を終えた学生75名を対象に,「実習を経験して,これから学ぶべきこと」について,10の気づきを記した。診療補助技術に関連する内容227件を抽出し,KHCoderを用いて頻出語分析と共起ネットワーク分析を行った。質的記述的分析は,記述データを精読し,研究者の意見が一致するまで繰り返し検討し,真実性の確保に努めた。対象に匿名性の保持,成績評価など不利益がない等を口頭で説明した。
【結果・考察】 出現頻度の多い順に「治療,器具器材,清潔不潔,バキューム,患者,理解」などの言葉が抽出された。質的記述的分析では,28サブカテゴリ─,12《カテゴリー》を抽出した。学生が必要と感じる技術には,《治療方法,治療の手順と留意点を理解》し,《器具・器材・歯科材料・薬剤の正しい知識》をもとに《治療に必要な器具・器材・材料の準備》をする,《清潔不潔を理解し行動する》,《患者に配慮した適切なバキューム操作》,《術者目線のライティング》,《患者負担を考え正確な機械的歯面清掃》,《患者に応じたブラッシング指導》,《適切なセメント・印象材練和と正確な印象採得》,《正確なX線撮影方法と情報の理解》,《正確な口腔内写真撮影方法と情報の理解》,《新たな技術の練習》があった。学生は,正確な基礎知識,患者の個別性を考える,感染対策技術の確立といった実践的課題を明確にできたと考える。
【結論】 学生が捉えた実践的課題を解決すべく,臨床実践力を育成するためのシミュレーション教育の充実を図っていく。
○古賀 恵 畠中能子 花谷早希子 畑田晶子 新井麻実 脇坂 聡 木村重信
関西女子短期大学歯科衛生学科
キーワード 社会人基礎力 卒業生 自己評価
【目的】 歯科衛生士は職場や地域社会等で多様な人々と仕事を行うことから,知識・技術の習得のみならず,経済産業省の提唱する社会人基礎力を身に付けることが必要となる。社会人基礎力は,3つの能力(「前に踏み出す力」,「考え抜く力」,「チームで働く力」)と12の能力要素から把握できることが明らかにされている。本研究では,卒業生(卒後1~5年)本人による社会人基礎力に関するこれらの自己評価を実施し,在学時と卒後との調査結果を比較し,その変化を検討した。
【対象および方法】 対象は,2017年度から2020年度の某短期大学歯科衛生学科卒業生の在学時と卒後の両方ともに回答が得られた77名であった。方法は,在学時の社会人基礎力に関する調査結果と,卒後に同様の調査を,Google Formsを用いたWeb調査で実施し,その変化を比較検討した。3つの能力と12の能力要素については,Wilcoxonの符号付き順位検定で検討した。なお本研究は関西福祉科学大学研究倫理審査委員会の承認(承認番号18‒21)を受けて行った。
【結果および考察】 卒後の「前に踏み出す力」は5段階評価の平均値で3.41(在学時4.03),「考え抜く力」は3.31(在学時3.71),「チームで働く力」は3.58(在学時4.07)でいずれの能力も在学時の調査結果と比較して,有意に低値を示した(いずれもp<0.05)。以上から,在学時の学生教育で社会人基礎力が向上したとしても,継続的な介入がなければ社会人基礎力は低下する可能性が示唆された。
【結論】 今後歯科衛生士の社会人基礎力の向上には,卒後においても積極的に介入する必要があると考えられた。
○花谷早希子 大岡知子 吉田理紗 新井麻実 古賀 恵 畑田晶子 細見 環 木村重信
関西女子短期大学歯科衛生学科
キーワード 歯科衛生学生 学外臨床実習 診療補助業務 身体疲労
【目的】 我々は,これまでに歯科衛生学生(以下,DH学生)の学外臨床実習(病院実習)で,特に姿勢保持,腰部捻転,躯幹前傾,中腰作業の姿勢をとる頻度が高い場合に身体疲労の有訴率が高くなること,また上記作業姿勢が頸肩腕障害の発症につながる可能性を示唆した。本研究では,DH学生の身体疲労部位と有訴率の関連性を明らかにすると共に,臨床実習前後での有訴率の変化について質問紙調査を行った。
【対象および方法】 対象は,令和4年度臨床実習に参加したDH学生のうち同意の得られた79名とした。身体疲労とその部位についての調査は,臨床実習前と3カ月の臨床実習直後に行った。臨床実習直後の調査では,作業姿勢を含む診療補助業務の頻度とそれに伴う身体疲労の有無についても調べた。本研究は,関西福祉科学大学研究倫理審査委員会の承認(承認番号18‒06)を得て実施した。
【結果および考察】 DH学生の身体疲労の認められる部位としては,肩,頸,腰の有訴率が高かったが,臨床実習前後での変化としては,足首での有訴率が臨床実習後に有意に上昇していた(p<0.01)手首・手指,背中,腰,膝でも臨床実習後に有訴率が上昇する傾向が観察されたが,頸,肩,肘といった頸肩腕障害に直接つながる部位では,臨床実習後の有訴率の明確な上昇は観察されなかった。また,作業中に苦痛を訴えていた学生の多く(85.7-100%)が臨床実習期間中その作業を高頻度で行っていたと回答したことから,特に頸,背中,腰,膝,足首では,身体疲労を感じる作業を繰り返し行うことにより持続的な身体疲労へと移行していくことが示唆された。
【結論】 DH学生の臨床実習では,特徴ある業務や不自然な作業姿勢が繰り返されるため,持続的な身体疲労が誘導される可能性が明らかとなった。
○倉脇由布子1) 相見礼子1) 三隅恵子1) 西村瑠美1,2) 松本厚枝1,2) 内藤真理子1,2) 竹本俊伸1,3)
1)広島大学歯学部歯科衛生士教育研修センター
2)広島大学大学院医系科学研究科口腔保健疫学
3)広島大学大学院医系科学研究科口腔保健管理学
キーワード 歯科衛生士 職業性ストレス 研修
【目的】 厚生労働省歯科衛生士復職支援・離職防止等推進事業による共通ガイドラインに基づいた研修プログラムの介入効果を検証することを目的に,広島大学歯学部歯科衛生士教育研修センターの研修(以下:本研修)を受講した研修生を対象に,研修前後の職業性ストレスと自己評価について検討した。
【対象および方法】 2019年から2021年に本研修を受講した105名に対し,研修開始時と修了直後,修了3カ月後,修了1年後に,自記式質問票への回答を得た。そのうち研修開始時から修了1年後のすべての時点で回答が得ることができ,かつ継続して勤務していた歯科衛生士43名を研究対象とした。職業性ストレスは職業性ストレス簡易調査票を用い,「知識」「技術」「意欲」「自己研鑽力」は10段階で自己評価した。統計解析は,フリードマン検定とボンフェローニ法を用いた。本研究は,広島大学疫学研究倫理審査委員会の承認(E-1868)を得て行った。
【結果および考察】 対象者の平均年齢は38±12歳で,勤務先は歯科診療所(74%)が最も多かった。職業性ストレスは,開始時と修了直後を比較すると「不安感」(p=0.012)が減少していた。一方で,開始時と修了1年後を比較すると,「イライラ感」(p=0.007),「抑うつ」(p=0.018)が増加していた。研修修了直後,修了3か月後,修了1年後の「知識」や「技術」のレベルは,研修前より有意に上昇していた。「意欲」レベルは修了直後が最も高く,1年後には低下していた。
【結論】 研修前後で自己評価による知識や技術レベルは有意に上昇し,修了1年後まで継続した。一方で,修了1年後の意欲の低下や職業性ストレスの増加が認められた。技術修練だけでなく,継続的な心理面のサポートの必要性が示唆された。
○宮澤絢子 江﨑ひろみ 高橋由希子
神戸常盤大学保健科学部 口腔保健学科
キーワード 歯科衛生学生 臨地実習 スタッフ間の連携力 コミュニケーションスキル
【目的】 歯科診療におけるスタッフ間の連携力は不可欠である。本研究は,学生が臨床場面で足りないと感じたコミュニケーションスキルに着目し,臨床場面におけるスタッフ間の連携力を高めるスキルについて明らかにし,実践力向上のための教育への具体的な示唆を得ることを目的とした。
【対象および方法】 対象は3年課程の歯科衛生学生75名とし,2年次臨地実習を終えて「実習を経験して,これから学ぶべきこと」について各々が10の気づきを記した。実習中のスタッフ間連携に関連する内容83件を抽出し,KHCoderを用いて頻出語分析と共起ネットワーク分析を行った。さらに質的記述的分析では,記述データを精読し,研究者の意見が一致するまで繰り返し検討し,真実性の確保に努めた。
【結果および考察】 出現頻度の多い順に「行動,挨拶,時間,実習,自分,質問,身だしなみ」などの言葉が抽出された。質的記述的分析では,14サブカテゴリー,5《カテゴリー》を抽出した。学生は,挨拶,身だしなみ,言葉使いといった《相手を尊重した基本的なコミュニケーションを行う》ことの重要性を認識し,スタッフ間連携には《目的意識を行動・態度で示す》,《周囲を観察して状況を判断する》,《自己の判断・行動を明確に伝える》,《時間感覚を共有して行動する》といったコミュニケーションスキルの必要性を学んでいた。
【結論】 スタッフ間の連携力には,学生の判断する・伝達する・行動で示すといった伝える力が求められる。我々は,学生の伝える力の未熟さやジェネレーションギャップを理解しつつ,臨地実習指導者と密に連携し教育することが求められる。
○加藤日南子1) 稲垣幸司1,2) 大矢幸慧1) 上田祐子1) 後藤君江1) 原山裕子1) 犬飼順子1) 加藤彰子3) 林 健一4) 石野雅一4)
1)愛知学院大学短期大学部専攻科(口腔保健学専攻)
2)愛知学院大学歯学部歯周病学講座
3)愛知学院大学歯学部口腔解剖学講座
4)GOKO映像機器株式会社
キーワード 口呼吸 口唇閉鎖力 舌圧 毛細血管血流速度 学生
【目的】 口呼吸と口腔内所見の関係を解明する一助として,口呼吸関連要因,歯肉炎症,口唇閉鎖力,舌圧および毛細血管血流速度を検討した。
【対象および方法】 歯科衛生学科女子学生36名を対象に,口呼吸関連要因に関するweb質問票調査,上下顎前歯部の歯肉炎症,口唇閉鎖力(歯科用口唇筋力固定装置りっぷるくん®),舌圧(JMS 舌圧測定器)および指先爪郭部,上下口唇,上下顎前歯唇側歯肉部の毛細血管血流速度(卓上・ハンディ兼用型血流スコープ GOKO Bscan-Z)を評価した。なお,本研究は愛知学院大学短期大学部倫理委員会(承認番号22-006)の承認を得て行った。
【結果】 口呼吸自覚者17名(47.2%)に対して,口呼吸非自覚者19名(52.8%)となった。また,口呼吸に関する質問項目の因子分解から,「鼻炎と咀嚼習慣」と「口唇の厚さ」,「口唇の翻転と入眠潜時」と「口唇閉鎖不全」,それぞれに有意差が認められた(p<0.05)。平均値は,口唇閉鎖力7.2 ± 2.1N,舌圧36.8 ± 6.9kPa,舌圧基準値30kPa未満4名(11.1%)であった。口呼吸自覚別の口唇閉鎖力は,自覚者(5.9 ± 1.8N)と比べて,非自覚者(7.4 ± 2.3N)の方が,高値となった(p<0.05)。なお,毛細血管血流速度に有意な差異はなかった。
【結論】 口呼吸は,鼻疾患,咀嚼習慣,口唇の厚さ,口唇の翻転,入眠潜時および口唇閉鎖不全等の複数の要因が影響し,口唇閉鎖力の低下に関わることが示唆された。そのため,口腔保健の専門家である歯科衛生士として,歯周病増悪因子の1つである口呼吸に関連する口腔悪習癖に留意して,患者の口腔健康管理を行う必要があると思われた。
○中野瑠稀菜1) 稲垣幸司1,2) 増田麻里1) 上田祐子1) 後藤君江1) 原山裕子1) 犬飼順子1) 藤井 稔3)
1)愛知学院大学短期大学部専攻科(口腔保健学専攻)
2)愛知学院大学歯学部歯周病学講座
3)株式会社コスミックコーポレーション
キーワード 加熱式タバコ 社会的ニコチン依存度 受動喫煙寛容度 受動喫煙 尿中コチニン
【目的】 歯科衛生学生の喫煙,受動喫煙状況および加熱式タバコ(heated tobacco products,HTP)に対する認識と使用実態,受動喫煙曝露指標である尿中コチニン濃度,口唇と歯肉のメラニン色素沈着,加濃式社会的ニコチン依存度(The Kano Test for Social Nicotine Dependence,KTSND)およびHTP認識度調査票を用いて調査した。
【対象および方法】 A短期大学部女子学生211名(2021年度1年生104名,2022年度1年生107名)を対象に,2021年度4月時,12月時,2022年度4月時および7月時に,web質問票調査を実施した。また,2021年度1年生の12月時に尿中コチニン濃度を測定した。なお,本研究は,愛知学院大学短期大学部倫理委員会(承認番号22‒007)の承認を得て行った。
【結果】 紙巻きタバコ喫煙者は,2022年度4月の2年生時1.0%で,2022年度4月時1年生0.9%であった。また,他種のタバコ喫煙者はいなかったが,2022年度にかけて試し喫煙者アイコス1.9%,グロー1.0%,プルーム・テック1.0%となった。さらに,受動喫煙曝露別KTSND中央値は,2021年4月時1年生非曝露群,曝露群,2022年度4月時1年生,2年生曝露群,非曝露群の順に高くなった。次に,尿中コチニン濃度高値者(5.0 ng/mlCre以上)5名とも非喫煙者で,KTSND得点の中央値は高く,歯肉メラニン色素沈着は,5名中3名(孤立性1名,連続性2名)に見られ,受動喫煙曝露2名であった。
【結論】 学生時からタバコに関する正しい認識をもつことが,歯科衛生士として積極的に禁煙支援に関わっていくために重要であると考えた。
○髙村友莉1) 池田亜紀子2) 小倉千幸2) 池田利恵2) 関口洋子2)
1)日本医科大学付属病院
2)日本歯科大学東京短期大学歯科衛生学科
キーワード 口腔粘膜疾患 口腔がん 意識調査 非医療従事者
【目的】 現在,口腔がんの罹患率や死亡率は増加傾向であり,口腔がんに対する国民の認知度向上が必要だと言われている。しかし,非医療従事者の口腔がんの意識や認知度,口腔がんの意識と定期歯科検診の有無との関連は明らかになっていない。本研究の目的は,40歳以上の非医療従事者を対象に,口腔がんを含む口腔粘膜疾患に関する意識や知識を明らかにすることである。また,口腔粘膜疾患の意識の有無と,口腔粘膜疾患に対する行動との関連を検討した。
【対象および方法】 対象は40歳以上の非医療従事者105名とし,口腔粘膜疾患の意識や知識などを無記名自記式質問票で調査した(東短倫‒285)。結果はχ2検定とFisherの正確確率検定で分析した。
