○佐久間 愛 麻生幸男
医療法人社団ワンアンドオンリー 麻生歯科クリニック
キーワード 動機づけ モチベーション 行動変容 歯周基本治療 予防
【目的】 超高齢社会の日本において健康寿命の延伸が課題となっている。歯科においては様々な全身疾患との関連性が報告されている歯周病の発症を予防し,口腔を健康に導くためには患者の行動変容が必要となる。動機づけ評価尺度に基づく質問票とは,歯周治療に対する様々な側面に関する14項目の尺度によりモチベーションスケールスコア(MSS:最高値70点)を算出・評価するものであり,歯周病患者のモチベーションを評価する信頼性の高い正確なツールであることが報告されている。今回,当院に通院する患者のMSSの評価から,歯周基本治療において口腔の健康に対するモチベーションが向上し,口腔内環境が改善された症例を報告する。なお,同意書にて患者の同意を得ている。
【症例の概要】 患者は34歳の女性。左下奥,噛んだときに痛みがあるという主訴で来院した。初診時のMSSは37であった。全顎的に口腔清掃状況は不良(PCR57.1%)であり,歯周組織に炎症所見(BOP38.1%)を認めた。治療に先立ち疾患の原因を把握し,動機づけ評価尺度に基づく質問票にて患者の口腔に対する意識を評価し,歯周基本治療を行った。
【経過および考察】 再評価時のPCRは17.9%,BOPは10.1%に減少し,口腔内環境に良好な変化が認められた。再評価時のMSSも67に上昇し,口腔の健康に対する考え方に変化が生まれ,患者自身の行動変容に繋がったと推察される。そのため,本症例では,動機づけ評価尺度に基づく質問票を活用した歯周基本治療により口腔に対する意識とともに口腔内環境を改善できたものと考える。
【結論】 歯周基本治療により口腔に対する意識とともに口腔内環境を改善できたことから,患者のモチベーションを高めることが歯周治療の一環として必要であることが示唆された。
○畑田晶子 吉田理紗 磯貝友希 新井麻実 古賀 恵 花谷早希子 永田英樹 脇坂 聡
関西女子短期大学 歯科衛生学科
キーワード 舌圧 握力 咀嚼能率 残存歯数
【目的】 口腔機能の低下を自覚していない健常成人を対象とした報告で,我々は口腔の筋力の指標としての舌圧(最大舌圧)が,舌圧および握力のいずれもが非常に低い女性被験者を除けば握力値と正相関し,年齢と関連しないことを明らかとした。本研究では,舌圧,咀嚼能率,残存歯と握力との関連について検討した。
【対象および方法】 対象は口腔機能低下を自覚していない16歳以上の男性82名,女性133名の計215名(36.6±15.9歳:平均±標準偏差)で,舌圧測定器(JMS),咀嚼能力測定用グミゼリー(UHA味覚糖株式会社)およびスメドレー式握力計を用いて舌圧,咀嚼能率,握力の測定を行った。残存歯数は残根,動揺度3の歯を除いた歯数とした。解析はSpearmanの順位相関係数を用いて行った。本研究は関西福祉科学大学研究倫理審査委員会の承認を得て行った(承認番号20-14)。
【結果および考察】 本調査対象者215名では,舌圧と咀嚼能率(r=0.236,p<0.01),舌圧と残存歯数(r=0.213,p<0.01),咀嚼能率と残存歯数(r=0.267,p<0.01)に有意な相関関係が認められた。また,統計学的に有意な相関関係は示されなかったが咀嚼能率と握力には相関傾向が認められた(r=0.121,p=0.076)。
【結論】 口腔機能低下を自覚しない成人では,舌圧,咀嚼能率,残存歯数は関連しており,適切な舌圧や残存歯数の維持が,口腔機能の指標の一つである咀嚼能率の維持に関わっていることが示唆された。
○吉田乃梨加 田村享子 服部由起子 田中絵美 竹島万貴 吉永志津加 嶋吉 咲 前川美咲 中尾一祐
京都大学大学院医学研究科 感覚運動系外科学講座 口腔外科学分野
キーワード 尋常性天疱瘡 口腔ケア 口腔健康管理 金属アレルギー
【目的】 尋常性天疱瘡は,口腔粘膜や皮膚に認められる疼痛を伴う難治性のびらん,潰瘍を特徴とする自己免疫性水疱症であり,摂食不良や口腔清掃不良を引き起こすことがある。今回われわれは,尋常性天疱瘡患者に対し,継続的な歯科介入を行い良好な結果を得たため報告する。
【症例の概要】 患者は58歳女性。既往歴は脳梗塞,高血圧,金属アレルギーであった。20XX年6月より,口腔内の難治性のびらん形成と疼痛を主訴にかかりつけ歯科を受診した。経過観察を行っていたが,症状悪化し摂食困難となったため精査加療目的に当科紹介され受診した。発表に際して,本人からの同意を得ている。
【経過および考察】 初診時の口腔内所見としては,両側頬粘膜,口蓋に難治性のびらん形成を認めた。天疱瘡を疑い,皮膚科に対診したところ,組織検査結果と抗デスモグレイン3抗体価が上昇していたことから尋常性天疱瘡と診断された。20XX年8月に入院下に皮膚科でステロイド療法や血漿交換などの加療が開始された。当科では難治性のびらんによる疼痛や出血によりセルフケアが困難であったため,口腔衛生管理と口腔内の状態に合わせたセルフケアの指導を行った。尋常性天疱瘡の治療は難渋したが,皮膚科での治療の継続により徐々に改善を認めた。しかし,皮膚病変と比較して口腔病変の改善が乏しかった。そこで金属製の補綴物が増悪因子となっている可能性を疑い,口腔内の金属製の補綴物を除去した。その後,口腔病変は徐々に改善し20XX+1年2月に退院となった。
【結論】 本症例は,金属製の補綴物除去後に口腔病変が改善したことから,増悪因子であった可能性が考えられた。また,長期にわたる継続的な歯科介入により,病変の状況に合わせた適切な口腔健康管理を行うことで,疼痛緩和や感染予防に繋がったと考えられた。
○森塚未紗 田村有梨沙 石﨑未祐 川﨑佳代子 高野美紀 安藤 妹 小寺裕子 伊藤敏恵 谷口美奈子
幸町歯科口腔外科医院
キーワード 唾液検査 生活習慣 口腔環境 喫煙
【目的】 飲酒や喫煙といった日々の生活習慣が,口腔環境が悪化するリスク(以下,口腔環境リスク)に影響を及ぼすことは多く報告されている。歯科衛生士による生活習慣指導により口腔環境リスクの低減に努めているが,口腔環境の数値化が難しい状況では必ずしも患者が理解し,行動変容に繋がるわけではない。今回,口腔内環境を数値化できる,多項目測定唾液検査(SillHa®アークレイ社)を用いて,患者の生活習慣と口腔環境リスクの関連性を調査した。
【対象および方法】 当院を2024年1月〜3月に受診し本調査に同意した188名を対象とした。生活習慣項目として「年齢」「性別」「BMI」「喫煙習慣」「飲酒習慣」の質問紙調査を行い,口腔環境を把握するため唾液検査「むし歯菌」「酸性度」「緩衝能」「白血球」「タンパク質」「アンモニア」を行った。生活習慣項目とに,対象患者を2群に分け,唾液検査結果における差を検討した。本調査は,アークレイ株式会社倫理審査委員会の承認を得て実施した(EC610009)。
【経過および考察】 患者の平均年齢は56.2歳,男性85名・女性103名であった。喫煙者では非喫煙者と比較して「白血球」(p<0.05)と「アンモニア」(p<0.01)で有意に高値であった(Mann-Whiteny U検定)。またそれぞれのオッズ比は2.41と2.76であり,リスク比は1.37と2.14であった。その他の項目では関連性は認められなかった。対象者の96%は歯周病安定期の状態であった為,治療後においても喫煙は「白血球」と「アンモニア」の増加に影響を与える可能性が考えられた。
【結論】 喫煙は歯周病治療の有無に伴わず,歯肉の炎症と口臭のリスクを上げることが明らかになった。生活習慣指導において数値として評価する唾液検査は禁煙ツールとしての活用が可能である。
○藤川慶乃1) 綿松静香1) 吉田美和1) 伊地知由賀1) 木下小百合1) 畠中利英1) 仲川洋介2) 桐田忠昭2)
1)奈良県立医科大学附属病院医療技術センター
2)奈良県立医科大学口腔外科学講座
キーワード 周術期口腔機能管理 患者満足度調査 アンケート
【目的】 周術期口腔機能管理を実施したことによる合併症軽減の研究はこれまで多く報告されているが,患者満足度の研究は少ない。そのため周術期口腔機能管理への満足度と口腔衛生管理の重要性に関する認識度を明らかにするためにアンケートを行った。
【対象および方法】 2024年1月および2月に当院で全身麻酔手術を予定し,当部門が介入した患者286名を対象にアンケートを行った。本研究は奈良県立医科大学医の倫理審査委員会の承認を得て実施した(研究番号3702)。
【結果および考察】 アンケートを回収できたのは261名(回収率91%),男性138名,女性123名であり,平均年齢は68歳であった。アンケート結果は「当部門受診について理解しているか」は93%が「はい」と回答しており,「専門的口腔ケアを受けてどうだったか」は「大変満足」と「満足」が合わせて95%であった。「口腔ケア後口腔内へ関心を持つようになったか」はもともと関心があった患者を除くと,62%が「関心を持った」と答えた。「退院後かかりつけ歯科で定期口腔衛生管理を受けたいと思うか」は,すでに定期受診している患者を除くと,「非常に思う」と「思う」が合わせて72%であった。今回のアンケートで患者の満足度は非常に高い結果であった。これは麻酔科医や看護師など当センター各職種の丁寧な対応と説明が患者の理解を促進し,全体の満足度を上げる一助になったと考えられる。また口腔内に関心を持った患者,新たに定期口腔衛生管理を「受けたい」と答えた患者が半数以上いたことから,当部門受診が退院後に地域の歯科を受診する契機となることが示唆された。
【結論】 当部門受診により患者に全身管理と口腔衛生管理の重要性を知ってもらう機会になったと考えられる。
○帆北友紀1) 鉛山光世1) 山口泰平2,3)
1)鹿児島大学病院医療技術部歯科衛生部門
2)鹿児島大学大学院医歯学総合研究科予防歯科学分野
3)鹿児島大学病院歯科口腔ケアセンター
キーワード 造血器腫瘍 口腔レンサ球菌 血流感染
【目的】 造血器悪性腫瘍は病態だけでなく,化学療法や造血細胞移植の前処置などの処置によって,大きな感染リスクを負い,時として血流感染を引き起こす。一部の症例では血液培養で口腔レンサ球菌が検出されるが,口腔の状態や全身状態との関連は不十分であるため,後方視的に解析した。
【対象および方法】 2013年4月1日から2020年3月31日までに某急性期病院において造血器腫瘍と診断され加療を受けた症例の中で,血液培養陽性になった124症例を対象にした。この中で口腔レンサ球菌が検出された症例とその他の菌が検出された症例を基礎疾患の有無,血液データ,口腔の状態について解析を行った(倫理番号鹿大190011疫-改1)。
【結果および考察】 調査した症例のうち口腔レンサ球菌が検出されたのは17件であった。口腔レンサ球菌が検出された症例とその他の菌が検出された症例で差があったのは白血球数,初診時の最大歯周ポケット深さであった。ロジスティック回帰分析でも2項目に有意差を認めた。検出された菌の局在別に白血球数と,初診時の歯周ポケット深さについて多重比較を行ったところ,白血球数では口腔レンサ球菌と表皮常在菌,真菌で有意差を認めたが,初診時の歯周ポケット深さはどの局在別とも有意差を認めなかった。口腔レンサ球菌は白血球数が低値にならないと検出されないことも示唆された。
【結論】 口腔細菌による血流感染の発症は調べた口腔の状態では,歯周ポケットの深さに関連があった。これは病的な歯周ポケットの深部の日常的な炎症性の微量出血により,歯垢中の常在菌が感染する可能性が主な機序であることを示唆した。
○小田島あゆ子1) 柴田由美2,3) 木村有子2,3) 船山昭典4) 新美奏恵5) 三上俊彦6) 原田由香7) 小林正治4) 隅田好美8)
1)新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔生命福祉学講座
2)昭和大学歯科病院歯科衛生室
3)昭和大学大学院保健医療学研究科
4)新潟大学大学院医歯学総合研究科顎顔面再建学講座組織再建口腔外科学分野
5)新潟大学医歯学総合病院患者総合サポートセンター
6)新潟県厚生農業共同組合連合会新潟医療センター歯科・口腔外科
7)大阪公立大学大学院現代システム科学研究科
キーワード 口腔がん 高齢者 フレイル EORTC QLQ-H&N35
【目的】 高齢口腔がん患者における術後の障害はフレイルに影響を与える可能性がある。本研究は高齢口腔がん患者におけるQOLおよびフレイルの関連を明らかにすることを目的とした。
【対象および方法】 65歳以上の高齢口腔がん患者68名を対象とし,性別,年齢,簡易フレイルインデックス,口腔がんの種類と術後経過年数,EORTC QLQ-H&N35について質問紙調査を行った。簡易フレイルインデックスのフレイルとプレフレイルを合わせてフレイル傾向,EORTC QLQ-H&N35の18項目の各スケールにおいて0点を問題無とし,それぞれ2群に分けた。フレイル傾向およびEORTC QLQ-H&N35についてクロス集計を行い,有意差が出たEORTC QLQ-H&N35の項目においてその他のスケールとの関連を分析した。本研究は新潟大学および昭和大学歯科病院の倫理審査の承認を得て実施した(承認番号2019-0325,SUDH0022)。
【結果および考察】 対象者は男性が43名(63.2%)を占め,後期高齢者は42名(61.8%)であった。口腔がんの種類は舌がん27名(39.7%)が最も多く,術後経過年数は1年以上5年未満が44名(64.7%)であった。フレイル傾向あり群における社交上の問題を感じている者および体重減少がある者の割合は,フレイル傾向なし群に比べて有意に高かった。社交上の問題は嚥下障害,発話の問題,食事の問題,開口障害,口腔乾燥,粘液性唾液,咳嗽,違和感・不調の自覚および栄養補助と有意な関連があり,体重減少とその他のスケールに有意な関連はみられなかった。
【結論】 高齢口腔がん患者における社交上の問題および体重減少はフレイル傾向とそれぞれ関連することが明らかになり,社交上の問題は口腔がん特有の障害による影響の可能性が示唆された。
○松本明日香1) 柴田佐都子1) ステガロユ ロクサーナ1) 小川友里奈1) 池田吉史2) 大内章嗣1)
1)新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔生命福祉学講座
2)東京学芸大学教育学部
キーワード 歯磨き行動 知的障害者 実行機能 質問紙 因子分析
【目的】 本研究は,先行研究にて成人知的障害者を対象として作成された実行機能と関連する歯磨き行動の質問紙(以下,EF-TB)を検証し,知的障害者の歯磨き行動を把握することを目的とした。
【対象および方法】 調査群として障害福祉施設6施設の通所者92名,対照群として企業1社の社員関係者と大学1校に在籍する健常者70名を対象とし,EF-TBと実行機能の質問紙(DEX)による質問紙調査を実施した。EF-TBの因子妥当性検証のため,調査群の回答結果を用いて探索的因子分析を行った。α係数による内的整合性と,I-T相関による内的一貫性により信頼性を検討した。判別的妥当性検討のためEF-TBの各因子と質問紙全体の得点において群間比較を行い,併存的妥当性は外的基準としたDEXとの関連性によって検討した(p<0.05)。(新潟大学倫理審査委員会承認番号2019-0320)
【結果および考察】 3因子を抽出し,因子1「歯磨き行動の計画的遂行」,因子2「歯磨き行動の持続的遂行」,因子3「歯磨き行動の開始・終了」と命名した。各因子のα係数は0.926~0.946であり,I-T相関はρ=0.535~0.834であったことから内的整合性と内的一貫性が示され,信頼性が検証された。因子ごとの小計得点と質問紙全体の合計得点は対照群と比較して調査群が有意に低く,歯磨き行動に困難さがあることが明らかになったことから,EF-TBが判別的妥当性を有することが示された。また,合計得点においてDEXとの間に有意な相関があり,併存的妥当性を有することが示された。
【結論】 EF-TBは成人知的障害者の実行機能に関連した歯磨き行動を評価するための有効な質問紙であることが明らかになり,今後の歯磨き行動の支援に活用できると考えられた。
○加藤美結 永嶺愛美 安藤千賀子 河島美帆 土田果穂 大塚智子 石田杏果 百合草健圭志 落合駿介 野津昭文
静岡県立静岡がんセンター
キーワード 導入化学療法 歯性感染症 口腔衛生管理 骨髄抑制 リスク因子
【目的】 がんの根治を目指す手術や化学放射線療法の前に行われる導入化学療法(以下,ICT)は,初回治療となることが多い。化学療法にともなう骨髄抑制は歯性感染症を惹起し,がん治療の妨げとなる可能性があり,治療前からの口腔管理が重要である。本研究では,ICT中の歯性感染症の発症頻度とリスク因子を調査し,リスク評価項目を明らかにすることを目的とした。
【対象および方法】 2020年4月から2023年3月にICTを行った食道がん(53名)および頭頸部がん(79名)患者132名を対象とした。歯科治療として全身または局所的な抗生剤を投与した場合を歯性感染症と定義し,診療録を後ろ向きに調査した。人単位の統計解析では,患者背景や口腔内因子などをリスク項目とした。ケース・コントロール研究として,リスク評価できた歯性感染症発症群8名と背景因子で調整した非発症群16名の2群間で,初診時の口腔内評価(6mm以上のPPD,BOP,動揺度)やパノラマX線所見(根尖透過像,垂直性骨吸収像)について解析を行った(倫理審査番号:J2024-8-2024-1)。
【結果および考察】 歯性感染を発症したのは132名中9名(6.8%,95%信頼区間3-12%)であった。性別では男性(OR2.35),口腔衛生非良好群(OR3.47)にリスクが高い傾向がみられたが,統計的有意差はなかった。ケース・コントロール研究の解析ではPPD6mm以上(OR13.56,p=0.03),BOP(OR3.05),動揺歯(OR6.33),根尖透過像(OR2.13),垂直性骨吸収像(OR3.92)であった。これらの項目と歯性感染の発症には相関が強い傾向にあり,リスク評価において重要な指標となる可能性がある。
【結論】 本研究におけるICT中の歯性感染の発症頻度は6.8%であり,初診時の6mm以上のPPDがリスク因子であることが示唆された。
○柴田佐都子1) 小川友里奈1) 松本明日香1) 池田吉史2) ステガロユ ロクサーナ1) 濃野 要1) 大内彰嗣1)
1)新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔生命福祉学講座
2)東京学芸大学教育学部
キーワード 障害者福祉施設 知的障害者 口腔衛生状態 実行機能 社会生活年齢
【目的】 演者らは福祉施設通所の知的障害者(知的障害者)に対して,歯磨き行動を実行機能の観点から評価し,困難さが認められた歯磨き行動の計画的遂行を補う歯磨き指導・支援(指導・支援)を行った。本研究では,指導・支援の効果とその関連要因を検討することを目的とした。
【対象および方法】 新潟市内の障害者福祉施設7施設の知的障害者29名(平均年齢32.0±8.8歳)を対象に,実行機能の支援として視覚支援媒体を用いて,歯科衛生士による週1回,計6回の指導・支援を行った。口腔衛生状態の評価にはDI-Sを用いて,指導・支援の前後で比較した(Wilcoxonの符号付き順位検定)。また,指導・支援後における口腔衛生状態の関連要因の検討として性別,療育手帳の種類(A,B),障害重複の有無,遂行機能障害の評価結果(DEX),社会生活年齢(SA),語い年齢を用いて単回帰分析と重回帰分析(変数減少法)を行った(新潟大学倫理審査委員会承認番号:2019-0320)。
【結果および考察】 DI-Sは指導・支援の前後で有意に減少した[中央値(四分位範囲),前1.00(0.83-1.33),後0.67(0.50-0.83),p<0.01]。また,指導・支援後のDI-S値との関連要因の検討は,単回帰分析の結果を基に独立変数をSA,DEXと障害重複の有無とした。その結果,最終的な重回帰モデルではSAのみ有意な関連が認められ(p=0.02),本対象者の指導・支援には,実行機能を補うことに加えてSAを考慮した支援が必要であると考えた。
【結論】 歯科衛生士による実行機能を補う歯磨き指導・支援は福祉施設通所知的障害者の口腔衛生状態の改善に効果を示した。その指導・支援に社会生活年齢も考慮することで指導方法のさらなる改善につながることが示唆された。
○本田尚郁1) 船原まどか1) 野瀬可奈子2) 青木恵美2) 五月女さき子3) 柳田憲一2) 中道敦子1)
1)九州歯科大学歯学部口腔保健学科
2)地方独立行政法人福岡市立病院機構福岡市立こども病院小児歯科
3)長崎大学大学院医歯薬学総合研究科口腔保健学
キーワード 乳幼児 心臓血管外科手術 口腔衛生管理 ポビドンヨード 口腔細菌数
【目的】 近年,成人の周術期口腔衛生管理方法では唾液中細菌に焦点を当てた検討が増加している。しかし,先天性心疾患手術などで対象となる乳幼児は歯の萌出前であることが多く,口腔内の環境・状況が成人と異なることから別途検討を行う必要がある。現在,乳幼児の周術期口腔衛生管理として口腔内清拭が行われているものの,水や含嗽剤を用いるなど方法については統一がなされていない。本研究では,心臓血管外科手術対象の乳幼児に対する口腔衛生管理の方法について,清拭前後の唾液中の細菌数を指標に検討を行うことを目的とした。
【対象および方法】 先天性心疾患の手術を受ける乳幼児102名に対し,清拭前後(手術前および手術後)の唾液を採取した。手術前の清拭では水を用いて口腔衛生管理を行った。手術後は水群(WA群),塩化ベンゼトニウム群(BZ群),ポビドンヨード群(PV-I群)の3群に無作為に割り付けた。口腔衛生管理は歯科衛生士が実施した。細菌数は採取唾液を検体として細菌培養を行い,コロニー数を細菌数とした。なお,本研究は九州歯科大学倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:21-40)。
【結果および考察】 手術前の水による口腔衛生管理では,清拭前後の細菌数に有意差はみとめなかった(p=0.207)。手術後のWA群とBZ群では清拭前後の細菌数に有意差はみられなかったが,PV-I群では清拭後の細菌数が有意に減少した(p<0.001)。
【結論】 心臓血管外科手術を受けた乳幼児に対する口腔衛生管理の方法を検討した結果,手術後のPV-I含有含嗽剤を用いた清拭は唾液中細菌数を減少させることが示唆された。
○鈴木 瞳1) 杉本久美子2) 安達奈穂子2) 森岡典子3) 柏木聖代3) 高澤維月1,4) 吉田奈永5) 吉田直美1)
1)東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科口腔健康教育学分野
2)東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科口腔疾患予防学分野
3)東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科ヘルスサービスリサーチ看護学分野
4)明海大学 保健医療学部口腔保健学科
5)東京医科歯科大学病院オーラルヘルスセンター
キーワード 多職種連携教育 RIPLS IEPS 社会的スキル
【目的】 近年,歯科衛生士の教育において,多職種連携教育が重視され,様々なプログラムが実施されるようになったが,連携教育に関する評価指標を用いて,教育効果を検証した報告は見られない。本研究では,他の医療専門職で使用されている多職種連携教育に関する尺度を用いて歯科衛生学生における連携教育効果を調べ,評価尺度の有用性を検討したので報告する。
【対象および方法】 某大学の歯科衛生学生4年18名のうち,看護学生との連携授業を受講した者を対象とした。授業の前後において,多職種連携学習への準備性・志向性尺度(以下RIPLS),多職種連携教育への認識尺度(以下IEPS),および連携に求められる社会的スキルに関する尺度を用いたWeb調査を実施し,歯科衛生教育評価におけるこれらの尺度の有用性について検討した。本研究は東京医科歯科大学統合教育機構倫理審査委員会の承認を得て実施した(C2022-011)。
【結果および考察】 15名より回答を得た(回収率83%)。RIPLS合計値は,授業後に有意に上昇し,下位項目のうち「チームワーク・協働」で有意な上昇を認めた。IEPSは授業前後で有意な変化を認めなかったものの,自職種の自律性や連携能力に関する項目で肯定的回答が増加した。社会的スキルも有意な変化を認めなかったが,意見が異なる対象者とうまくやれるかといった項目において肯定的回答が増加した。連携授業後のこれらの尺度評価の変化より,他学科との連携教育の一定の効果が示された。
【結論】 医療系専門職で利用される多職種連携教育に関する尺度は,歯科衛生学生の連携教育効果の評価に応用可能であることが示唆された。今後,歯科衛生学生における多様な多職種連携教育の場で,これらの尺度を用いた教育効果の検証を重ねる予定である。
○稲垣幸司1-3) 豊田麻湖1) 南川千咲1,4) 谷口 凜1,5) 正木優妃乃6) 八柳春菜3) 高阪利美3) 稲葉幸二7) 大畑正人8) 犬飼順子1)
1)愛知学院大学短期大学部
2)愛知学院大学歯学部歯周病学講座
3)愛知学院大学短期大学部歯科衛生士リカレント研修センター
4)山田歯科医院
5)クラウン歯科名古屋中村院
6)新潟大学歯学部歯学科
7)いなば歯科医院
8)おおはた歯科クリニック
キーワード カンボジア 歯肉メラニン色素沈着 喫煙 健診
【目的】 カンボジアへの歯科ボランティア活動を通して,小学校児童の口腔の現状を把握するため,口腔内健診,口腔清掃指導を実施した。
【対象および方法】 対象は,某孤児院の児童20名,某小学校の児童267名で,口腔内健診,口腔清掃指導,歯科啓発活動等を実施した。なお,口腔内健診は,清涼飲料水,間食,口腔清掃習慣,家族の喫煙歴に関する問診票と乳歯,永久歯のう蝕,欠損,処置歯,歯肉メラニン色素沈着等を調査した。なお,本研究は,愛知学院大学短期大学部倫理委員会の承認を受けて実施した(承認番号24-001)。
【結果】 某孤児院小学生20名は,口腔清掃は,全員が行い,嗜好飲料や間食は,いずれも摂取していなく,乳歯,永久歯のう蝕経験歯数は,3.4±3.6(中央値2.0)であった。同居者に喫煙者はいなかったが,歯肉メラニン色素沈着が上顎60%,下顎55%に見られた。一方,某小学校児童267名では,ジュースをよく飲む児童32%,おやつをよく食べる児童42%,口腔清掃を行っていた児童は,87%であった。家族に喫煙者のいる児童は,30%で,乳歯,永久歯のう蝕経験歯数は,7.4±4.5(中央値7.0)であった。歯肉メラニン色素沈着は,受動喫煙曝露児童80名では,上顎74%,下顎78%,一方,受動喫煙非曝露児童186名では,上顎72%,下顎68%となった。
【結論】 某孤児院に比べ,某小学校では,嗜好飲料や間食が多く,口腔清掃頻度の少なく,乳歯,永久歯のう蝕経験歯数やその比率が高い傾向にあった。また,家族に喫煙者のいる受動喫煙曝露児がより多く,歯肉メラニン色素沈着の頻度も高かった。口腔に関する正しい認識の普及等の啓発が急務であると考えられた。
○相原喜子 大矢幸慧 野中麻衣 増田麻里 犬飼順子
愛知学院大学短期大学部歯科衛生学科
キーワード 若年者 口腔機能 口唇閉鎖力 舌圧 口腔乾燥
【目的】 若年者における口腔機能の特徴を把握し,口腔機能の低下を示す兆候を早期に発見することは,すべてのライフステージでの口腔機能の維持・促進を進めていく上で重要である。本研究では,若年者の口腔機能検査の計測データから,口唇閉鎖力と舌圧,口腔湿潤度との関連を明らかにすることを目的とした。
【対象および方法】 A短期大学部歯科衛生学科307名(2021年度2年生104名,2022年度2年生103名,2023年度2年生100名,平均年齢19.2±0.4歳,すべて女性)の口腔機能検査の結果を対象とした。口唇閉鎖力は「りっぷるくん®」,舌圧は「JMS舌圧測定器 TPM-01®」,口腔湿潤度は「口腔水分計ムーカス®を用いて測定した。基準値については,口唇閉鎖力は口腔機能発達不全症,舌圧と口腔湿潤度は口腔機能低下症の診断基準を用いた。愛知学院大学短期大学部倫理委員会(承認番号24-004)の承認を得て行った。
【結果および考察】 口唇閉鎖力の平均は6.4±3.1N,舌圧の平均は36.9±7.9kPa,口腔湿潤度の平均は28.7±3.3であった。舌圧と口腔湿潤度は基準値に達していたものの,口唇閉鎖力は基準値より低かった。相関分析にはSpearmanの順位相関係数(p<0.05)を用いた。その結果,口唇閉鎖力と舌圧において0.28(p<0.01)で有意な正の相関が認められた。口唇閉鎖力と口腔湿潤度,舌圧と口腔湿潤度において相関関係は認められなかった。
【結論】 本研究では,若年女性者において口唇閉鎖力が低値であり,口唇閉鎖力と舌圧の関連性が示唆された。この結果を踏まえて,今後も若年者の口腔機能に関する研究を継続的に取り組んでいく。
○近藤淳子1) 塚田しげみ1) 坂本裕里子1) 筒井亜香里1) 中村夢衣1) 桜井花菜1) 朴沢美生2) 中村由紀2) 早崎治明2)
1)新潟大学医歯学総合病院医療技術部歯科衛生部門
2)新潟大学大学院医歯学総合研究科小児歯科学分野
キーワード 低ホスファターゼ症 乳歯早期脱落 口腔衛生管理
【目的】 低ホスファターゼ症(以下HPP)はアルカリフォスファターゼという酵素の活性低下のため骨や歯の石灰化に障害が起こる遺伝性疾患である。乳歯の早期脱落が特徴的で歯科との関りが深く長期にわたる口腔管理が必要とされる。今回,周産期重症型HPPの兄妹の口腔衛生管理を経験したので報告する。なお,報告にあたり保護者の同意を得ている。
【症例の概要】 患者:初診時年齢 兄;2歳1カ月,妹;1歳1カ月,ともに周産期重症型HPPの診断で生後すぐに酵素補充療法が開始され現在まで継続。主訴:かかりつけ当院小児科から口腔管理依頼。既往歴:兄;重度知的能力障害,自閉スペクトラム症,心室中隔欠損症,妹;軽度知的能力障害。所見:兄は上顎乳中切歯に動揺があり,全顎的にエナメル質形成不全で実質欠損を認めた。妹も全顎的なエナメル質形成不全を認めた。特に兄は仕上げ磨きに対して非協力で口腔衛生状態不良であった。
【経過および考察】 管理開始後もHPPによる乳歯の動揺が生じ,結果的に兄は5歳時までに15本,妹は4歳児までに4本の乳歯を喪失した。妹は3歳8か月時より下顎小児義歯の使用を開始,残存する動揺歯には隣接歯との固定処置,実質欠損を伴う形成不全歯には被覆処置を行った。現在兄10歳,妹8歳,定期的に歯周検査とスケーリング,仕上げ磨きの指導を行っており,ともに歯周ポケットは平均3~4ミリで歯肉の炎症は軽度である。兄妹ともに萌出中の永久歯にも形成不全を認め,咬合面にはグラスアイオノマーセメントで暫間填塞を行っている。
【結論】 HPPにおける歯周炎はセメント質の形成不全に由来し,一般的な歯周炎発症機序とは異なるが,プラークコントロールを基本とした継続的な歯周管理が重要である。現在萌出中の永久歯にも形成不全を伴うことから齲蝕予防も含めた口腔衛生管理を継続していきたい。
○金池千香子 堂井真理 遠山菜穂 石月公美子 齋藤泰晴
総合リハビリテーションセンターみどり病院
キーワード 口腔健康管理 誤嚥性肺炎 低栄養 食形態 咬合三角
【目的】 当院は障害者施設等一般病棟・医療療養病棟・回復期リハビリテーション病棟・地域包括ケア病棟からなる261床の病院で2020年に歯科衛生士が新規採用された。今回歯科衛生士採用前後の誤嚥性肺炎発症率を比較,さらに誤嚥性肺炎発症患者の全身状態,口腔と栄養との関係について調査しリスク患者の傾向を知り得たため報告する。
【概要および方法】 2018~2021年の歯科衛生士採用前後計4年間に当院入院中に発症した誤嚥性肺炎発症率を比較した。また誤嚥性肺炎を発症した患者240名の性別・年齢・主病名・日常生活自立度・入院時口腔アセスメントガイド(以下OAG)・食形態・アルブミン値・残存歯数・咬合三角・義歯の使用状況と適合について調査した。医療法人新成医会総合リハビリテーションセンターみどり病院倫理委員会承認番号:2024-001
【経過および考察】 歯科衛生士採用後,誤嚥性肺炎発症率は27%減少した。誤嚥性肺炎発症患者は男性が多く,平均年齢78歳,脳神経疾患や脳血管疾患患者が多くを占め,日常生活自立度はCが全体の75%,入院時OAGは平均14点,残存歯数は平均17.2本,刻み食を境にアルブミン値は低値(3.0g/dl以下)を示し経管栄養群が最低値となった。経口摂取者のうち咬合欠陥群では義歯装着率が低く咀嚼を考慮し食形態を刻み食以下とする傾向にあり,咬合消失群では義歯装着はされているものの不適合者が73%とそれぞれに問題を抱えていた。
【結論】 残存歯数の減少は,食事と栄養の偏りに関係があるとされ,また食形態の低下も十分な栄養摂取が得られず低栄養に陥りやすい。有病高齢者における誤嚥性肺炎予防は徹底した口腔衛生管理の継続と,咀嚼可能な口腔状態の維持向上が求められ,入院早期から包括的口腔健康管理を開始することが肝要であると考えられた。
○五十嵐有伊子 柿内果歩 加藤 栞 孫田育美 堀 萌 鈴木美佳 藤田亜希子 渡辺秀紀 森 良之
自治医科大学附属さいたま医療センター歯科口腔外科
キーワード Pyodermatitis-pyostomatitis vegetans 潰瘍性大腸炎 口腔衛生管理
【目的】 多くが潰瘍性大腸炎に合併するPyodermatitis-pyostomatitis vegetans(以下,PD-PSV)は,口腔,頭頚部,腋窩,陰部などに膿胞や増殖性局面を呈する稀な疾患である。今回,PD-PSVによって重篤な口腔粘膜炎を発症した患者の口腔状態の改善に,口腔衛生管理が寄与した一例を経験したため報告する。
