日本歯科衛生学会雑誌
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原著
頭頸部がんおよび食道がん患者の口腔から分離したカンジダの抗真菌薬感受性
矢野 加奈子西 裕美重石 英生兼保 佳乃河口 浩之太田 耕司
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2024 年 19 巻 1 号 p. 25-32

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Abstract

【目的】口腔カンジダ症はがん治療中に発症するリスクが高いことが知られているが,発症した際に用いる抗真菌薬は種類が少ないため,抗真菌薬耐性カンジダ株の出現は問題となる。今回,がん患者におけるカンジダの抗真菌薬感受性の検討を行った。

【対象および方法】対象は広島大学病院歯科を受診した頭頸部がん,食道がん患者86名であった。舌背から検体を採取後,クロモアガー培地に塗抹,培養後コロニーの色調と形態からカンジダ菌種を同定した。抗真菌薬感受性は,抗真菌薬MCFG,CPFG,5-FC,FLCZ,MCZ,ITCZ,VRCZ,AMPH-Bの最小発育阻害濃度(MIC)を測定した。

【結果】38名の患者から42株のカンジダ(C. albicans 32株,C. glabrata 10株)を分離した。そのうち4名からC. albicansC. glabrataの両菌種が検出された。MCFG,FLCZ,MCZ,ITCZ,VRCZのC. glabrataのMICは,C. albicansと比較して有意に高く,C. glabrataからMCZとITCZの耐性株が,それぞれ3株検出された。

【結論】分離されたC. glabrataからアゾール系抗真菌薬耐性株が複数認められた。口腔カンジダ症予防のために口腔衛生管理を行うとともに,口腔カンジダ症を発症した際の迅速なカンジダ菌種の同定と抗真菌薬感受性試験を行う重要性が示唆された。

Translated Abstract

[Purpose]Oral candidiasis is considered to have a high risk of developing in the perioperative period for cancer. However, the emergence of drug-resistant antifungal Candida strains is a problem because of the small number of antifungal drugs for treatment of oral candidiasis. This study investigates the detection status of Candida antifungal susceptibility in perioperative patients with head and neck cancers or esophageal cancer.

[Subjects and Methods]The subjects in this study were 86 patients in the dental department of Hiroshima University Hospital. Specimens were collected from the tongue, and then smeared directly onto a CHROMagar medium. After culturing for 48 hours, the strain was identified from the color and morphology of the colonies. Antifungal susceptibility was measured using a fungal susceptibility kit, and the minimum inhibitory concentration (MIC) of the MCFG, CPFG, FLCZ, MCZ, ITCZ, VRCZ, 5-FC, and AMPH-B antifungal drugs was measured.

[Results]42 strains of Candida (32 strains of C. albicans, 10 strains of C. glabrata) were isolated from 38 patients. Both C. albicans and C. glabrata were detected from 4 patients. The MIC of MCFG, FLCZ, MCZ, ITCZ, and VRCZ for C. glabrata were significantly higher than those of C. albicans, and three resistant strains each were detected from C. glabrata for both MCZ and ITCZ.

[Conclusions]Some C. glabrata were found to be resistant to azole antifungal drugs. These results suggested the importance of oral hygiene management to prevent oral candidiasis, as well as the importance of early identification of candida species and antifungal susceptibility when oral candidiasis occurs.

【はじめに】

カンジダは口腔,消化管,膣に常在する真菌である1)。口腔カンジダ症はカンジダを主な原因菌種とする日和見感染症で全身抵抗性の減弱などにより,宿主と常在微生物叢との均衡が崩れた時に発症することが知られている。特に発症要因として,高齢や糖尿病などの免疫力低下や抗菌薬長期投与による菌交代現象などの全身的因子,義歯清掃不良,口腔乾燥などの局所的因子が挙げられている2),3)

近年,がん化学療法と放射線療法の症例数の増加に伴って,口腔カンジダ症を発症する症例が増えている4)。特に,頭頸部がんや食道がんの治療では放射線照射による合併症や嚥下困難による口腔乾燥,抗悪性腫瘍薬投薬による免疫低下を起こし,口腔カンジダ症を頻発することが報告されている3)。がん治療中に発症する口腔カンジダ症は,全身状態の回復遅延によってその治療に難渋することも多く,放置すれば口腔粘膜から咽頭,食道粘膜を介し肺や血液中に波及し,致死性の高いカンジダ血症に発展する可能性もある1)