【結果および考察】 有効回答数97名(有効回答率92.4%),平均年齢58.6±11.1歳であった。聞いたことがある口腔粘膜疾患名は「口内炎」97名(100.0%)が最も多く,次いで「口腔がん」85名(87.6%),「口腔カンジダ症」28名(28.9%),「扁平苔癬」3名(3.1%),「白板症」2名(2.1%),「紅板症」0名(0.0%)であった。定期歯科検診の受診の有無と,口腔粘膜疾患の意識の有無には関連が認められた(p<0.05)。定期歯科検診を受診する者は,受診しない者に比べ,歯科医師や歯科衛生士から,口腔粘膜疾患の話を聞く機会が増えることが考えられる。そのため,定期歯科検診の受診を推進することで,非医療従事者の口腔粘膜疾患の意識を高められると推測した。
【結論】 「口内炎」という疾患名はすべての者が認知していたが,口腔潜在的悪性疾患の疾患名を認知している者は少ないことが明らかとなった。定期歯科検診を受診する者は,口腔粘膜疾患の意識が高い傾向が示された。
○田野優香 古賀馨子 三重生来美 中阿地 薫 髙木可菜 山本まりこ 山本博充
医療法人 山本歯科口腔外科医院
キーワード 顎関節症 運動療法 悪習癖 クリック音
【目的】 顎関節症の治療において,運動療法は重要な保存療法の一つである。生体に運動刺激を加えることにより,筋緊張や攣縮による組織循環不全の改善,筋肉内に蓄積した疲労物質や炎症物質を排出あるいは分解させるとされている。今回われわれは,疼痛緩和や機能障害の改善,また効果の維持を目的に,歯科衛生士による運動療法の指導を行ったところ,症状の改善がみられたため,その概要について報告する。
【概要および方法】 運動療法が必要と診断された顎関節症症例について,歯科医師指示のもと,患者の病態に合わせた運動療法の指導を行い,あわせて悪習癖の是正指導も行った。その際,複数の歯科衛生士による指導のばらつきを防ぎ,情報共有を円滑に行うため,記録用紙を活用しその経過を記録した。
【経過および考察】 歯科衛生士による運動療法の指導および悪習癖是正指導を行った結果,一定期間の全例において症状の改善を認めた。運動療法は,症状の改善を図ることはもちろん,顎運動による疼痛やクリック音の恐怖心をなくすために,患者自身が病状を把握し,その必要性を理解してもらうことが肝要である。これを歯科医師だけで限られた時間内で行うことは,困難を伴うことも多い。そこで,患者に寄り添える立場の歯科衛生士が,運動療法をはじめ,悪習癖の是正の支援や患者への啓蒙を行い,歯科医師と連携して顎関節症の治療に取り組むことは有用であると思われた。運動療法の指導は,ブラッシング指導同様個々の症例に応じたきめ細かな対応が必要である。患者の病態や性格を理解し,それに応じた的確な指導を行うことが治療効果をあげる上で重要である。
【結論】 歯科衛生士が専門性を発揮し,顎関節症の治療に介入していくことは,症状の改善や再発の予防として重要であることが示唆された。
○荘司 琴1) 青山典生2) 渡邊真由美1) 藤﨑みのり1) 井野 智3) 辻上博美1)
1)神奈川歯科大学 歯科メンテナンス学分野
2)神奈川歯科大学 歯周病学分野
3)神奈川歯科大学 有床義歯補綴学分野
キーワード 口腔清掃用品 院内認定制度 教育効果 意識の向上
【目的】 口腔清掃は口腔疾患の治療および予防の基本となるものである。口腔清掃用品は歯ブラシだけでも多くの種類が販売されており,それぞれ特徴が異なる。患者一人一人に合わせた口腔清掃用品を提案するには多くの知識が必要である一方,スタッフの知識には個人差がみられる。神奈川歯科大学附属病院では2020年から口腔清掃用品への一定の理解を有する職員に対し,「ハブラシコンセイエ®」の認定を開始し,認定取得者に向けて口腔衛生用品に関する定期的な講習会を開催している。この院内認定制度の取得により病院職員の意識の変化を評価する目的で,本調査を実施した。
【対象および方法】 2021年までに本学附属病院ハブラシコンセイエ®登用試験を受けて合格した歯科衛生士38名を含む病院職員を対象とし,2022年10月にオンライン無記名アンケートにて口腔清掃用品に関する意識の変化および,知識の向上などを調査した。なお,本研究は倫理審査の必要はないことを,神奈川歯科大学研究倫理審査委員会に確認済みである。
【結果および考察】 ハブラシコンセイエ®認定者80名から回答を得た(回答率87%)。本認定により口腔清掃用品への意識が向上したという回答は全体の83%,自身の知識の向上につながったという回答が85%,本制度は病院職員に対する教育効果があるという回答が63%認められた。口腔清掃用品への意識が向上したという回答は,歯科衛生士では10年以下の経験年数の者に多く,歯科医師とは分布が異なっていた。
【結論】 ハブラシコンセイエ®の認定にともない,病院職員の口腔清掃用品に対する意識の向上が認められた。歯科衛生士と歯科医師では経験年数で意識の変化に違いがみられた。本制度により,職員の知識や意欲の増進につながったと考えられる。
○大森 彩1) 平尾直美1) 里 美香1) 牧野亜紀子1) 白石千秋2,3) 宮田佳之3) 安藝敬生3) 木谷貴嘉3) 山下和範3) 鵜飼 孝1,2)
1)長崎大学病院医療技術部歯科衛生室
2)長崎大学病院口腔管理センター
3)長崎大学病院災害医療支援室
キーワード 災害研修 災害医療 業務調整員 COVID-19 災害拠点病院
【目的】 以前から災害医療に興味があり,災害拠点病院に勤務する歯科衛生士として,JDAT(日本災害歯科支援チーム)の一員となったが,災害派遣の経験はなく,災害研修に参加したこともなかった。COVID-19第6波の際に,当院のトリアージ外来診療補助業務に関わったことをきっかけとして,当院独自の災害研修を歯科衛生士として初めて受講したのでその内容について報告する。
【概要および方法】 2022年7月より2023年3月まで,月1回2時間全9回にわたる長崎大学病院独自の災害対策本部支援要員養成研修(災害医療総論,通信確保と情報共有のスキル,机上訓練,演習)を受講した。
【経過および考察】 2022年2月にCOVID-19第6波の際に外来診療が制限され,歯科部門がトリアージ外来診療補助業務に協力した際に,歯科衛生士も参加した。その後,院内の災害研修を知り,受講を決意した。当院では院内の災害対応部署として災害医療支援室が設置され,病院の災害対応力を向上させるため,業務調整員を育成する研修や災害訓練を行っている。本研修を通して,日本および当院の災害医療体制について学び,通信確保や情報共有に関するスキルを習得し,ロジスティクスの重要性を理解できた。また多職種とのグループワークや演習を通して,歯科以外の職員と顔の見える関係を築くことができたと思う。また,本研修と並行して院内災害訓練に参加し,日本歯科衛生士会の災害歯科保健歯科衛生士に登録した。
【結論】 歯科衛生士として,被災地での歯科保健医療活動や,院内で災害医療支援を行うために,災害研修に参加し,災害医療の知識や業務調整員としてのスキルを習得することは必要だと考える。
○平尾直美1) 里 美香1) 牧野亜紀子1) 東山政子1) 西山由美1) 貫間知美1) 末永しずえ1) 大森 彩1) 小出琴美1) 鵜飼 孝1,2)
1)長崎大学病院医療技術部歯科衛生室
2)長崎大学病院口腔管理センター
キーワード 歯科衛生士 ルーブリック 目標設定 テキストマイニング
【目的】 長崎大学病院歯科衛生室では,2022年度より表を用いて測定するルーブリック評価を学習の達成度評価に取り入れた。そこで今回各歯科衛生士が設定した目標やその評価項目が歯科衛生士としての経験の差によってどのような違いがあるのか検討することを目的とした。
【概要および方法】 対象者の長崎大学病院に勤務する歯科衛生士17名は,2022年4月に1年の目標を立て,その達成度を評価するためにルーブリックの評価項目と4段階の評価基準を設定した。そして作成したルーブリック表を用いて5月から翌年3月まで学習者自身が自己評価を行い,3月に評価結果を提出した。評価結果を提出したのは15名であった。結果解析に際し,評価項目を知識,技術,態度,コミュニケーションとその他の5つに分類した。また,KH Coder(テキストマイニングのためのフリーソフトウエア)を用いてルーブリック評価項目を分析した。また学会発表への個人データ使用の同意を得た。
【経過および考察】 1番多かった評価項目は知識に関するもので,15名中14名が設定した。2番目に多かったのは態度の9名,3番目はコミュニケーションの7名であった。歯科衛生士経験の短い20歳代の歯科衛生士は2名であったが,どちらも技術についてを評価項目に挙げていた。ルーブリック評価項目をテキスト分析した結果,20歳代の2名ともに,参加,調べる,練習や勉強などのインプットに関するものを挙げており,学会,発表,論文などのアウトプットに関するものは含まれていなかった。
【結論】 ルーブリック評価を用いたことで当院の歯科衛生士がどのような目標や評価項目で研修したか理解できた。また,歯科衛生士としての経験の違いにより自己評価項目の違いがあることが明らかとなった。今後,自己評価の結果に関して検討していくことが必要であると考えられた。
○中村和美 山本智美 森野智子 長谷由紀子 仲井雪絵
静岡県立大学短期大学部
キーワード シミュレーション 実践 歯科衛生ケアプロセス 臨地実習
【目的】 患者のニーズに対応し根拠に基づく歯科衛生を実践するためには,歯科衛生ケアプロセスを臨床に応用する力が必要である。そこで2年次の講義科目にその理論と基本的知識を教授し,3年次の臨地実習において実践に即した応用力の修得を目的として,シミュレーション演習から本格実践まで段階的な学修プログラムを新規に導入した。その教育改善の取り組みについて報告する。
【概要および方法】 対象は,A大学短期大学部歯科衛生学科3年生である。3年次前期の帰校日(週1回)に,症例課題に対し歯科衛生ケアプロセスを応用するシミュレーション演習を少人数制ゼミ形式で2ラウンド実施した。そして3年次後期に実習先から患者の配当を受け,その患者情報を基にアセスメント,歯科衛生診断を行い,歯科衛生計画を立案した。歯科医師・歯科衛生士の指導の下,患者への歯科衛生介入の実施ならびに評価に至る一連の歯科衛生ケアプロセスを実践した。全過程が終了した後,個々に異なる症例経験と学修内容を相互共有,質疑応答によるプレゼンテーション形式の症例発表会を開催した。
【経過および考察】 シミュレーション演習では,症例課題ごとに論理的思考を適用させる方法を個別に学ぶと共に,担当教員や学生間での議論によって批判的吟味が習慣化された。その結果,患者に実践する場面での論理的思考力と省察力が従前の臨地実習と比べて格段に向上した実感を得た。歯科衛生ケアプロセスを実践力に結実させるための教育は容易ではないが,本プログラムが有効である可能性が示唆された。
【結論】 歯科衛生ケアプロセスの理論と実践を結ぶ独自の教育プログラムを構築したところ,その有用性を実感した。今後は学修効果を検証し改良を重ねながら,方略のブラッシュアップをめざす予定である。
○仲主佐恵子 髙澤みどり 那須啓子 榎本亜弥子 植草惠子 菊地 薫 尾谷始子
千葉県歯科衛生士会
キーワード 料理コンクール 健康かみかみ弁当 咀嚼回数ランク
【目的】 千葉県歯科衛生士会では1994年から「かむ子・のびる子・元気な子」料理コンクールを実施している。当初は子供向けの朝,昼,夕いずれかの献立だったが,2005年から「健康かみかみ弁当」を募集し,幼児期からのしっかり噛む習慣づくりの普及を目的とした活動を行なっている。本コンクールが県民の健康づくりに更なる貢献ができるよう,過去の応募作品について,咀嚼とそれに影響する食材や調理法についてまとめた。
【概要および方法】 2016年から2022年の応募者数と年代別の割合を求め,受賞作品の食材と咀嚼については,和洋女子大学,ロッテ,キユーピーが共同で作成した咀嚼回数ランク表を指針に用いて,メニューの食材ごとに「切り方」「調理法」「咀嚼回数ランク」に分け,それぞれの違いを比較した。
【経過および考察】 過去7年の応募数は平均214点で,応募者の属性は高校生,専門学生・大学生および小学生が大半を占めており,若い年代の作品が中心となっている。食材は,蓮根やごぼう等が多く使用されており,実際に咀嚼回数ランクでは高ランクを示している。これらの食材においても,生で使用する場合と茹でた場合ではランクが異なり,同じ食材でも切り方や調理法が異なると咀嚼回数に影響する。受賞作品では,咀嚼ランクが高い食材を使用し,食材の調理法を工夫されていた。また,咀嚼回数を多くするためには,咀嚼回数が少ない食材でも組み合わせや調理法を工夫することで,咀嚼回数が変化することがわかった。
【結論】 咀嚼回数は,同じ食材でも切り方や調理法により変化する。よく噛めるように工夫された食事は,噛む力を育てることに繋がる。今後も本コンクール開催を継続し,歯科衛生士の立場から噛むことの大切さを広く県民にアピールしていきたい。
○大川晃子 池谷志保 望月彩乃 小野美穂 津田晶子 佐塚真理子 森野智子
静岡県歯科衛生士会
キーワード 歯科衛生士会 災害歯科保健活動 災害時アクションカード
【目的】 静岡県は,東海地震を含む南海トラフ地震の発生地域および被災地域に想定されている。静岡県歯科衛生士会では2015年に「災害支援活動の心構え」を作成し,地震を含む大規模災害時での会員の行動,安否確認等を記載しているが,内容が時代にそぐわなくなり新たに作成した。また,被災地での歯科保健活動のアクションカードは様々な様式があるものの,歯科衛生士会として災害時,理事の行動の指標となるものがないため,理事用のアクションカードを作成したので報告する。
【概要および方法】 「災害支援活動の心構え」は日本歯科衛生士会作成「災害歯科保健活動歯科衛生士実践マニュアル2021」を参考に改定した。「災害時理事用アクションカード」は,大規模災害時に理事間で素早く安否確認や災害対策本部立ち上げがスムーズにいくように考え,各理事の行動を示した。
【経過および考察】 「災害支援活動の心構え」の名称を「災害歯科保健活動の心構え」に変更し,基本方針,大規模災害が起こったら,災害発生時の対応,災害救急歯科医療・歯科保健活動の概要,当会ホームページ・掲示板操作のマニュアル,平時の取り組みの7項目の内容をまとめた。会員の災害発生時の対応が簡潔かつ分かりやすくなった。アクションカードは静岡県歯科医師会との対策本部立ち上げなどを加えた。各理事の役割,経時的行動が明確になり災害時に素早く対応できると期待される。
【結論】 冊子作成では大規模災害に対して,歯科衛生士として何ができるのかということが明確になったことは良かった。今後,この冊子を会員に活用してもらえるよう周知していく必要がある。また,理事用アクションカードは本会として理事間の認識の共有のみだけでなく,歯科医師会や行政などと連携を図り災害対応の組織づくりに取り組んでいきたい。