【症例の概要】 22歳男性。口唇・口腔内のびらん・疼痛と体幹の水疱を主訴に皮膚科に入院し,口腔内精査および食形態や経口摂取開始時期の相談目的に当科紹介となった。本症例の発表に関して,ご本人に同意書にて同意を得た。
【経過および考察】 当科初診時,口唇・両頬粘膜・口蓋に有害事象共通用語規準(CTCAE)v3.0によるGrade3の口腔粘膜炎を認め,疼痛により会話および経口摂取困難であった。皮膚症状では,下顎にざ瘡,体幹に緊満性水泡と黄色組織を伴う紅斑を認めた。皮膚科にて,潰瘍性大腸炎に合併する疾患を精査中であり,ステロイド治療が開始されていた。当科では,口腔衛生管理介入を開始し,清掃不良かつ開口困難なため,アズノールキシロカイン含嗽薬・軟膏での頻回の含嗽と保湿,タフトブラシでのブラッシングを段階的に指導した。口腔衛生管理介入11日目に皮膚科にてステロイドパルス療法が施行され,13日目に口腔内の自覚症状と皮疹の改善,22日目に会話可能および粘膜炎の改善を認めた。退院後,外来での口腔衛生管理を継続していたが,粘膜炎の再燃と改善を繰り返した。その後,粘膜炎が概ね治癒し,当科へ通院困難になったことから,今後は近歯科医院へ受診することになった。
【結論】 PD-PSVの治療には,ステロイド内服が有効だが,減量や中止に伴って多くが再燃していることが報告されている。そのため,易再発性を理解した上で,患者への歯科衛生指導および定期的な口腔衛生管理が必要である。
○柏井伸子
有限会社ハグクリエイション
キーワード インプラント メインテナンス 口腔外バキューム ビニールエプロン
【目的】 口腔インプラント治療では解剖学的制約などで補綴物がオーバーカウンツァーとなり,メインテナンス時にラバーカップなどの回転器具よりも,細部にまで到達できるエアーアブレージョンが効果的である。しかし口腔外バキュームや個人防護具の使用による汚染対策が必須となるため,施術者の被爆程度と対応策について検討した。
【概要および方法】 Smile Innovations Alliance社模型BBK-A-2108Aにニッシン社人工プラークを塗布し,ナカニシ社バリオスコンビプロとペリオメイトパウダーにて東京技研社フリーアーム使用の有(以下A),無(以下B)で,各10回除去した。その際に着用したモレーンコーポレーション社ゼロエプロンの胸部30cmX30cmをキッコーマンバイオケミファ社ルシパックA3で拭き取り,同社ルミテスターにてAMP(Adenosine monophosphateアデノシン一リン酸),ADP(Adenosine diphosphateアデノシン二リン酸),ATP(Adenosine triphosphateアデノシン三リン酸)を測定し,RLU(Relative Light Unit)値で比較した。
【結果および考察】 最大値・最小値・中央値は,それぞれAが253/64/123,Bが97/21/49となり,マンホイットニーのU検定の結果,有意水準5および10%の両水準の棄却限界値より小さく,AとB間には有意差ありと判断された。
【結語】 インプラントの長期的安定には継続的メインテナンスが重要で,その際には施術者の安全性が確保されなければならない。本検証で飛沫対策の一例が実証され,環境整備や個人防護具使用という標準予防策遵守の重要性が明確となった。
○松尾実咲1,2,3) 永松有紀1) 邵 仁浩2) 池田 弘1)
1)九州歯科大学 生体材料学分野
2)九州歯科大学 口腔保健学
3)九州歯科大学附属病院
キーワード フッ素 CAD-CAM冠 コンポジットレジン
【目的】 フッ素は,う蝕予防を目的として多様な製品に添加されている。一方で,フッ素が歯冠修復物の劣化を引き起こす可能性が先行研究で指摘されている。そこで本研究では,フッ素配合歯磨剤がCAD-CAM用コンポジットレジンの物性に及ぼす影響を検証する。
【方法】 CAD-CAM用コンポジットレジンブロックとしてセラスマート300(ジーシー)を使用した。このブロックを板状に切り出し,鏡面研磨した試料を作製した。歯磨剤として,市販のフッ素含有歯磨剤(1450ppmF:歯磨剤A,B,C,D,E,F,G)を用いた。各歯磨剤を試料に塗布し,37℃で14日間保存後,洗浄し,試料のSEM観察と光沢度の測定を行った。光沢度の結果は,一元配置分散分析を行い,ダネット検定で未処理試料と各歯磨剤処理試料の値を比較した(p<0.05)。
【結果および考察】 SEM観察結果より,歯磨剤A,B,C,Dを用いた試料では,コンポジットレジンのフィラーの溶解が確認された。光沢度については,未処理試料(29±4)に対し,歯磨剤A(1±1),B(5±3),C(8±3),D(10±2),E(19±4)で有意な低下が見られたが,F(28±5)とG(28±8)は未処理試料と有意差はなかった。今回使用した歯磨剤はフッ化ナトリウム,フッ化第一スズ,モノフルオロリン酸ナトリウムが含まれる。このフッ素が電離してフッ素イオンとなり,フィラー中のシリカと反応することでフィラーが溶解し,光沢度が低下したと考えられる。歯磨剤によって劣化の程度が違うのは,歯磨剤に含まれる他の成分が関係していると推測される。
【結論】 フッ素配合歯磨剤は,CAD-CAM用コンポジットレジンのフィラーを溶解し,光沢度を低下させる可能性があることが示唆された。
○山口千緒里
ブローネマルク・オッセオインテグレイション・センター
キーワード 口腔インプラント インプラント埋入手術 医療用マイクロファイバークロス 拭き取り比較検証
【目的】 インプラント埋入手術の埋入窩形成中には,ドリル表面に骨片や血液等が付着する。ドリル再使用に際しては,形成窩にこれらの汚染物を迷入させない配慮は,オッセオインテグレーションを獲得する上で重要である。ドリル表面の拭き取りには滅菌精製水により加湿された滅菌ガーゼを用いるが,綿繊維残留の危険性が懸念されるため医療用マイクロファイバークロス(Micro Fiber Cloth以下MFC)を応用することでその改善が期待できる。手術の安全性向上を図るため検証を行った。
【対象および方法】 豚下顎骨に直径2.85mmのツイストドリルを毎分800回転で使用し,深さ13mmの埋入窩形成を行った。形成後,使用したドリル表面を加湿したガーゼまたは加湿したMFCで1回拭き取った後,ドリル表面に対してAMP(Adenosine monophosphate)・ADP(Adenosilin diphosphate)・ATP(Adenosine triphosphate)拭き取り検査を実施した。コントロール・MFC・ガーゼを各々n=50とし,その効率を比較検討した。統計処理はMann-Whitney U-test with Boneferroni correctionを用いて検定を行い有意水準はα=0.01とした。
【結果および考察】 各群の中央値(最大値,最小値)のRLUは,加湿ガーゼ群137(2446,34),MFC群65(513,20)であり,MFC群が加湿ガーゼに対して有意に低い値を示した。
【結論】 MFCの特性である「拭き取り効果,残留性の少なさ,高圧蒸気滅菌」などの点に注目し,術中のドリル表面の拭き取りへの活用を推奨する。
○早出直美1) 荒川裕子2)
1)岡谷市民病院 特殊歯科口腔外科
2)信州大学医学部 歯科口腔外科学教室
キーワード 摂食嚥下リハビリテーション認定歯科衛生士 喀痰吸引 義歯安定剤 摂食嚥下機能低下
【目的】 摂食嚥下機能が低下した患者が義歯安定剤を誤嚥し,咽頭部に固着したことで窒息しかけたが,摂食嚥下リハビリテーション認定歯科衛生士(以下,認定DH)が吸引を実施したことで改善した症例を経験したので報告する。
【症例】
症例1:80代男性,要介護5。20XX年6月,特発性間質性肺炎,食欲不振にて入院した。義歯安定剤が口腔内,咽頭部に多量に固着していることに認定DHが気づき,義歯安定剤の塊が気道閉塞を起こしかけていたため吸引を実施。咽頭部から多量の義歯安定剤を含む痰の塊を除去し,食事摂取可能となった。
症例2:80代男性,自立。20XX年10月鼠径ヘルニア手術のため入院,退院前日に転倒し大腿部頸部骨折し,術後急激に摂食嚥下機能が低下し食事摂取量が減少した。言語聴覚士(以下,ST)から咽頭部に痰の塊があり除去しきれないと相談あり,咽頭部に義歯安定剤の塊が固着していたため吸引を実施,咳嗽反射とともに義歯安定剤と痰の混じった塊を喀出,その後咽頭部,気管より黄色粘稠痰を多量に吸引,呼吸状態が安定した。
【考察】 認定DHは咽頭,気管内吸引が可能なため,主治医,歯科医師の許可を得て日常業務で口腔ケアとともに吸引を実施している。看護師やSTも吸引を行っているが,義歯安定剤が咽頭部に固着していると考えたのは認定DHだけであった。義歯安定剤は透明で,口腔内に固着していても見落とされやすい。摂食嚥下機能が低下し誤嚥,窒息リスクが高くなった状態の患者には,飲み込まない様に指導することや,咽頭部への固着を疑い,口腔咽頭ケアを実施する必要がある。
【結論】 認定DHが吸引を実施できたことで咽頭部に義歯安定剤が固着していることが判明し,適切な対応をとることができた。
○中島由佳里1) 小野塚留美子1) 薄波清美1) 楡井喜一2) 国本克幸1) 石田浩二1)
1)社会福祉法人松波福祉会 特別養護老人ホーム よねやまの里
2)楡井歯科医院
キーワード 口腔衛生管理 オーラルプロバイオティクス 口腔ケア困難者 誤嚥性肺炎予防 特別養護老人ホーム
【目的】 特別養護老人ホームでは意思疎通が困難な上,進行したう蝕や歯周病を抱え,自浄作用が不十分な口腔ケア困難者が一定数いる。日々の口腔衛生管理は介護職員の手間が大きく他の介護と比べて口腔ケアを苦手としている職員の割合も多い。歯科疾患ハイリスク者に対して,オーラルプロバイオティクスの摂取で口腔衛生を管理した例を紹介する。
【対象および方法】 プロバイオティクスとは「腸内細菌叢を改善し宿主に有益な効果をもたらす微生物とそれらの増殖,促進をもたらす生きた微生物」と定義されている。協力歯科医師より歯科疾患のハイリスクと診断された入居者および家族にプロバイオティクスの効果を説明し,希望者に対して2013年よりヒト由来の乳酸桿菌Lactobacillus reuteri含有食品BioGaia®の摂取介助をしている。対象者7名は,現在歯数が多い,複雑な補綴物を使用している,多数のう蝕がある,口腔衛生に対する協力動作が得られない等の特徴がある。その後は,月に1回定期的に歯科医師が観察し,その助言を特養歯科衛生士が介護職員と共有し,日常の口腔衛生管理に取り入れている。本発表は文書にてご家族に同意を得た。
【結果および考察】 摂取者の歯垢は粘着性が低く,歯ブラシで擦る回数が少なくても容易に除去できる実感がある。誤嚥性肺炎などの上気道感染症の発症が減少し,重症化しにくい。口内炎の発症頻度が減少した。L.reuteriの働きでバイオフィルムの形成が阻害されるため短時間の口腔清掃が可能となる。結果として,要介護者の健康維持と共に介護の労力軽減につながる。現在,L.reuteriの長期使用による副作用の研究報告はない。
【結論】 意思疎通が困難で自浄作用が働きにくい口腔ケア困難者の割合が高い特養の口腔衛生管理において,プロバイオティクスの果たす役割は大きいことが示唆された。
○池本多加代1,2,3) 恵比須美知代2,3) 矢口みゆき1,2,3) 山﨑可奈女1,2,3) 熱田直美2,3,4) 竹中美穂2,3) 大堀真理2,3) 中西直美3,6) 岡田歩美3,5,6) 大澤みゆき3,5,6)
1)三好歯科矯正歯科医院
2)兵庫県歯科衛生士会
3)ME研
4)なかにし歯科ホームケアクリニック
5)山下歯科医院
6)京都歯科衛生士会
キーワード ME法 歯周疾患 歯頸部・歯間部プラーク 刷掃効果 歯ブラシ圧
【目的】 ME法は永久歯列の歯頸部・歯間部プラークを効果的に除去することを目的に1990年,恵比須美知代が考案したブラッシング法である。一症例における1990年から34年間の経過において,2008年と2024年の口腔内を比較し歯周疾患に対する刷掃効果について検討したので報告する。
【症例の概要】 対象:80代男性1990年50代で,歯周炎および顕著な口臭が認められたが,1991年,1993年,1994年,1998年,2008年の観察では,良好な口腔内維持が認められた。2008年70代の良好な口腔内の維持と,ブラッシング法の定着についての詳細は本学会において2008年に報告した。16年後の2024年80代における口腔内の変化について,報告する。
【経過および考察】 ポケット測定値(6点),1~3 mm 93%・4~5 mm 7%・6 mm 以上0%。出血度11%。オレリースコアー値(6点)76.9%。X線写真では歯槽骨の大きな変化は見られず安定した状態を維持している。上顎臼歯部・右上犬歯では,軽度の出血を伴う4〜5mmの歯周ポケットが見られた。オレリースコアー値は高かったが,歯肉の発赤・腫脹なく,歯間乳頭は高位置で維持,歯頸部のラインに厚み・弾力があり健康的な状態である。最後臼歯遠心,上顎臼歯口蓋側に多くプラークが見られるが,術者磨きでは出血が見られなかった。70代から80代まで,悪化への変化は見られなかった。
【結論】 ME法は,刷掃効果が高く,歯肉に適度な刺激を与え,かつ過剰な毛先によるストレスを与えないので,長期間にわたり歯頸部辺縁・乳頭歯肉が安定している。また,歯間ブラシの使用や歯ブラシ圧についての細かい指導を必要としないため,長期間専門家の管理下になかったが,安定した口腔内を維持していた。
○恵比須美知代1,2) 池本多加代1,2,3) 矢口みゆき1,2,3) 山﨑可奈女2,3) 熱田直美1,2,5) 竹中美穂1,2) 大堀真理1,2) 中西直美2,6) 岡田歩美2,4,6) 大澤みゆき2,4,6)
1)兵庫県歯科衛生士会
2)ME研
3)三好歯科矯正歯科医院
4)山下歯科医院
5)なかにし歯科ホームケアクリニック
6)京都府歯科衛生士会
キーワード ME法 歯ブラシの用い方 体感導入 歯磨き観察チャート ブラッシング法の定着
【目的】 ME法は永久歯列の歯頚部・歯間部プラークを効果的に除去することを目的に,1990年,恵比須美知代が考案したブラッシング法である。口腔内を5ヵ所(1.歯の外側,2.一番おくの歯,3.上の前歯の裏,4.下の前歯の裏,5.奥歯の裏側)に分けて,それぞれ基本的な歯ブラシの用い方を提示している。動きは,主に往復運動であり,毛のしなりや弾力を生かして,歯の曲面に,毛先を効果的に当てることができる。臨床の場では体感導入が有効である。歯ブラシは歯の大きさ,動きに対応したME歯ブラシを使用。1990年10月ME法・ME歯ブラシによる指導から,2ヵ月後に炎症・口臭が消失,爽快感や歯磨き時間の短縮などから日常的にME法を実践している一症例について,2024年まで34年間の経過を通じ,ブラッシング法の定着について検討する。
【症例の概要】 対象:男性(86歳)。概要は一報に準じ,ブラッシング法の定着について報告する。本発表に際し,対象者本人への同意書を以て同意を得た。
【診査の概要および考察】 各部位の歯磨きを,観察チャートに記録し,染色結果および口腔内の状態と比較し考察した。毛先の弾力をうまく使っている様子であったが,1.2.5.では,基本の動きが確認できない部分もあった。歯間部,最後臼歯の遠心部,特に上顎左側口蓋側の残存プラークが予想され,染色結果も同様であった。しかし,口腔内の状態は,部分的に軽度の出血を伴う4~5mmの歯周ポケットを認めるものの過度な炎症はなく,エックス線写真による歯槽骨の状態は安定しており,良好な口腔内を維持していた。2008年から16年間,歯磨きについての修正指導がなかったことを考慮すると,おおむねME法が定着していると考えられた。
【結論】 34年間の経過において,ME法指導直後からプラークが減少し,歯周組織が改善,長期間良好な口腔内を維持しており安定したブラッシングの定着が確認できた。
○槇石弘子1) 髙本 愛1,2) 小林美惠子1) 赤羽 泉1) 臼山千花1) 高橋 絢1,2) 出井博美3) 篠塚真由美3) 宮嶋典子1) 栗田 浩2)
1)長野県歯科衛生士会
2)信州大学医学部附属病院 特殊歯科・口腔外科
3)社会福祉法人 りんどう信濃会
キーワード 障がい者施設 口腔健康管理 肺炎予防
【目的】 わが国の施設入所知的障がい者は13万2千人であり,これら入所者の高齢化は今後一層強まることが推測される。長野県歯科衛生士会は県内の知的障がい者入所施設に出向き,入所者・施設職員に向けて年7回,延べ21名の歯科衛生士が口腔健康管理を行っている。高齢者介護施設における口腔健康管理と肺炎予防の報告は多数あるが,知的障がい者施設における口腔健康管理がどのような効果をもたらすかを検討した報告は少ない。本研究では知的障がい者施設入所者について調査を行い,口腔健康管理と肺炎との関連を明らかにすることを目的とした。
【対象および方法】 2017年1月から2021年12月の5年間に,介入を行った施設に入所していた201名と,介入を行っていなかった施設232名の,合計433名を対象とした。施設記録をもとに性別,年齢,含嗽の可否,食事介助の状況,発語状況,ブラッシングの自立度,口腔健康管理の有無,呼吸器疾患(COPD・間質性肺炎・喘息等)の既往について後方視的に調査した。肺炎発症に寄与する因子を検討するため,肺炎の有無を目的変数とした二項ロジスティック回帰分析を行った。なお,本研究は信州大学医学部附属病院 倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:No.5621)。
【結果】 対象は男性232名,女性201名の433名,平均年齢は65.6歳(24-97歳)であった。肺炎発症は28例(6.5%)であった。各観察項目と肺炎発症との関連について検討したところ,年齢,口腔健康管理とブラッシングの自立度,食事の自立度,発語状況が有意な影響因子として抽出された。
【結論】 口腔健康管理は肺炎発症に有意に関連しており,長野県歯科衛生士会による知的障がい者施設への口腔健康管理介入は肺炎発症の減少に寄与している可能性が示唆された。
○先家道子1,2) 三好早苗2) 桒原里美2) 住本朋子2)
1)医療法人社団 明和会 大野浦病院
2)広島県歯科衛生士会
キーワード 一体的実施 委託事業 人材育成 アウトリーチ ハイリスク
【目的】 広島県歯科衛生士会では,令和3年度から広島市より高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施(口腔)業務を受託し,アウトリーチ型オーラルフレイル予防事業(以下,本事業)を実施している。今回,この3年間の取り組みについて報告する。
【概要および方法】 本事業は,広島市8区41ヵ所の地域包括支援センター職員,地区保健師,歯科衛生士が連携し,高齢者のフレイル予防を目的に通いの場での健康教育(ポピュレーションアプローチ)と口腔機能低下の可能性がある者へ個別指導(ハイリスクアプローチ)を実施した。各アプローチの実施回数は3回,介入期間は約3ヶ月である。本事業に携わる歯科衛生士の人材確保・育成を目的にマニュアルの作成,事業説明会,研修会,報告会を開催した。なお,事業後のアンケートは従事者の同意を得て行った。
【経過および考察】 令和3年度から5年度までのポピュレーションアプローチ参加者数はそれぞれ延べ739名,2203名,2134名,そのうちハイリスクアプローチ実施者数は79名,122名,82名であった。本事業に従事した歯科衛生士は合計50名,平均年齢は56.9歳(42~69歳)であった。事業後のアンケートでは,63.9%の歯科衛生士が多職種との連携が“やりやすかった”と回答した。また,本事業で苦労した点は「ハイリスクへのつなぎ方」が最も多く,限られた時間で対象者へ説明する難しさが考えられた。マニュアルについて分かりにくいという回答はなく,事業説明会等の回数も94.4%が適切と答えた。業務を継続した者の割合は88.0%と高く,多くの歯科衛生士が本事業にやりがいを感じたと考えられる。
【結論】 高齢者のフレイルを予防するには多職種と協働し効果的に保健事業を行う必要がある。人材を確保し育成するには,マニュアルや媒体,報告会の必要性が示唆された。
○槙野莉沙 越田美和 向 真紀 塚本暁子 横山ゆき乃 平山恭子 莨谷莉奈
石川県立中央病院
キーワード 院内感染対策 嘔吐物処理 マニュアル
【目的】 歯科口腔外科疾患の診療においては診療室で患者が嘔吐し,歯科衛生士にその嘔吐物処理対応が求められる場面がある。処理には院内感染防止策マニュアルに準じ,処理対応者やその周囲の人が感染源に暴露しないように,また感染を拡大しないような対応が必要である。今回,既存の院内マニュアルだけでは対応が困難な事例を経験した。感染管理認定看護師(以下,感染CN)と歯科口腔外科スタッフ共同で事例を振り返り,当科における嘔吐物処理マニュアル作成に取り組んだため,その活動を報告する。
【概要および方法】 「当科にて顎変形症手術を行なった術後2病日目の入院患者が,診察のため外来待合室で待機中に嘔吐した。」という実際の事例を基に検討を行った。検討では手指衛生研修に使用する蛍光塗料を患者の嘔吐物に見立てて事例を再現し,処理後はブラックライトにより汚染の拡がりや拭き残しなどを確認し,どのような対応や手順が適切であるかを感染CNらと共に検討した。
【経過および考察】 待合室では,嘔吐した患者のみならず,他の待合患者の暴露を防ぐための配慮も必要であり,処理には患者対応と吐物処理の二手に分かれて行なう必要があった。また,嘔吐した患者は衣類汚染により着替えが必要になることがあるが,移動に伴い汚染が拡がる可能性があるため,どこに患者を誘導するかも嘔吐発生場所により工夫する必要があった。検討した内容を基に,当科における「吐物処理対応マニュアル」を作成した。また,嘔吐発生時にすぐ対応できるよう「吐物処理セット」を作成し外来に設置したことで,外来スタッフ全員に周知することができた。
【結論】 嘔吐物処理対応を振り返り,マニュアル作成に取り組んだ。取り組みにより,適切な嘔吐物処理手順と患者対応方法をスタッフ全員で共有することができた。
○福田怜央 河田尚子 竹林香菜 宮井沙也加 井上菜月 井上真佑 徳本佳奈 岸本裕充
兵庫医科大学病院歯科口腔外科
キーワード 兵庫医科大学病院歯科口腔外科 オーラルマネジメント 新型コロナウイルス感染症
【目的】 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)禍を含む過去5年間の当院歯科口腔外科における周術期等口腔機能管理(周管)の取り組みについて振り返る。
【概要および方法】 2019年度から2023年度までに当科で算定した周術期等口腔機能管理計画策定料(周計),周術期等口腔機能管理料(周I/周II/周III),術前の周術期等専門的口腔衛生処置1(術口衛前)および周III算定患者の周術期等専門的口腔衛生処置1(術口衛III)の件数を年度ごとに集計した。
【経過および考察】 2019から2023年度の算定件数は順に,周計が670,589,618,634,638件,術前の周Iが82,65,126,84,96件,術前の周IIが480,391,367,419,408件,周IIIが440,566,636,620,713件で,周IIIの件数は増加傾向にあった。一方,術口衛前は順に373,362,346,397,406件で,術口衛IIIは,同順に220,502,646,726,932件であった。周IIIの算定件数増加の背景として,長期にわたり介入する患者の増加により,一人あたりの算定回数が増加した可能性が考えられた。COVID-19禍である2020年度は,2019年度と比較して,周Iは17件,周IIは89件の減少が見られたが,術口衛前の算定件数は11件の減少に留まっていた。当科では,COVID-19禍においても依頼された患者に対してCOVID-19流行前と変わらず周管を実施する方針としていたこと,COVID-19流行前よりも周術期のオーラルマネジメント(OM)に注力したことによる影響と考えられた。
【結論】 過去5年間で周III算定件数は増加傾向にあり,COVID-19禍においてもOMを継続できた。
○原田千明1) 木村宗一郎1) 兼平弘毅1) 福田眞琴1) 山口晟矢1) 遠藤 寛2) 杉山知樹3)
1)津軽保健生活協同組合 健生病院
2)医療法人寛心会 遠藤歯科
3)杉山歯科クリニック
キーワード 骨粗鬆症 薬剤関連顎骨壊死 医科歯科連携 口腔衛生管理
【目的】 骨吸収抑制薬は骨粗鬆症による脆弱性骨折防止や悪性腫瘍の骨転移に対しては有用な薬剤だが,副作用として顎骨壊死・顎骨骨髄炎との関連が指摘されている。薬剤関連顎骨壊死の予防には徹底した口腔衛生管理が重要で,医科歯科連携が必要不可欠である。当院においても多職種で骨折リエゾンサービス(以下FLS)が結成され,脆弱性骨折患者に対する二次骨折予防に取り組んでいる。これまでのFLSの活動経過と歯科衛生士のチームにおける役割について報告する。
【概要および方法】
1.FLSチームの活動は2020年3月FLSチーム結成,6月よりプロセスフローを用いて患者の評価・治療を開始。定例会議とカンファレンスで実績報告や運用の修正,チーム内学習会の実施。2022年11月に全職員に対し学習会を開催。2023年6月に地域歯科医師会と合同研修会開催。
2.歯科衛生士の介入方法はFLS対象患者の口腔アセスメントから,結果と問題点を電子カルテに入力して多職種と情報共有し,抜歯等の歯科治療が必要な場合は歯科往診につなげる。カンファレンスで口腔状態に合ったケアや薬剤投与の検討。かかりつけ歯科への情報提供。
【経過および考察】 入院時に対象患者にOral Health Assessment Tool(OHAT-J)を用いて口腔アセスメントを実施することで早期に口腔衛生状態を察知して患者の口腔状態に合ったケアが実施できた。歯科治療が必要な患者は,かかりつけ歯科医師や地域の連携歯科医院に往診治療を依頼した。口腔アセスメントと口腔ケア介入に基づく医師への助言は骨粗鬆症治療薬の選択判断に寄与した。
【結論】 歯科衛生士による口腔アセスメントは早期服薬投与を目的とした歯科介入や口腔状態に応じた適切な口腔ケアの提供に繋がり,FLSチームにおける歯科衛生士介入の有用性が示唆された。
○三浦有紗 荒木弘子 泊 紀美 朝田萌映 木田莉里佳 橘谷玲香 長谷川莉彩 宮﨑優里 金 利映 中村真之介
伊勢赤十字病院
キーワード 骨吸収抑制剤 骨折リエゾンサービス(FLS) 口腔内チェック 歯科衛生士
【目的】 当院の骨折リエゾンサービス(FLS)と歯科口腔外科との連携を把握し,歯科衛生士の役割を再認識することを目的とした。
【概要および方法】 2022年12月~2024年2月の15カ月間に,FLSより当科へ骨吸収抑製剤(アレンドロン酸あるいはリセドロン酸:ARA)投与時の口腔内チェック依頼のあった患者の動向について調査した(伊勢赤十字病院倫理委員会ER2023-123)。
【経過および考察】 当院では2022年5月よりFLSが開始され,同年12月より当科も介入を開始した。15カ月間のFLS患者は366人(ARA投与:119人)で,そのうち当科介入は133人(ARA投与:110人)であった。性別は男性28人,女性105人で,年齢は55~98歳で平均79.9歳,80歳代が過半数を占めた。口腔内は,無歯顎が29人,残根のみが5例で,歯周炎は軽度38人,中等度56人,重度5人で,19人では残根も認めた。残存歯数の平均は11.3本で,同年代の周術期患者(318人)の17.0本と比較して少なかった。義歯の使用は83人でみられた。歯や骨の異常は,歯の動揺41例,う蝕23例,膿瘍形成3例の順であった。当科治療は,歯周基本治療が50人,抜歯29人,義歯調整5人で,治療なしが64人であった。居宅は自宅が123人で施設が10人,かかりつけ歯科があったのは109人であった。自宅退院は6人,施設へ退院は5人で,122人がリハビリ病院への転院であった。歯科衛生士が転院先へのサマリを作成したのは67人で約半数であった。
【結論】 ARA投与患者では,抜歯を必要としない患者でも継続的な口腔健康管理が必要であり,歯科衛生士の関与やサマリ記載を徹底して行きたい。
○土方咲希1,2) 松岡陽子1,3) 壷井知美1,4) 世古恵子1,5) 笹間滋代1,6)
1)特定非営利法人 三重県歯科衛生士会
2)松阪市民病院
3)四日市市歯科医療センター
4)武田歯科医院
5)はしもと歯科
6)せつ歯科医院
キーワード 歯ブラシの選択基準 ブラッシング指導 アンケート調査
【目的】 現在,多くのメーカーから様々な形態の歯ブラシが販売されており特徴が異なる。そのような状況に伴い歯科衛生士は,患者へのブラッシング時に使用する歯ブラシ選択に苦慮することがある。そこで本研究は,歯科衛生士が自ら使用する歯ブラシと患者に推奨する歯ブラシの基準について調査することを目的とした。
【対象および方法】 対象は,三重県歯科衛生士会に所属する歯科衛生士290名に対し調査に関する説明を行い,同意を得られた歯科衛生士とした。質問紙調査は,Google Formsにて実施し,得られた結果はχ2検定で分析した(p<0.05)。なお,本研究は日本歯科衛生学会倫理審査委員会の承認を得ている(承認番号:13)。
【結果および考察】 質問紙調査の回答は97名の歯科衛生士から得られ,認定資格をもつものは31名であった。「認定歯科衛生士の資格の有無」と「自分の歯ブラシを選択する際に一番気をつけていること」に有意差が認められた。この結果より,歯科衛生士は口腔内に関する知識や技術があるため,歯ブラシの機能性を重視して自身の歯ブラシを選択していると考えられる。一方で患者には,患者個人の口腔内にあわせ,形状を重視して歯ブラシを選択していると考えられる。
【結論】 今回の調査により歯科衛生士は自身の歯ブラシは機能性を重視して選択していることが示唆された。患者には,歯ブラシの形状を重視して選択していることから,今後はブラッシング指導の際に個人のブラッシング技術にあわせ,歯ブラシの機能性からのアプローチも行っていくことで患者の口腔内環境を維持するためのサポートができると考えられる。
○筒井紀子 生野美絵 田巻菜穂子 星野順也
三条看護・医療・歯科衛生専門学校歯科衛生士学科
キーワード 早期体験実習 高齢者施設実習 アンケート
【目的】 我が国の高齢化率は急速に進んでおり,歯科衛生活動においても高齢者への対応が求められる。当校では,早期体験学習の機会として1年次に高齢者施設実習を行っている。当実習の教育内容の改善を図るため,実習終了後に学生に対しアンケートを行い,本実習の現状と課題について検討した。
【対象および方法】 対象は2023年度1年生38名とした。高齢者の特徴等を理解するための学内実習後,介護施設および訪問看護ステーションで実習を行った。実習終了後に実施したアンケート内容は,実習に対する満足度および良かった点・改善点は自由記載とし,テキストマイニングの手法で分析した(倫理承認番号23001)。
【結果および考察】 実習全般について満足している学生が大半を占め,良かった点は「できる・知る・口腔ケア」,改善点は「会話・利用者・できない」等のキーワードが頻出していた。学生らは現場で口腔ケア等の見学を通して学びがあったことで,本実習に対する満足度が高くなったと考えられる。改善点は,利用者とのコミュニケーションができなかったことが多く挙がっており,コミュニケーション能力の不足を感じていると考えられた。
【結論】 学生は多職種との関わりを通して超高齢社会における歯科衛生士の役割について考えを深めることができたと考えられる。今後,学生のコミュニケーションスキルの向上を図るため,学生が自信を持って臨地実習に臨めるように教育することが必要だと考えられる。
○湯淺麻衣子 尾崎清香 宮本浩樹 外川健史 原田丈司
関西労災病院
キーワード 乾燥剤 誤飲 口腔粘膜化学熱傷 口腔衛生管理
【目的】 食品等の品質を維持させたために汎用されている乾燥剤は,成分によっては,水と反応して高熱を発生させるものがある。今回,認知症の高齢者に生じた乾燥剤の誤飲による広範囲の口腔粘膜化学熱傷に対して,口腔衛生管理を行った1例を経験したので報告する。本症例発表は関西労災病院臨床治験倫理審査委員会の承認を得ている(承認番号:2402001)
【症例の概要】 93代男性。認知症があり,コーヒーに乾燥剤を混入させて誤飲し,口腔内出血を認めたため救急搬送。心不全のため抗凝固薬を内服中。口腔内は口腔乾燥が著しく,落屑上皮や舌苔が付着し,衛生状態は極めて不良であった。口腔粘膜は易出血性で,口唇を含む広範囲に糜爛や痂皮が認められた。特に,舌下面や口腔底の潰瘍が重症で,下唇と下歯肉は癒着していた。上部消化管内視鏡検査で,胃壁に強固に固着する白色沈着物を認め,CT画像での高信号部位に一致していた。
【経過および考察】 口腔内の疼痛による摂食障害と,認知機能の低下による誤嚥のリスクを考慮し,とろみ水の経口摂取から開始した。また,歯科医師の指示により広範囲の口腔粘膜の化学熱傷に対して,表面麻酔薬のリドカイン軟膏を塗布し,アズレン,リドカインを使用した含嗽液で頻回に含嗽させ,積極的な疼痛コントロールも開始した。認知症のためにセルフケアが難しかったが,頻回に口腔衛生管理に介入することで,感染徴候もなく,入院6日目から3分粥の摂取が再開された。広範囲の口腔粘膜化学熱傷は,重篤化することなく,疼痛も含めて改善し,入院14日目で軽快退院となった。
【結論】 口腔内所見,内視鏡所見から,生石灰を成分とする乾燥剤の誤飲による口腔粘膜化学熱傷と診断した。早期に疼痛管理を主体とした口腔衛生管理の介入により,症状を重篤化させずに改善させることができた。
○竹﨑絵理 石濱孝二 田中徳昭 松川 誠 皆木佐予 金沢佳代 江口栄里 武田千佳 田村亜樹 藤畠莉央
大阪警察病院
キーワード 周術期口腔機能管理 口腔衛生管理 放射線治療