カンジダは口腔粘膜上皮に付着,定着すれば,菌糸を伸ばし,病原因子であるホスホリパーゼなどの菌体外酵素を分泌することで上皮細胞を破壊し,上皮に侵入する5),6)。特に頭頸部がんや食道がん患者では免疫低下だけでなく,抗がん剤や放射線治療により口腔粘膜や咽頭粘膜上皮がすでに傷害されていることも多く,カンジダが上皮下に侵入すれば,容易に血行感染する可能性もある1)。このため,これらのがん患者が口腔カンジダ症を発症した場合,迅速な抗真菌薬による治療が必要とされる。一方,口腔カンジダ症の主な原因菌はCandida albicansで,検出されるカンジダの80~90%を占めるが,近年,Candida glabrataの検出の増加ならびに,アゾール系抗真菌薬に感受性の低いC. glabrataの増加も報告されている3)。抗真菌薬は,抗菌薬と比較して種類が少ないため,抗真菌薬耐性のカンジダの出現は危険であり,口腔内のカンジダの抗真菌薬感受性の現状を把握することは重要である。そこで今回,口腔カンジダ症を発症することが多い頭頸部がんや食道がん患者を対象に,口腔からカンジダを分離し,その検出率や菌種,検出したカンジダの抗真菌薬感受性について検討した。さらに,検出されたC. albicansC. glabrataの抗真菌薬の感受性を比較した。

【対象および方法】

Ⅰ. 対象

対象は,2020年2月~2020年12月に広島大学病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科ならびに消化器外科・内科より周術期口腔健康管理のため広島大学病院口腔総合診療科に紹介された頭頸部がんおよび食道がんの患者で,これからがん治療を開始する本研究への参加の同意が得られた成人86名を対象とした。紹介の時点で,抗真菌薬によるカンジダ症の治療を受けている者は除外した。なお,本研究は広島大学疫学研究倫理審査委員会で承認済である(第E-3139号)。

Ⅱ. カンジダの培養検査と同定

同意を得られた患者に培養検査を施行した。先行研究に従い7),以下のように検体採取と同定方法を実施した。舌背を滅菌綿棒で10回擦過し,舌前方部に集めた検体を拭い取り,直接カンジダの選択培地であるクロモアガー培地(クロモアガーカンジダ®,関東化学,東京)に塗抹し,37℃で48時間培養した。培養後に形成されたコロニーの色調と形態を観察し,菌種を同定した。同色,同形態のコロニーが複数形成された場合は,重複を省き1つのコロニーから採取し,再度培養を行ったのち-80℃で保存した。

Ⅲ. 抗真菌薬感受性試験

酵母様真菌感受性キット(ASTY,極東製薬工業株式会社,東京)を使用し,微量液体希釈法により抗真菌薬のミカファンギン(MCFG),カスポファンギン(CPFG),フルシトシン(5-FC),フルコナゾール(FLCZ),ミコナゾール(MCZ),イトラコナゾール(ITCZ),ボリコナゾール(VRCZ)およびアムホテリシンB(AMPH-B)の最小発育阻害濃度(以下,MIC)を測定した。

測定は,保存菌株をそれぞれサブローデキストロール寒天培地に播種し,37℃で24時間培養した。2回前培養を行い,発育した分離株を使用した。酵母様真菌感受性キットの添付文書に従い,キット付属の菌希釈液Aにコロニーを懸濁し,濁度計(Vi-SpecⅡ,極東製薬工業株式会社,東京)を用いてMcFarland 0.5に相当する濁度(吸光度530nm:0.08~0.1)に菌液を調整後,菌希釈液A 20μlを菌希釈液Bに加え,撹拌を行った。菌希釈液B 600μlを接種用培地に加え,薬剤乾燥固着マイクロプレートに100μlずつ分注し35℃で好気培養を行った。判定は添付文書に従い研究者1名が行った。MCFGとCPFGは24時間培養後に,その他の薬剤は24時間培養後に中間観察を行い,48時間培養後に最終判定を実施した。いずれの場合も,肉眼的に各ウェルの発育を観察し,MICを決定した。