○杉田亜由美 矢野千明 保川ほのか 田坂 樹 佐藤知夏 蓮池祥江
医療法人鉄蕉会 亀田総合病院
キーワード 安全衛生管理 有害物質管理 安全データシート(SDS) GHSマーク
【目的】 職場における安全衛生管理は,企業における重要な責務である。従来まで歯科業界での安全衛生管理は,職業性感染ばく露への対策に重きが置かれていた。しかし,2016年労働安全衛生法の改訂により,化学物質リスクアセスメントが全ての事業所に義務化されたことを受け,当院歯科センターでも有害物質管理に取り組んだので,その概要について報告する。
【概要および方法】 診療室内にある歯科材料や洗剤等の一定の危険有害性のある化学物質を特定するために,リストの作成,安全データシート(SDS)の準備,リスクアセスメント,産業医と保健師による職場環境ラウンドを実施した。リスクアセスメントは,SDSを用いて,GHS分類を参照して有害性とばく露の量を相対的に尺度化し,リスクを見積もる方法で行った。
【経過および考察】 販売業者からSDSを取寄せ,リスクアセスメントを行う事で,有害性について評価できた。有害性の高い製品については,より安全な製品への変更を行う事ができた。また,感染管理において個人防護具の必要性が注目されているが,多くの歯科材料は,GHSマークの対象製品が多く,使用する化学物質によっては個人防護具が必要であることを認識することができた。
【結論】 歯科材料の中には,SDSがない製品もあり,評価できない材料もあった。今後,広く有害物質管理が容易に誰でも取り組める仕組み作りが必要と考える。また,個人防護具は,感染対策として必要性を意識しているものの,化学物質を多く扱う診療科として,より正しい認識が必要と考える。
○畑 尚子1) 鉄森琴美1) 西村瑠美1) 前原朝子1) 松本厚枝1) 三好早苗1,2) 内藤真理子1)
1)広島大学大学院医系科学研究科口腔健康科学科
2)広島県歯科衛生士会
キーワード 在宅歯科保健医療 人材育成プログラム 口腔健康管理
【目的】 令和4年度広島県地域医療介護総合確保事業に採択され,歯科衛生士に対し在宅および施設において口腔健康管理の実践能力を習得するための養育プログラムを構築し,在宅歯科保健医療に従事する歯科衛生士の人材育成を行っている。今回は,本事業の活動実績および本専攻の進めているプログラムについて現況を報告する。
【概要および方法】 研修会は,日本歯科衛生士会の基本研修C「在宅歯科医療の基礎」を参照し,1)口腔機能低下症,2)リスクマネジメント-吸引技術-,3)在宅における口腔衛生管理,4)摂食嚥下機能訓練・評価,5)摂食嚥下障害と栄養管理,6)高齢者心理の理解,7)臨地実習(介護施設)の7つの教育プログラムを構築した。歯科医師,歯科衛生士,看護師による講義および演習を実施した。
【経過および考察】 研修会は,令和5年1月~2月に4回開催し,参加者は延べ81名であり,平均年齢は45.6歳(22~63歳)であった。受講者の35.1%が在宅歯科保健医療に従事しており,現在実践していないが今後実践する予定のある者は29.8%であった。現在在宅歯科保健医療に従事している者の従事年数は,「10~15年」が45.0%で最も多かった。日本歯科衛生士会主催の認定分野A「在宅療養指導・口腔機能管理」の認定資格取得者は25.9%であった。受講後アンケートでは,「理解できた」と回答した者が98.3%であり,全員が「受講して良かった」「プログラム内容を実務に活かしたい」と回答していた。
【結論】 本プログラム受講者の年齢は幅広く,在宅歯科保健医療従事経験には差があったが,高い理解度と満足度を得ることができた。在宅歯科保健医療に従事できる臨床能力習得の一助になるよう,今後も体系的なプログラムを構築し,展開していく予定である。
○大谷まさ美1) 中本勝也1) 平沼章寛2)
1)社会福祉法人邦寿会総合福祉施設 どうみょうじ高殿苑
2)ひらぬま歯科医院
キーワード 介護老人福祉施設 無料歯科検診 口腔ケアスキルチェック 口腔ケアスキルコンテスト 取り組み報告
【目的】 当施設は特別養護老人ホーム,ケアハウス,グループホーム,ショートステイ,デイサービス等8つの事業所を含み,2008年の開設時より歯科衛生士を配置している。2022年度に施設長方針において「予防歯科推進」が掲げられたことにより,協力歯科医の全面的な指導・協力のもとに新たに導入された口腔健康管理に関する取り組みについて報告する。
【概要および方法】 1.全入居者の無料歯科検診
協力歯科医未受診であった26名と新入居者7名を対象に年2回実施し,問題のあった入居者と家族へ説明し歯科受診を勧めた。
2.口腔ケアスキルチェック
口腔ケアに携わる介護職員63名に実施し,厚生労働省による「ジョブカード」モデル評価シートを参考に点数化し,必要に応じ歯科衛生士による個別指導を行った。
3.口腔ケアスキルコンテスト
職員の日頃の努力を称えるため,各部署の口腔ケアスキルチェック高得点者を1名選出し審査員の前で口腔ケアを披露するコンテストを実施した。
【経過および考察】 無料歯科検診では,口腔衛生管理加算対象外であるケアハウス入居者も含めた6名が早期歯科受診につながった。スキルチェックでは入居系職員の平均点が高く,口腔ケア介入の頻度により差異が生じていたことから,部署に応じた指導が必要であると考えられた。コンテストでは,法人会長・協力歯科医等審査員より,口腔ケア実践の質の高さについて評価を得た。職員からは,自信に繋がったとの意見やスキルチェックにより82%が「口腔ケアに変化があった」との回答が得られた。また,71%の介護職員がコンテストの継続開催に肯定的であった。
【結論】 本取組は,高齢者施設における予防歯科の推進において有益であった。施設全体の口腔健康管理の意識啓発のためにも,今後も継続していく必要がある。
○杉本友香 石川 純 木村嘉奈 山﨑彩夏 鈴木明美 藤本雄大
磐田市立総合病院
キーワード 口腔健康管理 OAG 誤嚥性肺炎
【緒言】 歯科衛生士が行う口腔健康管理は主科からの依頼がある場合に行っていたが,2019年12月より歯科衛生士が口腔内の評価を行い,口腔健康管理介入のスクリーニングを実施するシステムを構築したので報告する。
【概要および方法】 歯科衛生士がEilers Oral Assessment Guide(以下,OAG)に従って,入院患者の口腔内評価を行った。対象は入院期間が3日以上で,産科と15歳未満を除く全入院患者とし,スコア3に1つでも該当した対象者には歯科衛生士が口腔健康管理を実施した。スコア3がなく非介入対象患者については,セルフケア可能な患者では口腔ケアの必要性を患者本人に説明し,セルフケア困難な患者では担当看護師に注意事項を説明した。非介入対象患者は,2週間毎に歯科衛生士がOAGにて再評価を行った。また,システムの評価として,入院後に院内で発生した誤嚥性肺炎の件数を調査した。
倫理審査承認番号2022-051
【経過および考察】 口腔健康管理の初診件数は,2018年967件,2019年1148件,2020年768件,2021年722件2022年596件と減少傾向にあった。入院後の誤嚥性肺炎症例件数は,2018年78件,2019年64件,2020年37件,2021年27件,2022年48件であった。歯科衛生士が評価することにより,口腔機能管理,看護師による介助磨き,セルフケアへの振り分けが正しく行えた。
【結論】 多くの患者を歯科衛生士が専門的に網羅的にケアするよりも,優先度の高い症例を抽出して口腔健康管理を行い,それ以外の症例では看護師や患者に注意事項を説明することで,入院後の誤嚥性肺炎の発症軽減に寄与したため,このシステムの構築は有用であったことが示唆された。
○山田妃佐子 大谷侑里 山田彩恵
地方独立行政法人岐阜県総合医療センター歯科口腔外科
キーワード 病院歯科衛生士 多職種連携 全身麻酔 口腔内偶発症予防 地域連携
【目的】 当院では2020年7月より多職種がチームとして患者の入院を支援する入院支援室を新設した。入院支援室では歯科衛生士も業務を兼務し,歯科の視点から支援を行い,早期退院を目指す準備の一端を担っている。その取り組みについて報告する。
【概要および方法】 各科より手術入院で依頼された15歳以上の全身麻酔・麻酔科管理で全身麻酔の可能性のある患者に対し,面談を通じて問診,口腔観察,セルフケア指導,歯科受診指導を行い,必要に応じて地域の歯科医院へ情報提供を行うと共に,得られた情報について多職種との情報共有を行った。
【経過および考察】 当初は2診療科から介入し2023年3月時点で11診療科に介入を行い,延べ4,103名を対象に3,986名,対象の97.1%に面談を行った。面談時間は1人当たり10.5分で,口腔観察で動揺歯が報告されたのは396名,全体の9.7%であった。無歯顎や歯科定期受診後,受診拒否などで入院前の歯科受診はなしと判断した者を除き,歯科受診が必要と判断されたのは3,654名で対象の89.1%,緊急入院や休日入院,未入院などで受診状況が確認できない者を除き,実際に入院前に当院歯科,地域の歯科医院を受診したのは2,954名,歯科受診が必要と判断された93.1%であった。任意の患者アンケートの結果では口腔ケアの重要性について95.4%が理解できたと回答しており,患者自身が理解し行動につなげることが出来たと考える。
【結論】 入院支援で歯科衛生士が介入することにより,全身麻酔時の口腔内偶発症予防を図ると共に患者自身がそのリスクや必要性を理解し行動できるようになった。今後支援対象が拡大していく際も,病院歯科衛生士として歯科の視点からの支援を続けていきたい。
○今井須美子1) 新田有美2) 原田睦美2) 内野真衣2)
1)静岡県歯科衛生士会
2)沼津市立病院 歯科口腔外科
キーワード 40年勤務 業務 短期間 引き継ぎ マニュアル
【目的】 新型コロナウイルス感染症の蔓延による業務量の増加以前より業務の質と量の変化に柔軟に対応する必要性を常に要求されてきた演者は,沼津市立病院(以下,当該病院)歯科口腔外科に40年勤務して,2023年3月末日に定年退職した。演者以外の歯科衛生士は在籍しておらず(一時的に1名在籍するも病気休暇の後,退職),当該病院の事情により,後任の採用が定年退職の1~2カ月前という短期間であり,説明と指導のための十分な時間がないことを考慮し,業務別7種類のマニュアルを作成し,業務の引き継ぎに当てた。
【対象および方法】 対象は,許可病床数387床の公立病院の当該病院歯科口腔外科業務(演者在籍時:歯科医師2名,看護師2名,歯科技工士1名,歯科衛生士1名)とした。方法は,歯科衛生士単独の業務と,看護師と歯科衛生士の共通業務を洗い出し,作業風景などの画像を挿入し可視化して,口頭で説明する時間を簡略化し,指導する側と指導を受ける側の双方の負担軽減に努めた。
【経過および考察】 歯科衛生士単独の業務マニュアルとして,1.「歯科衛生士の業務」(周術期等対応口腔機能管理等)2.「障害者歯科の対応」(予約の取り方と作業,PCR検査について等)3.「障害者歯科:郵送書類」(ご家族様へのお手紙等)4.「障害者歯科:全身麻酔下の治療」(手術室入室の心構え等),看護師と歯科衛生士の共通業務マニュアルとして,5.「リリーフ,手伝い内容」(午前の診療介助等)6.「予約の取り方」(入院全身麻酔手術等)7.「予定入院説明」(入院センターに行く場合等)の7種類を,A5判の冊子として作成した。
【結論】 40年勤務の演者の,業務の短期間の引き継ぎは困難に思われたが,マニュアル作成をすることで,一部それを可能にした。
○川野知子 春日佳織 安藤恵利 湯川あい 高寺貴佳 志田裕子 金山愛加 大森雄司 橋谷 進
宝塚市立病院
キーワード 要時生成型亜塩素酸イオン水溶液 口腔衛生管理 口腔剥離上皮膜
【目的】 絶食中や自己ケアが困難な入院患者は,口腔衛生状態が不良で口腔乾燥が必発し,口腔剥離上皮膜や乾燥痰などの汚染物が厚く存在する。これまで汚染物の除去には保湿剤を塗布後,数十分経過してから施行するため,口腔衛生管理が2回必要で時間も要していた。今回われわれは,普段は水と同じような性質を持ちながら,亜塩素酸イオンから必要時に必要な水性ラジカルが生成され,反応するMA-Tシステムを用いた口腔清浄ジェル(N.actオーラルリムーバルジェル®:アース製薬,以下,N.act®)を用い,従来の方法と比較したので,その概要を報告する。
【対象および方法】 当院入院中で口腔剥離上皮膜や乾燥痰などの汚染物が厚く存在する絶食中で自己ケアが困難な患者に対してN.act®を使用し,これまでの口腔衛生管理方法と比較検討した。
【結果および考察】 対象患者の口腔衛生管理にN.act®を使用することにより,口腔剥離上皮膜や乾燥痰の汚染物を数分で除去することができ,口腔衛生管理時間が短縮できた。当院で従来使用していた保湿剤や,水道水等による湿潤よりも汚染物は早く軟化し,容易に除去することができたことが要因の一つであると考える。また,従来の方法では一旦保湿剤を塗布し,他患者の口腔衛生管理を行った後,再訪床していたことから感染予防に関しても,PPEが二重に生じ,業務の煩雑さやコスト面においても有用であったと考える。
【結論】 N.act®を使用することで,口腔剥離上皮膜や乾燥痰の汚染物が短時間で除去できるため,これまでより口腔衛生管理全体の時間を短縮することが可能であった。さらに1回で口腔衛生管理を完結することができることから,N.act®は感染対策面においても有用であった。
○鈴鹿祐子1) 成田悠哉2) 渡辺陵介3) 松尾真輔2) 西村克枝1) 麻賀多美代1) 大川由一1) 岡村太郎2)
1)千葉県立保健医療大学健康科学部歯科衛生学科
2)千葉県立保健医療大学健康科学部リハビリテーション学科作業療法学専攻
3)東京福祉専門学校作業療法学科
キーワード 認知機能 歯科衛生士 作業療法士 歯磨き行動
【目的】 高齢社会において認知症を早期発見し,日常生活のアドバイスを行うことは重要である。歯科衛生士(以下DH)は定期検診などにおいて高齢者に対応する機会が多く,対象者の行動から認知症の兆候に気付きやすいと考える。本研究は,高齢者の歯磨きをする様子をDHが評価し,認知機能との関連性を把握することを目的として行った。
【対象および方法】 対象は,11名(75.5±5.2歳)であり,歯磨きをする様子をDHが「歯磨き行為の認知評価」(Cognitive Performance Test,以下CPT)を使用して評価し,MMSE-J,ACLS-5を作業療法士(以下OT)が実施した。CPTはOTがAllenの認知障害モデルを参照して作成したものでありレベルは5段階で評価し,歯磨き動作を中心に観察項目を設置した。主な内容は,歯磨き時間,歯ブラシや歯磨剤の取り扱い,口を拭く動作などである。千葉県立保健医療大学研究等倫理委員会(申請番号2021‒35)