【目的】 口腔癌に対する放射線治療では皮膚炎や粘膜炎による疼痛などにより,治療に対する意欲を低下させる。今回,根治的治療の希望はあるものの,治療に対する十分な協力が得られない患者に対し,疼痛や精神面への配慮を行いながら周術期口腔機能管理を行ったのでその概要を報告する。
【症例の概要】 70代男性。右側口蓋および顔貌の腫脹の精査加療目的に,かかりつけ歯科医より紹介され受診し,右側上顎歯肉癌(T4aN0M0, StageIV)の診断のもと主治医より手術療法,抗癌剤併用放射線療法などを提案されるも入院治療が許容できないことから,外来通院下で放射線療法(70Gy/35回)を8週行った。周術期における口腔衛生管理の重要性に理解が乏しく,頻回に渡る介入が必要と思われたため,治療開始前から継続的に口腔衛生管理を介入し,治療に対する意欲が低下することもあったが自己中断することなく放射線治療が完遂できた。
患者の背景により,症例発表にあたって同意取得が困難であったため,個人が特定できないよう配慮した。
【経過および考察】 放射線治療開始前から口腔衛生管理を行った。3週目より舌や粘膜に潰瘍形成が見られ疼痛が出現したため,口腔内の状態に応じた清掃用具の選択や含嗽,エピシル®口腔溶液の使用方法の指導を行った。放射線治療開始4週目でGrade4相当の粘膜炎が生じたが,腫瘍縮小など治療の効果を実感するようになったことで,ケア時に患者本人とのコミュニケーションがスムーズになり,治療に対する不安や要望などを主治医と共有できた。身体的苦痛のみならず心理的苦痛の把握も必要と考える。
【結論】 今回の症例では患者の癌治療,口腔衛生の両方に対しての協力性が乏しく,日々の体調と精神面を考慮し口腔衛生を行うことで,癌治療を完遂させる一助になった症例であった。
○石田杏果1) 安藤千賀子1) 野津昭文2) 河島美帆1) 永嶺愛美1) 土田果穂1) 大塚智子1) 加藤美結1) 大西真倫3) 百合草健圭志1)
1)静岡県立静岡がんセンター 歯科口腔外科
2)静岡県立静岡がんセンター 統計解析室
3)静岡県立静岡がんセンター 看護部
キーワード 口腔アセスメント表 病棟看護師 口腔衛生管理 入院時スクリーニング
【目的】 がん治療において口腔有害事象は,入院期間の長期化や原病治療の妨げとなる。当院では簡易口腔スクリーニングに歯科衛生士と看護師が共通の口腔アセスメント表(歯肉,歯,義歯,粘膜,清掃状態)を使用している。看護師は入院時の口腔スクリーニングに使用し,項目毎で評価したスコア(1:セルフケア継続,2:看護師介入,3:歯科介入)に応じた介入を行っている。スコア2では,看護師は口腔ケアフローチャートに準じた介入を行い,1週間後の再評価でスコアが改善されない場合,歯科介入依頼となる。今回は,このスコア2となった患者の全身状態を把握し,適切な介入や連携の目安となる項目,因子を明らかにすることを目的とした。
【対象および方法】 がん専門病院単施設で2022年4月から2023年3月までの1年間に,入院時口腔スクリーニングでスコア2と判定された240件を対象とし,1週間後の口腔内再評価部位・項目とその改善率,患者背景について調査した。再評価時の口腔衛生状態で改善群(114件)と非改善群(126件)に分け,それぞれ入院時の身体状態などの背景因子について後ろ向きに解析した。(倫理審査承認番号:J2024-10-2024-1)
【結果および考察】 1週間後の改善率は全体47.5%(114件)で,歯肉34.4%,歯27.3%,義歯25.0%,粘膜53.9%,清掃状態51.4%であった。歯科疾患は改善率が乏しく,粘膜や清掃状態では半数以上の改善を認めた。歯科疾患以外の口腔衛生状態の改善に影響を与える因子には,意識レベル(OR2.1),日常生活自立度(OR2.4),酸素投与(OR2.9),点滴(OR2.9)があり,日常生活動作に影響を与える因子が多くみられた。
【結論】 看護師介入による入院患者の口腔衛生状態の改善には,日常生活動作に関与する因子が関連する可能性が示唆された。
○阿南千春 田中翔一 阿南智子 筒井まや 髙橋笑子 市村則子 竹内正彦 小椋幹記 柳澤繁孝 松本有史
大分岡病院 マキシロフェイシャルユニット
キーワード 周術期等口腔機能管理 口腔粘膜疾患 PCR TCI 歯科受診歴
【目的】 周術期等口腔機能管理(以下,周管)は,誤嚥性肺炎等の術後合併症の減少による在院日数の短縮に寄与するため,多くの施設で取り組まれている。その際,周管を実施するわれわれ歯科衛生士が口腔粘膜疾患に遭遇することは少なくない。今回,周管患者の口腔粘膜疾患について調査したので報告する。
【対象および方法】 2023年3月から2024年2月までの1年間,当科における周管患者226名を対象とし,初回対応時の口腔粘膜疾患の有無と,プラーク・コントロール・レコード(以下,PCR),舌苔付着度(以下,TCI)および歯科受診歴の有無との関連について検討した。(倫理承認番号No. A0068)
【結果および考察】 口腔粘膜疾患は,義歯性潰瘍4例,アフタ性口内炎4例,地図状舌1例,帯状疱疹1例,口腔カンジダ症1例,白板症2例,腫瘍性病変4例(線維腫2例,エプーリス1例,舌癌1例)の計17例であった。対象患者の平均PCRは62.4%,TCIは39.5%,口腔粘膜疾患を有する患者のPCRは67.3%,TCIは47.1%と明らかな差はなかった。1年以上歯科受診歴のない患者は全体で50.5%,口腔粘膜疾患を有する患者では75.0%であった。特に腫瘍性病変や口腔潜在的悪性疾患患者は,舌癌の既往歴があり同部管理中の1名および歯科受診歴不明患者1名を除き,全ての患者で1年以上歯科受診歴がなかった。
【結論】 免疫低下による口腔粘膜炎出現など,周術期における口腔粘膜疾患の発症は避けられない有害事象である。特に術後の口腔粘膜には注意が払われるが,本研究で術前にも早期対応が必要である口腔粘膜疾患は多く存在し,そのほとんどが1年以上歯科受診歴のない患者であった。われわれ歯科衛生士が口腔粘膜疾患に意識を向けることで,早期発見,重症化の予防に繋がると考えられる。
○中村絵美1) 五十嵐史征1) 玉井洋一郎2) 輿 圭一郎3)
1)医療法人樹会いがらし歯科医院
2)医療法人沖縄徳洲会湘南鎌倉総合病院
3)こしデンタルクリニック
キーワード 周術期口腔機能管理 歯周治療 定期検診 地域連携 医科歯科連携
【目的】 歯科のない急性期病院血液内科病棟において,一般歯科医院が週1回の歯科回診および周術期口腔機能管理を行うことで造血器腫瘍治療の円滑な実施と完遂に寄与できる可能性を検討した。また,退院後の継続管理の有用性を明らかにすることを目的とした。
【対象および方法】 2018年1月から2022年3月までの約4年間に当院が介入した268名を対象とした。依頼の多かった多発性骨髄腫(74名)については,要抜歯患者数,要歯周治療患者数を。急性骨髄性白血病(76名)については前項目に加えて,口腔粘膜炎発症率,グレード評価を電子カルテ,歯科衛生士業務記録簿を元に調査を行った。さらに,当院で継続管理を行っている患者についての経過報告とその有用性を検討した。対象者から本研究の同意を得て倫理的配慮を行った。
【結果および考察】 多発性骨髄腫74名中,BP製剤投与前の要抜歯患者は30名,要歯周治療患者は34名であった。そのうち18名は当院を受診し,内13名は現在も通院を継続していたことから,患者が再発と顎骨壊死のリスクを理解し,歯科医療者が原疾患を理解することは通院に繋がると考えられる。急性骨髄性白血病76名中,要抜歯患者は14名,要歯周治療患者は22名,口腔粘膜炎発症率は24%であった。歯周疾患の重症度によっては化学療法開始前に歯科治療を済ませる必要があり,患者にとって大きな負担となると考えられた。
【結論】 週1回の介入により効果的な周術期口腔機能管理を行うことは可能であり,退院後も途切れなく行う継続管理は患者にとって有益であると考えられた。歯科衛生士は歯科医師と共に歯周治療を確実に行ない,歯科検診の重要性を更に周知する事で,将来訪れるかもしれない周術期の大きな備えとなると考える。また,歯科のない病院への歯科介入,退院後の口腔機能管理継続のための地域連携構築は今後の課題であると考える。
○山浦 岬 青木久美子 万歳陽子 柏木淑江 桝本 緑 高木史野 岩間總一郎
医療法人相志和診会 岩間歯科
キーワード がん患者 化学療法 歯科診療所 口腔衛生管理
【目的】 歯科専門職が化学療法施行中のがん患者に対して口腔衛生管理を行うことは治療中の口腔有害事象の発症予防や症状軽減に寄与すると言われている。外来通院にて化学療法を行うがん患者は増加しており,歯科診療所での対応が求められているが,日常的にがん患者と接する病院勤務の歯科衛生士とは異なり,診療所の歯科衛生士が治療中のがん患者に対応する機会は少ない。今回,診療所に勤務する経験4年目の歯科衛生士が化学療法施行中の肺がん患者の口腔衛生管理を行った。その経過を振り返り診療所の歯科衛生士ががん患者を担当するために「必要なこと」を検討したので報告する。
【症例の概要】 患者は50代女性。歯と歯肉のざらつきを主訴に来院した。既往歴に左肺腺がん,脳・骨転移があり,化学療法施行中であった。残存歯数24本,全顎に歯垢の付着を認め歯肉からの出血が認められた。発表に際し,患者は亡くなっていたため代諾者の同意を得ている。
【経過および考察】 初診時より口腔衛生管理を行った。化学療法中であったため,体調は不安定で,最小限の口腔衛生管理しか行うことはできなかった。化学療法施行中のがん患者に対し口腔衛生管理を行う際に,どのようなことに留意しなくてはいけないか理解がないまま指導や清掃を行なったことで患者の清掃状態に改善は見られなかった。患者の病期や病状の把握,化学療法による全身および口腔有害事象,それらへの対応などの様々な知識不足がその主な要因であったと考える。
【結論】 診療所に勤務する歯科衛生士にとって担がん患者の対応に必要な知識や技術は何があるかについて症例を通じて考察した。通常の口腔衛生管理とは異なる視点の追加が重要であり,それは勤務する場所に関わらず口腔衛生管理を担当する歯科衛生士の義務であると考えられる。
○横谷沙織 高橋佑佳 小川早代 喜多幸代 中西優美 山本育功美 山本一彦
奈良県総合医療センター
キーワード 集中治療部 人工呼吸器関連肺炎 人工呼吸 経口挿管
【目的】 人工呼吸器関連肺炎(以下,VAP)とは,「人工呼吸器を使用した患者が使用後48時間以降新たに発症する肺炎」と定義され,人工呼吸器使用患者の9~28%に発症し,人工呼吸器使用日数が1日増加するごとに発症率が1~3%増加するといわれている。人工呼吸管理においてVAP予防は重要であり,当院は48時間以上の挿管が想定される患者は早期に当科へ紹介されるシステムとなっている。今回,当科が集中治療部に介入する意義を調査した。
【対象および方法】 2021年4月から2022年3月まで当院集中治療部における挿管中患者に対する口腔衛生管理目的に紹介のあった患者を対象に,性別,年齢,原疾患,挿管期間,口腔ケア介入回数,VAP発症について調査した(奈良県総合医療センター倫理審査委員会承認番号:909)。
【結果および考察】 男性56名,女性42名。平均年齢は68.8歳であった。原疾患は,心疾患31名,脳血管疾患23名,肺炎12名であった。経口挿管から気管切開に移行した患者が40名で,平均10.6日経口挿管されており,その間に1.5回ケアを行っていた。気管切開後の入院日数の平均は45.9日で,2.1回ケアを行っていた。一方,経口挿管のみの患者は58名であり,経口挿管日数の平均8.1日で1.4回のケア,抜管後の平均入院日数は22.9日では1.4回ケアを行っていた。VAPは1名に発症した。
【結論】 当科が介入した98名の患者のうちVAPを発症したのは1名であった。集中治療部におけるVAP発症率は9~27%と言われている中で,約1%であり,口腔衛生管理による発症予防効果が認められた。人工呼吸管理が必要になった患者への早期介入と看護師による口腔ケアがVAP発症をより減少させたと考えられる。
○竹野裕美 長田侑子 吉村理恵 喜久田利弘
新百合ヶ丘総合病院
キーワード 埋伏智歯抜歯 口腔衛生管理 セルフケア指導
【目的】 口腔内には多くの常在菌が存在し,それらが手術部位感染症(以下,術後感染)を引き起こす原因となることがある。当科では全身麻酔の前日に術後感染予防として,歯科衛生士による術前口腔衛生管理,術後のセルフケアの指導をおこなっている。今回全身麻酔による埋伏智歯抜歯に焦点を当て,術前口腔衛生管理の有効性について検討したので報告する。
【対象および方法】 2012年12月から2023年3月末までにおこなった全身麻酔症例は1,402例であった。そのうち埋伏智歯抜歯症例771例(男性316名,女性455名,平均34.7±15歳)を対象に,口腔衛生管理介入群357名と非介入群414名に分け,個人情報の配慮を行い,後ろ向きに解析をおこなった。ここでの介入群とは当科にて術前に下記の手順で介入したものとする。手順 1.口腔衛生管理の必要性の説明,口腔衛生管理同意の取得,問診 2.歯周基本検査 3.専門的口腔衛生管理 4.術後のセルフケア指導。検討項目は年齢,性別,抜歯部位,感染部位,既往歴などである。
【結果および考察】 全身麻酔による埋伏智歯抜歯で術後感染を起こした患者は771例中89例であった。口腔衛生管理介入群で感染したものは29名(32.6%),非介入群で感染したものは60名(67.4%)で有意差がみられた。埋伏智歯抜歯における骨削合は侵襲が大きく,術後の疼痛や開口障害を惹起することがある。それにより清掃不良に伴う口腔衛生状態の悪化が術後感染の要因となり得るため,全身麻酔に限らず局所麻酔での埋伏智歯抜歯でも術前の口腔衛生管理や術後のセルケアの指導は必要と考えられた。
【結論】 全身麻酔による埋伏智歯抜歯における術前口腔衛生管理,術後のセルフケアの指導は術後感染予防に有効であった。
○相方恭子1) 松岡恵理子1) 澤田佳世1) 土田江見子1) 星 美幸1) 大澤えり子1) 加藤茉友子1) 清野可那子2) 猪子芳美3) 石井瑞樹3)
1)日本歯科大学新潟病院 歯科衛生科
2)日本歯科大学新潟短期大学
3)日本歯科大学新潟病院 総合診療科
キーワード 感染予防 環境清掃 除菌洗浄剤
【目的】 医療施設における環境清掃は,感染予防管理のために重要である。当院では除菌洗浄剤(花王医療施設用クリンキーパー®)の希釈液を使用し,ペーパータオルに湿潤させて環境清掃を行っている。しかし,湿潤方法や使用する液体量は担当者個々により異なる可能性があり,適切に清掃が行われているのか懸念がある。そこで除菌洗浄剤の湿潤方法,使用量を調査し,適正使用についての周知および今後適切な環境清掃が行われることを目的として検討を行った。
【対象および方法】 対象は歯科衛生士30名(以下A),歯学部実習生30名(以下B),歯科衛生士実習生30名(以下C)の3グループの計90名とし,清掃対象を「移動式2段ステンレスワゴン」と設定した。清掃対象を清掃するために必要なペーパータオルを採取後,除菌洗浄剤を湿潤してもらい,その使用量について調査した。日本歯科大学新潟生命歯学部倫理審査委員会承認(許可番号:ECNG-R-507)
【結果および考察】 ペーパータオルの使用枚数,洗浄剤の噴霧回数,液体重量すべてにおいてグループ間で有意差が認められた。さらにペーパー1枚当たりの液体量について,AB間及びAC間において有意差が認められたが,BC間には有意差が認められなかった。これらのことは,環境清掃に対する経験や感染予防に対する意識レベルの違いが影響しているものと推察される。またB・Cに対して,除菌洗浄剤の使用方法を指導する機会が少ないことや,除菌洗浄剤の使用量(噴霧回数など)が明確に統一されていないことも要因として考えられる。
【結論】 現在の方法では,清掃担当者の薬液使用量を統一することは難しい。適切な清掃を行うためには,誰が使用しても湿潤状態が一定である既製の清掃用クロスを使用することが望ましいと考える。
○新谷麻美 山村真由美 東川久代 沖田奈々葉 松平絢菜 岡田真里奈 首田千尋 沖津佳子 村山智子
金沢医科大学病院 医療技術部 口腔衛生チーム
キーワード 唇顎口蓋裂 術前鼻歯槽形成 Presurgical Nasoalveolar Molding PNAM
【目的】 当院では2015年より口唇鼻形成術に先立って術前鼻歯槽形成治療(以下PNAM)を導入している。PNAMは新生児期からの受容過程に合わせたサポートが必要であるが当科では指導内容が統一されていない。今回現状を把握することを目的とし検討を行った。
【対象および方法】 2020年4月~2023年9月に当院形成外科からPNAM依頼があった患児13名。性別,診断名,診断時期,出生日からPNAM開始日・治療開始日から口唇形成術までの日数,合併症等の有無,出生順位を電子カルテより抽出し,保護者にアンケートを行った。倫理承認番号H357
【結果および考察】 内訳は片側性唇顎口蓋裂11名,両側性唇顎口蓋裂1名,片側性唇顎裂1名,診断時期は妊娠中期6名(46%),後期3名(23%),出産後4名(31%)。出生日からPNAM開始日は平均41.7日,治療開始日から口唇形成術は平均108.7日であった。アンケート結果からPNAMに関して良かった6名(46%),まあ良かった5名(39%),指導内容は良かった9名(69%),まあ良かった4名(31%)。日常生活への導入はできた2名(15%)まあできた6名(46%),ややできなかった5名(39%),と回答した。治療中トラブルがあったものは10名(77%)と多く,内容はテープかぶれ・装置トラブルなどであった。
多くの保護者からPNAMや指導内容に関して高い評価を得ておりPNAMの必要性は概ね受け入れられていたことが示唆された。一方,日常生活への導入では約4割ができておらずトラブルやその対応について事前の説明不足も一因と考えられ,指導内容に改善の余地があることが示された。
【結論】 今後はトラブル対処法に有用なパンフレットを作成するとともに保護者に寄り添った指導が必要である。
○井上未夢1) 上村英之2) 秋山恭子3)
1)医療法人社団マハロ会LeaLea歯科・矯正歯科クリニック
2)医療法人社団マハロ会かみむら歯科・矯正歯科クリニック
3)埼玉県立大学保健医療福祉学部健康開発学科口腔保健科学専攻
キーワード 小児 歯磨き 習慣化 アプリケーション
【目的】 4歳児の保護者の方に子どもが歯磨きを嫌がりブラッシングできないという相談を受けた経験から,歯磨きに苦手意識を持つ小児の歯磨き習慣の確立は困難だと感じた。楽しく歯磨きを継続する手段として歯磨き習慣アプリ(以下,アプリ)を知り,アプリ利用により小児の歯磨きの習慣化,モチベーション向上に関しての影響を明らかにすることを目的とした。
【対象および方法】 無記名自記式質問紙調査をA歯科医院に通院する2〜12歳の小児患者,保護者を対象に2023年9月に実施した。調査はアプリ使用前,使用後の2回行った。質問項目は小児と保護者で回答する項目を分け,小児が回答する設問は5段階のフェイススケールを用いた(得点の高い方が肯定的であることを示す)。解析はWilcoxonの符号付順位検定にて検討した。本研究は埼玉県立大学研究倫理委員会の承認を得て行った(承認番号23056)。
【結果および考察】 回答は46名より得た(有効回答率88.5%)。歯磨きのみの場合と比較し,アプリを使用して歯磨きをする場合のフェイススケール得点の結果が有意に高かった(p<0.001)。この結果から小児はアプリを使用して歯磨きすることに対し肯定的な印象を持つ傾向があると考えられる。1日の歯磨き回数はアプリの使用前と使用後で有意差は認められなかった。一方,1回の歯磨き時間はアプリ使用前が平均2分7秒,使用後が2分22秒となり,使用前と使用後で有意差が認められた(p=0.047)。したがって,アプリは小児の歯磨き回数の増加に効果的とはいえなかったが,1回の歯磨き時間を増加させる効果があることが分かった。
【結論】 本研究により小児の歯磨きに対して持つ印象の変化,1回の歯磨き時間の増加というアプリの使用による影響が明らかとなった。
○臼井 葵1) 久保美由紀1) 長野莉子2) 國見亮太2) 玉置幸雄2)
1)福岡歯科大学医科歯科総合病院歯科衛生士部
2)福岡歯科大学成長発達歯学講座矯正歯科学分野
キーワード 横紋筋肉腫 口腔衛生管理 唾液分泌
【目的】 横紋筋肉腫は,筋肉などから生じる軟部肉腫の1つで,小児での発現頻度は稀な悪性腫瘍であり,集学的な治療が必須である。今回,横紋筋肉腫にて下顎区域切除術が行われた患児に対し,口腔衛生状態の向上を目指し口腔衛生管理を行った1例を報告する。
【症例の概要】 11歳女児。
既往歴:左下顎部横紋筋肉腫にて化学療法・陽子線治療・腫瘍摘出術を施行した。
現病歴:他施設にて8歳時に下顎骨部分切除後,20XX年1月に叢生と下顎左側臼歯部の欠如に伴う上顎左側臼歯部の挺出および下顎の左方偏位を理由に当院矯正歯科に紹介され,20XX年2月に受診した。
口腔衛生状態:上下顎左側にプラーク付着及び,多数の脱灰,周囲歯肉に発赤・腫脹を認めた。
なお,発表にあたり保護者に口頭で同意を得ている。
【経過および考察】 う蝕リスクの把握として,唾液分泌量計測をサクソンテストで行い,口腔衛生状態の視覚的確認のため歯垢染色を実施した。初診時は唾液量0.81g,PCR28%であった。初診後,歯科衛生指導として唾液量の増加を目標に自宅での唾液腺マッサージとよく噛んで食べるよう指導を行った。また,PCR値減少のため患児自身に手鏡でプラーク付着部位を確認させ,自身による歯ブラシ等でのブラッシング後,再度残存プラークの確認を行った。1か月後の矯正歯科治療の再診時に2回目測定を行ったところ,唾液量1.52g,PCR8%と改善傾向がみられた。
【結論】 本症例における唾液分泌量の低下は,横紋筋肉腫治療に伴う唾液腺除去によるものと考えられる。患児に健側の唾液腺マッサージなどの指導を行うことで,唾液分泌がある程度促進された。しかし,唾液量は正常量より依然として少なく,プラークコントロールを継続しPCR検査や唾液量の測定と評価を行うことが,小児がん患者の口腔のQOL向上に寄与する可能性が示唆された。
○中村夢衣1) 近藤淳子1) 塚田しげみ1) 坂本裕里子1) 筒井亜香里1) 桜井花菜1) 笹川裕輝2) 中村由紀2) 早崎治明2)
1)新潟大学医歯学総合病院医療技術部歯科衛生部門
2)新潟大学大学院医歯学総合研究科小児歯科学分野
キーワード リンパ管腫 シロムリス 口腔衛生管理
【目的】 シロムリスはmTOR阻害薬の1つであり,難治性リンパ管疾患に対する治療薬として2021年9月に薬事承認が下りた。シロムリスの副作用として口内炎の頻度が高く,経口摂取困難となった症例の報告もある。今回,シロムリス服用中のリンパ管腫患者の口腔内管理を行った1例を報告する。
【症例の概要】 患者は初診時年齢3歳11ヵ月女児,生後より左側の頬部リンパ管腫(奇形)のために当院小児外科において加療中であった。漢方薬による治療を行っていたが奏功せずシロムリスによる治療が開始となり,口腔内への副作用を懸念され,口腔内管理のため小児外科より当科紹介となり定期的に口腔内管理を行うこととなった。なお,本症例は事前に書面を用いて家族より同意を得た。
【経過および考察】 患者は管理開始から5歳4ヵ月の現在まで3ヵ月間隔にて定期的に当科を受診している。当科では口腔内診査および歯科衛生士による歯面清掃およびフッ化物塗布を実施した。患者は小児であるため本人および保護者に対するブラッシング指導も継続した。また,当科よりアズノール軟膏を処方し口内炎が発症した際に適宜使用するよう指導した。口腔内診査では毎回異なる部位に口内炎が認められ,口内炎は発生と治癒を繰り返しており,シロムリス内服による口内炎の発生は頻回であると考えられた。しかし,シロムリスによる治療を中断するほど重篤化しなかった。これらのことからシロムリス服用における口内炎の発症は高頻度であり,歯科における口腔内管理は重要であると考えた。
【結論】 口腔衛生指導や薬剤服用指導といった歯科における定期的な口腔内管理により,これまでシロムリス服用における口内炎の重篤化予防に寄与できている。そのため今後も管理を継続していく。
○酒井美華1,2) 原山裕子1) 犬飼順子1)
1)愛知学院大学短期大学部専攻科
2)株式会社ジーシー
キーワード マスク着用 新型コロナウイルス感染症 口腔内の変化 心理的影響
【目的】 本研究は歯科衛生学生の今後のマスク着用と口腔内変化の自覚症状および心理的影響との関連を分析し,マスク着用の歯科衛生学的意義を検討することを目的とした。
【対象および方法】 2023年次A短期大学女子学生315名を対象に無記名Web質問紙調査を実施し,マスク着用について口腔内の変化および心理的影響の二項ロジスティック回帰分析,テキストマイニング分析を実施した。本研究は愛知学院大学短期大学部倫理委員会(承認番号23-001)の承認を得た。
【結果および考察】 294名(回収率93.0%,平均年齢19.3±1.05歳)を解析対象とした。マスク着用による口腔内の変化の単変量解析の結果「歯肉に炎症が起きた」で有意な関連がみられ(p<0.05),マスク着用による心理的変化の単変量解析の結果「マスクをしていると気持ちが落ち着くようになった」(p<0.001),「マスクをしていると自分の表情を隠すのに役立つ」(p<0.05),「感染リスクが無くなってもマスクをしていたい」(p<0.001),「マスクをしていれば相手にうつす心配がない」(p<0.05),「周りの人がマスクを着用していたら自分も着用する」(p<0.001),多変量解析では「感染リスクが無くなってもマスクをしていたい」(p<0.001)で有意な関連がみられた。今後のマスクの着用についての自由記載の抽出語は「暑い」,「マスク」,「息苦しい」の順に多かった。
【結論】 本研究よりマスク着用による心理的影響は大きかったことから,規制緩和によりマスクの習慣的着用はますます心理的影響が大きくなることが予測され,口腔内への影響も考慮する必要があると結論された。歯科衛生実践に本研究結果を活用するためには,さらなる調査検討が必要である。
○柳田優利亜1,2) 稲垣幸司1,3) 大矢幸慧1) 犬飼順子1) 上田祐子1) 後藤君江1) 原山裕子1) 加藤彰子4) 林 健一5) 石野雅一5)
1)愛知学院大学短期大学部
2)愛知学院大学歯学部附属病院歯科衛生部
3)愛知学院大学歯学部歯周病学講座
4)愛知学院大学歯学部口腔解剖学講座
5)GOKO映像機器株式会社
キーワード 歯科衛生士 加熱式タバコ 喫煙 口呼吸 毛細血管流速
【目的】 喫煙と歯周組織との関係を解明するため,喫煙,受動喫煙曝露状況と口呼吸を含めた質問票調査と口腔所見について検討した。
【対象および方法】 対象は,A短期大学女子学生325名である。その内,同意を得た14名に,口腔写真による上下顎前歯部の歯肉炎症と歯肉メラニン色素沈着の評価,毛細血管顕微鏡を用いた毛細血管流速の測定を行った。なお,本研究は愛知学院大学短期大学部倫理委員会(承認番号23-002,23-003)の承認を得た。
【結果および考察】 喫煙状況は,紙巻きタバコ喫煙率1.3%,加熱式タバコ喫煙率1.2%,水タバコ喫煙率1.6%で,受動喫煙曝露率36.3%となった。また,加濃式社会的ニコチン依存度調査票(KTSND)得点中央値は,喫煙状況別では,喫煙未経験者11.0,試し喫煙者16.0,前喫煙者10.5,喫煙者20.0となり,喫煙未経験者は,喫煙者や試し喫煙者に比べ低かった(p<0.05)。口呼吸自覚者は41.4%で,口呼吸自覚者の方が非自覚者に比べて,31項目中,姿勢,鼻閉,睡眠呼吸障害(いびき)等13項目で関連がみられた(p<0.05)。上下顎毎の前歯唇側歯肉毛細血管血流速度は,上顎前歯唇側歯肉部BOP(+)13部位は,下顎前歯唇側歯肉部BOP(-)16部位に比べ血流速度が遅くなる傾向がみられた。上顎歯肉メラニン色素沈着者9名中,口呼吸自覚者は6名みられたが,受動喫煙との関連がなかった。
【結論】 本学の継続的な禁煙教育は,学生の喫煙率の抑制に好ましい効果をもたらしていた。したがって,禁煙支援や口腔衛生を担う歯科衛生士として,喫煙,受動喫煙,口呼吸の影響に関する正しい認識を持つことが重要であると考えた。
○谷口 凜1,2) 稲垣幸司1,3) 中山洋平4) 五十嵐寛子5) 大森みさき6) 柳田 学7) 埴岡 隆8) 内藤 徹9) 森田 学8) 小方賴昌4)
1)愛知学院大学短期大学部
2)クラウン歯科名古屋中村院
3)愛知学院大学歯学部歯周病学講座
4)日本大学松戸歯学部歯周治療学講座
5)日本歯科大学生命歯学部歯周病学講座
6)日本歯科大学新潟病院総合診療科
7)大阪大学大学院歯学研究科歯周病分子病態学講座
8)宝塚医療大学保健医療学部
9)福岡歯科大学高齢者歯科学講座
キーワード 日本歯周病学会 喫煙率 禁煙支援 加熱式タバコ
【目的】 日本歯周病学会会員の喫煙状況や禁煙支援の現状とその関連要因を明らかにするため,喫煙に対するweb質問票調査を実施した。
【対象および方法】 対象は1,396名(回収率11%),調査項目は,対象者の基本属性として,性別,年齢層,所属,職種,喫煙状況,喫煙関連項目として,勤務先の喫煙対策,家族や同居者の喫煙状況,歯周病患者の喫煙支援の現状と認識,加濃式社会的ニコチン依存度調査票(KTSND)臨床従事者に対して禁煙支援の現状や認識を調査するために,患者の喫煙状況の把握,禁煙支援の現状,禁煙支援を行わない理由および加熱式タバコ(HTP)に対する認識である。なお,本研究は,日本歯周病学会倫理委員会の承認を受けて実施した(承認番号 第JSP2021001号,2022年3月23日)。
【結果】 喫煙状況は,非喫煙者945名(68%),前喫煙者414名(30%),喫煙者37名(2%)であった。なお,喫煙者の内訳は,紙巻きタバコのみ13名(35%),HTPのみ15名(41%),水タバコのみ1名(3%),紙巻きタバコとHTPの併用者4名(11%),HTPの併用者3名(7%),紙巻タバコと電子タバコの併用者1名(3%)であった。歯周病患者に対する禁煙支援は,すべての患者に実施240名(18%),必要時に実施656名(50%)であった。さらに,禁煙支援の関連要因は,歯科医師では,50歳以上,KTSND得点規準範囲9点以下,重度歯周病との関連を認識している者の3要因が関連していた(p<0.05)が,歯科衛生士では有意な関連要因がみられなかった。
【結論】 禁煙支援の知識や正しい認識の普及等の啓発により,歯科医療職の禁煙支援実施率の向上をめざし,禁煙支援を行いやすい環境を作ることが急務であると考えた。
○松木晴香 大関慧子 小木曽真弥 中村瑞希 水口洋子 児玉弓子
一般財団法人 日本口腔保健協会
キーワード 職域口腔保健活動 就労世代 歯科健診 一般健診 口腔保健状況
【目的】 生涯を通じた歯科健診(国民皆歯科健診)を実現する上で,法定健診がなく,かつ,多忙な就労世代に対する歯科健診の取組みが課題となっている。また,交代勤務やテレワーク等,多様な勤務形態の普及により,集合型の歯科健診の受診が困難になっている。そこで,就労世代の歯科健診受診率を高めるための試みとして,事業所での一般健康診断(以下,一般健診)と同時に歯科健診を実施し,その参加状況を調べるとともに受診経験の有無と口腔状況の関連性について調べた。
【対象および方法】 調査対象者は,2023年度の職域口腔保健活動における某事業所の一般健診受診者の中で歯科健診を受診した者とした。歯の状態は視診により診査し,歯肉の状態はCPI代表値により「健康」「歯肉炎」「歯周炎」とし,歯口清掃習慣および受診経験は聞き取りにより調べた。調査報告にあたり対象者には同意を得て行い,データの取扱いは個人が特定されないよう匿名化した。
【結果および考察】 一般健診受診者258名の内,歯科健診受診者は256名であり,ほぼ全員が受診した。歯科健診の受診経験ありは103名,受診経験なしは153名と過半数を占めた。口腔状態では,受診経験ありに比べ,受診経験なしは「未処置歯あり」,「未補綴歯あり」が多く,歯肉の状態では「歯周炎」が多く,歯口清掃習慣では「歯みがき回数1日1回以下」,「歯間部清掃器具を使用しない」が多かった。また,受診者からは「痛くないので気がつかなかった」「歯科医院に行く時間がない」「歯のみがき方がわからない」等の声が聞かれ,定期的な歯科健診,歯科保健指導の必要性が示唆された。
【結論】 多忙な就労世代の歯科健診は,一般健診との同時実施などの検討が必要であり,あわせて口腔リテラシー向上のための支援の必要性が示唆された。
○南川千咲1,2) 鈴木一吉1) 北村優依1) 犬飼順子1)
1)愛知学院大学短期大学部専攻科(口腔保健学専攻)
2)医療法人健晴会 山田歯科
キーワード 歯科定期健診 歯周病 質問紙調査
【目的】 歯科衛生士としてどのような情報提供をすれば20歳代の歯科定期健診の受診率が上がるのかを考察するために,歯科定期健診に対する意識についての質問紙調査を行った。
【対象および方法】 Googleフォームでの質問紙調査を,非歯科医療関係の20歳代男性37名,女性55名対象に実施した。質問紙調査1では,「歯科定期健診の受診の有無」など,さらに,同意が得られた対象者には,歯科に関する情報を提供し質問紙調査2を実施した。なお,本研究は,愛知学院大学短期大学部倫理委員会(承認番号23-004)の承認を得て行った。
【結果および考察】 質問紙調査1において,歯科健診を受診したことが無い者は37%だった。理由として症状が無いことなどが挙げられた。質問紙調査2において未受診の者に対して,歯科定期健診の重要性や歯周病が全身へ及ぼす影響等について情報提供を行った結果,歯科健診を受診したいと回答した者が90.5%となった。これらの結果より,若年者において歯科健診を定期的に受診することの目的や必要性を十分に認識していない者や,歯科疾患が全身に影響を及ぼすことについて知らない者が多いということが明らかになった。