薬剤耐性株の基準は先行研究8),9),10)に従って,以下のように各薬剤のMICを設定した。MCFG>2µg/mL, CPFG>2µg/mL, 5-FC≧32µg/mL, FLCZ≧64µg/mL, MCZ≧4µg/mL, ITCZ≧1µg/mL, VRCZ≧4µg/mL, AMPH-B>1µg/mLとした。

Ⅳ. 統計解析

C. albicansC. glabrataの抗真菌薬のMICの比較は正規性をShapiro-Wilk検定で確認した後にStudentʼs t-testを用いて解析した。統計解析には統計ソフトJMP® Pro 17(JMP® Pro 17, SAS Institute Japan株式会社,東京)を使用し,危険率は5%で有意差検定を行った。

【結 果】

Ⅰ. カンジダの検出

対象者86名の性別は男性72名(83.7%),女性14名(16.3%),平均年齢65.6±9.0歳,がんの部位は食道34名(39.5%),咽頭26名(30.2%),口腔8名(9.3%),そのほかの頭頸部17名(19.8%),食道・咽頭部重複1名(1.2%)であった。

そのうち38名よりカンジダが検出され,検出率は44.2%であった。カンジダが検出された38名の内訳は,男性33名(86.8%),女性5名(13.2%),平均年齢68.0±6.8歳,がんの部位は食道15名(39.5%),咽頭7名(18.4%),口腔4名(10.5%),そのほかの頭頸部11名(28.9%),食道・咽頭部重複1名(2.6%)であった。

Ⅱ. 分離した菌種の内訳

38名の患者から42株のカンジダを分離した。42株の内訳はC. albicansが32株(76.2%),C. glabrataが10株(23.8%)であった。38 症例中4症例(10.5%)にC. albicansC. glabrataの両菌種が検出された。

Ⅲ. 臨床分離株におけるC. albicansC. glabrataの抗真菌薬感受性

キャンディン系抗真菌薬のMCFGにおいてMIC>2µg/mLの耐性菌の検出は認められなかった。C. albicansはMIC 0.03~0.06µg/mLを示したが,C. glabrataはMIC 0.03~1µg/mLと広い分布を示し(図1),両菌種間に有意差が認められた(p<0.0001)。同系統のCPFGにおいても,MIC>2µg/mLの耐性菌は認められなかった。C. albicansはMIC 0.25~1µg/mL,C. glabrataはMIC 0.5~1µg/mLで(図1),両菌種間に有意差は認められなかった。フッ化ピリミジン系抗真菌薬5-FCではMIC≧32µg/mLの耐性菌は認められず,両菌種ともMIC 0.125~1µg/mLで(図2),両菌種間に有意差は認められなかった。アゾール系のFLCZではMIC≧64µg/mLの耐性菌は認められなかった。C. albicansのMIC 0.125~0.5µg/mLに対して,C. glabrataはMIC 1~16µg/mLと明らかに薬剤感受性が低く(図3),両菌種間に有意差が認められた(p<0.0001)。アゾール系のMCZではMIC≧4µg/mLの耐性株がC. glabrataに3株(C. glabrata検出中30%)認められた。C. albicansのMIC 0.125~1µg/mLに対して,C. glabrataのMIC 0.5~4µg/mLは薬剤感受性が低く(図3),両菌種間に有意差が認められた( p<0.0001)。同様に,アゾール系のITCZにおいてもMIC≧1µg/mLの耐性株がC. glabrataに3株(C. glabrata検出中30%)認められた。ITCZ もC. albicansのMIC 0.03~0.25 µg/mLに対して,C. glabrataはMIC 0.125~>8µg/mLと薬剤感受性が低く(図3),両菌種間に有意差が認められた( p<0.0022)。アゾール系VRCZはMIC≧4µg/mLの耐性株は認められなかったが,他のアゾール系抗真菌薬同様にC. albicansのMIC 0.015~0.03µg/mLに対して,C. glabrataのMIC 0.03~2µg/mLは薬剤感受性が低く(図3),両菌種間に有意差が認められた(p<0.0011)。最後にポリエン系のAMPH-BはMIC>1µg/mLの耐性菌は認められなかった。C. albicansのMICは0.25~1µg/mL,C. glabrataのMICは 0.5~1µg/mLと(図4),ともに感受性を示し,両菌種間に有意差は認められなかった。