【結果および考察】 CPTは,レベル5.0「問題なく1人で可能」が7名であり,レベル4.4「指示があれば修正可能,多少のミスがある」が4名であった。MMSE-Jは,軽度認知症の疑いもある22~26点は2名であった。この2名はACLS-5も他者に比較し低い傾向にあり,CPTはレベル4.4であった。その内容は「通常より短い時間で磨く」,「汚れがついていることの指摘が必要」であり,歯科衛生士は高齢者の歯磨きをする様子を観察することで認知機能の低下に気付くことができる可能性が示唆された。
【結論】 DHは歯磨き指導の際に認知機能について評価できる可能性があると考えられた。今後は対象者を増やし,OTの視点から作成したCPTの検討をしていきたい。
○越田美和 寺岡真紀 槇野莉沙 塚本暁子 横山ゆき乃 平山恭子 島田 遥 莨谷莉奈
石川県立中央病院
キーワード 緩和ケアチーム 多職種連携 歯科衛生士
【目的】 当院は地域がん診療連携拠点病院であり緩和ケアチーム(Palliative Care Team;以下PCT)はがん患者のQOL向上のため活動している。歯科衛生士は2014年からPCTの一員となった。今回,その実際を調査し今後の課題を明確にすることとした。
【対象および方法】 対象は2020年4月から2023年3月までのがん入院患者でPCT介入した43名のうち歯科衛生士が介入した12名である。カルテから1)診療科,2)病期,3)歯科衛生士介入依頼元,4)口腔内問題,5)介入内容を調査した。倫理審査承認番号:第2152号
【結果および考察】 結果は1)歯科口腔外科8名,他診療科4名,2)診断期2名,治療中4名,終末期6名(うち4名は他診療科),3)病棟看護師10名,その他2名,4)セルフケア困難が最も多く,次いで乾燥,汚染,口内痛,易出血,5)口腔衛生管理,PCTメンバーへの情報提供等であった。歯科口腔外科患者が過半数で,病棟看護師からのPCT介入依頼が多いことから,口腔病変を有する患者の対応に病棟看護師が何らかの情報を求めていると考えられた。他診療科患者は終末期患者が多く,口腔内問題はがん性疼痛や嘔気等によるセルフケア困難と口腔乾燥が多かった。また病棟看護師が対応困難になってからの依頼が多かった。当院ではがん入院患者の定期口腔内評価や歯科衛生士介入の基準がない。患者のADLが低下しセルフケア困難状態であることに気づきにくい現状にある。口腔内問題が悪化する前に,病棟看護師への口腔ケア指導を行う等,口腔衛生管理につなげることが患者のQOLを保つための課題である。
【結論】 PCTにおける歯科衛生士介入の今後の課題は,歯科口腔外科がん患者のケアの多職種連携と終末期患者の口腔内評価方法を検討することである。
○鈴木 瞳1,2) 相原喜子1) 内海倫也1) 鈴木一吉1) 犬飼順子1)
1)愛知学院大学短期大学部専攻科(口腔保健学専攻)
2)名古屋大学医学部附属病院 歯科口腔外科
キーワード オンライン歯科診療 歯科衛生士 歯科衛生学生
【目的】 2022年に在学中の歯科衛生士をめざす学生のオンライン歯科診療に対する認識等を明らかにすることを目的に,調査,検討したので報告する。
【対象および方法】 対象は本研究への同意が得られた2022年度A短期大学部歯科衛生学科に在籍する1年生102名(18.1±7.9歳),2年生82名(19.3±2.7歳),3年生50名(21.0±7.0歳)の合計234名とし,Microsoft Teamsを利用したインターネット調査を実施した。分析方法は,選択式の回答については単純集計,記述式の回答については記述内容をまとめた。本研究は,愛知学院大学短期大学部倫理委員会(承認番号22‒009)の承認を得て行った。
【結果および考察】 「オンライン診療」という用語を知っている学生は66.4%であった。「直接的な指導,治療ができない」が34.6%,「心理的距離間,信頼関係の構築がしづらい」が18.4%,「うまく伝えられない、伝わりにくい」が11.5%のように,不安感・不信感を持ちながらも,その利点や必要性を理解していた。歯科衛生士業務をオンライン診療で実施するにあたり一番目に学んでおきたいことは,「オンライン診療による歯科衛生士業務の実習」が54.7%と最も多く,オンライン診療業務を習得したい,オンライン歯科診療が拡大していくと考えているのではないかと推測される。また,歯科保健指導においてオンライン診療が有用であると認識しており,今後さらに,歯科衛生士の業務が拡大し,重要な役割を担うであろうと考える。
【結論】 歯科衛生士として口腔保健活動を支援する方法として,オンライン歯科診療は有用であると考えた。オンライン診療のメリットとデメリットを正しく理解した上で歯科衛生士業務に活用するために,さらなる調査検討が必要であると考える。
○芝野 望 麻生幸男
医療法人社団ワンアンドオンリー 麻生歯科クリニック
キーワード う蝕予防 リスク評価 DMFT
【目的】 当院ではCAMBRATM(以下,CAMBRA)によるリスク管理に基づくう蝕管理を実施しているが,う蝕発症率の低減について十分に検討されていない。本研究は,CAMBRAによるリスクグループ別に5年後のう蝕発症率を評価することにより,リスク評価に基づくう蝕管理方法の有効性を示すことを目的とした。
【対象および方法】 2009年8~2014年9月,当院に来院した成人患者1413名を対象とし,CAMBRAのリスク評価方法を基に4段階のリスクグループに分類した。初診時DMFTと5年後DMFTをリスクグループ別に集計し,Featherstonらの報告(5年後のう蝕発症率,2015年)と比較した。対象者には,十分に説明を行い,書面にて同意を得た。
【結果および考察】 Featherstonらの報告では,DMFTがローリスク0.94本,ミドルリスク1.26本,ハイリスク1.79本,エクストリームリスク3.26本であったことに対し,当院の5年間でのDMFT増加本数は,ローリスク0.44本,ミドルリスク0.57本,ハイリスク0.68本,エクストリームリスク0.73本であった。Featherstonらの報告と比較してう蝕の発症率に差が生じた理由として,CAMBRAがリスク毎の治療方針を規定するのみで診療フローにまで踏み込んでいないことが背景と考えられた。またすべての患者を対象に診療ステップに基づく患者教育と初期治療を徹底することで口腔を良好な状態に維持,改善し,う蝕の発症率減少に導くことができたと考えられた。
【結論】 リスク評価に基づくう蝕予防管理は,予知性のあるプログラムである。う蝕リスクを把握し,患者教育と初期治療を徹底することにより先行研究と比較して口腔内環境を改善し,う蝕発症を抑制できたことから,診療のステップとしてリスク評価の活用が重要であることが示唆された。
○吉本美枝1) 高阪貴之2) 上田和美3) 小澤純子4) 福岡智子5) 槌谷三桂5) 畑中裕美6) 神出 計7) 樺山 舞7) 池邉一典2)
1)大阪歯科大学大学院医療保健学研究科
2)大阪大学大学院歯学研究科 有床義歯補綴学・高齢者歯科学講座
3)はぐくむ歯科クリニック
4)大手前短期大学 歯科衛生学科
5)大阪府歯科衛生士会
6)大阪府能勢町福祉部健康づくり課
7)大阪大学大学院医学系研究科
キーワード かみかみ百歳体操 口腔体操 口腔機能 健康寿命
【目的】 大阪府能勢町では平成28年度より一般介護予防事業として,口腔機能の維持・向上を目指し,自宅でも行える継続した口腔体操,「かみかみ百歳体操」の実施を推奨している。令和2年度より,この取組みを保健事業と一体的に実施する「能勢健康長寿事業」が開始され,現在は歯科衛生士が口腔機能測定後に個別の歯科保健指導を担当している。本調査では,自宅で継続した口腔体操の実施について調査し,口腔機能の維持・向上への効果的な介入方法への糸口を得ることを目的とした。
【対象および方法】 令和5年2月から3月までに「かみかみ百歳体操」に参加した315名(男性82名,女性233名,平均年齢75.9歳,口腔機能測定,個別の歯科保健指導を受けていない地域住民も含む)を対象に,自記式質問紙調査を実施した。大阪大学大学院歯学研究科・歯学部及び歯学部附属病院倫理審査委員会承認番号:R4‒E7
【結果および考察】 自宅でかみかみ百歳体操等の口腔体操を実施している者は144名であり,「毎日実施」が58名,「週2~3回」が46名,「週1回」が33名,それ以下が7名であった。口腔体操を行う理由については,「口の機能を保ちたいから」が92名と最も多かった。実施していない者は171名であり,その理由は,「忘れてしまう」が74名と最も多く,「口の機能に問題がないと思うから」が37名,「やりかたがわからない」が27名,「必要性を感じていない」が23名であった。本結果より,自らの口腔機能について知り,関心を持つことが,口腔体操を継続するきっかけになると考えられた。
【結論】 口腔機能を維持・向上させるためには,口腔体操を継続するだけでなく,口腔健康の関心度を高めるアプローチ法が必要であると考えられる。
○村西加寿美1) 日野隆子1) 大谷直美1) 林 泰代1) 吉田なおみ1) 土屋奈美1) 溝井敬子1) 柳田 学2) 井上万悠子2)
1)一般社団法人滋賀県歯科衛生士会
2)滋賀県健康寿命推進課
キーワード 口腔健康管理 訪問歯科衛生士 在宅療養 意識調査
【目的】 滋賀県歯科衛生士会では,県の委託を受け「在宅療養支援のための歯科衛生士養成講座(以下,養成講座)を3年前から開催し,高齢者や障害者に在宅療養を支援する歯科衛生士の育成に取り組んでいる。養成講座受講後,在宅療養に携わったかどうかの意識調査を実施したので報告する。
【対象および方法】 本会の会員および歯科診療所に勤務する歯科衛生士を対象に,令和4年8月に「1.口腔衛生管理コース」(受講者27名),9月に「2.口腔機能管理コース」(受講者42名)と2回開催した。養成講座受講時とその半年後に,研修内容の効果,在宅療養に携わったかどうか等についてアンケートを実施した。
【結果および考察】 1および2の養成講座受講時の感想は,良かった80%,普通20%と回答しており,内容が役立つかの質問についても同様の結果であった。
また半年後の調査では,研修内容が役立つかの質問に1が78%,2が65%が役立つと回答していた。参加理由については,在宅療養に興味があるが1および2ともに70%,先輩友人に誘われて参加が1および2ともに10%であった。1については勤務先の歯科医に勧められたと回答した者が10%いた。養成講座受講時に在宅療養に携わっているかについては40%が携わっており,予定無しも40%であった。半年後の結果も同様の結果だが,養成講座受講後に在宅療養に携わった者が20%いた。このことから養成講座の効果があったと推測される。また予定無しの理由は勤務先が現在は在宅療養を実施していないと回答していた。しかし開始された時のために今から準備をすると前向きに捉えて養成講座を受講したと考えられる。
【結論】 今回の調査で,在宅療養を支援するためには,即実践に繋げられる歯科衛生士の育成を定期的に実施する必要性が示唆された。
○奥村美雪1) 岩井孝恵1) 上田亜海1) 小森千代乃2) 矢木明美1) 菱川敏光3) 藤井政也4) 田原秋彦1) 古田摂夫5) 中井雅人6)
1)田原歯科医院
2)さばし歯科
3)ひしかわ歯科
4)可児川歯科クリニック
5)アスク歯科クリニック
6)なかい歯科
キーワード 握力 オーラルフレイル セルフチェック表 かかりつけ歯科
【目的】 口腔機能維持向上を専門的立場から,機能改善に資する具体的な方法を助言し行動変容を促すことを目的とし,介護予防教室参加者の実態を調査した。
【対象および方法】 ぎふ・さわやか口腔健診,歯周病健診の健診結果より,「要指導」「要精検」に該当した方,「歯や口の状態で気になること」がある642名に介護予防教室「おいしく歯歯歯教室」の案内を個別に送付した。そのうち31名(4.8%)のハイリスク者を含む,市内在住75歳以上の高齢者合計84名が参加した。参加者のうち質問紙協力者72名(85.7%)について調査した。1週間の10食品群チェックシート記録と質問紙を事前に送付した。質問紙は無記名であり,調査への回答協力をもって同意を得た。匿名化されており倫理面に配慮した。質問紙の内容は,口腔内状況(残存歯数把握および義歯使用の有無),かかりつけ歯科および定期検診の有無であった。握力測定値を含め管理栄養士と情報共有した。
【結果および考察】 平均年齢は男性77.4歳,女性75.3歳であった。握力測定値(キログラム)は,75歳~79歳と比較した。男性平均33.37は,1.7低く,女性平均21.48は,1.01低い。残存歯把握者70.3%。平均歯数20.5本。義歯使用率48.5%。平均歯数が20本以下では,義歯使用率50%以上。オーラルフレイル危険性が低い42.9%,危険性あり14.9%,危険性が高い42.8%の結果となった。10食品群チェックシートは,10点中7点以上を目標とし,92.9%の方が目標達成できた。1週間チェックした事で,行動変容に繋がった。かかりつけ歯科は,6会場中5会場100%であった。定期受診率は,74.1%となった。
【結論】 予防教室の場から健診事業の啓発活動の必要性を感じた。
○鷹取佐知子 小野加寿未 太田正美
インターナショナル岡山歯科衛生専門学校
キーワード 歯科衛生士養成校学生 就職活動 意識調査
【目的】 某歯科衛生士養成校の就職率は開校以来100%を継続しているが,早期に離職してしまう者もいる。そこで学生たちが何を優先して就職先を決定しているのかを明らかにし,また就職先決定時と就職後約1年経過時の心境の変化を比較し,今後の学生への就職指導に役立てることを目的とした。
【対象および方法】 某歯科衛生士養成校学生の2021年度卒業生30名を対象とし,3年次の就職活動開始時と就職後約1年経過時に就職活動に対する意識調査を質問紙およびGoogle Formsを用いて実施した。本研究はインターナショナル岡山歯科衛生専門学校倫理委員会承認済である(IDEHC-002)。