【結論】 本研究の結果,若年者の歯科定期健診の受診率を上げるためには,歯科に関する情報提供を行い,歯科疾患予防のために歯科医院に通うことの重要性や,歯科疾患が及ぼす全身への影響の正しい情報を発信していくこと,また,丁寧な説明を行い患者に寄り添い,気軽に相談できる環境をつくることが,歯科衛生士の担う重要な役割であることが示唆された。
○花谷早希子 細見 環 永田英樹 佐田夏穂 磯貝友希 新井麻実 古賀 恵 畑田晶子 脇坂 聡
関西女子短期大学歯科衛生学科
キーワード 高校生 歯科健診 問診票
【目的】 文部科学省は,学校歯科保健においてう蝕予防への重点的な取り組みから成果を発揮した。今後は,口腔機能の発達や口腔疾病の増加への対策により一層の充実を求めるとしている。そこで本研究では,若年層の口腔環境を把握すべく歯科健診に参加した高校生の問診票から調査を行った。
【対象および方法】 令和5年度に本学実施の歯科健診を受けた高校1年生368名に対し,歯科健診前に記入させた問診票を基に分析を行った。質問項目は,口腔保健行動の他,口腔内の自覚症状や口腔習癖等であった。本研究は,関西福祉科学大学研究倫理審査委員会の承認(承認番号23-27)を得て実施した。
【結果および考察】 1日の歯磨き回数で最も多いのは2回(79.3%),「就寝前」に磨く者が297人と最も多くその時間は「3-5分未満」であった。口腔に関する9つの自覚症状の内,1つでも症状がある者(自覚症状有り群)は224人(60.9%),症状として有訴率の高かったものは,「食片圧入(31.5%)」「ブラッシング時の出血(26.1%)」「口臭(25.0%)」であった。次に自覚症状の有無と口腔習癖及び口腔状況との関連性を調べたところ,「開口」や起床時の「口唇乾燥」「口腔の不快感(ネバネバした感じ,ヒリヒリした感じ)」「口臭」,丁寧な歯磨きにも関わらず生じる「出血」「歯石沈着」「ステイン付着」「口内炎」との間に有意差が示された。しかし,自覚症状の有無と歯磨き回数等の口腔保健行動との間に明確な関連は示されなかった。
【結論】 本研究の高校生では,口腔に関する自覚症状の有無と習癖等の間に関連がみられたが,口腔保健行動との間には明確な差が見られなかった。このことから,様々な要因が若年層の口腔環境に影響を与えている可能性があると示唆された。
○鈴木 瞳1) 檜作真理子2) 杉本久美子1) 吉田奈永3) 吉田直美1)
1)東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科口腔健康教育学分野
2)恵比寿新橋いかわ歯科医院
3)東京医科歯科大学病院オーラルヘルスセンター
キーワード 月経周期 歯周組織 口臭 口腔乾燥
【目的】 女性ホルモンが口腔に影響するとされているが,研究は限定的であり,女性ホルモン分泌が最も高い性成熟期を対象とした報告は殆どない。そこで,本研究では20代女性を対象とし,月経周期と口腔内状況の関連を調べ,女性ホルモンの影響について検討した。
【対象および方法】 研究協力への同意が得られた健康な20代女性10名を対象とし,平均年齢は21.6±1.2(SD)歳であった。月経期および月経開始14日後を目安とした排卵期の2回にわたり,口腔内状態の客観的指標の測定ならびに口腔自覚症状に関する自記式質問票調査を実施した。指標として,口臭,口腔水分量,安静時唾液量,歯周組織検査,プラークコントロールレコード(PCR),および多項目・短時間唾液検査システム(ライオン株式会社,以下SMT)による唾液の測定を行った。月経期と排卵期における結果を比較し,女性ホルモンと口腔状態の関連について検討した。本研究は,本学歯学部倫理審査委員会の承認を得て実施した(D2023-011)。
【結果および考察】 最深ポケット値,口臭値,SMTのアンモニア値は,月経期と比較して,排卵期に有意に高い値を示した。出血率,PCR値,安静時唾液量,口腔水分量,SMTの白血球とタンパク質の値は,月経期と排卵期で有意差を認めなかった。口腔自覚症状は,2時期で有意差が認められる項目はなかったものの,口の乾きが「ある」と回答した者が月経期に多い状況がみられ,対象者を増やした検討が必要であることが示唆された。
【結論】 20代健康女性を対象とした調査より,女性ホルモンの分泌が高まる排卵期において,歯周ポケット最深部の局所的悪化とそれに伴う口臭増加が起こる可能性が示され,月経周期を考慮した歯科保健指導が必要であることが示唆された。
○白部麻樹1) 枝広あや子1) 本川佳子1) 森下志穂1) 本橋佳子1) 松原ちあき1,2) 岩崎正則1,3) 渡邊 裕1,3) 平野浩彦1)
1)東京都健康長寿医療センター研究所
2)静岡県立大学短期大学部
3)北海道大学大学院歯学研究院
キーワード 認知症 口腔衛生管理 口腔ケア 拒否
【目的】 認知症高齢者は,病期により介護拒否等の認知症の行動・心理症状が生じ,口腔ケアの提供が困難な場合があるが,認知症重症度別に口腔衛生管理の課題を明らかにした知見は少ない。そこで,口腔衛生管理に関する課題を認知症重症度(Clinical Dementia Rating(CDR))別に明らかにすることを目的とした。
【対象および方法】 2015~2020年実施の調査に参加した要介護高齢者のうち,認知症を有する者(CDR0を除外)の結果を横断データとして利用した。口腔衛生管理の関連項目は,歯磨きの自立,リンシング,口腔ケアの介助・促し等への拒否,プラーク付着等とした。その他は性,年齢,既往歴とした。統計解析はマルチレベルモデル二項ロジスティック回帰分析を用い,CDR0.5(認知症の疑い),1(軽度),2(中等度),3(重度)の4分類で検討した。本研究は東京都健康長寿医療センター研究部門倫理審査委員会の審査承認を得た(37)。
【結果および考察】 解析対象は1013件(女性848名,平均87.2±6.6歳)であった。性,年齢,既往疾患数を調整した結果,CDR0.5を基準として有意な関連因子は,歯磨きの自立および口腔ケアの介助・促し等への拒否でCDR2およびCDR3,リンシングでCDR3,プラーク付着でCDR1およびCDR3であった(p<0.05)。歯磨きの自立で有意な関連のないCDR1においてもプラーク付着が有意に多かったことから,認知症軽度ではセルフケアを促すことに加えて,介助を適切に行う必要があると考えられる。
【結論】 口腔衛生管理を検討する際には,認知症軽度ではセルフケアを促すことによる残存機能の支援方法,重度では口腔ケアの介助拒否への対応を考慮する必要性が示唆された。
○奥村美雪1-4) 岩井孝恵1) 上田亜海1) 小森千代乃3,5) 矢木明美1,3,6) 岩田哲也2) 田原秋彦1) 古田摂夫3) 山村善治6) 中井雅人4)
1)田原歯科医院
2)岩田歯科医院
3)アスク歯科クリニック
4)なかい歯科
5)さばし歯科
6)やまむら歯科
キーワード かかりつけ歯科医 定期受診 口腔機能測定 オーラルフレイル オッズ比
【目的】 口腔機能は,構音に不可欠な機能であり,日常生活を豊かにするために重要な役割を果たしている。オーラルフレイル対策実践フローチャート(以下,フローチャート)を使用した,介護予防教室を展開した。かかりつけ歯科医を持つ参加者とかかりつけ歯科医との関わり方の調査を目的とした。
【対象および方法】 令和5年8月から令和6年2月に実施した,介護予防教室参加者は延人数198名。第1回目参加81名であった。第2回目参加72名の内,2回とも参加した63名(男性平均年齢78.8歳,女性平均年齢79.7歳)の内61名の協力を得た。舌口唇運動機能,咀嚼機能を測定した。フローチャートの症状の10項目質問より,症状に合わせた体操や訓練を紹介した。第2回目参加者に「かかりつけ歯科医」の有無,「定期受診」の有無を任意確認した23名の協力を得た。かかりつけ歯科医を持ち,定期受診を継続している参加者は,口腔機能を維持されると仮定しオッズ比を用いて調査した。なお,質問紙は無記名とし,匿名化されており倫理的面に配慮した。また,調査への回答協力を持って同意を得た。
【結果および考察】 定期受診なしの参加者は,定期受診ありの参加者と比べ,男女共に数値の減少がみられた。オッズ比の有意性なしであった。フローチャート10項目の症状においても,オッズ比の有意性なしであった。最高齢の参加者で,かかりつけ歯科医あり,定期受診ありは,舌口唇運動測定値全て6回以上であった。定期受診なしは,全て5回以下であった。参加者は,測定を望む傾向が高いが,かかりつけ歯科医を定期受診し口腔機能管理の維持可能な関係が保てると良いと考える。
【結論】 教室参加者には,かかりつけ歯科医の定着が伺えた。健診事業の啓発を含め,口腔健康を高めた教室展開の必要があると考える。
○室橋波菜1,2) 米澤大輔3) 柴田佐都子3) 葭原明弘3) 濃野 要3)
1)新潟大学医歯学総合病院
2)新潟大学大学院医歯学総合研究科 口腔生命福祉学専攻
3)新潟大学大学院医歯学総合研究科 口腔生命福祉学講座
キーワード 脈圧 唾液量 高齢者
【目的】 高齢者においてQOLの低下と関連するとされる唾液量低下は,その発症頻度が増加し,また,動脈硬化関連バイオマーカーとの関連について報告されている。一方,高齢者では,収縮期血圧の上昇と拡張期血圧の低下から,末梢の動脈硬化の指標とされる脈圧(収縮期血圧と拡張期血圧の差)は増加する。そこで,本研究では,高齢者において脈圧と唾液量低下の関連を検討することを目的とした。
【対象および方法】 対象は80歳の地域在住高齢者,322名である。刺激時唾液量(SSF)はガム法,安静時唾液量(NSF)はワッテ法を用いた。血圧測定および質問紙による服薬状況確認を行った。脈圧の基準値は70mmHgとした。SSF・NSFはそれぞれ0.5ml/min,0.14g/30sを低下基準とした。統計解析において,独立性の検定にはカイ二乗検定を用い,平均値の比較にはt検定を用いた。また脈圧70mmHg以上を目的変数とするロジスティック回帰分析を行った(新潟大学歯学部倫理委員会承認番号12-R1-4-21)。
【結果および考察】 SSF,NSFの低下はそれぞれ37名(11.5%),238名(73.9%)に認められた。脈圧70mmHg以上の者は117名(36.3%)であった。降圧剤・利尿剤服用者はそれぞれ138名(42.9%),20名(6.2%)であった。対象者全体におけるSSF,NSFの低下は脈圧との関連を認めなかったが,男性(167名,51.9%)において脈圧70mmHg以上の群では,SSFの低下を認める割合が有意に高かった。また,そのオッズ比はその他の評価項目で調整後,4.32(1.37-13.69)であった。
【結論】 男性高齢者において,脈圧が70mmHg以上であることと,刺激唾液流量低下の関連が示唆された。
○髙橋麻里子1) 田中祐貴2) 藤代万由1) 三浦留美1) 窪木拓男3)
1)岡山大学病院 医療技術部 歯科衛生士室
2)岡山大学学術研究院医歯薬学域咬合・有床義歯補綴学分野
3)岡山大学学術研究院医歯薬学域インプラント再生補綴学分野
キーワード アフタ性口内炎 口腔衛生管理 セルフケア 潰瘍性疾患
【目的】 アフタ性口内炎は原因不明の潰瘍性疾患で,口腔粘膜のいたるところに出現し,再発・再燃を繰り返すために治療や口腔清掃が困難となる。今回,長年繰り返す原因不明のアフタ性口内炎により,口腔清掃不良の患者に対し,口腔衛生管理を行った結果,良好な経過を得られたので報告する。
【症例の概要】 50代女性。2015年舌辺縁にできた口内炎が治癒せず,舌癌疑いで開業医より紹介され当院口腔外科を受診した。組織検査の結果,悪性所見は認めず,その後全身疾患との関連を疑い耳鼻咽喉科,皮膚科,リウマチ膠原病内科へ紹介後,精密検査を行うも異常は認めなかった。2016年顎関節症を主訴に補綴歯科へ紹介となり,2021年口腔衛生不良から,歯科衛生士介入となった。
発表に際して本人からの同意を文書で得ている。
【経過および考察】 初回介入時,口内炎は舌や口唇,口蓋に認めた。毎回口内炎の出現部位は違い,歯磨きが出来ず口腔衛生状態は不良であった(PCR 71%)。また,ブラキシズムによる機械的刺激の防止を目的に5年間使用したマウスピースには劣化を認めた。まず,口内炎悪化時に適した歯ブラシの選択・指導を行い,全顎の歯石除去を行った。また,口内炎対策としてアズノール含嗽剤,保湿含嗽剤の使用を指導した。粘膜保護剤の使用も試みたが,使用感に拒否があり継続には至らなかった。介入後,セルフケアの向上と歯科衛生士実地への積極的な姿勢を認め,口内炎が出現したものの,悪化しなかった。口腔衛生状態が改善され(PCR 18%),マウスピースを再製した。継続的な介入により,口内炎出現時も口腔衛生状態が維持できていると考えられる。
【結論】 アフタ性口内炎患者に対し口腔衛生管理を継続した結果,セルフケアは向上し,口腔衛生状態の改善に繋がった。
○桜井花菜1,2) 柴田佐都子3) 米澤大輔3) 葭原明弘3) 濃野 要3)
1)新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔生命福祉学専攻
2)新潟大学医歯学総合病院
3)新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔生命福祉学講座
キーワード 地域在住高齢者 現在歯数 咬合支持数 身体機能低下
【目的】 本研究は高齢者における歯数および咬合支持数と身体機能低下の関連を検討し,また,口腔評価方法として固定性ブリッジのポンティックを含むべきか検討することを目的とした。
【対象および方法】 対象は地域在住の75歳高齢者387名とし,口腔診査,質問紙にて身体機能(老研式活動能力指標:TMIG-IC)評価を行った。身長・体重を測定しBMIを算出,血液検査にて血清アルブミンを測定した。口腔の変数として現在歯数(NP)と咬合支持数(NOS)およびポンティックも含めた歯数(P-NP)と咬合支持数(P-NOS)を用いた。歯数は0-9歯,10-19歯,20歯以上,咬合支持は0-4か所,5-9か所,10か所以上で,それぞれ3群に分けた。TMIG-ICスコアは先行研究からカットオフ値11点を身体機能低下と定義し,カイ二乗検定とロジスティック回帰分析を用いて解析した(新潟大学歯学部倫理委員会承認番号12-R1-4-21)。
【結果および考察】 身体機能低下のある者は47名であり,NP,P-NPおよびP-NOSは歯数が少ない群ほど身体機能低下のある者の割合が高かった。身体機能低下を目的変数とした多変量解析より,オッズ比(95%信頼区間)はNPで20歯以上群を対照群として10-19歯群で2.27(1.09-4.73),P-NPで同様に2.57(1.25-5.28),P-NOSで10か所以上群を対照群として5-9か所群で2.44(1.09-5.47)であった。
【結論】 高齢者において歯数(NP,P-NP)は身体機能低下と関連があり,咬合支持数はP-NOSでのみ身体機能低下との関連があった。咬合支持数と身体機能低下の関連をみる場合は,口腔の評価としてポンティックを含めた評価が適切であることが示唆された。
○大谷まさ美1) 中本勝也1) 平沼章寛2)
1)社会福祉法人邦寿会 どうみょうじ高殿苑
2)ひらぬま歯科医院
キーワード ターミナルケア エンゼルケア 歯科衛生士 介護職員 意識調査
【目的】 介護施設で働く演者は,ターミナル期やエンゼルケアにも介入する。介入は,入居者への口腔清掃,道具の選定,介護職員への技術指導,口腔内の変化や不安へのアドバイス,死後の口腔清掃,ご家族の心理的ケアなど様々である。このような介入は,施設同様に在宅においても必要と考える。一方,介護職員がこれらの時期に歯科衛生士の介入が必要と感じているかは分からない。そこで,当施設の介護職員を対象に,ターミナル期の歯科衛生士の介入の必要性について質問紙調査を実施した。
【対象および方法】 2024年1月,当施設の介護職員(施設系,在宅系,訪問系)73名に無記名で個人が特定されない配慮を行い質問紙調査を実施した。設問(1)は,歯科衛生士とどの時期に連携できることが利点か,(2)歯科衛生士がターミナル期,エンゼルケアに関わることについてどう思うか,(3)ターミナル期,エンゼルケアに歯科衛生士が介入することは介護職員にとって利点となるか,の3つとした。
【結果および考察】 介護職員54名から回答を得た(回答率74%)。設問(1)については,ターミナル期が34名と最も多く,エンゼルケアは19名と最も少なかった。設問(2)(3)は,98%が必要と回答し,当施設の介護職員にとって,ターミナル期の歯科衛生士の介入は必要であることが示唆された。自由記載欄では,経験10年以上の職員から「チームとして必要」,「全期的に必要」という回答があった。また,訪問職員からは「研修で学んでも悩むので介入は利点」,「在宅家族への指導も行っていただける」と回答し,一人訪問の不安から,歯科衛生士の介入を期待していることが推察された。
【結論】 当施設では,施設,在宅,訪問に関わらず,介護職員がターミナル期に歯科衛生士の介入を必要と感じていることがわかった。
○福田昌代 江﨑ひろみ 破魔幸枝 中村美紀 宮澤絢子 氏橋貴子 西保亜希 高橋由希子 吉田幸恵
神戸常盤大学保健科学部 口腔保健学科
キーワード 後期高齢者 オーラルフレイル 足趾把持力
【目的】 健康で生涯を終えることは人生の目標の1つであり,その目標を達成する上で,食事,会話,審美に関わる口腔は,重要なパーツといえる。また,運動に直接関わる体力も同様であるため,それぞれの低下を早期に発見し,対応する必要性は極めて高い。令和5年度版高齢社会白書によると要介護認定者数は,加齢により大きく上昇していることから,今回は,後期高齢者のオーラルフレイルと体力との関係について検討し,若干の知見を得たので報告する。
【対象および方法】 対象は75〜93歳の96名(男性16名,女性80名:平均年齢80.7±4.3歳)である。オーラルフレイルを確認する方法はOral frailty five-item checklist(OF-5)を用い,2項目以上該当した者をオーラルフレイル群とした。体力は,握力,開眼片足立ち,5回椅子立ち上がりテスト,足趾把持力を測定した。オーラルフレイル群と体力との関連はMann-Whitney U検定で検討した(神常短研倫第22-1号)。
【結果および考察】 対象者96名中オーラルフレイルに該当したのは46名(47.9%)であった。測定会に自力で参加し,健康に対する意識が高いとされる後期高齢者にもオーラルフレイル判定者が多く存在した。オーラルフレイル群と体力との関係は,足趾把持力で男女とも有意な関連が認められた。オーラルフレイルを放置すると口腔機能低下症に移行する可能性が高いため,早期に対応する必要がある。また,オーラルフレイル群と足趾把持力との関連性が認められたことから,要介護状態に陥らないためにも口腔機能と足趾把持力の維持が生涯に渡り重要であることが示された。
【結論】 加齢に伴う健康維持には,口腔機能と足趾把持力の低下の予防が重要であることが示唆された。
○高石和子1) 山口絵里1) 藤倉みき1) 上田甲奈1) 薦田 茜1) 川島友一郎1) 鈴木善貴2)
1)社会医療法人川島会川島病院歯科・歯科口腔外科
2)徳島大学大学院医歯薬学研究部顎機能咬合再建学分野
キーワード 歯周炎症表面積 eGFR HbA1c
【目的】 歯周炎症表面積(PISA)は,歯周炎の重症度や炎症創の広がりを数値化した臨床指標として活用されてきている。PISAと糖尿病の指標であるHbA1cは双方向性の関係があることが報告されており,歯周病は糖尿病の合併症のひとつであると認識されている。糖尿病合併症には慢性腎臓病もあり,慢性腎臓病と歯周病の関連についても報告され始めている。本研究ではPISAと腎機能との関連について検討することを目的とした。
【対象および方法】 2021年8月から2023年12月に当院を受診し,10本以上の歯を有する138名を対象とした。血液透析または腹膜透析を受けている者や腎移植の既往がある者は除外した。血液データ直近の歯周精密検査からPISAを算出し,慢性腎臓病の指標となる推算糸球体濾過量(eGFR),HbA1c,および年齢,性別,BMI,血圧,喫煙の有無を調査した。PISAと各項目の相関およびPISA高値群と低値群に分け各項目の比較解析を行った。本研究は当院の研究倫理審査委員会の承認を得ている(承認番号1146)。
【結果および考察】 PISAと各項目との間に相関は認められなかった。PISA高値群と低値群ではBMIにおいて高値群が低値群に比べ有意に高い値であった(p<0.05)。しかし,eGFRを含むその他の項目との間に有意な差は認められなかった。HbA1c6.5%以上の患者群においては,PISA高値群のeGFRは,低値群よりも有意に低い値であった(p<0.05)。以上の結果より,血糖コントロール不良の因子が加わることによって両者が関連する可能性があり,腎機能の観点からも,より歯周病の管理が大切であることが示唆された。
【結論】 HbA1c6.5%以上の者は,PISAと腎機能低下との関連性が示唆された。
○髙橋真優 原田千明 佐藤美紀 白戸香奈子 佐々木貴寛 小山内奈津美
津軽保健生活協同組合 健生病院
キーワード 摂食機能訓練 口腔健康管理 多職種連携
【目的】 某中規模病院は歯科標榜を持たないが,リハビリテーション科に歯科衛生士を配置し,入院患者の口腔健康管理や摂食機能障害に対する摂食機能訓練を多職種と連携し行っている。本研究の目的は,摂食機能訓練の取り組みの意義を検証し,歯科衛生士の介入方法や役割について考察する。
【概要および方法】 取り組みの対象は2021年7月1日~2023年3月31日の期間に回復期リハビリテーション病棟及び,総合診療病棟の入院患者に対して歯科衛生士による摂食機能訓練を実施した97例であった。摂食機能訓練の方法は「摂食機能対象チェックリスト」に従い,言語聴覚士と共に対象を選出した。対象者には,口腔アセスメントを歯科衛生士が実施し,医師の指示のもと嚥下機能評価を言語聴覚士が実施した。口腔アセスメントや嚥下機能検査結果に応じて,医師や言語聴覚士と協議し,訓練目標・訓練内容を立案した。口腔アセスメントの結果,義歯不適合や抜歯等の歯科治療が必要な患者は地域の歯科医院に往診を依頼した。訓練は,昼食前に嚥下体操や咽頭アイスマッサージ,唾液線マッサージ,口腔健康管理等の間接的嚥下訓練を実施した。また,1週間に1回,定期的に嚥下状態を評価し,看護師や言語聴覚士,管理栄養士と共に食事内容の見直し等を行った。
【結果および考察】 97例の対象者に対し,計1,110件の訓練の実施ができた。歯科衛生士が摂食機能訓練を実施することにより,歯や義歯に起因した咀嚼障害や口腔機能障害に対して迅速に対応ができ,多職種による包括的支援の推進に繋がったと考えられた。
【結論】 歯科衛生士による摂食機能訓練の実施は,入院患者の口腔機能と嚥下機能の向上に寄与した可能性があった。
○勝 柚華1) 長屋優里菜1) 栗山陽菜1) 市川清香1) 間下文菜2) 岩尾 慧2) 横矢隆二2) 友藤孝明3) 藤原 周4)
1)朝日大学医科歯科医療センター歯科衛生部
2)朝日大学医科歯科医療センター包括支援歯科医療部
3)朝日大学口腔感染医療学講座社会保健学分野
4)朝日大学口腔機能修復学講座歯科補綴学分野
キーワード 要介護高齢者 洗口液 口腔ケア
【目的】 介助者による要介護高齢者の在宅ケアは支援の幅が広く,口腔ケアの質を高め良好な口腔衛生状態を維持することは容易でない。含嗽ができない要介護高齢者の場合は,さらに負担が増す。そこで我々は,殺菌効果や歯肉炎予防効果が証明されている洗口液を口腔ケア時に併用することで,口腔内環境の改善を図れるか検討することを本研究の目的とした。
【対象および方法】 対象は,朝日大学医科歯科医療センターが歯科訪問診療を実施する在宅患者のうちセルフケアが困難で,含嗽ができない要介護高齢者6名(男性5名,女性1名,平均年齢70.8±7.0歳)である。方法は,6名を介入群と対照群の2群に分けて2週間のクロスオーバー試験を実施した。介助者に口腔清掃方法を指導し,介入群では口腔清掃後,洗口液をスポンジブラシを用いて1日2回塗布,対照群では口腔清掃のみを実施した。洗口液は,アース製薬モンダミンハビットプロを使用し,評価項目は,舌苔付着度(以下,TCI),舌背と頬の口腔水分量,舌背中央と舌下部唾液の細菌数とした。なお本研究は,朝日大学倫理審査委員会(承認番号:35001)の承認を得て実施した。
【結果および考察】 TCIと口腔水分量では介入群・対照群ともに改善傾向であった。一方,細菌数では舌背と舌下部唾液ともに介入群が対照群と比較して減少傾向を示した。以上の結果より,TCIと口腔水分量では口腔清掃指導により口腔ケア手順が統一され正しく口腔清掃が行われたことで,両者とも改善傾向であったと考えられる。さらに細菌数の減少は,洗口液によって殺菌効果がより高まることが期待された。
【結論】 洗口液の併用は,細菌数を減少させ口腔衛生状態の改善に有効であると示唆された。また口腔清掃指導により,TCIと口腔水分量に有益な効果をもたらした。
○濱元陽香1) 田中紘子1) 井指李咲1) 伊西口初音1) 蟹江仁美1) 川田菜々子1) 小牧侑紀1) 矢沢麻生1) 岡本美英子2) 吉田光由2)
1)藤田医科大学病院歯科・口腔外科
2)藤田医科大学医学部歯科・口腔外科学講座
キーワード 心臓弁膜症 感染性心内膜炎 薬剤性歯肉増殖症 周術期口腔機能管理
【目的】 心臓弁膜症患者では,口腔内細菌に起因する感染性心内膜炎のリスクがある。周術期口腔機能管理では,患者の全身状態や服薬状況に配慮した感染源の除去や口腔衛生管理が重要である。今回,薬剤性歯肉増殖症を有する大動脈弁閉鎖不全症患者の口腔衛生管理を経験したので,ここに報告する。
【症例の概要】 56歳,男性。人工弁置換手術目的に当院心臓血管外科紹介受診。術前感染巣精査目的で歯科初診となった。既往に高血圧がありアムロジピンを内服していた。初診時は26歯中24歯でPPD 4mm以上を認め,PCR 71.2%,BOP 78%,歯肉増殖も認めた。中等度歯周炎ならびに薬剤性歯肉増殖症の診断で周術期口腔機能管理を開始した。本症例を報告するにあたり,患者より文書にて同意を得た。
【経過および考察】 主疾患と歯科疾患との関係について理解を深め,生涯に渡るセルフケアの確立を行うことを目的に歯周基本治療,歯科保健指導を歯科医師の指示により行った。薬剤性歯肉増殖症に対しては,血圧管理の重要性から休薬せずに歯周治療を実施した。初診から4ヵ月後の手術前日の口腔内診査では,PPD 4mm以上を認めたのは1歯のみで,PCRは14.4%,BOPも5.1%と大幅に改善があり,歯肉増殖も軽減した。また,退院後も定期的な歯科受診や適切なセルフケアの継続が認められた。
【結論】 本症例を通して,薬剤性歯肉増殖症に対しても服薬調整や歯肉切除術を実施することなく歯周基本治療で症状が改善できる場合があることが確認できた。また,本症例のような歯科受診が遠のきやすい働く世代の男性に対しても,周術期の適切な治療や指導により生涯に渡る口腔健康の土台作りができることがわかった。
○仲程尚子 小山宏樹
沖縄協同病院
キーワード 口腔衛生管理 多職種連携 舌突出 咬傷
【目的】 急性期病院では,患者の全身状態に関連し口腔ジスキネジアが発症し不随意的に舌の過緊張,弛緩などから舌の咬傷があり対応に難渋することがある。対症療法としてマウスピースを装着することが一般的だが,開口困難や残存歯の状態によってはマウスピースを作成できないことも多い。今回,ロールワッテを舌下部に挿入することにより舌尖を本来の定位置の口蓋前歯部に誘導し,多職種と連携し長期間ロールワッテを留置し咬傷を回避した症例を報告する。
【症例の概要】 90代女性,くも膜下出血のため集中治療室において気管内挿管中であった。意識状態はJCS300で舌の突出があるため,口腔衛生管理について歯科衛生士に介入依頼があった。なお,本症例の発表については家族より口頭で同意を得た。
【経過および考察】 抜管後,歯ぎしりや口腔内刺激時の食いしばりに対しバイトブロックを挿入しても舌の誤咬が改善されないため,舌下部にロールワッテを挿入したところ,舌尖が挙上でき口蓋部に収まった。翌日,舌は口腔内に収まり口唇閉鎖が維持できていたため継続使用とし,ロールワッテの挿入方法および管理を病棟看護師に依頼した。なお,誤飲防止のためロールワッテは,糸で結紮し顔面にテープで固定した。約1ヵ月間の入院中,意識状態は不明瞭で口腔ジスキネジアは継続していたため,施設へ転院の際もロールワッテの使用法を情報提供した。舌を本来の位置に戻すことで,咬傷回避,口唇閉鎖ができたと考えられた。
【結論】 ロールワッテを舌下に留置するという簡便な方法で舌の突出と誤咬を回避できる可能性が示唆された。
○岩野貴子1) 藤田浩美1) 佐々木典子1) 桐生雅恵1) 畠 由美子1) 萱中夢乃1) 笹川綾子1) 渡部 泉1) 三瓶伸也2) 大橋 誠3)
1)日本歯科大学新潟病院歯科衛生科
2)日本歯科大学新潟病院小児歯科
3)日本歯科大学新潟生命歯学部歯科麻酔学講座
キーワード 障害児・者 介護者 健康管理意識・行動 口腔衛生管理 全身麻酔法
【目的】 意思疎通不可,非協力で歯科治療が困難な障害児・者は,日常的に口腔清掃介助を必要としており,介護者の健康観や健康習慣などが,その口腔衛生管理に影響していると推測される。このような障害児・者に対しては,歯科医療支援として専門的口腔衛生処置が一つの手段となるが,それを有意識下に実施することは難しい。障害児・者の歯科治療が全身麻酔法で実施される機会を利用し,周術期に歯科衛生士が積極的に介入することによる効果を検証した。
【対象および方法】 7ヵ月間に全身麻酔法で歯科治療を行う当院障害児・者歯科センターの患者(19±15歳)とその介護者(20~60歳代)各9名を対象とした。介入は,術前後の介護者に対する歯科保健・衛生指導,術中の患者口腔内写真撮影,スケーリング,PMTCなどとした。評価は,術前後で介護者対象の質問紙調査(無記名自記式),微生物定量分析装置(口腔内細菌カウンタ)にて測定する患者と介護者の口腔内微生物量とした。本研究は,日本歯科大学新潟生命歯学部倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号ECNG-R-508)。
【結果および考察】 歯科医院に定期検診を受ける必要性や歯磨き介助の重要性の認識において術前後で介護者に変化が認められた。一方,介護者自身の歯磨き時間はほぼ変化なく,歯磨き介助時間は短くなる傾向がみられた。口腔内微生物量は,患者で減少傾向がみられたが,介護者は増加傾向となった。介護者の健康管理意識を高める効果は示唆されたが,実質的行動を変容させるには至らなかったと考える。
【結論】 歯科衛生士は,歯科治療が困難な障害児・者および介護者との信頼関係を基軸とし,介護者が口腔ケアを効率的・効果的に実施できるように,中・長期的視点で個別支援を継続する必要がある。
○日野隆子 大谷直美 村西加寿美 林 泰代 山本智子
滋賀県歯科衛生士会
キーワード 障害者歯科保健指導 視覚媒体 支援者 意識調査
【目的】 本会では,滋賀県からの委託を受け障害者通所施設歯科保健指導事業を平成25年から実施している。コロナ禍後は歯科保健指導(以下,保健指導)の内容を変更し,「視覚媒体」(以下,媒体)を用いた保健指導を実施した。今回,各施設に媒体を貼付してもらい障害者自身・支援者の行動変容に変化があったか意識調査を行ったので報告する。
【対象および方法】 媒体を各2部ずつ作成し各通所施設および障害者グループホームでの保健指導時に利用した。その後,媒体を各施設へ配布し障害者自身の昼食後の歯磨き習慣の継続と支援者が交代しても差異が出ない様,介助磨きにも利用する目的で洗口所等に貼付するよう説明した。障害者自身および支援者の行動変容(1ヵ月後)と出動歯科衛生士に文書で同意を得てアンケートを実施した。
【結果および考察】 1.媒体の内容ついては「わかりやすい」「ポイントが絞られている」との回答を得た。一方「絵を大きくして欲しい」「全て平仮名に」と0.5%の回答も得た。2.介助磨き時の利用は「はい」が53%「いいえ」が43%で障害者自身が自立しており介助磨き不必要との回答を得た。3.支援者にとって87%が役立ったとの回答を得た。4.媒体の貼付で日々の歯磨きの変化について重度の障害者施設においては変化無しであった。5.媒体貼付による変化は,丁寧に歯磨きを実施したとの回答を得た。このことから媒体を配布した効果があったと推測された。歯科衛生士からは媒体を使用したことで説明しやすいとの回答を得た。この媒体を作成した結果,事業出動者の増加につながった。
【結論】 媒体の配布によって,障害者自身・支援者の歯磨き習慣の行動変容に効果はあったと推測された。今後は,様々な施設に合わせた視覚媒体の作成を検討して事業を継続していきたい。
○林 泰代1) 村西加寿美1) 日野隆子1) 大谷直美1) 𠮷田なおみ1) 溝井敬子1) 若栗真太郎2) 土屋奈美1)
1)滋賀県歯科衛生士会
2)滋賀県健康医療福祉部健康しが推進課
キーワード 障害者歯科保健活動 養成講座 在宅療養支援 意識調査
【目的】 本会では,滋賀県の委託を受け「在宅療養支援のための歯科衛生士養成講座」(以下,講座)を4年前から開催し,高齢者や障害児・者の在宅療養を支援する歯科衛生士の育成に取り組んでいる。今回は障害児・者養成講座受講後に障害者歯科保健活動(以下,保健活動)に携わったかどうかの意識調査を実施したので報告する。
【対象および方法】 本会の会員および歯科診療所勤務の歯科衛生士を対象に令和4年11月に実施した。講座受講時とその半年後に研修内容の効果,保健活動に携わったかどうか等について文書で同意を得てアンケートを実施した。