図1

キャンディン系抗真菌薬のMIC分布 A:ミカファンギン(MCFG) B:カスポファンギン(CPFG)

図2

フッ化ピリミジン系抗真菌薬のMIC分布 C:フルシトシン(5-FC)

図3

アゾール系抗真菌薬のMIC分布 D:フルコナゾール(FLCZ) E:ミコナゾール(MCZ) F:イトラコナゾール(ITCZ) G:ボリコナゾール(VRCZ)

図4

ポリエン系抗真菌薬のMIC分布 H:アムホテリシンB(AMPH-B)

【考 察】

カンジダの健常人における保菌率は検出方法によって異なるが,健常人で約30~45%程度と報告されている11),12),13),14)。培養法による検出では,Majima らは20~60歳の健常者482名のカンジダの保菌率は18.3%と報告しており13),Umezawaらは22歳から27歳までの108人の学生では,30.6%の陽性率を報告している12)。Gerós-Mesquita らの報告では18歳から60歳までの181人の健常者39%が保菌者であった14)。本研究の40歳から84歳までの頭頸部がん,食道がん患者のカンジダ保菌率は44.2%であり,健常者と同程度からやや大きい結果であった。

カンジダ属真菌のうち最も分離頻度が高いのはC. albicansであり,健常者から検出されるカンジダの内80~90%を占めている11)。しかしながら近年ではnon-albicans属であるC. albicans以外のカンジダ種の増加が報告されている15)。Kamikawaらは口腔から分離されたカンジダの菌種を2006~2007年と2012~2013年とで比較したところ,2006~2007年ではC. albicansが95%を占めていたが,2012~2013年はC. albicansは86.2%から72.8%に減少し,non-albicans属のC. glabrataが増加したと報告している16)。今回の研究においては全臨床分離株のうちC. albicansが76.2%,C. glabrataが23.8%の割合で検出された。また4症例(10.5%)にC. albicansC. glabrataの両菌種が検出された。これらのがん患者が免疫低下状態になれば,口腔に常在しているカンジダが原因となり日和見感染を起こす可能性がある。

C. glabrataのようなnon-albicans属や2菌種以上の混合感染は抗真菌薬治療に抵抗性や難治性を示す報告があるため3),17),18),口腔カンジダ症を発症した際の菌種の同定は重要と考える。

近年,C. glabrataにおけるアゾール系抗真菌薬の耐性化が報告されている10)。Sakagamiらの血液感染から分離されたカンジダの感受性検査においてFLCZ, ITCZ に対して,C. albicansに耐性株は認められなかったが,C. glabrataに複数の耐性株が認められている19)。Kamikawa らの結果では2006~2007年と2012~2013年に口腔から分離したカンジダの抗真菌薬感受性を比較した結果,FLCZ, ITCZ, MCZといったアゾール系抗真菌薬に耐性を示したC. glabrataが14.1% から32.1% に増加したと報告している16)C. glabrataは,すべてのアゾール系抗真菌薬においてC. albicansと比較して有意にMICが高く,MCZ,ITCZは10株中3株(30%)が耐性株であり,FLCZでは用量依存的感性の範疇(MIC 16~32µg/mL)の株やVRCZでは耐性基準値MIC≧4µg/mLに近接する株が認められた。近年,アゾール系抗真菌薬耐性株が増加したことは,同種造血幹細胞移植を受ける患者などに対してFLCZ の予防投薬が急速に進んだことや10)C. glabrataは病原真菌としては1倍体の染色体であるため20),2倍体と比較して薬剤変異を起こしやすいことが原因であることが考えられている。今回の抗真菌薬感受性試験によってC. albicansよりC. glabrataがアゾール系抗真菌薬において有意に薬剤感受性が低く,耐性株も分離された。アゾール系抗真菌薬はMCZがミコナゾールゲル,ITCZがイトラコナゾール内用液として口腔カンジダ症の保険適応薬で頻用されている。口腔カンジダ症の原因菌としてC. glabrataが検出された場合は,アゾール系抗真菌薬の抵抗性を考える必要がある。

一方,カンジダ血症の治療において第一選択薬として推奨されているキャンディン系MCFGにおいても,C. glabrataのMICはC. albicansのMICと比較して有意に高いことから,がん周術期患者においてもC. glabrataの多剤耐性化に注意する必要があると考えられた。