【結果および考察】 3年次の就職活動開始時に実施した調査では,就職先を検討する時に重視する項目として,「従業員の雰囲気が良好である」「賃金が高い」「就業場所(自宅からの距離)」が上位であった。反対に避けたい項目は「従業員の雰囲気が良好でない」「賃金が低い」「休日が少ない」が上位であった。就業後に不満に思うことは「終業時間(拘束時間)が長い」「休日が少ない」「その他(清潔感がない,落ち着きがない,休日出勤が多い,医院の経営が不安,持ち帰りの仕事がある,有給休暇が取りづらいなど)」「賃金が低い」が上位であった。また,もし転職活動をするならば重視したい項目は「賃金が高い」「従業員の雰囲気が良い」「休日が多い」が上位であった。
【結論】 就職活動時は就業先の従業員の雰囲気の良さを重視している者が多かった。また賃金の高さを求める者も多かったが,就職後は就業時間(拘束時間)が長い事や,休日が少ないことに不満を抱いている者が多いことが分かった。
○山村有希子1) 星合愛子1) 大塚紘未2)
1)明海大学保健医療学部口腔保健学科
2)東京都歯科衛生士会
キーワード 新型タバコ 加熱式タバコ 口腔関連QOL
【目的】 現在新型タバコのシェアが拡大しており,若い層で喫煙率が上がっていると報告されている。そこで,A大学の大学生を対象に,新型タバコや喫煙についての認識や使用状況を調査することを第1の目的とした。また,口腔関連QOL(Oral Health-related Quality of Life,以下OHRQL)と喫煙経験や喫煙認識との関連を検討することを第2の目的とした。
【対象および方法】 A大学の5つの学部の学生を対象として,無記名自記式配票調査を実施した。調査内容は,基本属性・新型タバコの認知度・喫煙習慣の有無・喫煙影響に関する知識等について尋ねた。またOHRQLの尺度に沿って調査し,統計解析(Mann-WhitneyのU検定)を行った。(明海大学歯学部倫理審査委員会承認番号:A2117)
【結果および考察】 計253名から回答を得た。紙巻タバコの喫煙経験者は27名(10.7%),加熱式タバコの喫煙経験者は23名(9.1%)であった。また,225名(88.9%)が「IQOS」や「glo」などの加熱式タバコを知っていると回答した。一方で,加熱式たばこの健康影響について,「まったく知らない」「あまり知らない」と回答した者が59名(23.3%)おり,加熱式タバコからも有害物質が検出されることを周知する必要があると考えられた。OHRQLのスコアは,1年生のtotalの平均スコアが12.1点と最も高く,1年生が最も口腔に問題を感じている結果となった。喫煙経験の有無とOHRQLのスコアについては,有意な差は認められなかった。
【結論】 本研究により,A大学の学生の新型タバコおよび喫煙についての認識や使用状況を確認し,新型タバコについての認知度が高いことが確認された。
○山口景子1,2) 小村真妃2) 立花晶子2) 掛端由衣子2) 道尻紋佳2) 杉山祐美子2) 浅木美智子2,3)
1)八戸保健医療専門学校
2)青森県歯科衛生士会
3)湯の里にのへ
キーワード 保育園児保護者 歯科保健行動 歯みがき指導
【目的】 令和元年度時点で青森県A町は乳幼児健診時フッ化物塗布を行っているが,対象年齢に応じた健康教育が進んでいない。令和元年度の3歳児のむし歯有病率は39.3%と青森県平均の20.4%をかなり上回っている。そこで,保育園児・幼稚園児および保護者へ歯科保健に関する健康教育を行うために保護者へ質問紙調査を行い,普及啓発活動を行うための基礎資料を得ることとした。
【対象および方法】 A町の保育園2園・幼稚園1園に通う園児152名の保護者に歯科保健に関する質問紙調査を実施した。質問紙調査は令和2年6~7月に行った。保育園児・幼稚園児に対しての質問紙調査は本会で平成28年度より行っており,令和2年日本歯科衛生学会ポスター発表を行った保育園児・幼稚園児保護者の歯科保健行動状況把握のための質問紙調査と同じ質問紙を使用した。質問紙調査を行うにあたり,保護者に文書で同意を得た。
【結果および考察】 質問紙調査の結果,「むし歯予防について知りたい」65.8%,「歯みがき以外にもむし歯予防に努めていることがある」67.0%とむし歯予防に対して保護者の意識が高いことが伺われた。しかし日常の保健行動では「フッ素入りの歯磨き剤を使用していない」34.1%「仕上げ磨き時歯ブラシ以外のものを使用していない」は87%にも及び,むし歯予防を意識しながらもフッ化物や仕上げ磨きの効果的な活用ができていない。また歯磨き指導は68.2%が受けたことがなく定期健診は54.1%が習慣がないと答えた。意識と行動が伴わず保護者の健康教育が不足していると考えられた。
【結論】 乳幼児健診時のむし歯予防の取り組みに対し保護者の歯科保健行動に隔たりがある。市町村と家庭が連携をとりセルフケアに有効な健康教育が必要である。
○杉山祐美子1) 小村真妃2) 山口景子2,3) 立花晶子2) 掛端由以子2) 道尻紋佳2) 浅木美智子2,4)
1)総合リハビリ美保野病院
2)青森県歯科衛生士会
3)八戸保健医療専門学校
4)湯の里にのへ
キーワード 保育園児保護者 歯科保健行動 歯みがき教室
【目的】 令和元年度,青森県A村の3歳児のう蝕有病者率は,50%であり青森県内でも高率となっている。当地域において乳幼児健診で,フッ化物配合歯磨剤の配布や,希望者にはフッ素塗布を行うなどの対策をしているが効果がみられない,よって,保護者の歯科保健行動や乳幼児の生活習慣について必要があると考え質問紙調査を行った。さらに,親子でのお口の健康教室を行い,歯科保健に関する普及啓発活動を実施した。
【対象および方法】 調査はA村の保育園1園に通う園児58名とその保護者を対象とし,令和2年6月~7月に行った。調査項目は,令和2年本学会発表にて保育園児保護者の歯科保健行動状況把握のために使用した物を採用した。調査を行うにあたり,文書にて同意を得た。調査後,その結果を基に,園児と保護者に対し知識が不足している部分を強調し,お口の健康教室を行った。
【結果および考察】 保護者への質問紙調査では,44%がお子さんの歯や口の状態で気になることがあると答え,36%がお子さんの歯や口の悩みがあると答えた。しかし,56%の保護者がかかりつけ歯科医があるにもかかわらず,年一回の受診をしていない保護者が全体の59%いた。このことから,定期検診を利用して相談していないと考えられる。そのため歯科保健教室を開催し,歯科保健行動への啓発,広報活動をしたところ親子での参加がみられた。
【結論】 定期検診を利用して保護者の歯科保健行動につながるように,地域で多職種連携をはかり,教育や広報,啓発活動をしていきたい。また,調査結果を参考にし,園と保護者の連携をはかりたい。
○川柴 淑 今川真由美 河野美枝子
徳島県歯科衛生士会
キーワード 医科歯科連携 多職種研修会 行動変容
【目的】 生活習慣病である糖尿病有病者と糖尿病予備軍は,年々増加傾向にある。日頃歯周病治療に関わっている歯科医師と歯科衛生士(以下,歯科医療従事者)が糖尿病患者の来院時にどのような点を意識して関わっているのか現状を調査し,糖尿病に対する認識,歯周病と糖尿病との関連について歯科医療従事者の関心を高める啓発のための基礎的なデータとし,歯周治療を通して糖尿病患者の重症化の抑制や糖尿病の予防へ繋げる。
【対象および方法】 A市とN町の33歯科診療所に勤務の歯科医療従事者を対象に,質問紙『歯科と糖尿病に対する歯科医師・歯科衛生士の意識調査』を配布,回答時間15分程度,無記名で回収した。令和4年度日本歯科衛生学会倫理審査委員会において承認番号10を得て実施した。
【結果および考察】 質問紙調査の結果,糖尿病患者来院時の確認している項目は,HbA1c,インスリン投与有無,内服薬状況,血糖値の順であった。歯周病治療後に定期歯科健診が定着28%,歯肉炎改善26%,BOP減少15%と回答した。初診時パノラマや歯周病検査で糖尿病を疑ったことがある歯科医療従事者は54%であった。歯科と糖尿病の関連知識を得たのは,歯科医師は研修会・本・インターネットの順で,歯科衛生士は学生教育・本・研修会の順であった。糖尿病予防研修会を受講希望者は33%であった。
今回の調査結果から,糖尿病予防に関心がある歯科医療従事者が医科歯科連携をとり,情報交換や多職種の研修会に参加し行動変容に繋げることが示唆された。
【結論】 歯周病と糖尿病に関する認知度は高いとはいえない,この関係を浸透させていくためには歯科医師・歯科衛生士が連携し,継続した教育支援体制を整備する必要がある。
○三好早苗1) 藤原千尋1) 桒原里美1) 西村瑠美1,2) 相見礼子1)
1)広島県歯科衛生士会
2)広島大学大学院医系科学研究科口腔保健疫学研究室
キーワード 歯科訪問診療 歯科衛生士 業務実態 アンケート調査
【目的】 近年,歯科訪問診療の実施件数は増加傾向にあるが,その業務に携わる歯科衛生士の実態はほとんど報告されていない。本調査は,広島県内で歯科訪問診療に従事する歯科衛生士の業務実態を把握することを目的とした。
【対象および方法】 2023年1月,広島県歯科衛生士会会員446名および2021年度に歯科訪問診療の実績があった406歯科医療機関に勤務する歯科衛生士を対象に,郵送またはWebによる調査を実施した。調査項目は,基本属性,就労状況,業務内容とした。本調査は,広島県歯科医師会臨床研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(広県歯倫-20211206_04)。
【結果および考察】 回答者474名(回収率55.6%)のうち,歯科訪問診療に従事していた者は215名(45.3%)であった。歯科訪問診療従事者の平均年齢は45.5±12.9歳,訪問経験年数の中央値は6年,62.5%が常勤であった。就業規則や有給休暇の有無について,約8割が「ある」と回答し,職場での抗体検査は73.8%で実施していた。歯科訪問診療をはじめたきっかけは,「勤務先の方針」が76.2%と最も多く,業務内容は,「口腔内の観察」95.6%,「口腔衛生管理」89.6%,「口腔清掃指導」88.5%の順に実施率が高かった。一方,「多職種への口腔ケアの教育研修」,「担当者会議への参加」の実施率は低く,61.6%が「口腔ケア技術を多職種へ指導する自信がない」と回答した。また,医療保険と介護保険の算定要件について,64.5%が「理解していない」と回答した。歯科訪問診療における歯科衛生士の指導力向上と各保険制度の仕組みについて理解を促す必要性が示唆された。
【結論】 広島県内の歯科訪問診療に従事する歯科衛生士の課題は,多職種への口腔ケア指導と保険制度の理解であることが明らかとなった。
○安田奈央1) 森島亜未1) 近澤沙耶1) 大島亜希子1) 久世恵里子1) 飯沼光生2) 村松泰徳3)
1)朝日大学医科歯科医療センター歯科衛生部
2)朝日大学
3)朝日大学歯学部口腔病態学講座口腔外科学
キーワード 顎関節症 精神的因子 性格検査
【目的】 近年,歯科口腔外科外来の来院患者の中で,顎関節の不調を主訴とする患者が増加しつつある。顎関節症の発症メカニズムはいまだ不明なことが多く,日常生活を含めた多因子が積み重なり顎関節症と心身症の関連があると報告されている。今回,朝日大学医科歯科医療センター(以下,当センター)では,顎関節症と精神的因子についての関係性を調査し,歯科衛生士としての関わりについて検討することを目的とした。
【対象および方法】 対象は,当センター歯科口腔外科外来を受診し「顎関節症」と診断され,同意を得られた被験者である。調査方法として,心理特性の把握のため質問紙調査であるYG性格検査一般用を用いて実施した。本研究は,朝日大学倫理審査委員会(承認番号:33007)の承認を得て実施した。
【結果および考察】 病態分類では,3̶A型の方が負の精神的要素が高く見られ,外的要因だけではなく生活習慣からくるストレスが要因で歯ぎしりや食いしばりにつながると考える。20代では社会人としての新生活が始まることや,女性においては妊娠などの環境変化も加わり身体的・精神的ストレスの増加との関連性が考えられる。
【結論】 今回の調査により,心理的・精神的因子は顎関節症の病因の1つと示唆された。特に顎関節症は女性が多いため,検査やアプローチは男性の歯科医師より女性の歯科医師や歯科衛生士が関わっていくことの方が望ましいと考えられた。また,顎関節症は再発しやすい疾患であるため,患者への生活習慣指導,さらに治療への動機付けを歯科医師と共同し,歯科衛生士も介入が必要であると思われる。
○中野有生1,2) 日野出大輔3) 渡辺朱理4) 松山美和4)
1)徳島大学大学院口腔科学研究科 口腔保健学専攻博士後期課程「学生」
2)国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 歯科口腔外科部
3)徳島大学大学院医歯薬学研究部 口腔保健衛生学分野
4)徳島大学大学院医歯薬学研究部 口腔機能管理学分野
キーワード 高齢入院患者 残根 保有率
【目的】 歯科疾患実態調査の結果,8020達成者の割合は2016年に51.2%へ増加したが,日常臨床でよく遭遇する高齢者の残根に関しては報告がほとんどない。そこで,高齢入院患者の残根保有率の年次推移および残根の実態について調査した。
【対象および方法】 対象は国立長寿医療研究センターの65歳以上の入院患者で,5つの期間(2013年,2015年,2017年,2019年,2021年の前半半年)に歯科衛生士による口腔衛生管理を受療した者とした。歯科診療記録から情報収集し,現在歯数と残根歯数,残根部位を5つの期間別に集計し,5群間比較を行った。なお,本研究は国立長寿医療研究センター倫理・利益相反委員会の承認を得て実施した(受付番号1557)。
【結果および考察】 対象は合計787例であった。平均現在歯数と残根保有者率,平均残根数は5群間に有意差はなく,それぞれ13.2±10.1本,40.0%,4.0±3.6本であった。また,残根部位は,上下顎の割合および残根種の割合に5群間に有意差はなく,上顎が53.4%,切歯が最多の34.8%,大臼歯が最小の19.3%であった。高齢入院患者の多くは要介護度等が高く口腔衛生管理の対象となるが,本調査結果から高齢入院患者の口腔内の実態は歯科疾患実態調査の結果とは乖離があると考えられた。
【結論】 高齢入院患者の残根について調査した結果,明らかな年次推移は確認されず,高齢入院患者の4割が残根を有し,平均残根数は4本であることが明らかとなった。口腔衛生環境を改善するためには,残根の形態修正や充填等の処置も含めた口腔健康管理の必要性が示唆された。
○岡本浩明1) 倉光祥平1) 林 忠紘1) 田村康治2)
1)小林製薬株式会社
2)医療法人旭ヶ丘ホリクリニック歯科
キーワード 歯間清掃 歯間ブラシ 実態調査