【結果および考察】 講座参加者は30名でアンケート回答数は25名(83%)だった。講座受講者の勤務状況は診療所が半数以上で勤務年数も20年以上の者が多く10年未満の参加が少なかった。講座受講時の感想は,内容・時間共に良いとの回答を得た。研修内容については,受講時および半年後の調査で80%以上が役立つとの回答だった。特に障害の特性や対応,保護者との関わり方など具体的な内容が臨床でも役立つとの回答であり,在宅療養支援のみならず臨床の場で障害児・者の患者対応に講座が役立つことがわかり講座開催の効果があったと考えられる。また,講座受講前から在宅療養支援および保健活動に携わっていた者はそれぞれ38%で,講座受講後に保健活動に携わるようになった者は4%だった。半年後の結果では,受講後の在宅療養支援の実施について,実施した・実施無し共に50%だった。実施無しの理由は,勤務先が現在は在宅療養支援を実施していないが67%であり,勤務先の実施状況に大きな影響を受けることが分かった。
【結論】 今後は,在宅療養支援だけでなく障害児・者の特性や対応について定期的に講座を実施すると共に,若手の歯科衛生士の育成に取り組んでいきたい。
○坂本裕里子1) 近藤淳子1) 塚田しげみ1) 筒井亜香里1) 中村夢衣1) 桜井花菜1) 朴沢美生2) 中村由紀2) 早崎治明2)
1)新潟大学医歯学総合病院医療技術部歯科衛生部門
2)新潟大学大学院医歯学総合研究科小児歯科学分野
キーワード 自閉スペクトラム症 行動療法 視覚支援
【目的】 自閉スペクトラム症の患者は歯科治療への適応性が低く,行動調整に工夫が必要である。今回,自閉スペクトラム症児への視覚支援と行動療法を用いた継続的口腔衛生管理の経験を得たので報告する。本発表に際し患者の保護者より書面による同意を得ている。
【症例の概要】 患者:初診時年齢5歳4ヵ月の男児で,3歳で自閉スペクトラム症と診断された。発達年齢3歳程度(初診時)。主訴:フッ化物塗布。以前に近医歯科を受診するも泣いて抵抗し診察室まで入れず,受付脇でフッ化物塗布を受けた経験がある。
【経過および考察】 初診時は診療用チェアに上がれず口腔内診査さえ困難な状態であった。まずはチェアとライトの写真を家庭でのトレーニングに活用してもらったところ,ユニットやライトの使用は可能であり,視覚支援は有効であった。そこで,絵カードを用いた「歯医者でのやることリスト表」を作成し,繰り返しTell Show Do法を併用したトレーニングを行った。それでも始めは歯科処置に対する患者の拒否が強く顕著な体動を認めたため,家族と相談の上でレストレイナーを用いた口腔衛生管理を行った。未経験の歯科処置に対する不安から解放し成功体験を増やすことで,通院1年4ヵ月後からはレストレイナーを使用せず口腔衛生管理が可能となった。今回,家族の協力が得られたことから家庭での継続したトレーニングが功を奏し,患者の協力度向上に大きく寄与したと考えられた。今後,年齢や患者の状態に合った視覚素材やリスト表の改訂を検討している。
【結論】 視覚支援と行動療法を用いることで,スモールステップではあるが患者の歯科診療に対する協力度は向上している。患者と家族の生活背景を把握し,個人に合った視覚支援を用いてトレーニングを継続することが必要と考える。
○畔柳知恵子1) 清水みお1) 二村 彩1) 山野視香子2) 三原丞二3) 村上旬平1,4)
1)一般社団法人尼崎市歯科医師会尼崎口腔衛生センター
2)医療法人三咲会ハローデンタルクリニック
3)医療法人社団みはら歯科医院
4)大阪大学歯学部附属病院障害者歯科治療部
キーワード 障害者歯科 情報共有 スペシャルニーズ
【目的】 障害のある患者の診療担当者が変更になる場合,必要な情報を確実かつ簡便に引き継ぐことが重要である。今回,患者ごとの引き継ぎ票が診療の継承に活用できたかを検証するため,引き継ぎ後の担当者への聞き取り調査を実施した。
【概要および方法】 障害のある患者(約100名)を,新たに担当することになった歯科医師2名および歯科衛生士2名を対象とした。歯科的な情報に加え,対応の難易度,対応方法,器具の受け入れ状況,生活環境,家族の協力度などを含めた,担当変更のための引き継ぎ票を作成した。引き継ぎ票の使用頻度と使用感について,対象者に構造化面接による聞き取り調査を個人情報に配慮し実施した。
【経過および考察】 引き継ぎ票の使用頻度は「毎回使用」,「必要に応じて使用」と高く,使用感は「患者情報の把握に役立った」,「対応方法の参考になった」,「患者とのコミュニケーションが円滑になった」という回答得た。障害者歯科では担当者の交替時に,それまでの環境設定やルーティンの継承が不足することで,患者や家族の心的負担を増すことがある。今回,障害特性に特化した引き継ぎ票を作成することにより,担当が替わっても導入方法や患者のこだわりへの配慮などを踏襲でき,患者の負担軽減につながったと考えられた。さらにこの引き継ぎ票は口腔内のみではなく,生活背景や主たる介助者の情報も口腔衛生指導に役立つことが示唆された。今後,さらに項目を充実させ,より使いやすい引き継ぎ票の開発を目指し,引き継ぎにのみ使用するのではなく障害のある患者を対応する際の患者情報として取り入れていく必要があると考えられる。
【結論】 障害のある患者のための引き継ぎ票は,診療の継承に有効なツールであることが示唆された。
○大鋸優香 山崎靖子 神田ほのか 河野憲司
大分大学医学部附属病院
キーワード 周術期口腔機能管理 放射線治療 頭頸部 かかりつけ歯科
【目的】 頭頸部領域に放射線治療を受ける患者を対象に,放射線治療開始時点における歯科定期受診の有無によって治療開始前の口腔環境および抜歯本数に差があるのかを明らかにする事を目的とした。
【対象および方法】 2020年4月から2022年3月の期間に当院耳鼻咽喉科頭頸部外科で頭頸部領域に放射線治療のため当科で口腔機能管理を受けた患者125名中,歯科定期受診の有無を確認できた有歯顎者69名を対象とした。電子カルテ上より「年齢・性別・喫煙歴・残存歯数・当科での放射線治療前の抜歯の有無・抜歯本数・残存歯に占める抜歯本数の割合・プロービング時の歯肉出血(BOP)・歯周ポケット4mm以上の保有率」を抽出し比較した統計解析はχ2検定,Mann-Whitney U検定を用いて分析した(大分大学倫理審査委員会承認番号2712)。
【結果および考察】 歯科定期受診有り(以下受診群)は35名,歯科定期受診無し(以下非受診群)は34名であった。年齢,性別,残存歯数は両群間に差がなかった。喫煙歴,プロービング時の出血は受診群で高い傾向であった。放射線治療前の抜歯有り,抜歯本数,残存歯に占める抜歯本数の割合,歯周ポケット4mm以上の保有率は非受診群で高い傾向であった。抜歯本数に関しては非受診群が有意に高かった(p<0.05)。
【結論】 歯科定期受診の有無による残存歯数に差は認めなかったが,抜歯本数は非受診群で有意に高かった。頭頸部領域に放射線治療を受ける前には放射線性顎骨壊死や感染予防の点から早期の歯科介入が求められる。口腔環境が整っていない場合,本来の治療がスムーズに開始されないこと,抜歯による患者への負担もあるため普段からの定期的な歯科定期受診が重要であることが示唆された。
○大澤 瞳 坂崎千恵 岩田真澄 本田真子 丹下綾菜 稲垣美紅 柴田章夫
岐阜県立多治見病院
キーワード スティーブンスジョンソン症候群 口腔粘膜炎 口腔衛生管理
【目的】 スティーブンスジョンソン症候群(以下,SJS)は,主に薬剤が契機となり眼・口腔・陰部などに重篤な壊死性の病変を生じる難病指定疾患である。口唇・口腔粘膜に広範な水疱形成,血性痂皮を伴うびらんがみられ,疼痛による摂食・嚥下障害を伴う。今回,化学療法中に生じたSJS症例に対し口腔衛生管理を行った1例を経験したので報告する。
【症例の概要】 症例:70代男性。主訴は口腔内と咽喉頭の疼痛による摂食嚥下困難。現病歴:左肺葉原発性肺癌に対しPembrolizumabで加療中に口唇びらんと広範な粘膜炎が出現し当科紹介となった。初診時所見:口腔粘膜に広範な易出血性の潰瘍を認め,疼痛のため摂食嚥下障害を認めた。当科受診後にSJSと診断され,被疑薬を中止し,ステロイドパルス療法が開始された。
症例報告を行うにあたって,本人死亡のため家族に口頭で同意を得た。
【経過および考察】 初診時から口腔衛生管理を開始し,口唇をワセリンで保湿し,キシロカイン入りハチアズレ含嗽薬,局所管理ハイドロゲル創傷被覆・保護剤(エピシル®)で粘膜を保護し除痛を図った。口腔清掃は軟毛歯ブラシ・スポンジブラシでのケアを行った。介入は,1週目は毎昼食前に,2週目以降は3日に1回,疼痛コントロール,セルフケアの状態を再評価した。介入1週目は欠食が続いたが,徐々に疼痛がコントロールされ,2週目はゼリー食が1~3割,3週目以降はペースト食が8割摂取可能となった。SJSは口腔粘膜症状が強く,セルフケアが困難となるため口腔衛生管理が必須である。治療が奏功し症状が緩和するまでに時間を要するため患者の精神的・身体的苦痛が大きく,患者に寄り添いながら適した除痛法を提供し,セルフケアを継続できるサポートが必要である。
【結論】 SJSによる広範な粘膜炎に対し,症状緩和につながる口腔衛生管理を行った症例を経験した。
○小倉早妃1) 髙馬由季子1) 髙橋桂子1) 吉田陽子1) 三浦留美1) 曽我賢彦2) 松岡賢市3) 窪木拓男4)
1)岡山大学病院 医療技術部 歯科衛生士室
2)岡山大学病院 医療支援歯科治療部
3)岡山大学学術研究院 医歯薬学域 血液・腫瘍・呼吸器内科学分野
4)岡山大学学術研究院 医歯薬学域 インプラント再生補綴学分野
キーワード 造血細胞移植 口腔粘膜炎 メトトレキサート 口腔健康管理
【目的】 造血細胞移植後の口腔粘膜炎の重症度には個人差があり,移植前処置(超大量化学療法や全身放射線照射)の強度等との関連を調べた研究が多い。一方,移植後早期に移植片対宿主病(GVHD)予防のため頻用されるメトトレキサート(MTX)との関連を調べた研究は限られている。歯科衛生士が重症化の予知性を有することは質の高い口腔健康管理に繋がる。そこで移植前処置の強度とともに,移植後MTXの投与の有無と口腔粘膜炎の重症度との関係を明らかにすることとした。
【対象および方法】 2022年10月~2023年12月に当院で同種造血細胞移植を受けた全成人患者45名(男性27名,女性18名)を対象とし後向き観察研究を行った(岡山大学倫理審査委員会承認:研2309-018)。全患者を対象として,CTCAE v3.0(臨床所見)で口腔粘膜炎の評価を毎日行った。前処置強度(骨髄破壊的前処置:MAC/強度減弱前処置:RIC),移植後MTXの有無(MTX(+/-))でフィッシャーの正確確率検定により群間比較を行い,p<0.05を有意差ありとした。
【結果および考察】 重度口腔粘膜炎(グレード3以上)発症率について,前処置強度と移植後MTX投与の有無で有意差があった(MAC:48.0%,RIC:10.0%,MTX(+):61.5%,MTX(-):18.8%)。また,MTX(+)の38.5%で口唇全周に強度の発赤・腫脹を伴う重篤かつ特徴的な潰瘍が見られた。一方,RICでMTX(-)の群に重度口腔粘膜炎の発症者がなかった。移植後MTX投与患者には,より重点的な粘膜炎対策が必要で,口唇への対策も不可欠であると考えられた。
【結論】 造血細胞移植後早期のGVHD予防を目的としたMTX投与は口腔粘膜炎を重症化させる因子であることを明らかにした。
○藤代万由1) 梶谷明子1) 佐々木禎子1) 内田悠理香2) 越智友香1) 吉田陽子1) 三浦留美1) 松﨑久美子3) 武田斉子4) 窪木拓男5)
1)岡山大学病院 医療技術部(歯科部門)歯科衛生士室
2)岡山大学病院 歯科・予防歯科部門
3)岡山大学学術研究院 医歯薬学域 歯科保存修復学分野
4)岡山大学病院 口腔外科 顎口腔再建外科部門
5)岡山大学学術研究院 医歯薬学域 インプラント再生補綴学分野
キーワード 頭頸部癌 化学放射線療法 口腔粘膜炎 患者教育
【目的】 頭頸部癌に対する化学放射線療法(以下CRT)中の口腔粘膜炎は必発であり,重症化予防は癌治療完遂に重要な役割を担っている。今回,CRT早期に中等度の粘膜炎が出現したものの口腔衛生指導や含嗽指導などの患者教育を継続したことでセルフケアが確立され,口腔粘膜炎の増悪抑制につながった1例を経験したので報告する。
【症例の概要】 78歳男性。前医にてp16陽性中咽頭癌(左側壁SCC,T4N0M0,Stage3)と診断,加療のため当院耳鼻咽喉・頭頸部外科を紹介受診した。その後入院管理下でCRT(シスプラチン+強度変調放射線治療:70Gy)を施行した。
【経過および考察】 患者は口腔内に関心が低く,歯磨き習慣は2日に1回で長期間歯科受診歴がなかった。歯科衛生士初回介入時の口腔衛生状態は極めて不良で全顎歯石が沈着していた。放射線照射部位から口腔内左側に口腔内有害事象が強く出現するだけでなく,初回介入時の口腔内環境とセルフケアの状態から口腔有害事象の重症化が懸念された。そこでCRT中の口腔衛生指導と含嗽指導等の患者教育に重点を置いた介入プランとした。26Gy時点で潰瘍が左側頬粘膜に出現し,疼痛によりセルフケアが困難となった。専門的口腔ケアを週2回実施することに加え,口腔粘膜炎の重症化予防の為に,1)保湿や保清のセルフケア指導,2)適切な用具と薬剤の選択・使用方法についての指導を,疼痛や体調に配慮しながら継続した。40Gy時点でセルフケアが確立され,口腔粘膜炎付近もブラッシング可能となった。その後70Gyまで口腔粘膜炎が増悪せず,経口摂取と胃瘻を併用しながら治療を継続できた。
【結論】 CRT開始前から歯科衛生士が患者教育を継続することで,CRT中のセルフケア確立・口腔粘膜炎の増悪抑制につながった。
○東郷夕起子1) 北上真由美1) 帆北友紀1) 鉛山光世1) 佐藤秀夫2) 山本祐士2) 佐藤真紀子3) 山座治義2)
1)鹿児島大学病院医療技術部歯科衛生部門
2)鹿児島大学大学院医歯学総合研究科小児歯科学分野
3)さとう小児歯科
キーワード 神経芽腫 周術期口腔機能管理 患児の保護者との関わり
【目的】 神経芽腫は,小児がんの中で白血病,脳腫瘍に次いで多く発生し,易感染となりやすく予後不良のケースが多い。感染予防のためには口腔ケアは必須であり,患児とその保護者との関わりは特に重要である。今回,神経芽腫患児を対象として歯科衛生士の関わりについて調査したので報告する。
【対象および方法】 2021年6月から2022年12月までに当科を受診した神経芽腫患児6名と保護者を対象とし,診療録をもとに年齢,性別,口腔衛生管理介入頻度,患児や保護者の反応について調査した。鹿児島大学研究等倫理委員会承認(220315疫)
【結果および考察】 対象者は,男児3名女児3名,平均年齢は6.3歳であった。口腔衛生管理介入回数は,年間平均44回であった。口腔内所見として,清掃不良67%,う蝕67%,動揺歯50%,口腔乾燥,舌苔付着,口内炎発症は100%であった。口腔清掃指導は,全ての患児と保護者へ実施し,含嗽指導,仕上げ磨きは100%,保湿剤使用は50%であった。保護者からの意見として,経口摂取をさせてあげたいとの声が多く,次いで,口腔内の痛みを取ってあげたいという声があった。化学療法や放射線療法の影響により,口腔内有害事象はあるものの患児に合わせた口腔ケア,含嗽指導等を行うことで早期の経口摂取へ向けて寄与することができた。入院中は患児,保護者ともに不安や心配が多く負担も大きいため,介入時の考えや思いを傾聴することが最も重要となる。
【結論】 神経芽腫患児へ介入し,患児と保護者の考えや思いに寄り添うことができた。保護者は,経口摂取をさせてあげたいという思いが強いため,今まで以上に介入頻度を多くし,感染予防をより強化して,負担軽減になるための支援を行い,ニーズに合わせた周術期口腔機能管理をしていくことが今後の課題である。
○古田久美子 濱田良子 巻幡良子 小手川雄一 是澤志保 坂本ゆり 廣岡昌史
愛媛大学医学部附属病院 総合診療サポートセンター
キーワード 入院前支援 周術期等口腔機能管理の介入 歯科介入時期 術後合併症
【目的】 口腔内感染と手術関連合併症は有意に関連していることが周知されており,周術期等口腔機能管理(以下,口腔管理)により,術後合併症を予防し入院期間の短縮効果が期待されている。一方で口腔管理をどのタイミングで開始するとよいかを解析した報告は少ない。今回我々は,入院前における歯科介入が術後合併症の抑制及び術後在院日数短縮につながるか否かを明らかにすることを目的とした。
【対象および方法】 2019年4月から2023年4月に,当院消化器腫瘍外科,心臓血管呼吸器外科,耳鼻咽喉科で悪性腫瘍手術もしくは心臓弁膜症手術を受けた20歳以上の患者1,806名を対象とした。入院前介入群と非介入群(入院前には口腔管理を行わなかった群または非介入群)の2群に分け,術後合併症及び術後在院日数について後方視的に検討した(愛媛大学医学部附属病院臨床研究倫理委員会承認番号:2403002)。
【結果および考察】 術後合併症は33例(術後肺炎13例,誤嚥性肺炎8例,術後感染10例,敗血症2例)で発症しており発症率は1.8%(33/1806)であった。入院前介入群と非介入群に分けて解析した結果,非介入群では2.1%(32/1510)に術後合併症が発症していたが,入院前介入群では0.3%(1/296)と有意に術後合併症の発症率が低下しており,両群間に有意差を認めた(p<0.05)。術後在院日数について解析した結果,非介入群(15.5±19.1日)と比較して,入院前介入群(12.1±12.9日)で有意に短縮した(p<0.01)。以上から,入院前から口腔管理に取り組むことで術後合併症予防及び術後在院日数の短縮がみられた。
【結論】 周術期等口腔機能管理は入院前から行うことが重要であることが示唆された。
○後藤君江 飯田実らい 相原喜子
愛知学院大学短期大学部専攻科(口腔保健学専攻)
キーワード 歯科衛生士 イメージ 他職種 チーム医療 SD法
【目的】 他職種が抱く歯科衛生士のイメージを把握することは,今後,多職種連携,協働するうえで有益であると考える。本研究では,看護師,管理栄養士,歯科衛生士をめざす学生が抱く歯科衛生士のイメージを把握することを目的とし,調査,検討したので報告する。
【対象および方法】 看護学生2年生69名,管理栄養学生2年生79名,および歯科衛生学生2年生95名,合計243名を対象とした。歯科衛生士のイメージに対して,Semantic Differential Method(SD法)を用い,イメージ評価項目(27の語対)に対して5件法にて評価を求め,因子分析(最尤法,バリマックス回転),一要因分散分析を行った。本研究は,愛知学院大学短期大学部倫理委員会(承認番号23-007)の承認を得て行った。
【結論および考察】 歯科衛生士のイメージのプロフィールは全体的にポジティブ寄りであった。歯科衛生士のイメージの内部構造を明らかにするために因子分析を行った結果,因子数4で最適解を得たため,「専門的職業観」,「職業的魅力」,「人間性」,「社会性」と命名した。4因子それぞれの因子別得点の平均値を比較した結果,「専門的職業観」,「職業的魅力」において,すべての職種間に有意な差が認められた。「専門的職業観」,「職業的魅力」,「人間性」においては,歯科衛生学生は他職種学生に比べて有意にポジティブ傾向であることが明らかになった。歯科衛生士のイメージの測定尺度のCronbachのα係数は0.907であった。
【結論】 歯科衛生士のイメージにおいて,「専門的職業観」,「職業的魅力」,「人間性」,「社会性」の4因子が抽出された。歯科衛生士のイメージは全体的にポジティブ傾向であったが,他職種学生が抱く歯科衛生士のイメージは,歯科衛生学生と比較してネガティブ傾向であった。
○山田里子 中島陽子 小粥照子 山本圭一 木下弘幸
JCHO中京病院 歯科口腔外科
キーワード RST 多職種連携 OHAT
【目的】 当院の呼吸ケアサポートチームRespiratory Support Team(以下,RST)は多職種で構成されている。全身管理における口腔衛生管理の必要性は広く認識されており,人工呼吸器関連肺炎予防としても重要と言われている。当院ではRST回診時に口腔細菌定量検査(以下,細菌カウンタ),口腔内水分量測定(以下,ムーカス),Oral Health Assessment Tool(以下,OHAT)を使用し口腔評価を行い,口腔ケア指導を行っている。今回は口腔評価と機械的評価を調査し,問題点の抽出と課題を明らかにすることを目的とした。本研究はJCHO中京病院倫理審査委員会(2023065)の承認を得て実施した。
【対象および方法】 調査期間は2022年5月から2023年4月まで。調査対象はRST回診を行った29名。調査項目は年齢・性別・OHAT・細菌カウンタ・ムーカス。調査方法は電子カルテより後ろ向き調査を行った。
【結果および考察】 男性20名,女性9名。平均年齢は71.3歳±14.7。平均歯数は16.4本±9.7。OHATによる口腔清掃スコア0が17名中,口腔細菌定量検査における細菌カウンタのLv5〜7が15名と多かった。口腔清掃スコア1が11名中すべてLv5〜7であった。OHATによる口腔清掃評価と細菌カウンタのLevelに相関はなかった。細菌量の多い原因の一つに挿管チューブやバイトブロックなどの人工呼吸器回路の汚染や,それらによる清掃の困難さも考えられた。
【結論】 評価の結果から,汚染に対しての相違がある事が分かった。今後の課題として口腔評価のさらなる均霑化と人工呼吸器装置の早期離脱に向けて多職種による共働が必要である。
○平山幸子1) 粕谷和可菜1) 室橋由里子1) 内山今日子1) 伊藤樹里1) 須藤亜矢2) 小河原克訓1) 高橋喜久雄1)
1)JCHO 船橋中央病院 歯科口腔外科
2)JCHO 船橋中央病院 看護部
キーワード 摂食嚥下障害 口腔衛生管理 入院患者
【目的】 超高齢社会の中,摂食嚥下障害の患者は増加傾向にあり急性期病院として入院患者の医療事故防止とQOLを向上させるために摂食嚥下評価前に口腔衛生管理を試みたので報告する。
【概要および方法】 以前より摂食嚥下機能障害対策委員会を設立し,摂食嚥下障害患者に対しスクリーニングから訓練までのチーム医療を続けてきているが,今年改めて摂食嚥下障害対象患者に対する口腔衛生管理の介入時期を再検討し,今まで摂食嚥下評価後に行っていた口腔内評価と口腔衛生管理を評価前に行うことにした。
【経過および考察】 2007年より摂食嚥下機能障害対策委員会を立ち上げ,我々歯科衛生士は対象患者の摂食嚥下評価後の口腔衛生管理を担当してきたが,2024年1月に介入時期を再検討した。入院中の摂食嚥下障害患者は口腔衛生状態が不良で要処置歯が多数あることが多く,口腔機能も低下している。摂食嚥下評価前に口腔衛生管理を行うことは刺激により口腔機能が賦活され咀嚼期から口腔期の運動が促進されるためVE評価においては口腔内の衛生状態が改善し,内視鏡の視界も良好になり的確な評価につながる。また,評価時に誤嚥が生じた際の口腔内細菌による誤嚥性肺炎を予防することができると考えられる。
【結論】 今回の再検討で摂食嚥下評価前から口腔衛生管理に介入することで評価の質の向上と誤嚥性肺炎予防に貢献できると考えられた。また口腔衛生管理は絶食患者に対して口腔内感覚の脱感作につながるため入院中の口腔衛生管理の早期介入と継続は患者のQOLの向上にもつながると考える。
○馬場篤子 井上庸子 中園栄里 黒木まどか 後藤加寿子 南 レイラ 石井綾子 力丸哲也 堀部晴美 田口智章
福岡医療短期大学
キーワード 歯科衛生士 復職支援 離職防止
【目的】 近年歯科衛生士の人材不足が深刻化しており,この問題を解消するため,厚生労働省は平成29年より「歯科衛生士に対する復職支援・離職防止等推進事業」を推進している。本学は令和5年11月21日に本事業の実施団体に選定され,令和6年1月31日に「福岡医療短期大学歯科衛生士研修支援センター」を開設した。そこで今回は令和5年度に開催された2回の研修会について,その概要,受講者アンケートの結果および今後の課題について報告する。尚,本研究は,本学の研究倫理委員会の承認(承認番号第681号)を受けて行われた。
【対象と方法】 第1回口腔内スキャナーを使いこなそう(講義・演習),第2回小児からの口腔育成〜食べる力を育てる口腔機能向上プログラム〜(講義・演習)に参加した71名を対象に,受講者の卒業年度ならびに勤務状況,日本歯科衛生士会会員の有無,講義の内容,実習の修得度VAS(Visual Analogue Sacale)法,その他(自由記載)の調査を行った。
【結果】 受講者の卒業年度は平成1〜10年が最も多く22.5%であった。現在働いている人は64.8%であった。日本歯科衛生士会の会員は40.8%であった。講義の内容はよく理解できたが56.1%であった。実習の修得度(VAS)は知識・操作共に受講後は大きく向上した。
【考察および結論】 募集期間が短かったため参加者が少なかったことや,研修は他県からも受講しやすい祝休日を希望する意見が多かったことから,今後は研修情報の提供法を検討していく。また,今年度も福岡県歯科衛生士会,福岡県歯科医師会と密に連携し,育児・介護等によって離職していた人材の復職支援を行い,さらに免許取得直後の新人に対するフォローアップも実施し,歯科衛生士が自信を持って働くためのサポートを行う予定である。
○元井志保 長谷川 優 煤賀美緒 嵐 聖芽 土田智子 宮崎晶子 浅沼直樹
日本歯科大学新潟短期大学 歯科衛生学科
キーワード 歯科衛生学生 職業アイデンティティ テキストマイニング
【目的】 歯科衛生学生の職業アイデンティティ形成過程には,過去の報告から種々の要因が影響することが明らかとなっている。今回,医療職に従事する近親者の有無が職業アイデンティティ形成過程に与える影響について調査した結果,興味深い知見を得たので報告する。
【対象および方法】 研究に同意したN短期大学第1学年55名に,「問1.医療職に従事する近親者の有無と職名」,「問2.歯科衛生士のイメージ」,「問3.歯科衛生士に望むこと」,「問4.今の気持ち,自身の目標,不安なこと,教員への要望」についてアンケートを行った。質問2~4は自由記述とし,それをテキストマイニングにより解析,医療職に従事する近親者の有無(あり=1群,なし=2群)で区分して比較検討した(倫理審査承認番号 NDUC-91-1)。
【結果および考察】 問1は,1群31名,2群24名であった。問2は,2群で抽象的な記述が中心であった。問3は,1群と2群の間に特徴的な差はなかった。問4は,「不安」の抽出頻度が1群よりも2群で高かった。「不安」のKWICコンコーダンスでは,1群で「不安もあったけど楽しく学校通えている。」などの記述がみられたのに対して,2群では「自分の思い描く歯科衛生士になれるかとても不安。」など歯科衛生士という職業や勉強に関する比較的ネガティブな記述がみられた。1群では,近親に医療従事者がいることで入学前の職業イメージがより具体的で,在学中もその近親者のサポートが得られるため,1群よりも2群で「不安」の抽出頻度が高くなったと考察した。
【結論】 医療職に従事する近親者の有無が歯科衛生士のイメージ化に影響することが示唆された。学生の背景を考慮して「不安」に対応することは職業アイデンティティ形成過程に好影響を与えるといえる。
○中村和美1) 長谷由紀子1) 山本智美1) 森野智子2) 金山圭一1) 仲井雪絵1)
1)静岡県立大学短期大学部歯科衛生学科
2)京都光華女子大学短期大学部歯科衛生学科
キーワード 歯科衛生ケアプロセス 臨地実習 歯科衛生学生 質的研究
【目的】 歯科衛生ケアプロセスを臨床に適用することにより,個別ニーズに応じ,根拠に基づいた歯科衛生ケアの実践が可能になると考える。A短期大学では,その応用力の修得をめざし,2年次の講義および学内学習から3年次の臨地実習(歯科衛生実践実習)までシミュレーション演習を繰り返し,切れ目なく実践へ導く教育プログラムを導入した。本研究では,アンケートとインタビュー調査を行い,その有効性および関連要因について検証した。
【対象および方法】 2022年度A短期大学で本プログラムを経験した3年生20名を対象に,シミュレーションと実践実習の目標到達度に関する自己評価アンケートを実施した。さらに,その中の4名を対象に,歯科衛生ケアプロセスの学習および習得の認識および現在の臨床実践での活用状況に関する半構造化インタビューを行った。インタビューの音声データを逐語化し,主題分析法を用い質的分析を行った。本研究は静岡県立大学研究倫理審査委員会(4-55)の承認を得て実施した。
【結果および考察】 実践実習に関する5項目の到達目標について100%の学生が「できた」「よくできた」と回答した。85.0%の者が「シミュレーション演習は実践実習に役立った」と回答した。学生は,担当患者の情報と学内で学んだ知識を臨床に応用させ,歯科衛生ケアプロセスを活用し論理的思考を実践していた。歯科衛生ケアプロセスの習得や臨床活用に影響を与えた因子は,学びを促進するインタラクション,臨床実践のコンテクストのテーマが同定された。歯科衛生ケアプロセスの臨床活用の阻害要因として,実践効率を優先する風土,歯科衛生士業務記録の軽視の影響が明らかとなった。
【結論】 本プログラムは歯科衛生ケアプロセスを臨床応用する力の習得に有用であることが示唆された。
○山本智美1) 森野智子2) 中村和美1) 長谷由紀子1) 仲井雪絵1)
1)静岡県立大学短期大学部
2)京都光華女子大学短期大学部
キーワード 歯科衛生学生 通いの場 介護予防推進事業実習 口腔機能向上
【目的】 厚生労働省は,令和6年度までに全市町村で「高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施」を展開するよう推進し,専門職による健康教育の実施を求めている。これを踏まえ,本学では歯科衛生士が地域包括ケアシステムの一員として通いの場等で期待される役割を実感し,生活機能の低下した在宅高齢者に対して口腔機能向上および口腔衛生等を包摂する健康教育を実践する力を身につけるために,介護予防推進事業実習を2年次カリキュラムに導入した。本実習は国の事業開始と同時期に導入されたため,歯科衛生教育における導入事例として先駆的だと考える。令和5年度に実践した本実習の概要を報告する。
【概要および方法】 歯科衛生学科2年生39名に事業,制度や介入方法を説明し,1班5名程度の学生を通いの場4か所に2班ずつ割り付けた。学生は7月に対象者へのアセスメントを行い,対象者の特徴や課題を踏まえた保健指導案を作成し準備を進めた。9月に各班1回ずつ保健指導を実施した。実習終了後,アセスメント,計画立案から実施までを振り返り,グループワークにより課題を考察し報告した。
【経過および考察】 本実習は学生,高齢者双方にとって口腔機能向上を通じた絶好のコミュニケーションの機会となった。学生は,収集した情報から対象者の課題に応じた保健指導をグループごとに展開し実習終了後の報告会では,在宅高齢者の全身疾患や生活習慣等を理解することの大切さや相手に伝わる保健指導の難しさを実感していた。
【結論】 歯科衛生学生の通いの場での取り組みは,在宅高齢者への理解を深めることに繋がった。本実習がフレイル,オーラルフレイル予防や高齢者の口腔機能向上に取り組む歯科衛生士の育成の一助になることを期待し,今後も継続して実施していきたい。
○佐藤美紀1) 原田千明1) 髙橋真優1) 小山内奈津美1) 佐藤五代子2) 鹿内真澄2)
1)津軽保健生活協同組合 健生病院
2)弘前医療福祉大学短期大学部 口腔衛生学科
キーワード 歯科衛生学生 臨地実習 専門的知識 実習プログラム
【目的】 医療機関における歯科衛生学生の臨地実習は,専門的知識と技術を身につけるばかりでなく,多職種連携に対応し協調性のある社会的態度を修得できるような指導が必要であるが,医療機関での臨地実習の取り組みの報告は多くはない。某中規模病院では,「臨地実習指導プログラム」を作成しプログラムに沿って実習指導を行っている。本研究の目的は,歯科標榜を持たない医療機関での臨地実習の取り組みをまとめ,今後の課題について検討することである。
【概要および方法】 取り組み:1回の実習は2名ずつ2日間で実施し「臨地実習指導プログラム」に沿って指導した。プログラムの内容は,1病院歯科衛生士業務,2口腔衛生管理の基本,3多職種連携,4包括的な摂食嚥下支援,5地域歯科との医療連携,6安全管理の6項目について見学実習を中心に実施した。見学実習後は,評価表を用いて自己評価と他者評価を実施しフィードバックを行った。対象:2023年10月1日~2024年1月の期間に臨地実習をした短期大学部口腔衛生学科の2年生12名である。研究目的,研究方法,研究参加は自由意思であること,研究に参加することによる不利益がないこと,プライバシー保護と個人情報の取り扱いについて口頭で説明し同意を得た。
【結果および考察】 「臨地実習プログラム」を作成して指導した結果,歯科標榜のない病院独特の実践的な業務,多職種連携・協働のためのコミュニケーションカ,技術,全身疾患などの専門的知識について指導ができた。短期大学部口腔衛生学科では初めての臨地実習であり,当院でも歯科衛生士の学生受け入れは初めてだったため自己評価と他者評価を用いたフィードバックは,実習での理解度や課題の把握に繋がった。
【結論】 「臨地実習プログラム」を用いた指導は有用であった。今後,歯科医療の高度化と社会環境の変化に対応できる学生が増えるようサポートしていく必要性がある。
○計良倫子 天池千嘉子
学校法人 明倫学園 明倫短期大学
キーワード 歯科衛生士 歯科技工士 専攻科教育
【目的】 M短期大学歯科衛生士学科専攻科口腔保健衛生学専攻では,歯科技工士学科専攻科生体技工専攻との共修実習の中で,生体技工専攻科生を模擬患者として,歯科衛生ケアプロセスに基づいた歯科衛生業務を実施している。また,講義では,歯科衛生士・歯科技工士両方の立場から新たな知見を広げるため,双方が実施および体験した歯科衛生業務についての症例発表を行っている。本研究では,口腔保健衛生学専攻科生が,生体技工専攻科生との共修講義・実習の中で,個々のライフステージに合わせた口腔健康管理を実践できているのかを検討し,今後の学生教育に活かすことを目的とした。