ポリエン系のAMPH-Bは口腔カンジダ症においてアムホテリシンBシロップとして適応されている。血中移行がほとんどないため副作用も少なく,標準薬として様々な薬剤が投与される周術期治療中の患者における口腔カンジダ症に使用されている12)。今回,C. albicansC. glabrataともに感受性を示し,両種に有意差は認められなかった。1次耐性(遺伝的耐性や自然耐性)に対して,2次耐性(獲得耐性)は,それまで感受性だった微生物が薬剤に曝露された後起こる耐性のことを表している。5-FCやアゾール系薬剤が2次耐性を起こしやすいのに対してAMPH-Bは起こりにくいとされるが10),播種性カンジダ症の治療にAMPH-Bに対する2次的耐性化が起こった症例も認められている21)。AMPH-Bの耐性基準はガイドラインに定めれていないが,MIC>1 µg/mLと推測する文献や8),10),ブレークポイントをMIC>2 µg/mLとする文献もある10),22)C. albicansC. glabrataともにMIC 1 µg/mLとブレークポイントに近い株も認められるため,AMPH-Bの長期投薬による耐性化は今後注意すべきであると考えられた。

2016年,米国の疾病管理センター CDC(Centers for Disease Control and Prevention)は新型多剤耐性カンジダ属真菌Candida aurisのアウトブレークに対して警告を発した。この菌株は,アゾール,アムホテリシンなど複数の抗真菌薬に耐性を示すことが報告されている23)。本邦に導入されている抗真菌薬は抗菌薬と比較して種類が少ないため,第一選択薬の効果が悪い症例では,感受性試験の結果を基に,抗真菌薬の選択について再検討し,やみくもな長期投薬をさけるべきであると考える。

今回の研究の限界として,本研究は同一の患者から複数の菌種を採取しているが,マルチレベル解析等の高度解析を行わなかった。今後,症例数を増やし,高度解析を行うことで,個々の患者における菌種の薬剤耐性の違いを明らかにする必要がある。

特に頭頸部がんや食道がん患者は抗がん剤や放射線治療の周術期合併症として口腔カンジダ症や咽頭カンジダ症を頻発すると報告されている24),25),26)。また口腔カンジダ症の予防にはカンジダが粘膜に初期付着した弱い結合状態に口腔ケアを行うことが有効であることが報告されている2)。今回の頭頸部がん,食道がん患者の口腔カンジダ症発症の有無に関して検討していないが,がん治療開始前からの口腔衛生管理による口腔カンジダ症の予防が重要であることが考えられた。また今回の調査では,アゾール系だけでなくカンジダ血行感染に選択されるキャンディン系のMCFGに対してもC. glabrataのMICはC. albicansのMICと比較して有意に高かった。口腔カンジダ症を放置すれば放射線療法や化学療法による口腔や咽頭粘膜炎の増悪によってカンジダが血行感染する可能性もある。今回の検討において頭頸部がんや食道がん患者の口腔から抗真菌薬耐性株が検出されたため,がん周術期においても口腔カンジダ症を発症した際は迅速なカンジダの同定,抗真菌薬感受性試験を行うことの重要性が示唆された。歯科衛生士はがん周術期において,口腔衛生管理を行い口腔カンジダ症の予防ならびに発症の早期発見に努め,また,発症し抗真菌薬療法が行われているにも関わらず難治性を示す場合には,抗真菌薬耐性の可能性を念頭に関わる必要があると考えられた。

【結 論】

今回,頭頸部がん患者および食道がん患者を対象に口腔からのカンジダの検出状態と抗真菌薬感受性について検討を行った。その結果,分離されたC. glabrataからアゾール系抗真菌薬耐性株が複数認められた。またC. glabrataはカンジダ血症の治療に使われるMCFGに対してC. albicansと比較して有意に感受性が低かった。

がん周術期に関わる歯科衛生士は,口腔カンジダ症の発症を予防するために口腔衛生管理を徹底するとともに,口腔カンジダ症の早期発見に努め,口腔カンジダ症を発症した際には迅速なカンジダ菌種の同定と抗真菌薬感受性試験を行うことの重要性が示唆された。

:本論文に対して,開示すべき利益相反状態はない。

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