【目的】 歯周病予防には歯間部の清掃が重要であるが,歯間部清掃実施者は低水準に留まっており,歯間清掃用具の使用の普及と習慣化が課題とされる。今回,歯間清掃用具のうち歯間ブラシの仕様の違いが使用状況に与える影響の調査を目的に,歯間ブラシ未使用者に各種歯間ブラシを試用させた際の使用感と試用期間終了後の使用状況を調査した。
【対象および方法】 本試験の同意が得られた40~69歳の歯間ブラシ未使用者54名を対象とした。歯科衛生士が歯間清掃の重要性と使用方法を説明後,被験品の歯間ブラシ(ブラシタイプとゴムタイプ)を使用順で2群に分けた交差試験にて各2週間の試用後にアンケート調査を実施した。被験品を回収の上,試用期間終了1および3カ月後に使用状況を調査した。本研究は,芝パレスクリニック倫理審査委員会の承認(149291_rn‒32316)を得て実施した。
【結果と考察】 試用後アンケート調査結果より,各歯間ブラシの14日間における使用回数の平均値は,ブラシタイプ19回,ゴムタイプ24回とゴムタイプが有意に多かった。清掃性においてブラシタイプの支持が高い一方で,使いやすさはゴムタイプが優勢であり,使用中に歯茎を傷つけそうと感じた者の割合がゴムタイプでは低かった。ブラシタイプとゴムタイプについて,歯間ブラシによる歯間清掃を必要と感じた者の割合は67%と81%,今後の使用意向のある者の割合は55%と70%であった。また,試用期間終了後の継続使用状況を確認した所,1カ月後と3カ月は同様の傾向で,3カ月後において54名中28名が歯間ブラシを使用し,内訳はブラシタイプ10名,ゴムタイプ16名,併用2名であった。
【結論】 歯間ブラシ未使用者において,ゴムタイプの方がブラシタイプより継続使用しやすいことが示唆された。
○小倉千幸1) 荒木萌花2) 遠藤眞美3) 伊藤 梓3) 倉持恵美4) 中村広恵5) 奈良小百合5) 宮内知美6) 山岸 敦7) 高柳篤史3,5,7)
1)日本歯科大学東京短期大学 歯科衛生学科
2)東京都歯科衛生士会
3)日本大学松戸歯学部障害者歯科学講座
4)茨城県歯科衛生士会
5)高柳歯科医院
6)国際医療福祉大学成田病院 歯科口腔外科
7)東京歯科大学 衛生学講座
キーワード 歯ブラシ 磨き心地 ブラッシング 歯ブラシ選択 評価法
【目的】 日常のブラッシングの継続には歯ブラシの機能だけでなく,磨き心地が重要である。しかしながら,歯ブラシの磨き心地を調べた研究は見当たらない。
そこで今回,代表的な形状を持つ5種類の歯ブラシの磨き心地を調べ,その評価指標と方法について検討した。
【対象および方法】 歯ブラシは代表的な形状をもつ5種類の歯ブラシ(ヘッドが小型,幅広,大型,極細毛,複合毛)とした。20名の歯科衛生士が実際に5種類の歯ブラシを1日に1本ずつ使用して磨き心地を評価した。評価項目は,磨いた時の軟らかさ,滑らかさ,こしなどの17項目とした。評価には5本のうち使用した歯ブラシと前日使用した歯ブラシの2本を比較する方法で行い,総当たりで一人の評価者がそれぞれ,すべての組み合わせを評価した。そして,各評価指標の関連性を調べた。
【結果および考察】 今回の磨き心地において,「こしがある感じ」は「やさしさ」「やわらかさ」「なめらかさ」と有意な負の相関を認めた(p<0.01)。また,「ヘッドの大きさの感じ」は,「奥歯が磨ける感じ」と有意な負の相関を認めた(p<0.01)。「好み」については,今回調査した項目と有意な相関を示したものはなく,歯ブラシの好みは特定の磨き心地との共通した強い関連が認められなかった。
【結論】 歯ブラシを一対で評価する方法は,磨き心地を評価するのに有用な方法であることが確認できた。また,今回用いた歯ブラシの磨き心地の評価指標には複数の指標に強く関連するものがあり,今後,さらに歯ブラシの磨き心地を的確に評価する評価方法の検討が必要であると考えられた。
○畑田晶子 永田英樹 濵元一美 花谷早希子 古賀 恵 新井麻実 岡橋 祐 佐田夏穂 木村重信
関西女子短期大学 歯科衛生学科
キーワード 舌圧 握力 年齢 成人健常者 スクリーニング
【目的】 口腔機能の低下を自覚していない健常成人を対象とした前回の報告で我々は,口腔の筋力の指標としての舌圧(最大舌圧)が,一部の(舌圧および握力のいずれもが非常に低い)女性被験者を除けば握力値と正相関することを明らかにした。握力を含む全身の筋力はまた,サルコペニアをはじめ年齢の影響を受けることも予想されることから,握力測定値を舌圧/オーラルフレイルのスクリーニングとして利用するには,被験者の年齢についても考慮する必要がある。そこで本研究では,年齢との関連性に焦点を当て検討した。
【対象および方法】 対象は口腔機能低下を自覚していない16歳以上の男性70名,女性121名の計191名(36.2±16.0歳:平均±標準偏差)で,舌圧測定器(JMS)およびスメドレー式握力計を用いて舌圧,握力の測定を行った。解析はunpaired t-testを用いた。本研究は関西福祉科学大学研究倫理審査委員会の承認を得て行った(承認番号20-14)。
【結果および考察】 今回の被験者では舌圧,握力とも男性群で高い値を示した(p<0.01)ため,男女それぞれで検討した。男性の舌圧は25~34歳群で最高値を示したが,握力は24歳以下群で最高値を示したものの,加齢による低下傾向はほとんど見られなかった。一方,女性の舌圧は24歳以下群と45~54歳群で二峰性に高値を示したが,握力はいずれの年齢群においても有意な差がみられなかった。
【結論】 今回対象とした成人健常被験者群では,男女とも舌圧への年齢の明確な影響は見られなかった。また,握力に対してもほとんど影響が認められなかったことから,舌圧/オーラルフレイルのスクリーニングとして利用する全身の筋力の指標としては握力が適当で,年齢の影響は小さいことが示唆された。
○北村優依 犬飼順子 後藤君江
愛知学院大学短期大学部歯科衛生士学科
キーワード 歯科衛生士業務 歯科診療補助 歯科衛生士歴
【目的】 近年拡大している歯科衛生士の診療補助業務は歯科衛生士の能力に応じて実施される必要があるが,その現状については知られていない。本研究では,現在歯科診療補助として拡大されつつある業務の実施状況と歯科衛生士歴との関連を検討した。
【対象および方法】 A専門学校とA短期大学卒業生1,542名を対象にweb調査を実施した。調査項目は,勤務状況(年齢,歯科衛生士歴,現在の主な就労場所)と業務の実施状況(主な就労場所での 業務内容)とした。調査結果は集計し,業務の実施状況と歯科衛生士歴のクロス集計およびχ2検定を行った。なお本研究は,愛知学院大学短期大学部倫理委員会の承認を受けて行った(承認番号22-010)。
【結果および考察】 歯科衛生士業務の実施状況は,精密印象採得112名(58.0%),SRP時の浸潤麻酔15名(7.8%),SRP時以外の浸潤麻酔19名(9.8%),採血4名(2.1%),注射8名(4.1%),口腔機能訓練75名(38.9%),咽頭部及び気管内吸引19名(9.8%),在宅(施設・病棟を含む)での口腔衛生管理70名(36.3%)が実施していた。これらの業務と歯科衛生士歴との関連は口腔機能訓練について歯科衛生士歴が8年以上の者が有意(p<0.05)に実施しており,8年以上の歯科衛生士歴が口腔機能訓練の業務について熟練していることが示唆された。一方,その他の業務は歯科衛生士歴との有意な関連は認められなかった。
【結論】 歯科衛生士養成機関において十分な教育を行っていない業務であっても,勤務している歯科衛生士は実施している状況であり,口腔機能訓練以外は歯科衛生士歴により熟練していないことから,今後の卒前,卒後教育内容を検討する必要性が示唆された。
○松浦圭花 鈴木一吉 後藤君江 犬飼順子
愛知学院大学短期大学部専攻科(口腔保健学専攻)
キーワード インシデント 新卒歯科衛生士 臨床実習生
【目的】 インシデントの予防策を検討するための基礎データ収集を目的として本調査を行った。
【対象および方法】 対象はA短期大学2022年3月卒業の新卒歯科衛生士とA短期大学3年生の臨床実習生とし,webまたは対面で調査を行った。それぞれのインシデント経験のある割合の違いを,統計ソフトSPSSver.27(日本IBM.東京)を用いて分析を行った。本研究は,愛知学院大学短期大学部倫理委員会(承認番号22‒003)の承認を得て行った。
【結果および考察】 アンケート回収率は新卒歯科衛生士75名,臨床実習生99名であった。インシデントに関するアンケート28項目のうち新卒歯科衛生士は1人あたり約5.8項目インシデントを経験しているのに対し,臨床実習生は1人あたり約3.1項目であった。新卒歯科衛生士,臨床実習生を合わせてインシデントを起こした回数が多かったものは「歯科医師・歯科衛生士の指示の聞き間違え」計130名「患者が咽頭に水が溜まってむせさせた」計102名「器材・薬剤等を落とした」計86名であった。臨床実習生に比べ新卒歯科衛生士のほうがインシデント経験が高かったのは13項目あり,歯科診療補助業務に加え「予約の取り間違い」などの受付業務や,「患者の口唇や口腔内を傷つけた」などの歯科予防処置業務が見られることが分かった。
【結論】 臨床実習生時代は行うことができる業務が限られており,新卒歯科衛生士になり,それぞれの病医院の決められたシステムを理解し慣れるまで様々なインシデントが起きていることが分かった。インシデント発生を低下させ,未然に防ぐためには技術の向上,知識の習得はもちろん,病院内,授業内でのインシデントの共有やコミュニケーションの促進が必要であると考えた。
○瀬戸口祐子1,2) 前岨亜優子1,3) 中塚美智子1,3)
1)大阪歯科大学大学院医療保健学研究科
2)なにわ歯科衛生専門学校
3)大阪歯科大学医療保健学部
キーワード 臨床実習 臨床実践能力 自己教育力
【目的】 臨床実習前後の臨床実践能力と自己教育力の意識の変化を探るため,歯科衛生士養成課程在籍学生を対象に調査した。
【対象および方法】 本調査への協力が得られた学生に,臨床実習前後の臨床実践能力および自己教育力に関する意識の変化についてインターネット調査を行った。臨床実習開始前の学生401名,臨床実習後の学生340名分の回答を分析した。臨床実践能力習得の測定30項目のうち24項目は臨地実習指導マニュアル-歯科衛生士学生の指導のために-(公益社団法人日本歯科衛生士会作成)を引用,改変して用いた。残り6項目は,臨床実習全般に対する思いや考えについて質問した。自己教育力の測定は,西村ら(1995)が作成した自己教育力測定尺度を使用した。どちらも使用許諾済である。本研究は大阪歯科大学医の倫理委員会承認研究である(大歯医倫第111181-0号)。
【結果および考察】 臨床実践能力の習得では,診療現場対応が「できる」と答えた学生は実習開始前12.3%,臨床実習後31.0%,基本姿勢が「できる」と答えた学生は実習開始前54.6%,臨床実習後67.4%であった。自己教育力の意識の変化では,クラスター分析により学生は臨床実習前後ともそれぞれ意識の違いで3群に分類され,群間で有意差を認めた(p<0.01)。側面Ⅲの「学習の対象化と統制」において,臨床実習前後で有意差を認めた(p<0.05)。側面Ⅳの「自信・プライド・安定性」は,臨床実習前のみ有意差を認めた(p<0.01)。学生は臨床実習後に臨床実践能力の習得を一様に感じるが,それらが自己教育力の向上につながるか否かは個人差があることが示唆される。
【結論】 学生は臨床実習を通して臨床実践能力を習得しても,それが必ずしも自己教育力の向上に結びつくとはいえない。
○淺沼楓子1,2) 新井通次1) 渥美信子1) 犬飼順子1)
1)愛知学院大学短期大学部専攻科(口腔保健学専攻)
2)岐阜大学医学部付属病院歯科口腔外科
キーワード 消毒薬 最小発育阻止濃度 タンパク質凝固・変性作用
【目的】 口腔内細菌に対する各種消毒薬の効果を一般細菌用寒天培地(フードスタンプ®,寒天培地)における増殖の観察から,また,タンパク質凝固・変性作用を卵白の白濁や変色の様子から検討し,消毒薬の効果と生体への影響について考察した。
【材料および方法】 口腔内細菌は,歯面から歯ブラシに付着させ,ブイヨンで培養して用いた。消毒薬として,フェノール(Ph),グルタルアルデヒド(GA),セチルピリジニウム塩化物(CP),ベンザルコニウム塩化物(BK),クロルヘキシジングルコン酸塩(CH)の1%液を用意した。それぞれの消毒液の10倍稀釈を順次繰り返えすことで10倍稀釈液列(1%〜0.0001%)を調製した。各種消毒薬の10倍希釈液列に細菌浮遊液を添加・攪拌した。1分後,それぞれの溶液100μLを寒天培地上に注ぎ,培養後,細菌増殖の有無を観察し,最小発育阻止濃度(MIC)を調べた。次に,各消毒薬(1%とMIC)をシャーレに分注し,添加した卵白の白濁や変色の有無を観察した。
【結果および考察】 各種消毒薬のMICは,それぞれ1%(Ph),0.01%(GA),0.001%(CPとBK),0.0001%以下(CH)であった。消毒効果は,強力な方から,CH,CPとBK,GA,Phの順となった。卵白の白濁は,1%ではすべての消毒薬に認められたが,MICではPhとGAのみに認められた。即ち,CP,BK,CHのMICでは,生体への障害は少ないことが示唆される。このことは歯磨剤や洗口剤の殺菌成分としてBKやCPなどが添加されていることが口腔組織への影響を考えると合理的であることを示した。
【結論】 適切な消毒薬を適切な濃度で用いれば,生体への障害は少なく有効な消毒効果が得られるものと思われる。
○渡辺朱理1) 川野ひなた2) 横田憲治3) 玉木直文4) 松山美和1)
1)徳島大学大学院医歯薬学研究部口腔機能管理学分野
2)神戸松田歯科医院
3)岡山大学大学院保健学研究科検査技術学分野
4)徳島大学大学院医歯薬学研究部予防歯学分野
キーワード 手用歯ブラシ 電動歯ブラシ ATP測定法 口腔内細菌培養検査 飛沫飛散
【目的】 新型コロナウイルス感染症禍において,歯磨き時に生じる飛沫が問題とされた。本研究では,ATP測定法と口腔内細菌培養検査を用いて,手用歯ブラシと電動歯ブラシによる飛沫やエアロゾルの有無,およびその発生量について検証することを目的とした。
【対象および方法】 研究の参加に同意が得られた対象者の首にフェイスシールドを装着し,手用歯ブラシと電動歯ブラシを用いて歯磨きを実施した。各歯磨きは歯磨剤を使用せず3分間行い,30日間実施した。歯磨き前後にフェイスシールドを滅菌綿棒で擦過して試料を採取し,ATP測定を行った。歯磨き前後の比較はウィルコクソンの符号付順位和検定,手用歯ブラシと電動歯ブラシの歯磨き後の比較はマン・ホイットニ検定を行った(p<0.05)。口腔内細菌培養検査では,歯磨き後にフェイスシールドを滅菌綿棒にて擦過し,口腔レンサ球菌選択培地であるMitis-Salivarius寒天平板培地に塗沫後,37℃で48時間好気培養を行った。