【対象および方法】 口腔保健衛生学専攻科生4名(歯科衛生士免許取得者)を対象に,無記名自記式質問紙調査にて,医療面接,資料採得(X線写真撮影・研究用模型製作・歯周組織検査),口腔衛生指導,症例発表からの気づき等について調査を行った。なお,本研究は,明倫短期大学倫理審査委員会の承認を得た(承認番号23-0006)。
【結果および考察】 医療面接ではできたと答えたものが50%であったが,資料採得のX線写真撮影と研究用模型製作ではできなかったと答えたものが25%,口腔衛生指導ではできなかったと答えたものが50%であった。専攻科生は,歯科衛生士の免許を取得しているが臨床経験数が少ないため,経験を重ねることで技術が修得できる項目や,患者個別の対応が求められる口腔衛生指導では,自己評価が低くなったものと考えられる。また,症例検討からは,両学科からの発表により自身が気づけなかった点に気づくことができたなど,前向きな回答が得られた。
【結論】 歯科衛生士学科専攻科教育のさらなる向上のためには,症例数の確保が必要であること,また両学科での共修講義・実習は双方の将来性について有用であることがわかった。
○天池千嘉子 計良倫子
学校法人 明倫学園 明倫短期大学
キーワード 歯科技工士 歯科衛生士 専攻科教育
【目的】 歯科技工士は技工室内での業務が主体で,臨床現場で患者や多職種と接する場が少ない。教育内容も専門的技術の向上に特化しており,チェアサイドで必要な医療専門用語やデータ分析力を学ぶ機会もわずかである。これからの歯科技工士は多職種と連携し臨床現場で活躍する必要がある。M短期大学専攻科生体技工専攻の学生は「歯科医療画像の利用法」において,歯周病とその治療について理解することを目的として,口腔保健衛生学専攻学生との共修授業を実施している。そこで学生の習得度・理解度を測り検証することとした。
【対象および方法】 対象はM短期大学専攻科生4名で「歯科医療画像の利用法」の共修授業において講義・実習終了後「資料採得」「歯周基本治療」「歯科衛生業務」の理解度と感想を質問紙による調査で行った。本研究は明倫短期大学倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号23-0005)。
【結果および考察】 資料採得の目的について,全員がよく理解できた,理解できたと回答した。歯科技工士にとって口腔内模型が資料の中心になるが,患者役で得た自身の口腔内写真,口内法エックス線写真を用いて評価することにより,理解を深めることができたと考える。歯周基本治療では歯周基本検査の目的をよく理解できたが50%,理解できたが50%だった。歯科衛生業務について理解ができたが100%だった。口腔保健衛生学専攻生と2人1組で,歯科診療補助業務を実践したこと,歯科衛生過程に則り体系的に情報収集,歯周基本治療を行ったことにより,理解を深めたと考えられる。
【結論】 チーム医療の場で活躍する人材を育成することためには,コミュニケーション能力,データ分析力を高める教育が必要である。
○齊藤尚子1) 武村幸彦2,3) 渡邊真由美1) 荘司 琴1) 東 美咲1) 大野菜摘1) 坂本菜月1) 辻上博美1)
1)神奈川歯科大学附属病院 メンテナンス部
2)神奈川歯科大学 歯科保存学講座 保存修復学分野
3)日本歯科大学 新潟生命歯学部 歯科保存学第1講座
キーワード 感染症対策 新型コロナウイルス感染症 大学病院 就職先選択 学生教育
【目的】 歯科衛生士の就職選択および希望する職務内容への関心が変化している。この研究の目的は学生の就職選択の傾向と特定の業務内容及び歯科分野への関心が経時的にどのように変化しているかを明らかにすることである。
【対象および方法】 某短期大学短期大学部歯科衛生学科の学生を対象に,2019年から2023年度の学生(合計394名)に対し任意アンケート調査を実施した。項目は,「附属病院への就職希望の有無」と,業務内容(歯科診療補助,歯科予防処置,歯科保健指導,フリーランス,セミナー講師,企業営業職,企業開発職,歯科衛生士学校教員,訪問診療,介護関連),歯科分野(一般歯科,高齢者歯科,小児歯科,障害者歯科,矯正歯科,口腔外科,インプラント歯科,審美歯科)である。分析には「附属病院への就職希望」は「はい」「いいえ」で各年度間を比較し,カイ二乗検定を使用した。業務内容および歯科分野については,複数回答としたため個人の選択数が不明であり,統計的な有意差検定は行わず傾向を分析した。学生には事前に内容を説明し,十分な理解の上,自由意志に基づく同意を取得した。なお,この研究は倫理審査が必要ないことを,神奈川歯科大学研究倫理審査委員会に確認済である。
【結果および考察】 附属病院への就職希望は2019年に27.4%であったが,2020年には42.6%と有意に増加した。これは新型コロナウイルス感染症の拡大が一因と考えられる。今後の学生の教育と指導においては,感染症対策と安全性に重点を置き,予防処置の重要性を強調し,審美歯科,矯正歯科,小児歯科など専門性を深めるためのプログラムの展開が求められるという結果になった。
【結論】 学生の教育と指導には感染症対策と安全性の向上,専門性を強化した教育プログラムにより,歯科衛生士の役割拡大と患者ケア向上に貢献する可能性があると示唆された。
○新井麻実 吉田理紗 磯貝友希 古賀 恵 畑田晶子 花谷早希子 大岡知子 脇坂 聡
関西女子短期大学 歯科衛生学科
キーワード 歯科衛生学生 職に対する意識 特性的自己効力感
【目的】 歯科衛生士養成校入学の理由として,親や高校の先生に勧められてという学生も多いが,自身で立てた目標とは違うため,途中退学をする学生も毎年数名みられる。退学を避けるためには,入学後,学生1人1人が明確な目標を早期に立てることが重要であると考える。そこで本研究では,臨床実習経験後の学生に対し職に対する意識調査を行い,学生の目標とする歯科衛生士像について検討し,今後の学生教育の一助とすることを目的とした。
【対象および方法】 某短大歯科衛生学科の3年生65名を対象に2023年11月に無記名式質問紙調査を行った。調査内容は歯科医院でのアルバイト経験(以下,バイト経験),特性的自己効力感,仕事に対する意欲・自信・適正,歯科衛生士を目指した理由と目指す歯科衛生士像とした。分析ソフトは,EZRを用いて行った。なお,本研究は関西福祉科学大学研究倫理審査会の承認(承認番号:23-13)を得て実施した。
【結果および考察】 バイト経験の有無と『特性的自己効力感』の13項目で比較した場合,「困難に出会うのを避ける」「何かしようとする時,自分にそれが出来るか不安になる」の2項目,『意欲・自信・適正』の14項目では,「機会があれば研修に参加したい」「機会があれば知識を深めるため進学したい」「早く卒業し歯科衛生士として第一線で活躍したい」の3項目においてバイト経験のある者の方が有意に高いことが示された。また,歯科衛生士を目指した理由と目指す歯科衛生士像について,多くの項目で相関関係はみられなかった。
【結論】 本研究において,歯科衛生学生の職に対する意識は,バイト経験がある学生の方が有意に高い項目がみられた。また,歯科衛生士を目指した理由と目指す歯科衛生士像には関係がないことが示された。
○古賀 恵 佐田夏穂 磯貝友希 新井麻実 畑田晶子 花谷早希子 畠中能子 村上伸也 脇坂 聡
関西女子短期大学歯科衛生学科
キーワード 社会人基礎力 就業先 他者評価
【目的】 歯科衛生士は職場や地域社会等で多様な人々と仕事を行うことから,知識・技術の習得のみならず,経済産業省の提唱する社会人基礎力を身に付けることが必要となる。社会人基礎力は,3つの能力(「前に踏み出す力」,「考え抜く力」,「チームで働く力」)と12の能力要素から把握できることが明らかにされている。本研究では,卒業生の就業先に社会人基礎力に関する事業所の評価(以下,他者評価)を実施し,同時に回答が得られた卒業生(卒後1~4年)本人の評価(以下,自己評価)との調査結果を比較し,その相違を検討した。
【対象および方法】 対象は,2020年度某短期大学卒業生の就業先歯科診療所78事業所に,卒業生が在学時に同様の調査で使用した質問紙を郵送して調査を実施した。さらに回答が得られた歯科診療所に就業している卒業生に対しても同様の調査を行い,比較検討した。3つの能力と12の能力要素については,Wilcoxonの符号付き順位検定で検討した。なお本研究は関西福祉科学大学研究倫理審査委員会の承認(承認番号18-21)を受けて行った。
【結果および考察】 他者評価と自己評価を5段階評価の平均値で示すと,「前に踏み出す力」は他者評価3.28,自己評価3.45,「考え抜く力」は他者評価3.13,自己評価3.25,「チームで働く力」は他者評価3.64,自己評価3.77でいずれの能力も他者評価と自己評価の間に,有意な差は認められなかった。以上から,主観的,客観的評価共に一致している傾向にあることが明らかとなった。
【結論】 社会人基礎力の概念が,歯科臨床現場でも積極的に応用され,ジェネリックスキルを評価する指標として用いられることは,有効であることが示唆された。
○金子信子 瀬戸口祐子 杉山 勝 埴岡 隆
宝塚医療大学保健医療学部口腔保健学科
キーワード 歯科保健指導 教育方法 成人教育 アクティブラーニング 学習指導要領
【目的】 歯科保健指導の学生教育は対象者のライフステージ,全身疾患の知識,コミュニケーションスキル等様々な知識・技術を修得させる必要がある。現在の学生は文部科学省が2020年度から導入した学習指導要領にて学び大学に進学してくるため,大学教員は教育体系の転換に応じた歯科保健指導の教育が不可欠である。本研究の目的はWHOの「プライマリケアにおけるタバコ依存対応のための保健システム強化」のための教育・研修方法を示した普及パッケージを用い,学生が主体的に歯科保健指導を学ぶための教育モデルの開発とした。
【対象および方法】 本学2年生の歯科保健指導実習教育項目のうち2項目を対象に,従来通りの授業(教育A)とWHOの健康教育普及パッケージを基にした教育計画での授業(教育B)を実施する。教育アウトカムをAとBで比較する指標となる質問票を,普及パッケージ教本および先行実施の報告を参考にして作成し,これらから教育モデルを開発する。
【結果および考察】 教育モデル開発の教育項目は「簡易禁煙指導」および「介護予防の一時的実施・実践支援」を選定し,これらに普及パッケージにあるアクティブラーニングを含む成人向け教育方法を適用して教育計画を作成した。普及パッケージを用いた他の先行研究で実施した受講者および教育者への質問票のうち,質問内容と選択肢を抽出し,教育項目評価に用いる質問票に適用した。さらに受講者向け質問票から歯科保健指導の知識・能力・スキルの獲得および自信度,教育者向け質問票から授業の進行,学生対応等の考察および達成感等を抽出し,歯科保健指導の新たな教育モデルの適用を試みた。
【結論】 本研究で開発した教育モデルを実施し,効果の検証,モデルの修正を行うとともに,他の項目への適用を探る必要がある。
○新井 恵1) 平野裕子2) 秋山恭子1)
1)埼玉県立大学保健医療福祉学部健康開発学科口腔保健科学専攻
2)埼玉県立大学保健医療福祉学部看護学科
キーワード 歯科衛生学生 死の不安尺度(日本語版) アンケート
【目的】 歯科衛生学生の死への不安の学年変化を明らかにし,エンドオブライフケア教育の一助にすることを目的としてアンケートを実施した。
【対象および方法】 2021年4月にA大学口腔保健科学専攻の1年生から4年生123名を対象として,死別経験の有無,死について考えた機会の有無ときっかけ,templerの死の不安尺度日本語版(Death Anxiety Scale,以下,DAS)によるアンケートを実施した。DASは15項目で構成する死の不安を測定する心理尺度である。アンケート結果について各項目の集計,DASの平均値の算出,群間の比較にはMann-WhitneyのU検定とKruskal-Wallis検定を実施した。埼玉県立大学倫理審査委員会の承認後に実施した(20100号)。
【結果および考察】 有効回答58名のうち,死別経験ありは27名(46.6%)で,なしは31名(53.4%)であった。死について考えた機会はありが55名(94.8%),なしが3名(5.2%)であった。DASの平均値±標準偏差は10.4±3.0で,1年生は10.1±3.4,2年生は10.4±2.9,3年生は10.2±2.7,4年生は11.4±2.6であった。学年間とDASおよび死別経験の有無とDASに有意な差はなかった。DASは木村らの報告に比べて高く,死の不安が強いと考えらえた。4年間でヒューマンケアやいのちを見つめ直す授業を継続的に受けるが,死の不安には変化が見られないことが明らかになった。死の不安が強い傾向の学生であることを考慮して授業方法を検討していく必要がある。
【結論】 死の不安尺度を用いたアンケートを実施したところ,歯科衛生学生の死の不安は強く,学年が進んでも変化はなかった。
○遠山麻衣子1) 鈴木明子1) 松田知子1) 和久井優香1) 田辺菜月1) 笹川美和2) 和田智恵3)
1)日本歯科大学新潟病院
2)日和が丘デンタルクリニック
3)新潟県歯科衛生士会
キーワード 病院歯科衛生士 実習生 教育 DHCSL 歯科衛生士国家試験
【目的】 歯科保健医療等を取り巻く環境は日々変化しており,歯科衛生士国家試験(以下,国家試験)においても見直しと改善が図られている。病院実習は病院実習生の臨床的知識と技能および人間性の習得を目的とし,病院実習指針(DHCSL)に則り診療科ごとに実習内容を決め,指導している。しかし,学習内容が明確に示されていない分野もあり,指導者である歯科衛生士が頭を悩ませる場面も多い。本研究は,国家試験の出題傾向の調査および病院実習の現状把握と見直しをすることで指導歯科衛生士全員が標準的な指導を行うための指導計画書の作成を目的とする。
【対象および方法】 1.過去5年間(2018~2022年)の国家試験で出題され,かつ,コアカリキュラムにおいて臨床的分野の項目を抽出し,その項目がDHCSLに記載されているかを調査した。2.国家試験より抽出した項目が各診療科において指導しているか歯科衛生士30名を対象に質問紙で調査した。3.1と2を比較し,国家試験の出題傾向に沿った指導ができているかを検討した(日本歯科大学新潟生命歯学部倫理審査番号ECNG-E-11)。
【結果および考察】 国家試験とDHCSLとの比較より,国家試験での出題はあるがDHCSLに記載されていない項目があり,出題傾向に沿った指導の提示ができていないことが分かった。アンケートでは,DHCSLに記載はあるが診療科で指導していない項目と指導しているがDHCSLに記載していない項目があり,標準的な指導ができていないと分かった。DHCSLの内容の見直しを行い,指導内容を明確化させることが必要であると考える。
【結論】 今回の調査結果をもとに,指導歯科衛生士が病院実習生に標準的な指導を行うための指導計画書の作成を進めるとともに指導歯科衛生士の資質向上につなげたいと考える。
○岩田敦子1,2) 板倉康夫1) 小原由紀3)
1)千寿デンタルクリニック
2)愛知県歯科衛生士会
3)宮城県歯科衛生士会
キーワード 歯科訪問診療 看取り エンゼルケア グリーフケア
【目的】 多くの高齢者が病院で療養し看取りを迎えるため,看取りに接する機会のある歯科衛生士は少ない。今回,歯科訪問診療で患者のもとに訪問し,患者や家族との信頼関係が構築できた経緯から,看取りを迎えた要介護高齢者のエンゼルケアを経験したので報告する。
【概要および方法】 88歳(歯科訪問開始時)男性 慢性心不全,レビー小体型認知症他。市営住宅に独居,近くに住む次男嫁(キーパーソン:以下KP)が1日3回訪問し,身の回りの世話をしている。内科医が月2回の訪問診療,医療保険で訪問看護,介護保険で訪問介護が介入し,身体介護と生活介護の支援をしている。なお,本症例発表に際し,患者家族の同意を文書で得た。
【経過および考察】 歯科訪問期間:X年2月~X+4年12月(4年10ヵ月)。訪問看護師から,義歯が安定せず食事摂取量が落ちていると情報提供を受け,歯科訪問診療開始となった。義歯の新製と歯科衛生士による口腔衛生管理を実施,立ち会ったKPに日々の口腔ケアを指導し経過観察となったが,2年後再び食事量が低下したとKPより連絡があり歯科訪問診療を再開。本人の活動量に変化は見られなかったが,訪問医より加齢から全身の機能が低下して看取りの段階に入ってきているとKPには説明があった。X+5年1月ショートステイ利用中に容態が急変し入院,ご逝去された。KPからエンゼルケアの依頼を受け,斎場に伺い歯科衛生士がエンゼルケアを行った。
【結論】 本症例は,生前からの関係構築がエンゼルケアにつながった。在宅介護をする家族も口腔に関心をもつ人が多くなっており,旅立ちの時に口腔内を清潔にし,口元や顔貌を整えることは,家族が悔いを残さず介護を終え,グリーフケアにもつながるのではないかと示唆される。
○木村和子 中里早苗 古里京子
軽米町健康福祉課
キーワード フレイル・オーラルフレイル 介護予防 多職種
【目的】 A町では令和5年度に短期集中型介護予防教室を施行し,高齢者の体力,筋力の維持向上を目的に多職種でフレイル・オーラルフレイル予防の介入を図った。その中で歯科衛生士が行った取り組み内容の報告する。
【対象および方法】 対象者は要支援認定または事業対象者で教室に参加を希望するもの11名であった。実施期間は令和5年度7月~9月まで計10回であった。初回に保健師,管理栄養士,作業療法士,運動指導士,歯科衛生士が参加者のアセスメントを行い情報を共有した。歯科衛生士は教室の前後にオーラルディアドコキネシス,咬合力,口腔内湿潤度の測定と聖隷式質問紙による評価を行い課題に合わせた指導や歯科受診勧奨を行った。
発表に際し,本人から同意を得ている。
【概要および考察】 教室開始時の平均値は咬合力73kgf,パ発音5.9回,タ発音5.8回,カ発音5.6回,口腔内湿潤度27.66%,聖隷式嚥下質問紙の点数5.54であった。教室最終日の平均値は咬合力80kgf,パ発音6.1回,タ発音5.9回,カ発音5.6回,口腔内湿潤度29.97%であった。聖隷式嚥下質問紙の点数1.2であり,教室の前後で顕著に改善がみられ,むせやせき込みをしなくなったと答えた方が多かった。歯科受診者1名は義歯の調整により固いものが噛めるようになった。
【結論】 むせる,義歯の調子が悪いなど日頃から感じていても改善の機会がなく課題を抱えていた参加者は教室を契機に関心をもって課題解決方法に向き合うことができた。口腔機能評価項目でも現状維持または改善がみられた。
○松尾由佳1,2) 安部美知永2,3) 柏木淑江2,3) 佐馬有賀1,2) 田中千雅2) 船崎裕子2) 万歳陽子2,3)
1)介護老人保健施設 鴻池荘
2)歯っぴいらぼ
3)岩間歯科医院
キーワード ポピュレーションアプローチ アウトリーチ オーラルディアドコキネシス
【目的】 某市において令和3年度より「高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施」が実施されている。我々は,75歳以上の高齢者の介護予防を目的に人生後半の「その人らしく健康を維持」していくための支援を口腔から携わってきたことを報告する。
【対象および方法】 某市内在住の介護保険該当者でない75歳以上の高齢者(78517人 高齢化率23.3%)
ポピュレーションアプローチは,某市において高齢者の通いの場に出向き,「口腔衛生の自己管理」「オーラルフレイルについて」をテーマに集団教育を実施した。個別に必要な口腔体操や清掃方法を伝え,3ヵ月後再度行き,口腔機能のモニタリングを実施。口腔機能低下等のリスク者を抽出した。
ハイリスクアプローチ(アウトリーチ)は,市の公報に「お口の健康相談室」という名称で「歯科衛生士に相談してみませんか」と希望者を募集した。他に保健師の調査で6ヵ月以上保険証の使用のない者を「リスク者」とし訪問・面談で口腔内の困りごとについて対応した。
【結果および考察】
ポピュレーションアプローチ参加者
令和3年158名 令和4年198名 令和5年207名
ハイリスクアプローち 対応者
令和3年22名 令和4年22名 令和5年28名
オーラルディアドコキネシスの測定などで自身の機能が数値化されると,関心が高くなり生活習慣にも変化がみられることがわかった。
また,歯科受診を治療から予防を目的に通院することの重要性に気付いてもらうことができた。
【結論】 オーラルフレイルに対し関心は高いが実際のところ「何をすればいいのか」という問いを抱えていた高齢者に個別にその「答え」を伝えることができ非常に有効であったと考える。
○植松綾子1) 秦 千菜津1) 飯島洋介1) 山田美喜1) 佐野元彦3) 阿南朋恵2) 多林孝之2) 堀江憲夫1) 金子貴広1)
1)埼玉医科大学総合医療センター 歯科口腔外科
2)埼玉医科大学総合医療センター 血液内科
3)星薬科大学 実務研究教育部門
キーワード 血液疾患 周術期口腔機能管理 口腔ケア
【目的】 当院は地域がん診療拠点病院で,血液内科は無菌病棟を有し血液がんの患者の治療を行っている。血液がん患者では,放射線,抗がん剤,および免疫抑制剤を用いるため,口腔の有害事象(粘膜炎,出血,感染症)が発生しやすい。そのため当科は,血液内科と連携し周術期口腔機能管理を実施している。本報告ではその活動概要を報告する。
【概要および方法】 造血幹細胞移植患者における口腔粘膜炎は,重篤な全身的合併症につながる危険性があり適切な管理が必要であるとされている。当科への患者紹介のシステムは,電子化カルテ上での血液内科医師による歯科口腔外科宛の院内コンサルトにより開始され,歯科医師,歯科衛生士が口腔内診査を行う。口腔内評価は,歯周基本検査,OHAT-Jを用いている。口腔ケアは患者の状態を考慮し,歯科口腔外科外来または病棟(無菌室を含む)で行っている。造血細胞移幹細胞植患者に対しては移植前カンファレンスを移植7-10日前に行い,カンファレンスには,血液内科医師,看護師,理学療法士,栄養士,薬剤師,精神看護専門看護師,移植コーディネーター,歯科衛生士が参加している。カンファレンスに参加する歯科衛生士は,患者ごと担当制としており1名出席している。カンファレンスは多職種での患者情報の共有の場として利用している。
【経過および考察】 歯科衛生士が移植前カンファレンスに参加することで移植患者では,患者情報の共有が可能となり,より個々の患者に即したきめ細かい口腔ケアの介入が可能となった。
【結論】 本報告では当科における血液がん患者の周術期口腔機能管理の概要を報告するとともに,多職種連携における歯科衛生士の役割について報告した。
○荻山大輝1) 倉光祥平1) 林 忠紘1) 寺田直生2)
1)小林製薬株式会社ヘルスケア事業部
2)一般社団法人守口市歯科医師会
キーワード 集団健診 歯間清掃用具 使用率向上
【目的】 歯周病予防には歯間部の清掃が重要であるが,歯間部清掃実施者は低水準に留まっており,歯間清掃用具の普及が課題とされている。そこで,守口市歯科医師会と小林製薬と共同の上,集団健診時に歯間清掃用具の有用性の啓発とサンプリングを行うことで,健診受診者の歯間清掃用具の使用率等の変化を調査した。
【対象および方法】 2021年12月~2月,2022年の7月~12月,2023年の9月~12月の守口市の集団歯科健診参加者を対象に,歯間清掃に関する啓発ポスター及び製品サンプル(柄つきフロス及びゴムタイプ歯間ブラシ)を提供した。その際に,歯間清掃に関する質問紙を取得し,各年度での変化を確認した。質問紙は無記名であり,調査への回答協力をもって同意を得た。匿名化されており倫理面に配慮した。質問紙の内容は,主に回答者の属性,歯間清掃具の使用実態についてであった。
【結果および考察】 2021年度に集団歯科健診を受けた質問紙回答者(完全回答者303人)の歯間清掃用具の使用率は56%であり,2023年度(完全回答者591人)の歯間清掃用具の使用率は74%まで増加した。令和4年歯科疾患実態調査(厚労省)によると,歯間清掃用具使用率の全国平均は50.9%であり,活動開始2年後の健診受診者の歯間清掃用具の使用率が大幅に上回っていた。歯間清掃の有用性の啓発とサンプリング活動が,受診者における歯科清掃用具の使用率の向上に寄与した可能性が考えられる。その為,今後に導入が検討される国民皆歯科健診などにおいて,歯間清掃の啓発やサンプリングをすることで,歯間清掃用具の使用率向上や口腔ケアの意識向上につながると期待できる。
【結論】 集団歯科健診等による啓発活動は,歯間清掃用具の使用率の増加に効果的である可能性が示唆された。
○山田麻矢1) 古川清香1,2) 小山朱美3) 金子りさ4) 金城美栄子5,6) 伊東裕子6,7) 望月かおり6) 夛田明子3,6) 隈井めぐみ8) 浦上汐美9)
1)神奈川県平塚保健福祉事務所保健福祉課
2)東京医科歯科大学大学院健康推進歯学分野
3)平塚市保険年金課
4)平塚市健康課
5)二宮町子育て・健康課
6)平塚地域歯科衛生士の会「歯みんぐ」
7)大磯町子育て支援課
8)神奈川県厚木保健福祉事務所保健福祉課
9)神奈川県小田原保健福祉事務所保健福祉課
キーワード 行政歯科衛生士 歯科健康教育媒体 動画媒体 乳幼児 歯みがき
【目的】 神奈川県平塚保健福祉事務所(以下,当所)では歯及び口腔の健康づくり推進委員会(以下,委員会)の取組として,当所管内(平塚市,大磯町,二宮町)で活用する歯科健康教育動画媒体(以下,媒体)を作成した。その過程と活用状況を報告する。
【概要および方法】 令和3〜5年度に開催した媒体に関する委員会,歯科保健連絡小委員会(以下,小委員会),市町・関係団体への意見照会,助言指導の報告書等の記録を基に,(1)媒体作成のきっかけ,(2)媒体作成過程,(3)媒体活用状況を振り返った。
【結果および考察】 (1)媒体作成のきっかけ:令和3年度の小委員会にて,市町のCOVID-19による歯科健康教育の中止・縮小状況及びコロナ禍での歯科保健教育の必要性を把握し,委員会にて新たな歯科保健教育媒体作成の提案を行った。(2)媒体作成過程:委員会を1回,小委員会を2回,意見照会4回,学識経験者による助言指導を2回実施した。媒体作成は市町乳幼児健康診査配布資料の共有,作成方針の決定,用語や指導法の統一等,協議をしながら進めた。当所は事務局として媒体案の作成・修正作業,市町の意見集約等を実施した。市町母子歯科保健担当は当所との打合せ,動画素材の提供,媒体の撮影協力,意見照会の回答等,積極的に媒体作成に取り組んだ。(3)媒体活用状況:令和5年8月から歯みがきをテーマにした6本の媒体の公開を開始し,年度内に5機関中4機関での活用があった。活用場面としては,育児相談,乳幼児健康診査,町広報等があった。また,令和6年度に向けて,全ての機関が活用の意向を示した。
【結論】 複数の関係機関と連携し,市町の歯科健康教育の方向性に沿うものを作成できたことで,市町担当者が事業内で活用したいと思う媒体を完成させることができた。
○吉田涼子1) 本田智恵子1) 河野真由美1) 前 紗也加1) 折川未来1) 三苫瑞希1) 五十嵐菜月1) 馬場海奏1) 中松耕治2)
1)飯塚病院 医療技術部 歯科衛生士室
2)飯塚病院 歯科口腔外科
キーワード 糖尿病 歯周病 多職種連携
【目的】 当院では2014年度より糖尿病教育入院患者に糖尿病と歯周病の関連について教育に取り組んでいる。2021年5月から1年間,糖尿病教室に参加した145名を対象に,糖尿病と歯周病についての関係性を知っているか,歯科受診の重要性(口腔衛生管理方法と定期的な歯科受診)を理解しているかの2点について現状把握を行なった。その結果,関係性の理解度は乏しく,口腔衛生管理方法の理解は得られたものの,歯科受診の必要性の理解は乏しかった。そのため,早い段階からの情報提供と糖尿病教室全体の見直しが必要と考え改善を試みたので報告する。
【概要および方法】 歯科の重要性に関するパンフレットと動画を作成し糖尿病内科受診時から患者に情報提供を行った。また,これまで歯科の重要性の情報提供については歯科衛生士の講義のみであり,より一層の理解と関心を得るためには,糖尿病教室に関わる看護師,栄養士,理学療法士など多職種からのアプローチも効果的であると考えた。そこで多職種の歯科の重要性の知識の底上げを目的とし,歯科衛生士が他職種へ講義を実施した。また,各職種の講義でも歯科の重要性に関する情報提供の協力を求めた。なお,本研究は飯塚病院倫理委員会の承認を受けて行った。
【経過および考察】 今回,教育入院前から糖尿病と歯周病の関係についての情報提供を行うことでより早い生活習慣の改善を促す事ができた。今後,多職種から口腔健康の維持を指導する機会を得たことにより,口腔と全身の健康の関連性についての患者の理解が深まったかについて患者アンケート等を行い考察していく予定である。
【結論】 糖尿病は投薬による治療だけではなく,生活全般を総合的に治療することが必要である。多職種の協力が患者の予後に大きく関わるため,今後も画一的な講義ではなく多職種との連携を図り,患者へのアプローチを継続していく事が必要であると考えた。
○倉脇由布子1) 相見礼子1) 三隅恵子1) 西村瑠美1,2) 松本厚枝1,2) 内藤真理子1,2) 竹本俊伸1,3)
1)広島大学歯学部歯科衛生士教育研修センター
2)広島大学大学院医系科学研究科口腔保健疫学
3)広島大学大学院医系科学研究科口腔保健管理学
キーワード 歯科衛生士 復職支援 離職防止
【目的】 2019年に厚生労働省「令和元年度歯科衛生士技術修練部門初度整備・運営による検証事業」受託により,広島大学歯学部歯科衛生士教育研修センター(以下,本センター)が開設され,新人歯科衛生士および復職歯科衛生士を対象に復職支援と離職防止を目的に5年間技術修練研修を実施してきた。本センターの5年間の活動内容と受講状況を総括することを目的とした。
【方法】 「復職支援・新人研修プログラム」は,「知識・獲得プログラム」「基礎技術シミュレーション(マネキン実習)」「臨床トレーニング(相互実習)」「臨床研修」の全52科目あり,受講生のニーズに合わせて科目選択が可能で,遠方でも参加できるようオンライン科目も設定した。また「新人卒後フォローアップ」は,新型コロナ感染拡大の影響で,臨床現場での実技の経験不足を補うために開講し,スケーリングやSRP等の技術修練を実施した。それぞれ研修開始時,修了時に質問紙調査を実施した(倫理E-1868)。
【経過】 「復職支援・新人研修プログラム」の総受講生は246名で,年齢は20代128名(52.0%)が最も多かった。就業状況は,220名(89.4%)が就業中だが,そのうち復職して1年未満は45名であった。勤務先は,歯科診療所177名(72.0%)が最も多かった。研修修了時の調査より,8割以上の方が講義や実習に対して,「満足している」と回答した。一方,「新人卒後フォローアップ」は,137名の受講生が参加し,9割が20代,全員就業中で,勤務先は歯科診療所133名(97.1%)が多かった。修了時の調査より,9割以上の方が「研修を受けて自信がついた」と回答した。
【結論】 本センターの受講生は,両プログラムとも20代が多く,講義や実習に対して高い満足度が示された。
○伊藤ことみ1,2) 大塚晴奈1,3) 浅野小羽1)
1)医療法人一栄会結デンタル
2)今池歯科クリニック
3)のだ歯科医院
キーワード 令和6年能登半島地震 訪問歯科診療 被災地支援
【目的】 令和6年1月1日16時10分,最大震度7を観測した令和6年能登半島地震が発生した。当院では日々の診療で人工呼吸器などの電力が必要な難病患者や,支援が必要な高齢者に関わる訪問歯科診療を行っており,停電を想定し院内で発電機を用いた発電訓練や,災害発生時に自力で避難をすることが困難な在宅療養患者の避難訓練を実施している。また,災害関連死として誤嚥性肺炎の割合が一番高いことから,自らの経験を活かすことができるのではないかと考え被災地へ支援に行くことを決意した。
【概要および方法】 令和6年1月27日,28日の2日間に渡り,山梨市牧丘病院院長の古屋聡先生率いる「気仙沼口腔ケア・摂食嚥下・コミュニケーションサポート(通称ふるふる隊)」の一員として,愛知県内で勤務する歯科医師2名と歯科衛生士2名で石川県輪島市の特別養護老人ホームへ向かい,入居者80名のうち酸素投与中の方や口腔ケアが必要とされている方を優先的に口腔ケアを行った。
【経過および考察】 断水が続く中水を全く使用しない口腔ケアを行うことは困難を極めた。口腔ケア用ジェルで乾燥した口腔内を湿潤させ,剝離上被膜や乾燥した痰が気管内に脱落しないよう留意しながら回収し,汚水の出る吸引器の使用も最低限に留めた。
【結論】 水を使わずに使用できる口腔ケア用品を備蓄し使用方法を多職種に指導することや,災害発生時の口腔ケアの重要性を歯科衛生士が広めていくことが災害関連死を防ぐことに繋がるのではないかと考える。また,訪問歯科の特徴としてコンパクトな設備で他所に行っても診療が行えるという点がある。災害発生時の対応を院内で話し合い,日頃から訓練を行うことで診療所での診察が困難な状況でも訪問歯科が活躍しより多くの命を救うことができるのではないかと考えた。
○高橋萌香1,2) 名生幸恵3) 西村一郎1) 西村美奈2)
1)ざま駅前歯科医院
2)むさし歯科医院
3)日本歯科大学生命歯学部小児歯科学講座
キーワード 口腔機能発達不全症 筋機能トレーニング 口腔習癖
【目的】 我々は口腔機能発達不全症児に対し,マウスピース型筋機能矯正装置装着を中心とした治療と併せて,対象児の口腔および全身に対する筋機能訓練を実施しているが,治療開始前後での変化をすべて診療室内で評価するのは困難である。また,小児歯科治療では治療効果について本人だけでなくその保護者の認識度(満足度)を知ることも必要である。そこで,対象児にみられる診療室以外での治療効果と保護者の認識度を知ることを目的に,治療開始前後の変化に関する質問紙調査を保護者に対し実施したのでその結果を報告する。
【対象および方法】 対象は某歯科医院でマウスピース型筋機能矯正装置の使用と筋機能訓練プログラムを実施している口腔習癖のある5~10歳の小児の保護者50名であった。口腔機能発達不全症チェックリストをもとに作成した質問用紙(全25項目)で,治療開始前後の小児の様子についてそれぞれの保護者に回答してもらった。
【結果および考察】 回答者全員が治療開始後に1項目以上の改善がみられたと答えていた。特に「咀嚼音が気にならなくなった」と答えた人が87.1%,「硬いものが食べられるようになった」人が54.2%であった。口唇閉鎖や構音機能を気にしていた保護者の多くが小児の状態改善を認識しており,筋機能訓練プログラムの実施が口腔周囲筋の発達や舌運動機能の向上に関わっていると考えられた。
【結論】 成長発育段階にある小児に対し,マウスピース型筋機能矯正装置装着だけでなく筋機能訓練も合わせて積極的に行うことで歯列不正だけでなく,保護者が気にしていた子どもの生活上の習癖を改善する可能性が示唆された。
○武田好美 米田衣代 上田千津子 浅越政代 吉福美香
奈良県歯科衛生士会
キーワード 災害支援活動 災害歯科保健歯科衛生士登録制度 災害歯科保健歯科衛生士 災害支援研修会 能登半島地震
【目的】 奈良県歯科衛生士会はJDATとして,能登半島地震災害支援活動に従事した。その際,被災地での災害支援活動以外に事務作業や情報の共有に時間と労力を要した。そこで今後の災害支援活動を迅速かつ円滑また効果的に行うための地盤づくりを目的に意識調査を実施した。
【対象および方法】 当会会員152名を対象に調査説明とWeb調査を実施,得られた情報は学会発表,研究以外で使用しない旨を伝え同意を得た。
【結果および考察】 有効回答は83名,回答率54%だった。年代は50代が37.3%で最も多かった。今後の災害支援活動の参加可否は参加したい5.3%,条件が合えば参加したい68.4%で合計73.7%だった。しかし,今回の能登半島地震災害支援活動登録では登録8.4%,未登録91.6%で,その理由は経験がなく役立つと思わなかったが36.8%で最も多かった。災害支援研修会は平成25年より毎年開催しているが,未受講43.4%であった。災害支援歯科衛生士登録制度の認知は知っている54.2%で,登録の有無は登録している22.9%,制度を知らないが今後登録したい14.5%,検討したい47%で前向きな姿勢が伺えた。今後の災害支援活動で希望する事は被災地想定訓練,研修会受講者の増加,若手の人材育成,マンパワーの確保等の意見があった。以上より災害支援活動に関心はあるが不安も多いことから登録に躊躇していることが明らかになった。現在役員育成を目的に周知している災害支援歯科衛生士登録制度を全会員に広め,研修会を通じ理解を深める必要があることが示唆された。
【結論】 実践的なマニュアル作り,人材育成からのマンパワーの確保を課題に災害支援歯科衛生士登録制度を全会員に周知し,継続的に研修会を開催しながら災害支援体制を整えていきたい。
○仲主佐恵子 髙澤みどり 那須啓子 榎本亜弥子 植草惠子 山口朱見 岡部明子 尾谷始子
一般社団法人 千葉県歯科衛生士会
キーワード 介護老人保健施設 質問紙調査 歯科衛生士 口腔ケア 口腔健康管理
【目的】 介護報酬改定により口腔衛生管理加算の名称変更および新設が行われるなど,介護老人保健施設での口腔の管理について必要性が重視されている。しかし,千葉県内の施設における口腔衛生管理の現状は不明である。そこで本研究では,県内の介護老人保健施設の入所者の口腔衛生に関する実態を把握したので,その現状と課題を報告する。
【対象および方法】 令和5年6月〜7月に,千葉県老人保健施設協会の130施設に入所者の口腔ケア実施時の問題点,施設に勤務する歯科衛生士数等について郵送による質問紙調査を行った(日本歯科衛生学会倫理審査委員会:承認番号12)。
【結果および考察】 36施設(27.6%)から回答があった。そのうち,歯科衛生士が口腔健康管理を実施しているのは15施設(41.6%)であった。常勤歯科衛生士,非常勤歯科衛生士が勤務する施設がそれぞれ1施設ずつ,外部委託をして口腔健康管理を実施しているのは13施設であった。治療のための同行で口腔健康管理を実施していない施設が13施設,歯科衛生士の介入がなかったのは8施設であった。歯科衛生士が口腔健康管理を実施していない施設では口腔ケア時においての問題点が多い傾向がみられ,これは施設スタッフが口腔ケアについて相談できる歯科衛生士の存在があるか否かが一因になっていると推察する。
【結論】 施設スタッフの口腔ケアに影響を及ぼしている要因として,(1)歯科衛生士が施設に勤務しており入所者の口腔健康管理を行っている(2)外部から介入し口腔健康管理に関わることが考えられる。施設において,歯科衛生士が関わる意義が大きいことが示された。今回の回収率は低く実態は把握しきれなかったが,引き続き実態を明らかにするとともに歯科衛生士の介入について検討していきたい。
○本間浩子1) 平野真澄1) 榎 志佳2) 平野恵実1) 松木奈美1) 山崎明子1) 池田裕子2) 猪子芳美3) 小根山隆浩4) 水谷太尊3)
1)日本歯科大学新潟病院歯科衛生科
2)日本歯科大学新潟短期大学歯科衛生学科
3)日本歯科大学新潟病院総合診療科
4)日本歯科大学新潟病院口腔外科
キーワード 感染対策 医療安全 器具刺し インシデント
【目的】 歯科衛生士は感染リスクの高い職業である。中でも鋭利な器具による刺傷は感染リスクの高いインシデントである。そこで当院では鋭利な器具刺しに対して対策を検討し,対策効果について調査したので報告する。
【概要および方法】 対象は2008年から2022年までの15年間に当院歯科衛生士関連から報告されたインシデント報告1067件で,そのうち切削バーやスケーラーチップの放置による器具刺しとして報告されたものは15件であった。当初,対策方法が検討されていなかったが,2012年に院内感染対策防止委員会にて検討が行われ,「術者が次の作業に移る前にバーやスケーラーチップを外す」または「ハンドピースごとブラケットテーブルに置く」こととし,院内感染防止対策委員から職員に周知された。また,以前より継続されていたInfection Control Team(ICT)ラウンドでも対策が徹底されているかを確認した。
【経過および考察】 対策検討前の器具刺しのインシデント報告数は2008年から2012年までに7件で平均1.4件/年であった。防止対策が周知された2013年から2022年までは8件で平均0.8件/年で,2018年よりインシデントは発生していない。当院では報告数は少ないものの,感染対策上重要なインシデントと判断し対策を検討した。対策実施後よりインシデント報告数の減少が認められた。
【結論】 器具刺しインシデントの対策を行ったことで,インシデント発生件数の減少が認められ,対策は有効であるものと思われた。
○吉田ちかみ1,2) 竹下幸枝3) 楫野泰弘2) 前田憲邦4)
1)島根県歯科衛生士会
2)楫野歯科医院
3)えだクリニック整形外科・リハビリテーション科
4)前田歯科医院
キーワード 食支援カード 高齢者 食べる意欲 食事の思い出
【目的】 島根県大田市にて医療・介護職で構成する大田食支援研究会(以下,食任会)では,「食」に対するポジティブな意識や食べたい意欲を引き出すきっかけ作りとして,地域や介護現場で利用してもらうための食支援カードを作成した。今回,その取り組みと活用後の質問紙調査について報告する。
【概要および方法】 2021年3月,食任会にて,一般社団法人iACPが開発した「もしバナゲーム®」を参考に,食べることについて話すきっかけを作り,食べる意欲を引き出すための食支援カード(以下,カード)の作成プロジェクトが発足した。カードに使用する料理の選定では,20代から100代までの男女計518名に「誕生日に食べたい料理は何ですか?」と質問し,その回答を集めた。料理の写真は松江栄養調理製菓専門学校に協力頂き,2023年8月に54枚のカードが完成した。カードの使用方法は,「好きな人と食べたい料理」のお題に沿って配られた3枚のカードを中央に置いた5枚のカードと3回交換し,最も食べたい料理を選びその理由について話してもらった。
【経過および考察】 2024年2月,市内の通いの場に参加する地域高齢者44名(70代6名,80代26名,90代以上12名)にカードを使用してもらった。使用後の質問紙調査の回答では,食事の思い出が「想起された」と「少し想起された」を合わせて61.4%となり,カードの利用をきっかけに食事にまつわる思い出が想起された。また食欲について「食欲が増した」「少し増した」が29.6%,「変わらない」が65.9%となり,あまり変化しなかった。
【結論】 料理写真を載せたカードは食事にまつわる思い出を引き出すきっかけになり得るといえる。一方,食欲を引き出すきっかけになったとはいえず,今後さらなる検討が必要だと考える。
○山林真優 鴻池智恵 中嶋愛里 一二三菜々子 藤井真子 黒田典代
天理よろづ相談所病院
キーワード 質問紙調査 癌治療 周術期口腔機能管理
【目的】 近年,がん治療における歯科の介入は患者のQOL維持向上に繋がるとされ重要視されている。当科もがん患者の診察依頼が増加,治療による口腔内トラブル等の質問が多い事から,がん治療に関する冊子を作製,その内容について質問紙による調査・評価をしたので報告する。
【概要および方法】 対象は周術期口腔機能管理のがん患者31名,期間は2023年11月~2024年3月であった。冊子と質問紙を配布し用紙に記入する事で研究に対する同意を取得,記載内容に対する意見を質問紙により調査し評価した(天理よろづ相談所病院倫理委員会承認番号1445)。
【経過および考察】 質問紙の回答は31名で回収率は8割であった。知りたい内容(複数回答)では「がん治療中の歯科受診の必要性」「副作用の発生時期」各21名,「口腔内トラブル」が26名,「治療前の準備物」が11名,「口のセルフケア」が18名,「口の中の変化・入れ歯」が10名であった。他に必要な内容として何故口の中に副作用が出るのか,ケア商品,口腔内トラブルの写真等が挙げられた。がん治療で口腔内に副作用が起きる事を「知らなかった」が15名,副作用について「理解できた」が30名であった。冊子は「役に立った」が全員であった。上記回答より,がん治療や口腔内の有害事象について詳しい記載を求められている事が考察された。口腔内トラブルの写真は精神的なダメージを与えるのではないかと考え敢えて載せなかったが,どこまで詳しい知識や情報を載せるか今後の課題である。冊子については周術期口腔機能管理でも活用できると考察された。
【結論】 今回作製した冊子は,調査結果より,患者・家族に必要とされていると評価出来た。今後も定期的に調査を行い患者・家族への支援に役立てていきたい。
○三浦静香1) 小野寺芽美1) 菅野千春1) 佐藤由美子1) 石井京子1) 佐藤智哉2) 倉内美智子3) 渡部千代1) 山田 聡4) 依田信裕2)
1)東北大学病院診療技術部歯科衛生部門歯科衛生室
2)東北大学大学院歯学研究科口腔システム補綴学分野
3)東北大学病院特殊診療施設歯科医療管理部
4)東北大学大学院歯学研究科歯内歯周治療学分野
キーワード インプラント メインテナンス 口腔衛生指導
【目的】 東北大学病院では,インプラント補綴治療が終了した患者に対し,歯科衛生士によるメインテナンスを実施している。本研究は,メインテナンス時における患者のPlaque Control Record(PCR)値や歯科衛生実地指導記録を縦断的に調査し,良好な口腔衛生環境の維持に必要な指導方法を考察した。
【対象および方法】 2021年4月から2023年3月までの間に,計5回のメインテナンスを受けた120名を対象とした。メインテナンス時のPCR値を基準に対象者を以下の4群に分類し,口腔清掃状態を調査した:A群(20%以下を維持),B群(20%以上から20%以下に改善),C群(20%を基準に上下に変動),D群(常に20%以上)。また,歯科衛生実地指導記録の調査に加え,各歯科衛生士にアンケート調査を行い,口腔衛生指導方法の実態を調査した。本研究において対象者の同意を得て倫理的配慮を行った。
【結果および考察】 各群の内訳は,A群74名(62%),B群27名(23%),C群8名(7%),D群11名(9%)であった。B,C,D群においてインプラント周囲の清掃状態が改善した割合は,それぞれ41%,38%,36%であった。B群は,PCR値は改善したが,インプラント周囲の清掃状態が改善しない患者も認められ,使用器具や患者の手技以外の要因が考えられた。C,D群は,PCR値を含め口腔全体の環境改善を目的とした指導に時間が割かれ,インプラント周囲の清掃指導に注力できなかったと考えられた。また,非担当制の当院では歯科衛生士毎に指導内容が異なる傾向であった。
【結論】 A,B群が約85%を占め,定期的なメインテナンスの有効性が認められた。C,D群に対しては,口腔清掃に関する行動変容を含め,患者毎に最適な指導内容を歯科衛生士同士で検討し,共有する必要があると考えられた。
○伊藤明日香1) 花渕 静1) 小川 徹2) 竹内研時3) 佐藤由美子4) 石井京子4) 小野寺芽美4) 渡部千代4) 佐々木啓一5) 依田信裕2)
1)仙台青葉学院短期大学 歯科衛生学科
2)東北大学大学院歯学研究科 口腔システム補綴学分野
3)東北大学大学院歯学研究科 国際歯科保健学分野
4)東北大学病院 診療技術部 歯科衛生部門
5)宮城大学
キーワード 歯科インプラント 主観的幸福感 質問紙調査
【目的】 歯科インプラント治療は多くの研究で高い患者満足度が報告されているが,埋入したインプラント本数等の治療内容と患者の心理面への影響との関係については不明な点が多い。本研究は,治療が終了しメインテナンスのために通院している患者に対し質問紙調査を実施し,インプラント治療が患者の主観的幸福感に及ぼす影響について調査した。
【対象および方法】 本研究は,東北大学大学院歯学研究科研究倫理委員会の承認を得て実施した。大学病院歯科インプラントセンターにて,インプラント治療終了後3カ月以上経過し,メインテナンスのために通院している18歳以上の患者を対象とした。2022年10月から2023年5月までの期間に,対象者に自記式質問紙調査を実施した。解析には多変量ロジスティック回帰モデルを用い,患者の年齢や学歴,職業等を調整したうえで,インプラントの埋入本数とインプラント治療前後での主観的幸福感の変化との関連を検討した。
【結果および考察】 合計377名より回答が得られ,解析項目に欠損のない370名のデータを使用した。対象者は女性が多く(63.5%),年代は60代(31.7%),70代(29.3%)が多かった。97.6%がインプラント治療後の機能面や審美面に満足しており,インプラント本数が多いほど満足度が高い傾向であった。統計解析の結果,インプラント本数は主観的幸福感の増加と有意な関連を示し,インプラント本数が1本の者と比べて5本以上の者の主観的幸福感増加のオッズ比は1.2(95%信頼区間:1.05-1.41)であった。
【結論】 インプラント本数が多いほど治療後の主観的幸福感が増加するという結果は,多数歯欠損を有する患者が補綴歯科治療方法としてインプラントを選択する際の有用な情報となり得る。
○大島克郎1) 荒木萌花2) 福田雅臣2)
1)日本歯科大学東京短期大学
2)日本歯科大学生命歯学部衛生学講座
キーワード 歯科専門職 予防管理 支払意思額 Willingness to pay 社会経済的要因
【目的】 本研究の目的は,定期的な歯科健診の受診有無別で,(
1)歯科専門職による予防管理(以下,予防管理)への支払意思額(そのサービスに対して支払ってもよいと考える最大額/Willingness to pay:WTP)を評価するとともに,(
2)WTP値の高低に関連する要因を明らかにすることである。
【対象および方法】 研究参加者は,Web調査会社の登録者から国勢調査に基づき割当法で抽出した3336人とした。被説明変数は予防管理へのWTP値とし,説明変数は性別・年代・世帯収入・歯数・歯科保健行動等を設定した。分析は,定期的な歯科健診の受診有無で分け(有:RDC群,無:非RDC群),各群のWTP値を比較した。次に,WTP値と説明変数との関連を,負の2項回帰モデルで分析した。本研究は日本歯科大学東京短期大学倫理審査委員会の承認を得た(#293)。
【結果および考察】 分析対象は,RDC群1,785人,非RDC群1,551人であった。予防管理へのWTP値は,RDC群は中央値(平均値)3,000円(3,332円),非RDC群は2,000円(2,872円)であった。RDC群の予防管理へのWTP値は,男性・若年層・世帯収入の高い者・20歯未満の者・3回以上歯をみがく者・歯間清掃を習慣としている者で高かった。非RDC群のWTP値は,若年層・世帯収入の高い者・歯間清掃を習慣としている者で高かった。以上から,定期的な歯科健診の受診状況や社会経済的要因等は,予防管理への金銭価値に影響する可能性が示唆された。
【結論】 (1)定期的に歯科健診を受けていない者は,予防管理へのWTP値を低く捉えていた。(2)予防管理へのWTP値が低い者の特徴として,高齢層で世帯収入が低く,歯間清掃を習慣としていない者が多いことが明らかになった。
○福岡智子1) 高阪貴之2) 上田和美3) 吉本美枝4) 畑中裕美1) 諸隈千里1) 神出 計5) 樺山 舞5) 和田誠大2) 池邉一典2)
1)大阪府豊能郡能勢町福祉部健康づくり課
2)大阪大学大学院歯学研究科 有床義歯補綴学・高齢者歯科学講座
3)はぐくむ歯科クリニック
4)京都府歯科衛生士会
5)大阪大学大学院医学系研究科
キーワード かみかみ百歳体操 通いの場 口腔体操 口腔機能
【目的】 大阪府豊能郡能勢町では令和2年度より大阪大学と共同実施する「能勢町健康長寿事業」が開始され,令和4年8月から歯科医師と歯科衛生士が同事業に参画した。同事業では歯科衛生士による,口腔体操(かみかみ百歳体操)の指導,体操を継続する動機付けを目的としてリーフレットを配布している。本調査では,自宅で継続した口腔体操の実施の有無およびその動機について調査し,口腔体操を継続する上での課題について検討することを目的とした。
【対象および方法】 対象は,令和5年2月から3月の第1回調査および同年10月から12月の第2回調査において,能勢町在住の通いの場に参加している高齢者110名(平均年齢76.3歳)とした。自宅での口腔体操の実施について,両調査ともに「毎日実施している」と回答した者を「継続群」(29名),ともに「実施していない」と回答した者を「未実施群」(21名)とし,質問紙による調査結果を集計した。本調査は,大阪大学大学院歯学研究科・歯学部及び歯学部附属病院倫理審査会の承認(R4-E7)を得て行った。
【結果および考察】 継続群において口腔体操を実施している理由は「口の機能を保ちたいから」が52%,次いで「口腔体操のリーフレットを貰ったから」が45%であった。未実施群において,口腔体操を実施しない理由は「忘れてしまう」が48%,次いで「口の機能に問題がないと思う」が24%であった。口腔体操の継続には直接的な指導の他に,リーフレットを渡すなどの工夫が効果的であると考えられる。一方で,継続しない者は口腔機能の低下を自身の問題と捉えていないことが課題であると考えられる。
【結論】 口腔体操を継続するためには,自身の口腔機能を知り,口腔機能低下への関心を高めることが必要であると考えられる。
○髙澤維月1,2) 星合愛子1,3) 山村有希子1) シン ユジョン1,3) 石川由美1)
1)明海大学 保健医療学部 口腔保健学科
2)東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 口腔健康教育学分野
3)東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 小児歯科学・障害者歯科学分野
キーワード シミュレーション教育 シミュレーター 歯科衛生学生
【目的】 歯科衛生士の活躍の場は拡がり,多様な場における実践能力が求められているが,卒前教育では様々な場で経験を積むことは難しい状況にある。この課題に対応するために,近年ではシミュレーション教育を実施している養成機関が増えているが,これらの普及状況は明らかになっていない。そこで,本研究では養成機関におけるシミュレーション教育の実態を明らかにすることを目的とする。
【対象および方法】 全国の歯科衛生士養成機関177校において,シミュレーション教育の実施状況を把握している歯科衛生士教員各1名を対象とした。シミュレーション教育実施状況・実施効果,シミュレーター所有状況等をWeb調査した。本研究は,明海大学浦安キャンパス研究倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:U231201)。
【結果および考察】 80校より回答を得た(回収率45%)。そのうちシミュレーション教育の実施養成機関は57%であり,活用しているものは学び創出システム「マナボット®」が最多96%,活用目的は口腔衛生管理が最多87%であった。シミュレーション教育による効果を感じている機関は96%で,内容は「学生の理解度向上」が最多89%であった。教員の教育満足度(10段階評価)の平均値は,未実施養成機関が5.88,実施養成機関が6.48であり,実施養成機関のほうが有意に高かった(p<0.05)。一方,未実施養成機関の理由として「高価なため購入が難しい」が最多74%であり,経済的理由で活用できない養成機関が多いことが示された。
【結論】 シミュレーション教育は約半数の養成機関に普及しており,実施によって学生の理解度・教員の教育満足度が向上することが示唆された。今後は,汎用性のあるシミュレーション教育プログラムを開発する予定である。
○小西有里子 宮﨑由子 清谷 愛 鳥谷有紀 三原友里子 山野視香子 宮川恵実 矢野将吾
医療法人三咲会ハローデンタルクリニック
キーワード 高齢者 訪問歯科 介護
【目的】 我が国は高齢社会を迎えて久しく,訪問診療のニーズは急増している。歯科領域でも訪問診療は口腔ケアを中心に増加している。当院は2010年に往診歯科事業を開始し,当初より介護施設や病院を対象とした訪問歯科治療が主体である。今回,当院で実施している介護施設・病院に対する当院での業務実績を整理する事で,大阪府下における施設や病院向け訪問歯科診療の現状の把握を試みた。
【概要】 当院では大阪府下に32ヵ所の訪問施設を担当しており,歯科医師・歯科衛生士・歯科助手を1組とした診療チームを派遣している。歯科医師が初診時の口腔状態から治療に加えて月1〜4回の口腔ケア計画を策定,ケアの実施は歯科衛生士が主に担当している。事業全体において入居者・患者の約66%が月4回,20%が月2回,11%が月1回の口腔ケア介入を受けていた。施設あたりの平均介入数を算出し,施設の種別毎に分類すると病院が平均で月3.3回と介入頻度が施設別で最も高かった。入所条件が介護保険の要介護認定で要介護3以上必要である特別養護老人ホームが平均で月3.0回だった。自立度に依存しない施設ではサービス付き高齢者住宅は平均月3.2回と高く,有料老人ホームは平均月2.8回だった。養護老人ホームは平均月2.3回と最も低い介入頻度だった。
【考察】 介護施設・病院の種別によって介入頻度に違いが見られた。介護度の比較的高い施設では介入頻度が高くなる傾向にあり,一方で養護老人ホームでは介入頻度が低かった。この違いは入居者・患者の介護度や医療費負担割合等の社会的・経済的要因が潜在的な背景として存在する可能性を示している。
【結論】 口腔ケアの介入頻度を中心に大阪府下における訪問歯科診療の現状把握を試みたところ,施設の種類によって介入頻度が異なっていた。
○中西優実 髙橋由佳 喜多幸代 横谷沙織 小川早代 山本育功美 山本一彦
奈良県総合医療センター
キーワード 膵臓癌 急性期病院 周術期口腔機能管理 口腔内環境
【目的】 当院は35診療科,483床からなる急性期病院である。近年,歯周病などの口腔感染症がさまざまな全身疾患の誘因となることが明らかになってきた。また,膵臓がんと口腔内環境の関連性が注目されている。今回,当院で周術期口腔機能管理を施行した患者における口腔内環境について調査したので報告する。
【対象および方法】 2023年1月から12月までに,当院で膵臓外科手術の前後に口腔外科を受診し,周術期口腔機能管理を受けた患者を対象とし,当科初診時における現在歯数,義歯,う蝕,根尖病巣3mm以上の有無,PPD(Probing ; Pocket depth)値4mm以上,動揺歯の有無,OHAT-J(Oral Health Assessment Tool日本語版)について調査した。また,かかりつけ歯科の有無,定期受診,1日のセルフケア回数の聞き取りを行った(奈良県総合医療センター倫理審査委員会承認番号:908)。
【結果および考察】 男性38名,女性32名,平均年齢70.7歳。現在歯数平均20.5本(無歯顎2名),義歯の使用38名,う蝕27名,根尖病巣32名,PPD値4mm以上57名,動揺歯36名,OHAT-Jの平均スコアは1.8点であった。かかりつけ歯科がある者52名,定期受診25名,1日のセルフケア回数平均2回であった。今回の調査から,PPD値4mm以上が81.4%であり,厚生労働省で5年に一度実施されている2022年度歯科疾患実態調査で40歳以上のPPD値4mm以上が56.4%であり,当院で膵臓外科手術を受けた患者の歯周疾患罹患率は高かった。
【結論】 歯周病に罹患していると,膵臓がんのリスクが2倍になるという報告がある。口腔内環境,全身状態についての関連性については,今後もさらなる調査を予定している。
○宮澤絢子 江﨑ひろみ
神戸常盤大学保健科学部 口腔保健学科
キーワード 歯科衛生過程 業務記録 歯科衛生士 質問紙調査 質的記述的分析
【目的】 地域口腔保健の中核を担う一般歯科診療所の歯科衛生士は,多職種連携力の向上が求められる。多職種と共に患者理解を深めるために歯科衛生過程の活用は不可欠であるが,臨床での活用実態報告は見当たらない。そこで一般歯科診療所勤務者を対象に行う歯科衛生過程活用の実態調査に先駆けて,本報では質問紙の検討と,業務記録作成への意識に関する予備調査について報告する。
【対象および方法】 学内歯科診療所に従事する専任教員と歯科衛生士職員12名を対象とした。質問項目は,基本属性,業務記録の実態と記録作成を阻む要因,SOAP式記録の活用状況,記録のし易さや困難感,記録作成の必要性とした。分析は,記述統計と自由記述は質的記述的分析を行なった(神常短研倫 第23-5号)。
【結果および考察】 9名(75.0%)が回答し,平均年齢48.2歳,2年制専門学校卒が77.8%を占め,平均臨床経験年数は約18年であった。全員がSOAP式業務記録を残し,その必要があると回答した。記録を残しにくい理由として「記録の時間を割けない」が55.6%と最も多かった。業務記録を残す理由は20コード,14〈サブカテゴリ─〉,8《カテゴリー》を抽出した。業務としての視点《定められた業務である》《スタッフ連携のために情報を共有する》と,本学が重点を置く「患者の全体像を捉えた歯科衛生過程の展開」の視点として《患者の全体像を捉える》《患者と情報を共有する》《患者との信頼関係を構築する》《根拠のある介入計画と介入を行なう》《多職種との連携に必要である》《歯科衛生士の専門性の確立につながる》を抽出することができた。
【結論】 一般歯科診療所の歯科衛生士においても,業務記録作成への意識や必要性を問う質問によって歯科衛生過程活用の実態を把握していく。
○荒木萌花1) 小倉千幸2) 遠藤眞美3) 伊藤 梓3) 倉持恵美4) 中村広恵5) 奈良小百合5) 堂本直美5) 高柳篤史3,5,6) 山岸 敦6)
1)東京都歯科衛生士会
2)日本歯科大学東京短期大学
3)日本大学松戸歯学部障害者歯科学講座
4)茨城県歯科衛生士会
5)高柳歯科医院
6)東京歯科大学 衛生学講座
キーワード 口腔保健 セルフケア 情報リテラシー Social media Google トレンド
【目的】 近年,インターネットが普及し,誰もが知りたい口腔保健情報を容易に得られるようになった。一方で,発信する側においては求められている情報が的確に利用者に届くように,検索する際に用いられる語句について把握する必要がある。そこで,発信した情報をより効果的に届けるための知見を得ることを目的に口腔保健領域の情報を検索する際に使用される語句の使用頻度について調査を行った。
【対象および方法】 インターネット上の用語の検索状況について頻度を調べることが可能なGoogle Trendsを使用し,調査を行った。検索語は,グループ1(歯磨き・はみがき・歯みがき),グループ2(歯磨き粉・ハミガキ・歯磨剤),グループ3(歯周病・歯槽膿漏・歯肉炎・歯周炎),グループ4(虫歯・う蝕・むし歯・ムシ歯)とした。検索期間は2018年12月30日から2023年12月31日の5年間とした。
【結果および考察】 グループごとに相対的な検索頻度を示す。歯磨き:はみがき:歯みがき=81:6:4であった。歯磨き粉:ハミガキ:歯磨剤=70:3:1であった。歯周病:歯槽膿漏:歯肉炎:歯周炎=55:13:13:4であった。虫歯:う蝕:むし歯:ムシ歯=79:2:1:0であった。検索時期では5月から6月に使用頻度が高く,口腔保健の啓発活動の影響が考えられた。多く検索されている用語では,検索が少ない用語よりも100倍以上多く検索されている用語があり,歯科用語は表記によって検索状況が異なることが示された。
【結論】 利用者に情報を効果的に届けるためには検索で用いられている用語を理解し,検索されやすい情報発信を行うことが望まれる。
○春日佳織1) 川野知子1) 安藤恵利1) 湯川あい1) 髙寺貴佳1) 岸本寛子1) 新井美那2) 大森雄司2) 押谷将之2) 橋谷 進2)
1)宝塚市立病院 医療技術部歯科衛生室
2)宝塚市立病院 歯科口腔外科
キーワード 医科歯科連携 院内紹介 口腔衛生管理 POMS
【目的】 当院は,診療科31科,436床を有する急性期病院で2次医療機関の役割も担っている。周術期口腔機能管理が保険収載されて以降,他科からの紹介依頼数が増加傾向にある。今回われわれは,院内での当科の役割を検討するため院内紹介患者の推移を調査したので,その概要を報告する。
【対象および方法】 2012年1月から2023年12月までの12年間で,院内で当科に紹介された患者10,559名において,カルテから依頼内容や治療内容について集計した。なお,解析前に匿名化を行い個人情報の取り扱いには,十分配慮した。
【結果および考察】 院内紹介患者数は,コロナ禍で減少はあったものの約2倍となった。依頼内容は,外科,呼吸器外科,血液内科等からの手術,化学療法に伴う口腔内評価(周術期口腔機能管理等)が2012年を省き,平均277名で推移した。救急科や呼吸器内科等における誤嚥性肺炎予防目的の口腔衛生管理依頼は約2倍であった。さらに,骨修飾薬等の投与前の口腔内精査依頼は約4倍であった。当科では,2016年から病棟往診に2人体制での口腔衛生管理方式(POMS:パートナーシップオーラルマネージングシステム)を導入している。このシステム開始から,院内での歯科衛生士の認知度が上昇し,医師や看護師,メディカルスタッフ等の他職種が,介入患者の口腔衛生状態の改善を認識し,口腔衛生の重要性が理解された。院内紹介患者数増加の一つの要因はPOMS導入も影響していると考察する。
【結論】 院内紹介患者の推移を検討したところ,口腔衛生管理,口腔内精査の必要および重要性が認識され院内紹介患者数が増加した。
○野上有紀子 森田章子 鳥井淳貴 杉山 勝 埴岡 隆
宝塚医療大学
キーワード スポーツマウスガード 柔道 口腔衛生
【目的】 スポーツ医科学の発展とスポーツ安全への意識向上に伴い,スポーツマウスガード(以下,SMG)がより広く認知され,競技毎の必要性の議論が進んでいる。競技者間の接触カテゴリーが最も高いフルコンタクト競技のボクシング等ではSMGの使用が義務付けられている。また,SMG装着義務の有無に関わらず,競技者の多くは,水分摂取のほか,体力・集中力の維持回復を目的にスポーツ飲料を摂取しており,さらに,競技中の唾液減少により,齲蝕・歯肉炎のリスクが高いとされている。本研究では,SMG着用が注目されてきた柔道選手を対象に,SMGに関連する文献調査および柔道選手の口腔衛生に対する意識を予備的に検討することを目的とする。
【対象および方法】 医学中央雑誌Webにて,「マウスガード」,「口腔衛生」をキーワードに検索した文献を考察の対象とした。また,柔道選手のSMGと口腔衛生への関心について某大学柔道部の学生に質問紙による調査を行った。本研究は宝塚医療大学研究倫理委員会の承認を得た(2403081)。
【結果および考察】 わが国のSMGに関する報告は,製作技術や口腔,顎顔面の外傷と関連した報告が多く,口腔衛生に関連した報告はわずかであった。近年の健康ブームからスポーツ飲料やプロテインが身近なものとなり,甘味成分を含み性状も多種多様で,摂取機会が増えるなか,SMG装着が推奨される競技も増加している一方で,SMGと口腔衛生の関連を認識している柔道選手は少なかった。けがの予防に加えて,齲蝕・歯肉炎等の予防の観点からも,競技者のほか,サポートスタッフやスポーツを楽しむ一般の者へもSMGと口腔衛生の関係を周知していくことが重要である。また,柔道選手固有の口腔衛生に関する調査も今後必要になると思われる。
【結論】 柔道選手のSMG調査の必要性が示唆された。