【結果および考察】 歯磨き後は,手用歯ブラシ,電動歯ブラシともに口腔内細菌を含んだ飛沫やエアロゾルの発生が認められた。また歯磨き後のATP測定値は電動歯ブラシの方が手用歯ブラシに比べ有意に低く,飛沫やエアロゾルの発生量は少なかった。さらに,電動歯ブラシの方がATP測定値の四分位範囲は小さく,飛沫やエアロゾルの発生量の差が少ないことが認められた。電動歯ブラシを正しく操作することで周囲環境への飛散や汚染を防ぐことができると考えられる。
【結論】 電動歯ブラシは歯磨き後の飛沫の発生量がほぼ一定で,手用歯ブラシに比べて飛沫の発生が抑えられていた。電動歯ブラシを正しく用いることは,集団生活の場における感染予防対策の一つとして有効であろうことが示唆された。
○福家百香1,2) 内海倫也1) 原山裕子1) 犬飼順子1)
1)愛知学院大学短期大学部
2)しらい歯科クリニック
キーワード 電動歯ブラシ ヘッド プラーク除去面積 清掃時間
【目的】 歯科保健指導のために1つの会社の音波歯ブラシで,それぞれ形状の違う3つのヘッドを用いて,顎模型による頬側面のプラーク除去面積を1歯あたりのブラッシング時間で比較検討した。
【材料および方法】 歯ブラシは,PHILIPS sonicare®の音波歯ブラシを使用した。ヘッドは,センシティブ,プレミアムオールインワン,インターケアーの3種類を用いて実験を行った。被験歯は上顎右側第一大臼歯とし,頬側面と隣接面移行部の最大豊隆部に油性インクで境界線を描いた。歯の頬側面に人工プラークを塗布した後,音波歯ブラシの毛先が上顎第一大臼歯の頬側面に垂直に当たるように音波歯ブラシを保持装置に固定し,上顎第二大臼歯から上顎第二小臼歯の3歯に渡って,顎模型を遠心から近心方向へ移動した。なお,ブラッシング圧は200gとし,それぞれ4,6,8,10秒の時間で上顎第一大臼歯の頬側面を通過した。これらの実験を6回施行した。その後,被験歯を写真撮影装置に固定し,規格写真撮影を行い,Photoshopにて画像加工後,NIH ImageJを用いてプラーク除去面積を求めた。統計処理は,SPSSを用いて一元配置分散分析とTukeyの多重比較を行い,有意水準を5%未満とした。
【結果および考察】 歯ブラシのヘッドを一定にしたときの,ブラッシング時間の違いによるプラーク除去面積は,ブラッシング時間が長いほど大きかった。また,ブラッシング時間を一定にしたときの,歯ブラシのヘッドの違いによるプラーク除去面積は,インターケアー,プレミアムオールインワン,センシティブの順に大きかった。
【結論】 患者の口腔内の状況に合わせた電動歯ブラシの使い方,ヘッドの形態や毛先の形状,使用時間およびモードなどを提案していくことが歯科衛生士として重要と思われる。
○飯田結万 原山裕子 犬飼順子
愛知学院大学短期大学部専攻科
キーワード 根面デブライドメント 超音波スケーラー エアスケーラー デブライド用インスツルメント
【目的】 根面デブライドメントにおける器具別・歯面別のプラーク除去率(以下,除去率),プラーク除去到達度(以下,到達度)を比較検討した。
【対象および方法】 根面デブライドメント用器具として,超音波スケーラー,エアスケーラー,デブライトメント用インスツルメント(以下,インスツルメント)の3種を選択し,経験年数1年未満の歯科衛生士10名を術者とした。模型上の下顎右側第一大臼歯(以下,46)に人工プラークを塗布し,超音波スケーラー40秒,エアスケーラー30秒,インスツルメント10ストロークと設定し,根面デブライドメントを施行した。規格写真の画像解析による器具別・歯面別の除去率,到達度を測定した。除去率,到達度の評価は,器具,歯面のそれぞれを要因とした一元配置分散分析とTukey HDSの多重比較を行った。
【結果および考察】 器具別の除去率,到達度に有意差は認められなかった。歯面別の除去率は超音波スケーラーでは近心面が遠心面(p<0.001)および頬側面(p<0.05)より高く,舌側面が遠心面(p<0.05)より高かった。到達度は,超音波スケーラーでは近心面が頬側面(p<0.05)より有意に深く,エアスケーラーは近心面が頬側面および舌側面(p<0.001),遠心面(p<0.01)より有意に深く,インスツルメントは近心面が頬側面(p<0.05),遠心面(p<0.01)より有意に深かった。3器具すべてにおいて近心面が頬側面より有意に到達したことは,歯面の解剖学的形態と各種チップの形態との適合の影響によると考える。
【結論】 効果的な根面デブライドメントを行うためには,解剖学的形態の留意と適切なチップの選択を前提とし,患者の口腔内状況や全身状態,操作性や術者の技術レベルに合わせた器具の選択が求められる。
○藤代万由1) 松﨑久美子2) 佐々木禎子1) 梶谷明子1) 吉田陽子1) 宮﨑文伸3) 三浦留美1) 窪木拓男4)
1)岡山大学病院 医療技術部(歯科部門)歯科衛生士室
2)岡山大学学術研究院 医歯薬学域 歯科保存修復学分野
3)岡山大学病院 医療技術部(歯科部門)技工室
4)岡山大学学術研究院 医歯薬学域 インプラント再生補綴学分野
キーワード 開口障害 歯ブラシ 刷毛部 がんサバイバー
【目的】 開口障害を有する頭頸部がん患者は,開口量が日常の歯磨きに影響する。本研究では,開口障害を有する患者本人や介助者が入手・加工しやすく効果的に歯磨きができることを目標に,市販の歯ブラシの刷毛部を加工し,人工歯垢の除去効果について検討を行った。
【対象および方法】 廉価で入手が容易な2種類のヘッドサイズの歯ブラシ(ビトイーンライオン,レギュラー・コンパクト,やわらかめ;ライオン社)と顎模型(ニッシン社)を使用した。刷毛部を市販のバリカンで切断し,刷毛部の長さ別にcontrol群,7mm群,5mm群,7+5mm群の4群ずつ計8群作製した。被験歯はRamfjordの6歯(16,21,24,36,41,44)とし歯面全体に人工歯垢(ニッシン社)を塗布した。当院歯科衛生士4名が150~200gのブラッシング圧で5ストロークずつブラッシング後,Rustogi Modification Navy Plaque Indexを使用し,歯垢残留の有無に応じて1点,0点でスコア化して評価したのち,SPSSで統計解析を行った。
【結果および考察】 レギュラーのcontrol群で開口量25mm(2横指)と開口量10mm(1横指)の歯垢残留スコアの比較では,開口量10mmの方が有意に歯垢除去効果が劣っていた。開口量10mmにおける歯ブラシ4群間の比較では,レギュラーとコンパクト共に加工した3群は未加工群よりも有意に歯垢除去効果が高かった。
【結論】 本研究では開口量が少ない場合,市販の歯ブラシの「刷毛部の長さ」を短くすることで歯垢除去効果を高めることができた。開口量が少ない患者が歯ブラシを選択する際は,使い慣れた歯ブラシを加工し使用することも有用であるという事が示唆された。
○藤森那奈1,2) 新井通次1) 渥美信子1) 犬飼順子1)
1)愛知学院大学短期大学部専攻科(口腔保健学専攻)
2)医療法人好貴会 いのうえ歯科クリニック
キーワード 洗口剤 温湯 歯ブラシ 除菌
【目的】 本研究では,歯ブラシに簡便な処置を施すことにより積極的に除菌する方法について検討した。
【対象および方法】 歯面から採取した口腔内細菌を一般細菌用乾燥ブイヨンにて培養・増殖し細菌浮遊液を作製した。そこに未使用の歯ブラシを浸漬して細菌を付着させた後,歯ブラシを25℃の蒸留水,市販の洗口液(モンダミン®とリステリン®)の原液と10倍希釈液,および温湯(50℃,60℃,80℃)に浸漬処置を施した。これらの歯ブラシを蒸留水に浸漬して被験溶液とし,コンパクトドライ®およびフードスタンプ®にて培養し,洗口液や温湯処置による除菌効果を調べた。
【結果および考察】 蒸留水の浸漬処置を行った歯ブラシの被験容液では,コンパクトドライ®,フードスタンプ®双方の培地表面に多数のコロニー形成が認められた。これに対し,洗口液の原液および温湯(60℃,80℃)の浸漬処置を行った歯ブラシの被験液ではコロニーの形成は認められず著しい除菌効果を示した。しかし,洗口液の10倍希釈液や50℃の温湯では明白なコロニー形成が認められ除菌効果は減弱した。これらの事実から,口腔内に使用した歯ブラシは,流水で洗い流す作業に加えて,洗口液や温湯(60℃,80℃)による除菌処置を組み合わせることで,極めて簡便に,清潔な状態で歯ブラシを保管することができると考えられる。
【結論】 本研究では,洗口液や温湯により歯ブラシを簡便に除菌できることを示した。特に,温湯による除菌は,電気ポットなどで沸かした湯を湯呑みに注ぎ,歯ブラシを浸漬するだけの極めて簡便な除菌法として利用できる。
○山本裕子1) 関端麻美1) 井出 桃1) 両角俊哉2) 角田 晃1)
1)神奈川歯科大学短期大学部歯科衛生学科
2)日本歯科大学新潟生命歯学部歯科保存学第1講座
キーワード 唾液 IgA 短鎖脂肪酸
【目的】 我々はこれまでに,盲腸で産生された短鎖脂肪酸(SCFAs)が唾液中IgA分泌速度の増加に関与する可能性を明らかにした。しかしSCFAsが直接的に唾液中IgA分泌速度を増加させるかどうかは不明である。本研究ではSCFAsの経口摂取と摂取期間が唾液中IgA分泌速度に与える影響について明らかにすることを目的とした。
【対象および方法】 5週齢ラットを無繊維飼料と塩化ナトリウム(Na)水溶液で1週間予備飼育後に,コントロール群には21 mM塩化Na水溶液を,SCFAs群には酢酸Na70 mM,プロピオン酸Na30 mM,酪酸Na20 mMを添加した水溶液を自由摂取させた。0週,1週,2週,4週後に盲腸組織,盲腸内容物,血清,顎下腺,唾液を採取した。唾液,盲腸内容物,血清のIgA濃度はELISA法にて測定した。
【結果および考察】 唾液中IgA分泌速度には,SCFAs摂取の有無とSCFAs摂取期間の交互作用が認められ(p=0.0004),SCFAs 添加群の4週でコントロール4週群と比較して高値が認められた(p<0.05)。また唾液中IgA分泌速度は盲腸組織重量との間に正の相関が認められた(r=0.47, p=0.0008, n=48)。盲腸組織重量はSCFAs摂取の有無の影響と(p=0.0004)SCFAs摂取期間の影響(p<0.0001)が認められ,SCFAs摂取群で高値であった。SCFAsを経口摂取することにより,摂取4週で唾液中IgA分泌速度が増加する可能性が示され,末梢血中だけでなく盲腸内のSCFAs濃度が上昇したことが示された。
【結論】 末梢血中SCFAsあるいは盲腸内容物中SCFAsのどちらか,あるいは両方が唾液中IgA分泌速度を増加させた可能性がある。
○鈴木 恵1) 鈴木一正2) 佐藤 勉3)
1)日本歯科大学東京短期大学
2)名古屋大学大学院工学研究科
3)東海大学医学部基礎医学系
キーワード 酸化チタン内蔵歯ブラシ 結晶成長 HAp フッ化物配合歯磨剤 再石灰化
【目的】 本会において,太陽電池付酸化チタン内蔵歯ブラシ(Sブラシ)の歯垢除去・付着抑制効果並びに唾液検査システムによる口腔環境改善効果を報告してきた。今回はSブラシとフッ化物配合歯磨剤(フッ素濃度:1450ppm,ペースト,F歯磨剤)を併用した際の効果を検討する目的で,ハイドロキシアパタイト(HAp,ペレット)を用いin vitro 実験をした。具体的にはHAp表面を観察し,結晶成長の観点から考究した。
【対象および方法】 F歯磨剤を蒸留水に懸濁しフッ素濃度を100ppmに調製した(F溶液)。実験群はF溶液にSブラシとHApを浸漬し,インキュベーター内(37±0.5℃)に静置した。光照射はSブラシから10cm離し蛍光灯(6W)で24時間行った。HApを取り出し蒸留水で3回洗浄し,室温乾燥後に走査型電子顕微鏡(SEM)にてHAp表面を観察した。対照群はF溶液にHApのみを浸漬し光照射後の操作はSブラシと同条件とした。
【結果および考察】 処理前のHAp表面には粒径が300-500nmの均一な粒子を確認した。実験群と対照群のHAp表面には,新たに約100nmの粒子が観察された。この粒子は対照群に比べ実験群で多く存在していた。実験群は光照射したSブラシの存在により,F歯磨剤中のフッ化物イオンがHAp表面上に取り込まれ,新たな粒子が析出した可能性が推測される。今後は実験条件の検討,析出物の成長や元素分析を実施する予定である。
【結論】 HApを用いたin vitro実験では,光照射したSブラシとF歯磨剤の共存下でHAp表面に粒径約100nmの粒子が観察された。この粒子はフッ素化合物と推測されることから,SブラシとF歯磨剤の併用によるう蝕予防効果を高める可能性が示唆された。
○遠藤七海1) 鈴木 瞳2) 杉本久美子2) 安達奈穂子3) 柏木聖代4) 森岡典子4) 高澤維月2,5) 吉田奈永2) 吉田直美2)
1)西郷歯科クリニック
2)東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科口腔健康教育学分野
3)東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科口腔疾患予防学分野
4)東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科
5)明海大学保健医療学部口腔保健学科
キーワード 多職種連携 口腔ケア 健康教育 看護学生
【目的】 近年,歯科衛生士は多職種連携での活躍が求められ,特に看護師との連携機会が増加していることから,卒前の連携教育が重視されている。本研究では,某大学口腔保健学科学生(以下OH)から看護学専攻学生(以下NS)へ口腔ケアに関する健康教育を実施し,NS学生への調査からその教育効果を検討した。
【対象および方法】 OH4年生がNS2年生への口腔ケアに関する健康教育実習を企画,実施した。参加NS学生55名を対象に,実習前後に自記式質問紙調査を行った。調査項目は,実習前のみは歯科知識の認知度,自身の口腔保健行動,実習前後には口腔ケアに関する知識の理解度,口腔ケア実践への自信,口腔ケア関連の学習や連携への意欲とした。本研究は東京医科歯科大学統合教育機構倫理審査委員会の承認を得た(C2022-011)。
【結果および考察】 53名より回答を得た(回収率96%)。実習前の回答から,歯磨き回数,歯間清掃用具の使用頻度は高いものの,定期歯科受診率および専門性の高い歯科知識の認知率は低い状況が示された。実習前後の比較では,口腔ケア関連知識の正答率の中央値が実習前66%から実習後89%へと有意に上昇し,口腔ケア実践の自信に関する8項目の肯定的回答の割合が,実習前2~53%から実習後は全て80%以上へと有意に上昇した。口腔ケア関連の学習・連携への意欲においても,実習後1項目を除き全項目で肯定的回答が有意に増加した。
【結論】 OH学生が行った健康教育を通して,NS学生の口腔ケアに関する知識,実践への自信,関連学習と連携への意欲,全てにおいて大幅な向上を認め,高い教育効果が示された。これらより,卒前教育における職種の垣根を超えた学習機会の提供が,他領域の知識・技術の学びと将来の職種間連携への意欲の向上に有効であることが示唆された。
○針谷紀羽1) 安達奈穂子2) 大山 篤3) 幡野紘樹1) 小川真央1) 國友奈々1) 岩﨑愛女1) 品田佳世子2)
1)このは歯科医院
2)東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科口腔疾患予防学分野
3)株式会社神戸製鋼所 東京本社 健康管理センター
キーワード リスクアセスメントツール 予防 メインテナンス 行動変容
【目的】 本研究の目的は,口腔疾患予防におけるリスクアセスメントツールに関する歯科衛生士の意識を明らかにし,その有効性と課題,さらに活用するための検討を質的に行うことである。
【対象および方法】 リスクアセスメントツールを使用している静岡県内の歯科医院の歯科衛生士22名を対象とし,Google Formsを用いて質問調査を実施した。質問内容は,リスクアセスメントツールを用いて歯科保健指導を行う際に気を付けていること,活用できた事例,活用できなかった事例についてである。自由回答は,KJ法に準じて回答内容の分類を行った。東京医科歯科大学歯学部倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号第D2022‒025番)。
【結果および考察】 歯科衛生士は継続的にメインテナンスを受けてもらうことや予防を理解してもらうためにリスクアセスメントツールが必要であると考えており,リスクアセスメントツールを使用する際に最も気を付けていることは「患者を理解すること」「モチベーション」「患者がメイン」「リスク」「継続」「わかりやすさ」の6つに分類できた。ツールの活用において成人は主に本人を対象とした歯科保健指導を行うのに対し,小児は本人だけでなく保護者を含めての対応が必要であった。使用時に困難を感じる点としては,関心が薄い患者や実感がわかず行動変容に至らない患者,行動変容が不十分で中断してしまう患者の指導が挙げられ,意欲が低い患者に対する情報提供や説明・指導の方法について課題があると考えられた。
【結論】 歯科衛生士は,継続的なメインテナンス受診や予防を理解してもらうためにリスクアセスメントツールが必要であると考え,意欲が低い患者に対する情報提供や説明・指導の方法について課題があることが示唆された。
○下川奈々 伊藤佳七子 渡部 茂 金子 潤 藤内 祝
明海大学保健医療学部口腔保健学科
キーワード 口腔保湿剤 口腔内停滞時間 唾液 pH
【目的】 フッ化物洗口後,フッ素の口腔内停滞時間は唾液分泌速度に影響を受けることが示されている。本研究の目的は,ジェル状保湿剤と液状保湿剤の口腔内停滞時間をpHの変化で明らかにすることである。
【対象および方法】 対象者は健常な成人7名とした。保湿剤はコンクールマウスジェル®(Weltec),コンクールマウスリンス®(同)を使用した。保湿剤pHを重曹で調整し,ジェル型はpH7.5,リンス型はpH7.9の試料を作成した。pH測定にはコンパクトpHメータ(LAQUA twin HORIBA)を用いた。
実験方法は実験前に安静時唾液分泌速度量を吐唾法(5分間)により測定し,その唾液pHを測定した。その後リンス型試料10mLで5秒間洗口させ,5分間隔で30分間,それぞれ採取した唾液の分泌速度および唾液pHを測定した。30分後にジェル型試料3gを口腔に塗布し,同様に5分間隔で測定を行った。pHの平均値の差の比較はt検定を行い有意水準はα=0.05とした。本研究は明海大学歯学部倫理委員会(A2204)の承認をうけた。
【結果および考察】 リンス型試料のpHは,各対象者7名とも5分後は増加を示し,その後徐々に減少し,30分後には適用前の値に戻った。ジェル型試料もリンス型試料と同様の結果を示した。pHには個人差が認められたため,試料適用前の平均値を1として比較した結果においても両者に有意な差は認められなかった。剤型をジェル型に変えても,唾液の洗浄作用の影響を超えてリンス型よりもpHが高く維持される効果は認められなかった。これは両者の口腔内停滞時間に差がないことを示唆していると考えられた。
【結論】 ジェル状保湿剤適用後の口腔内唾液pH変化を検討した結果,リンス型に比べ有意な差は認められなかった。
○木下睦実1) 鈴鹿祐子2) 大川由一2) 石川裕子2)
1)東京歯科大学市川総合病院
2)千葉県立保健医療大学健康科学部歯科衛生学科
キーワード お薬手帳 歯科 電子化
【目的】 お薬手帳は患者情報の収集に重要である。今回は,今後歯科医療に従事する歯科衛生学科の学生におけるお薬手帳の認識や活用方法を明らかにすることを目的として調査を行った。
【対象および方法】 C大学歯科衛生学科1~4年生を対象に,Microsoft Formsを用いて無記名のアンケート調査を実施した。内容は,お薬手帳の所有・携帯状況,医科・歯科への持参状況,お薬手帳の電子化に関する知識等とした。解析はWilcoxonの符号付順位和検定にて検討した(千葉県立保健医療大学研究倫理審査委員会承認番号:2022‒27)。
【結果および考察】 回答は47名より得た(回収率50.5%)。お薬手帳を知っている者は97.9%で,そのうち所有している者は86.7%であった。医科への持参は「毎回持参する」51.3%,「ときどき持参する」28.2%であった。歯科へはそれぞれ25.6%,10.3%であり,有意に歯科への持参頻度が低かった(p<0.05)。歯科へ持参しない理由は「歯科ではお薬手帳の提示を求められないため」58.6%が最多であった。したがって,歯科医療従事者から提示が求められれば,歯科への持参が増加すると考えられた。
お薬手帳の日常的携帯は9割以上の者が「必要である」と回答したが,実際には「していない」者が約8割を占めていた。携帯が阻まれる理由として「かさばるため,電子媒体ならありだと思う」との意見があったが,電子化について知っている者は33.3%にとどまっていた。
【結論】 歯科への持参は9割以上の者が必要であると回答したが,医科と比較した歯科への持参頻度は低かった。電子媒体のお薬手帳を周知することで,お薬手帳の携帯状況が改善することが示唆された。
○髙橋果鈴1,2) 平井玲菜2,3) 三分一恵里2) 森下志穂2) 金子 潤2)
1)明海大学PDI東京歯科診療所
2)明海大学保健医療学部口腔保健学科
3)愛育クリニック麻布歯科
キーワード 歯面研磨 PMTCペースト 表面粗さ
【目的】 本研究では,1ステップPMTCペーストのスケーリング後の歯面研磨効果を検討することを目的に,1ステップPMTCペーストによる歯面研磨(以下,1ステップ)と従来の2種類の研磨剤による歯面研磨(以下,2ステップ)によって研磨後の歯面の表面粗さに違いがあるのかどうかを検討した。
【対象および方法】 ヒト抜去歯牙のエナメル質表面を超音波スケーラーで擦過し,超音波スケーリング後(以下,スケーリング後)の歯面を再現した試料に対して歯面研磨を行った。歯面研磨方法は1ステップと2ステップとし,研磨時間は1ステップ16秒,2ステップでは1研磨剤につき8秒(計16秒)とした。試料の表面性状の計測として,1.紙やすりでの試料表面の研磨後,2.超音波スケーラーでの擦過後,3.歯面研磨後の計3回表面粗さRa値を測定し,t検定にて統計解析を行った。なお,本研究は明海大学保健医療学部内倫理審査の承認を得て実施した。(MH22-001)
【結果および考察】 どちらの歯面研磨方法においても,スケーリング後と比較して研磨後は有意に表面粗さが小さくなった(p<0.05)。歯面研磨による表面粗さの変化(スケーリング後の表面粗さ-歯面研磨後の表面粗さ)は,1ステップ4.54±2.86㎛,2ステップ3.17±1.89㎛であり,歯面研磨方法による有意な差は認められなかったが,1ステップの方が高い表面粗さ回復率を示した。今回の研究では,1ステップと2ステップどちらもスケーリング後の歯面の表面粗さを改善し,かつ研磨方法による差は認められなかったため,手順の少ない1ステップの活用が歯面研磨の効率化に有用であると考えられた。
【結論】 1ステップ,2ステップ共にスケーリング後の表面粗さを回復させ,両者に有意な差はなかった。
○桑野友花1) 森下志穂2) 三分一恵里2) 佐藤 剛3)
1)株式会社ヨシダ
2)明海大学保健医療学部口腔保健学科
3)はちじょう歯科医院
キーワード 口腔保健行動 口腔への意識 歯科保健指導
【目的】 子どもの口腔衛生状態は,保護者の影響が強く関連していると考えられ,保護者に適切な歯科保健指導を行うことが大切であると示唆されている。そこで本研究は,小学生(以下:児童)の保護者を対象とし,親子の口腔保健行動の関連性を明らかにすることを目的とした質問紙調査を行った。
【対象および方法】 研究協力施設である歯科医院に来院した児童の保護者のうち同意が得られた82名を対象とし,保護者自身と児童の口腔保健行動に関する無記名自記式質問紙調査を行った。調査項目は,基本情報,保護者および児童の口腔保健行動(1日の歯磨き回数,補助的清掃用具使用の有無等)とした。親子の口腔保健行動の関連性について,保護者を口腔保健に対する意識が高い群と普通群の2群に分け,児童の口腔保健行動の関連性について,χ2検定を用いて群間比較を行った。また,児童の学年を低学年と高学年に分け,それぞれ同様に比較検討を行った。なお,本研究は明海大学保健医療学部卒業研究倫理審査の承認を得て行った(MH22-020)。
【結果および考察】 全体の比較では,児童の口腔衛生習慣において高い群では,自発的に歯を磨く,清掃補助器具を使用している,口腔の状態への関心がある者の割合が有意に高かった(p<0.05)。低学年では,高い群で自発的に歯を磨く,口腔の状態への関心がある者の割合が有意に高かった(p<0.05)。高学年では,高い群でフッ化物配合の歯磨剤を使用している者の割合が有意に高かった(p<0.05)。本研究結果から,保護者の口腔保健行動が児童の口腔保健行動に影響を及ぼすことが示唆された。
【結論】 保護者と児童の口腔保健行動の関連性が明らかとなり,児童のみならず,保護者自身への歯科保健指導を行うことの重要性が示唆された。
○川尻奈々1) 星合愛子2)
1)東京歯科大学千葉歯科医療センター
2)明海大学保健医療学部口腔保健学科
キーワード 外科的矯正治療 顎変形症 歯科衛生アセスメントシート
【目的】 本研究は,外科的矯正治療を施行した顎変形症患者の形態面,機能面および社会心理面に焦点を当てた歯科衛生アセスメントシートを作成し,臨床経験を有する歯科衛生士に調査を行い,その必要性を評価することを目的とした。
【対象および方法】 歯科衛生上の問題解決のために情報収集すべき項目を検討し,歯科衛生アセスメントシートを作成した。歯科衛生アセスメントシートの内容は,顎変形症患者の形態,機能および社会心理についての18項目からなる。次に,某大学病院に勤務する歯科衛生士27名を対象にその必要性について質問紙調査を行い,歯科衛生アセスメントシートの各項目間の内的整合性と信頼性の検討を行った。本研究は,明海大学保健医療学部内倫理審査を受けて実施した。(MH22-016)
【結果および考察】 回答者は16名で,回収率は59.2%であった。形態面について情報収集すべき項目の中央値は全て4.00,機能面について情報収集すべき項目の中央値は全て5.00であり,歯科衛生アセスメントにおいて必要性が高いことが明らかになった。顎変形症に対する外科的矯正治療では,形態面として顔貌が最も変化することから,患者自身もその変化を自覚しやすいため高い必要性を示したと考えられる。社会心理面について情報収集すべき項目は,中央値にばらつきが見られた。また容姿面と機能面とを比べ,中央値が低く,必要性が低い傾向が認められた。
歯科衛生アセスメントシートの信頼性を検討した結果,「機能面について情報すべき項目」と「社会心理面ついて情報すべき項目」の各項目が,全体として同じ概念を測定しており,高い信頼性を示した。
【結論】 顎変形症患者の歯科衛生アセスメントにおいて,顎変形症患者の形態および機能についての情報収集の必要性が高いことが明らかになった。
○伊藤佳七子 宮澤 慶 森下志穂
明海大学保健医療学部口腔保健学科
キーワード 歯科診療所 感染予防対策 新型コロナウイルス感染症
【目的】 歯科診療は唾液等の体液に触れる機会が多いことや歯の切削等により飛散することがあるため,SARS-COV-2感染のリスクが高く「新たな感染症を踏まえたガイドライン」が策定されるなど,より一層感染予防対策がなされるようになった。新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)が流行する現在どのような感染予防対策がなされているかは明らかになっていない。したがって本研究ではCOVID-19流行以前と流行している現在を調査し比較することで現状を明らかにし,更なる感染症予防対策の向上を目的とする。
【対象および方法】 浦安市・市川市歯科医師会会員診療所計237件の歯科医師または歯科衛生士を対象とした。
質問項目は感染予防対策に関する質問をGoogle Formsを用いて実施した。コロナ流行前と現在との感染予防対策についてカイ二乗検定を用いて比較検討を行った。なお,本研究は明海大学保健医療学部内倫理審査の承認を得て実施した(MH22-024)。
【結果および考察】 対象診療所237件のうち回答が得られたのは57件(回答率24.0%)であった。グローブの交換,患者への検温,速乾性擦式製剤の使用,ユニットの清拭,患者へのうがいの指示,患者への検温の指示等がコロナ前よりも有意に高かった(p<0.05)。COVID-19流行以前より感染予防対策が十分に行われていたが,COVID-19流行後は飛沫に対する感染予防対策がより強化されている傾向がみられた。
【結論】 COVID-19流行後,歯科診療所における感染予防対策は向上していると考えられた。