○嵐 聖芽1) 宮崎晶子1) 長谷川 優1) 土田智子1) 元井志保1) 煤賀美緒1) 榎 志佳1) 両角裕子2) 田増章吾3) 佐野 晃3)
1)日本歯科大学新潟短期大学歯科衛生学科
2)日本歯科大学新潟生命歯学部歯周病学講座
3)デンタルプロ株式会社
キーワード 歯間ブラシ 適正サイズ アンケート
【目的】 歯間ブラシのサイズ選択は安全かつ効果的に歯間部清掃を行う上で重要である。しかし,サイズ選択の目安は「挿入時に軽い抵抗感がある」等,基準となる数値情報が少ない。本研究では,歯科衛生士が臨床指導での感覚をもとに顎模型に対して選択した歯間ブラシのサイズと使用に関するアンケートを分析し,歯間ブラシの適正サイズに影響する因子を明らかにすることを目的とする。
【対象および方法】 2023年度N短期大学およびN病院の歯科衛生士40名にアンケートと同時に,顎模型の各歯間部に対し適切と思われる歯間ブラシを選択させ,サイズを用紙に記入させた。その後,歯科衛生士が選択した歯間ブラシのサイズと臨床経験年数の相関を検討した(倫理審査承認済:NDUC-110)。
【結果および考察】 歯間ブラシのサイズと臨床経験年数間に有意な負の相関を認めた。すなわち,臨床経験年数が長い者ほど,小さいサイズを選択していた。教育現場では,歯間ブラシのサイズ選択は「歯間にまっすぐに挿入した際,歯肉に軽い抵抗感があるもの」としていることが多い。しかし,臨床経験により歯間部の形態に合わせて清掃するようになると,2方向や4方向に歯間ブラシを細かく動かすため,刷掃時にはある程度の空隙が必要となる。そのため,臨床経験年数が長くなるほど小さいサイズを選ぶ傾向になったと考えられる。
【結論】 歯科衛生士であっても40名全員のサイズ選択が完全に一致した箇所はなかった。しかし歯科衛生士の臨床経験年数が長くなるほど,小さいサイズの歯間ブラシを選ぶ傾向が認められることが明らかになった。
○宮崎晶子1) 長谷川 優1) 土田智子1) 元井志保1) 煤賀美緒1) 嵐 聖芽1) 清野可那子1) 両角祐子2) 田増章吾3) 佐野 晃3)
1)日本歯科大学新潟短期大学
2)日本歯科大学新潟生命歯学部歯周病学講座
3)デンタルプロ株式会社
キーワード 歯間ブラシ 適正サイズ ブラシ圧
【目的】 歯周病のリスクが高い歯間部の清掃には歯間ブラシが有効であり,日常的な口腔清掃用具の一つとして定着している。歯間ブラシの使用方法は歯ブラシと比べると曖昧な表現が多く,力の測定が難しいため,具体的に提示されていないのが現状である。本研究の目的は歯間ブラシが与える負荷(以下ブラシ圧)の測定を検討し,適正サイズの選択や使用方法の一助とすることである。
【対象および方法】 対象はN短期大学およびN病院の歯科衛生士35名である。はじめに顎模型の下顎右側第一および第二小臼歯の歯間に対して適切と思われるサイズの歯間ブラシを選択させた。次に利き手の人差し指に触覚力測定装置Haplogを装着し,顎模型を取り付けた触覚フォースプレートTF-2020を用いて,対象部位に対して選択した歯間ブラシで5往復清掃させた。その後,Haplogで計測した指の押付力(以下Hap)と触覚フォースプレートで計測したX,Y,Z三軸合成値(以下Fo)を歯間ブラシが与える負荷として,比較・分析を行った(倫理審査承認済:NDUC-110)。
【結果および考察】 選択した歯間ブラシのサイズはM 15名が最も多く,次いでS 12名,L 4名,2S 3名,3S 1名であった。Hapの平均値はFoの平均値の2倍程度であり,HapとFoの間には有意な相関が認められた(p<0.01)。また,両者ともに高い値を示す者ほど往復運動にかかる力が安定せず,ばらつきが多かった。
【結論】 歯間ブラシを強く把持する者,また刷掃時に高い負荷をかける者ほど,Hap,Foともに,ばらつきが認められた。Foと比較してHapの方が高い値を示すが,相関が認められたことから,Hap測定により口腔内使用時の歯間ブラシが与える負荷を予測できることが示唆された。
○大谷悦世1,2) 竹之内 茜2)
1)大垣女子短期大学 歯科衛生学科
2)AtoE
キーワード dental hygiene student dental hygienist future perspectives survey
【目的】 歯科業界における喫緊の課題である歯科衛生士不足の原因の一つとして,新人歯科衛生士の早期退職・転職が挙げられる。これは,職場との考え方のミスマッチやリアリティーショックによるものだと考えられる。本研究では,勤務開始直前の歯科衛生学生の仕事に対する意識調査を行い公表することで,より多くの歯科医院,歯科医療従事者に新人歯科衛生士の考えを知ってもらうことを目的とした。
【対象および方法】 第33回歯科衛生士国家試験を受験した全国の学生を対象とした。学生への呼びかけには,歯科衛生士国家試験対策の講義動画を配信しているYouTubeの「AtoEチャンネル」を活用した。研究の流れは次の通りとした。1)2024年3月末に「AtoEチャンネル」で研究の説明・協力のお願いを伝える動画を配信した。2)動画視聴者の中で本研究の趣旨に同意した者は,動画の概要欄よりGoogleフォームにアクセスし質問に回答した。本研究は,大垣女子短期大学倫理審査会より承認を得ている(R5-6)。
【結果および考察】 251名より回答を得た。「歯科衛生士の仕事は魅力的だと思いますか?」に対しては91.3%が「歯科衛生士として成長したいと思いますか?」に対しては94.4%が肯定的に回答した。「勤務が始まる前の気持ちとして当てはまるものを教えてください。」には,「とても楽しみ」・「楽しみ」が24%,「とても不安」・「不安」が71.6%,「何とも思わない」が4.4%であった。
【結論】 勤務開始直前の歯科衛生学生の大半は,歯科衛生士として成長することに意欲的であり,かつ,不安な気持ちを持っていた。大半の新人歯科衛生士にとっての理想の職場とは,不安な気持ちに寄り添いながら成長の機会を与えてくれる職場である可能性が示された。
○野村美沙希 増田麻里 犬飼順子 内海倫也
愛知学院大学短期大学部専攻科(口腔保健学専攻)
キーワード 電動歯ブラシ ヘッド プラーク除去率 清掃時間
【目的】 歯科保健指導のために1つの会社の電動歯ブラシで,それぞれ形状の違う3つのヘッドを用いて,顎模型による頬側面のプラーク除去率を1歯あたりの清掃時間で比較検討した。
【材料および方法】 Oral B by BRAUN®電動歯ブラシを用いた。ヘッドは,やわらか極細毛ブラシ,ベーシックブラシ,マルチアクションブラシの3種類を用いて実験を行った。被験歯は上顎右側第一大臼歯とした。頬側面に人工プラークを塗布した後,電動歯ブラシを毛先が上顎第一大臼歯の頬側面に垂直に当たるように保持装置に固定し,顎模型は一定の圧力がかかるように秤に固定した。なお,ブラッシング圧は200gとし,それぞれ2秒,4秒,6秒,8秒,10秒の時間で上顎第一大臼歯の頬側面に当てた。これらの実験を6回試行した。その後,被験歯を写真撮影装置に固定し,規格写真撮影を行い,Photoshopにて画像加工後,NIH ImageJを用いてプラーク除去面積を測定し,プラーク除去率を求めた。統計処理は,SPSSを用いてShapiro-Wilk検定により非正規性を確認の後,Kruskal-Wallis検定を行った。なお,有意水準は5%未満とした。
【結果および考察】 歯ブラシのヘッドを一定にしたときの,清掃時間の違いによるプラーク除去率は,すべてのヘッドで2秒と8秒では8秒の方が2秒と10秒では10秒の方が有意に高かった。清掃時間を一定にしたときの,歯ブラシのヘッドの違いによるプラーク除去率に有意差はみられなかった。
【結論】 歯科衛生士として患者にブラッシング指導を行う際には,患者の口腔内の状況や全身状態を考慮した上で,適切なヘッドを選択して,ブラッシング指導と定期的な支援を行うことが重要である。
○磯輪日菜1,2) 渥美信子1) 増田麻里1) 北村優依1) 内海倫也1) 犬飼順子1)
1)愛知学院大学短期大学部専攻科(口腔保健学専攻)
2)医療法人徳洲会 吹田徳洲会病院 歯科口腔外科
キーワード 小児 電動歯ブラシ プラーク 仕上げ磨き
【目的】 小児のう蝕罹患は,保護者の仕上げ磨きの状況と関連性があると言われているが,低年齢児では仕上げ磨きを嫌がり,思うように実施できないことがある。そこで,仕上げ磨きを嫌がる小児の歯磨きへの興味を持たせるために,手用歯ブラシではなく,電動歯ブラシを使用して仕上げ磨きを行ってはどうかと考え,小児用電動歯ブラシを用いた保護者の仕上げ磨きの1歯あたりの最適なブラッシング時間を模索することとした。
【対象および方法】 小児用電動歯ブラシを用いて,顎模型上の上顎左側乳中切歯と上顎右側第二乳臼歯の唇頬側面に塗布した人工プラークの除去を,それぞれブラッシング時間を2秒,5秒,10秒と変えて6回ずつ行い,プラーク除去率を算出した。
【結果および考察】 上顎左側乳中切歯唇側面のプラーク除去率は,一元配置分散分析とTukey HSDの多重比較を行った結果,2秒と10秒の間,5秒と10秒の間にはp<0.05で,統計学的有意差が認められた。上顎右側第二乳臼歯頬側面では,ブラッシング時間の違いによるプラーク除去率に統計学的有意差は認められなかった。今回の結果より,小児用電動歯ブラシを用いた場合,上顎乳中切歯唇測面では,2秒,5秒より10秒ブラッシングをした方が,有意にプラークの除去率が上がることがわかった。しかし,小児用電動歯ブラシによるプラーク除去率はブラッシング時間や部位に関係なく,手用歯ブラシを用いたときに比べ全体的に低く,今後,刷毛部の大きさや毛の性状などの改良が必要と思われた。
【結論】 低年齢児の仕上げ磨きに電動歯ブラシを活用し,ブラッシングに関心をもたせ,歯みがき習慣を確立することは有効であると考える。歯科衛生士として,手用歯ブラシ,電動歯ブラシのそれぞれの利点,欠点を熟知し,各患者さんに適した歯ブラシを選択して,歯科保健指導をおこなわなければならないと結論された。
○渡辺朱理1) 古岩晴菜2) 横田憲治3) 玉木直文4) 松山美和1)
1)徳島大学大学院医歯薬学研究部口腔機能管理学分野
2)医療法人仁和会カナザキ歯科
3)岡山大学大学院保健学研究科検査技術学分野
4)鹿児島大学大学院医歯学総合研究科予防歯科学分野
キーワード 歯科医療 環境清掃 オゾン水 感染予防対策
【目的】 歯科医療環境は,常時周囲に患者の血液や唾液,口腔内細菌などに曝露されるリスクが高い。本研究では,オゾン水の強酸化力に着目し,歯科用ユニット周辺環境清掃への有効性について検討することを目的とした。
【対象および方法】 測定箇所は,ブラケットテーブル,歯科用ユニットヘッド,歯科用ユニット上部,歯科用ユニットアーム,ライト,スピットンで,各10台調査した。20分間のエアブラシによるブラッシングとPMTC後,測定箇所の左側をオゾン水,右側をアルコール製剤で清拭を行い,清拭前後にATP(アデノシン三リン酸)測定法と細菌検査を実施した。清拭前後のATP測定値の比較については,ノンパラメトリック多重比較検定を行った(p<0.05)。細菌検査には,標準寒天培地を用いて,測定部位表面に密着させて軽く押し当てた後,35℃で約48時間の好気培養を行った。
【結果および考察】 オゾン水の清拭後は,ブラケットテーブル,歯科用ユニットヘッド,歯科用ユニット上部,歯科用ユニットアーム,ライト,スピットンの6箇所全てにおいて,アルコール製剤の清拭後とほぼ同様なATP測定値まで有意に減少し,高い清浄度を確保することが認められた。細菌検査では,オゾン水の清拭後は,コロニーの検出は認められたが,清拭前と比較してコロニー数は減少しており消毒効果や静菌作用があることが示唆された。
【結論】 オゾン水での清拭は,歯科用ユニット清掃における清浄・消毒効果があることが認められた。オゾン水の酸化力・殺菌力を十分に発揮できる量や清掃適正場所についてもさらに検討することで,これからの歯科医療環境の安心安全な感染予防対策に繋げていけると考える。
○木浦里音 犬飼順子 増田麻里
1)愛知学院大学短期大学部専攻科(口腔保健学専攻)
キーワード 濾紙ディスク法 味覚検査 味覚刺激 唾液分泌量 5基本味
【目的】 口腔機能とQOLの向上のため,研究協力の同意が得られた歯科衛生学生を対象に,少量で短時間の味覚刺激による効果的な唾液分泌促進を検討した。
【対象および方法】 被験者は22.5±2.9歳の女性10名とした。濾紙ディスク法を改変し,5 基本味の甘味(スクロース),塩味(塩化ナトリウム),酸味(L(+)-酒石酸),苦味(キニーネ塩酸塩二水和物),旨味(L(+)-グルタミン酸水素ナトリウム-水和物)のそれぞれ3水準の濃度の味覚試料を調製した。各試薬は濾紙を用いて被験者の舌前方に乗せ,開口状態で3秒間静止後,濾紙撤去直後から3分間全唾液を採取して唾液分泌量を測定した。なお,全試料のコントロールとして蒸留水を濃度0.0%と設定した。さらに,被験者が何らかの味覚を認知した最小濃度を味覚の味覚閾値とした。各味覚試料の濃度の違いと味覚閾値での各味覚による唾液分泌量を対応のある一元配置分散分析とTukeyの多重比較により比較した。なお,本研究は愛知学院大学短期大学部倫理委員会(承認番号23-008)の承認を得た。
【結果および考察】 甘味,塩味,酸味では,濃度が高いと唾液分泌量が有意に増加した(p<0.001)。一方,苦味と旨味は濃度による唾液分泌量に有意差はなかった。各味覚の味覚閾値では,酸味は苦味(p<0.001),旨味(p<0.05)よりも有意に唾液分泌量が多かった。その他の組合せに有意差はなかった。甘味,塩味,酸味では,少量かつ短時間の刺激で濃度が高いと唾液分泌が促進されたことから,日常の食生活において,味覚刺激を応用して摂食・嚥下を円滑に進められると考えた。
【結論】 QOLに関わる唾液分泌量の増加を促すために,酸味をはじめ,甘味,塩味を用いた食品の摂取方法等の工夫により味覚刺激を与え,円滑な摂食嚥下の可能性が示唆された。
○下川床里美1) 谷 亜希奈2) 柿本和俊3) 藤田 敏4) 川田原瑠勇4)
1)大阪歯科大学大学院 医療保健学研究科
2)大阪歯科大学 医療保健学部 口腔保健学科
3)大阪歯科大学 医療保健学部 口腔工学科
4)クリーンケミカル株式会社 技術部
キーワード 歯磨き後 歯ブラシ 清掃方法 刷毛 残留タンパク質量
【目的】 歯ブラシの効率的な清掃方法や清掃しやすい歯ブラシの検討を目的として,基礎的データを収集するために,歯磨き後に日常的に行っている歯ブラシの清掃方法を調査するとともに,歯ブラシの清掃後に刷毛部に残留するタンパク質量を測定した。
【対象および方法】 研究対象者は,某大学教職員,学生,某歯科医院通院患者及びクリーンケミカル社職員の合計50名(男性24名,女性26名,平均44.0歳)とした。研究対象者には歯ブラシの清掃に関連するアンケート調査を実施した。また,歯ブラシ(G・U・M #211サンスター)の刷毛にヘパリン添加羊血液から得た血漿に1%硫酸プロタミンを混合した擬似汚染物1620.8μg±105.3μgを塗布し,室温にて1時間乾燥後,被験歯ブラシとした。そして,研究対象者に普段と同様に被験歯ブラシを清掃させ,清掃方法と清掃時間を調べた。さらに,ortho-phthalic dialdehyde(OPA法)にて刷毛部の残留タンパク質を定量した(大歯医倫第111309号)。
【結果および考察】 歯ブラシの選択要件に刷毛の清掃について挙げた研究対象者は,1名のみであった。清掃時間は2~29秒,残留タンパク質量は,100.3~1147.0μgであった。清掃時間が長いほど残留タンパク質量は減少した。また,清掃方法を流水のみ,刷毛を弱く擦る,強く擦るに分類して比較すると,流水のみよりも刷毛を強く擦った方が有意に残留タンパク質量を減少させた(p<0.01)。今後,刷毛部の残留タンパク質量を指標として,歯ブラシの清掃方法や清掃しやすい歯ブラシについて調査することを検討している。
【結論】 歯磨き後の歯ブラシの清掃程度の判定には残留タンパク質量の測定は有用であり,清掃時間を長くするもしくは刷毛を強く擦ると残留タンパク質量が減少することが判明した。
○鈴木 恵1) 鈴木一正2) 佐藤 勉3)
1)日本歯科大学東京短期大学
2)名古屋大学大学院工学研究科
3)東海大学医学部基礎医学系
キーワード 酸化チタン内蔵歯ブラシ ハイドロキシアパタイト フッ化物配合歯磨剤 う蝕予防
【目的】 前回大会では,太陽電池付酸化チタン内蔵歯ブラシ(Sブラシ)とフッ化物配合歯磨剤(フッ化物濃度:1,450ppm,ペースト,以下F歯磨剤)を併用した際のHApへの効果を報告した。第2報は前回と同様のin vitro実験を実施した。具体的にはハイドロキシアパタイト(ペレット,以下,HAp)表面上のフッ化物の化学結合状態をX線光電子分光法(XPS)から観察した。
【対象および方法】 浸漬方法は前回と同様にし,今回はHAp表面をサンドペーパーで一方向に削った。浸漬時間を24時間,3日間,4週間とし,浸漬中は光照射をした。浸漬後,HApを取り出し蒸留水で軽く洗浄し,室温乾燥後にXPSにてHAp表面上のフッ化物の化学結合状態を観察した。対照群はF溶液にHApのみを浸漬し光照射後の操作はSブラシと同条件とした。
【結果および考察】 浸漬後のHAp表面は浸漬前と比べ目視での大きな変化はなかった。次にXPSスペクトルから24時間浸漬では,HAp表面上にフッ化物由来のピークは確認されなかった。3日間浸漬では,弱いながらもフッ化物由来のピーク(685eV付近)が確認され,さらに4週間浸漬では,このピークが増強した。これらのピークはフッ化物がHAp表面上に存在していることを示唆している。ただし,XPSスペクトルからは,フッ化物イオンがHApの水酸基と置換したのか,または表面での静電的な吸着なのかは判別出来ない。この検討はXPSのF以外のエネルギーシフト等から多角的に評価する予定である。
【結論】 光照射したSブラシとF歯磨剤の共存下で長時間の浸漬により,HAp表面上にフッ化物由来のピークがXPSより確認された。これはHAp上にフッ素化合物が存在していることを示す。このことからSブラシとF歯磨剤の併用はう蝕予防効果を高める可能性があると示唆された。
○山本裕子1) 関端麻美1) 井出 桃1) 猿田樹理2) 坂口和歌子3) 両角俊哉4) 清水智子5) 東 雅啓6) 槻木恵一3)
1)神奈川歯科大学短期大学部 歯科衛生学科
2)神奈川歯科大学 教育企画部
3)神奈川歯科大学 環境病理学分野
4)日本歯科大学新潟生命歯学部 歯科保存学第1講座
5)神奈川歯科大学 歯周病学分野
6)東京工科大学医療保健学部 看護学科
キーワード 唾液 フラクトオリゴ糖 IgA スペルミジン
【目的】 演者らはこれまでにラットを用いた動物実験で,難消化性糖類であるフラクトオリゴ糖(FOS)を摂取することが,唾液中IgA分泌速度を増加させることを明らかにしてきた。しかし,FOS摂取がヒト唾液中IgAや他の代謝産物に与える影響については検討してこなかった。そこで,健常高齢者がFOSを摂取することで唾液中IgA分泌速度および代謝産物が変化するかどうかを検討した。
【対象および方法】 本研究は神奈川歯科大学研究倫理審査委員会(第886番)の承認を受けて実施した。50歳以上の男女27名(男性12名・女性15名,平均年齢63.3才)に,2022年10月21日より8週間,FOS(明治フードマテリア社製)顆粒5g分包品を1日3回,計15g摂取してもらった。唾液の採取はサリベット®を用いて,FOS摂取前・FOS摂取4週後・FOS摂取8週後の計3回行った。唾液中の総IgAと新型コロナウイルスに交叉するIgA濃度はELISA法にて測定した。また唾液中の代謝産物をメタボローム解析にて網羅的に測定した。
【結果および考察】 FOS摂取により,摂取前と比較して,被験者の唾液分泌速度,唾液中総IgAおよび新型コロナウイルスに交叉するIgA分泌速度は高値を示した。また唾液中のスペルミジン濃度も高値を示した。本研究の被験者は健常高齢者であり,試験期間の食事に特段の制限を設けなかったが,FOS摂取により唾液中の成分が変化することが判明した。また,細胞の寿命を延ばすことが報告されているスペルミジンが唾液中で増加したことから,FOS摂取が唾液腺の老化防止に影響する可能性が推測される。
【結論】 健常高齢者が食事にプラスしてFOSを摂取することで,唾液中のIgAやスペルミジン濃度を増加させる可能性がある。
○恒任日奈子1) 平尾直美1) 里 美香1) 寺井詩織1) 田中 咲1) 鵜飼 孝1,2)
1)長崎大学病院医療技術部歯科衛生部門
2)長崎大学病院口腔管理センター
キーワード 超音波スケーラー スケーラーチップ ウズラの卵
【目的】 超音波スケーラーはスケーリングや歯周ポケット洗浄などで頻繁に用いられるが,誤った方法で使用すると歯や歯周組織に損傷を与えるだけではなく患者に不快感を与える。そのため,普段使用している超音波スケーラーならびにそのチップの特性を理解し,正しく使用することが重要である。そこで,超音波スケーラーの機種や使用者の経験年数により対象に与える影響にどんな違いがあるのかを検討した。
【概要および方法】 実験は,長崎大学病院の歯科衛生士5名(経験年数2年~36年)で行った。超音波スケーラーは当院でよく使用されている4社(A,B,C,D)のものを使用し,それぞれの機種の代表的な,歯肉縁上ならびに縁下用のスケーラーチップを用いた。方法はウズラの卵に記をつけ,その上を50gの圧で30秒間に約40往復程度の速度で超音波スケーラーを動かして,卵の殻に穴が開く時間を調べた。超音波スケーラーのチップの左右側面,内背面,先端の5面においてそれぞれ3回ずつ実施した。
【経過および考察】 4種類全ての超音波スケーラーにおいて,縁下用より縁上用チップの方が全ての面で短い時間で卵の殻に穴が開いた。また,縁上用チップでは,内背面は先端や左右側面より短い時間で卵の殻に穴が開いたことから,チップの内背面は対象にダメージを与えやすいと考えられる。また,縁上用チップの側面を使用した際には,経験年数の少ない歯科衛生士では卵の殻に穴が開く時間のばらつきが大きく,他の部位と比較して一定の圧をかけるのが難しいと考えられる。
【結論】 機種やチップによる影響の違いを理解して使用することが安全かつ効率よく処置するためには必要である。また,経験年数が少ない歯科衛生士では特にチップの側面使用時に操作が不安定になりやすいことが示唆された。
○吉田佳世1) 吉田賀弥1) 毛利安宏2) 髙井有彩3) 生田あゆ3) 水澤典子2) 三好圭子2) 工藤保誠2) 尾崎和美1)
1)徳島大学大学院医歯薬学研究部口腔保健支援学分野
2)徳島大学大学院医歯薬学研究部口腔生命科学分野
3)徳島大学大学院口腔科学研究科口腔保健学専攻
キーワード 歯周病 microRNA マクロファージ 細胞外小胞 Porphyromonas gingivalis
【目的】 歯周病患者の唾液で特定のmicroRNA(miRNA)の増加が報告されるなど,miRNAの歯周病への関与が示唆されている。細胞外小胞(EVs)を介し分泌されるmiRNAが免疫応答や炎症反応を制御することが知られているが,Porphyromonas gingivalis(Pg)感染によるEVs中のmiRNAの構成やその変化が歯周病の病態形成にどう影響するかは不明な点が多い。本研究ではPg感染細胞由来のEVs(Pg-EVs)中のmiRNAの同定と,その分子的・機能的特徴の解析を目的とした。
【対象および方法】 Pg-EVs中のmiRNAプロファイルをマイクロアレイ解析で調べ,Pg感染による自然免疫レセプターシグナルへの依存性をシグナル阻害実験やin silico解析で検討した。また,Pg感染により変動するmiRNAの分子特性や機能特性を配列モチーフ解析およびパスウェイ解析で検討した。
【結果および考察】 Pg感染により増加したmiRNAにはmiR-155やmiR-146などの既知の歯周病バイオマーカーが含まれていた。miRNAの構成変化はLPS刺激時と異なり,Pg感染によるmiR-155の発現亢進はTLR2シグナルを介して誘導されることが示唆された。Pg-EVsで増加したmiRNAにはAGAGGGおよびGRGGSGCモチーフが共通して同定され,免疫応答や炎症反応,ErbBパスウェイに関連していることが示唆された。
【結論】 以上の結果は歯周病における免疫応答や炎症反応の変化を理解する上で重要であり,新たな歯周病バイオマーカーの同定にも寄与する可能性がある。今後は,特定の配列モチーフのmiRNA分泌や炎症制御への関与について詳細に解析する予定である。
○坂口恵子1) 宮﨑貴子1) 佐藤紗織2) 柏井伸子3)
1)添島歯科医院
2)株式会社モレーンコーポレーション
3)有限会社ハグクリエイション
キーワード 飛沫曝露 ゴーグル バイオフィルム除去
【目的】 歯科診療は,飛沫暴露環境下にあり,個人防護具の適正使用が必須にもかかわらず,ゴーグルの着用率は高くない。今回,眼の感染予防の観点から実際にどの程度の汚染物が眼の周囲に飛来するのかを検証した。
【対象および方法】 2024年1〜4月の2ヵ月間に歯科用インプラントメインテナンスを受診した50〜90歳代(男性10名女性10名)に対し,UNIVET社製セーフティアイウェアMODEL50を着用し,EMS社製エアフローマスターピエゾンおよびエアフローパウダープラスを使用しバイオフィルム除去を行った。その後,使用済みゴーグルに対しキッコーマンバイオケミファ社ルシパックA3およびルミテスターを用い,アデノシン一リン酸・同二リン酸・同三リン酸を含有する発光酵素ルシフェラーゼの発光量(Relative Light Unit:RLU)単位として計測した。臨床的歯周検査としてPlaque Control Record(PCR)を算定し,RLUと比較した。
【結果および考察】 最大値・最小値・中央値はPCRおよびRLUにおいてそれぞれ100・26・44および73,533・766・3,387であり,両群間で相関性は認められなかった。
要因として1・PCRでみるプラーク付着面積だけでなく,プラークの粘性や厚みによりパウダー使用量が変わり,飛散量に影響した。2・施術者が2名であり,ハンドピースのパウダー噴射や吸引の方向,ポジショニングに違いがある。3・臨床業務中の検証のため,施術後からデータ採取までの時間にバラつきがあり,RLU値に影響がでたのではないかと考えられた。
【結論】 今回すべての症例で飛沫曝露が確認されており,口腔衛生にかかわらずゴーグルの着用は必須である。今後もさらなる意識向上のため啓発を継続していく。
○野見ほのか1) 永里 萌2) 渡辺乃々3) 林 真白4) 渡邊早弥香4) 前原朝子5) 太田耕司5)
1)広島大学大学院 医系科学研究科 総合健康科学専攻保健科学プログラム
2)広島厚生農業協同組合連合会広島総合病院
3)たかす歯科小児歯科クリニック
4)広島大学歯学部口腔健康科学科口腔保健学専攻 学生
5)広島大学大学院医系科学研究科公衆口腔保健学
キーワード 空中浮遊微生物 エアサンプラー 微生物同定
【目的】 歯科実習室における空中浮遊微生物の環境的要因を検索するために,空中浮遊微生物数の環境要因,また相互実習の採取場所による微生物数や微生物種を検討した。
【対象および方法】 実験1:2023年1月~7月の期間,週に1,2回の頻度で,1日3回,歯科実習室中央定点において,CO2濃度,湿度測定と同時に,空中浮遊微生物をエアサンプラー(MAS-100 ECOTN,200L/回)で吸引し,標準寒天培地にて培養後のコロニー数を測定した。実験2:2023年12月に実習前,中,後にユニットチェアの頭側,中央定点,滅菌スペースで,同様にエアサンプラーを用いて標準寒天培地,サブロー培地,黄色ブドウ球菌培地に空中浮遊微生物を採取,培養後にコロニー数を測定した。これらのコロニーから10菌種を培養し,微生物の同定を行った。
【結果および考察】 実験1:気温・CO2増加量とコロニー数に正の相関傾向が認められた(順にrs=0.552,p<0.001; rs=0.236,p=0.024)。気温・湿度の上昇とともにコロニー数が増加傾向を示し,冬と夏に有意差が認められた(p<0.05)。実験2:相互実習中の頭側で黄色ブドウ球菌のコロニーが認められ,中央定点で真菌,グラム陽性菌,滅菌スペースではグラム陰性菌が同定された。頭側から黄色ブドウ球菌や,人や環境由来と考えられる菌が分離された。相互実習中の学生の飛沫から空中浮遊微生物が検出された可能性がある。
【結論】 歯科実習室における空中浮遊微生物数は,気温・湿度に影響されることが示された。相互実習中は学生の口腔内からの飛沫が空中浮遊微生物として検出される可能性がある。
○平野由美1,2) 三分一恵里2) 森下志穂2)
1)医療法人スワン会けやき歯科
2)明海大学保健医療学部口腔保健学科
キーワード 災害 口腔保健支援 災害時口腔ケア
【目的】 本研究は,東日本大震災(以下,震災)を経験した者を対象とし,災害時に水がない場合の口腔ケア方法や備えについての質問紙調査と,被災地の歯科医療現場で対応した歯科医師を対象とし,支援内容やマニュアルの有無などについての定性調査を行い,今後の災害時の口腔保健支援に活かすことを目的とした。
【対象および方法】 質問紙調査は,岩手県陸前高田市近辺在住の成人(東北群)と千葉県浦安市のスポーツ施設利用者(関東群)174名を対象とした。定性調査は,岩手県陸前高田市の歯科医院の院長を対象とした。質問紙の調査項目は,基本情報,震災当時の状況,ライフラインの状況,災害時の口腔ケアに関する意識とした。定性調査は,歯科医療従事者として,震災当時に行った対応,マニュアルの有無,歯科医師の観点から今後改善したい点とした。なお,本研究は明海大学保健医療学部卒業研究倫理審査(MH23-0015)の承認を得て行った。
【結果および考察】 震災後口腔ケアを実施できた者の割合は,関東群と比較して東北群ではできたと回答した者の割合が有意に低かった。断水の場合の口腔ケア方法を知っている,誤嚥性肺炎という病気を知っている,災害時の対策で口腔ケア用の備えがあると回答した者の割合は,東北群と比較して関東群で有意に多かった。定性調査では,日頃から口腔内環境を良好に保つことが重要であると示された。震災当時の被害の大きさや状況と現在の災害時の口腔ケアへの関心には関連性がない事が示唆された。
【結論】 本研究の結果,震災前から口腔に関心を向け,災害時の備えをすることが重要であることを啓発していく必要があることが示唆された。
○阿部莉奈1) 米村佳菜2) 森下志穂3) 三分一恵里3)
1)ウニクス浦和美園歯科
2)東京歯科大学千葉歯科医療センター
3)明海大学保健医療学部口腔保健学科
キーワード 携帯歯ブラシ 歯ブラシ洗浄方法 歯ブラシ保管方法
【目的】 これまでに歯ブラシの保管方法に関する研究は多くみられるが,携帯歯ブラシの保管方法について調査している研究は少なく,人々が携帯歯ブラシをどのように取扱っているのか,衛生的な保管方法を実践できているのかどうかは明らかになっていない。そこで本研究では,携帯歯ブラシの取扱いに関する実態およびその取扱い方法に歯科の専門知識が関係するのかを明らかにすることを目的に質問紙調査を実施した。
【対象および方法】 某大学の歯科衛生士養成学部および文科系学部学生1~4年生3,758名を対象に無記名自記式質問紙調査を実施した。質問項目は「携帯歯ブラシ使用の有無」「使用後の洗浄方法」「使用後の保管方法」などの携帯歯ブラシ使用方法に関する内容とした。なお,本研究は明海大学保健医療学部内倫理審査の承認を経て実施した(承認番号:MH23-013)。
【結果および考察】 回答者数は609名(歯科衛生士養成学部190名,文科系学部419名)であり,そのうち「携帯歯ブラシを使用している」と答えた196名(歯科衛生士養成学部111名,文科系学部85名)の回答を分析した。携帯歯ブラシを使用していたのは,歯科衛生士養成学部では回答者の約6割,文科系学部では回答者の約2割であった。「携帯歯ブラシを使用する時の毛先の状態の認識」「保管容器の選択」「帰宅後の保管方法」等の項目で歯科衛生士養成学部と文科系学部の学生の回答の割合に有意な差が認められた(p<0.05)。歯科衛生士養成学部の学生は携帯歯ブラシの使用割合が高く,歯ブラシの状態や保管容器の通気性を気にかけている学生が多かったが,「帰宅後に乾燥させる」など,衛生的な取扱いの実践にはつながっていなかった。
【結論】 歯ブラシを衛生的に管理する方法だけではなく,行動変容につながる働きかけを行う必要があると考えられた。
○米村佳菜1) 阿部莉奈2) 森下志穂3) 三分一恵里3)
1)東京歯科大学千葉歯科医療センター
2)ウニクス浦和美園歯科
3)明海大学保健医療学部口腔保健学科
キーワード 携帯歯ブラシ う蝕原生細菌 歯ブラシ保管方法
【目的】 我々は第1報にて,携帯歯ブラシの保管方法に関する調査を実施し,携帯歯ブラシの取扱に関する考察を行った。本研究では,第1報の回答にて多く実践されていた携帯歯ブラシの洗浄・保管方法が歯ブラシの細菌増殖にどのような影響を与えているのかを明らかにすることを目的に,数種類の洗浄・保管方法にて歯ブラシに付着する細菌数の違いを分析した。
【対象および方法】 某大学歯科衛生士養成学部に在籍する学生のうち,口腔内に重度のう蝕や歯周病がなく,全身的に健康である女性5名(平均年齢22.0±1.0歳)を対象とした。研究対象者がブラッシングに使用した歯ブラシを細菌付着歯ブラシとして,洗浄方法や保管ケースの種類,キャップの有無,保管期間等の異なる5つの条件で洗浄・保管した。その後,一定期間保管した細菌付着歯ブラシを用いて菌液を作製してStreptococcus mutansの培養を行い,付着細菌コロニー数を測定した。なお,本研究は明海大学保健医療学部内倫理審査の承認を経て実施した(承認番号:MH23-013)。
【結果および考察】 付着細菌数測定の結果,キャップをつけて密閉容器に保管した場合がS. mutansのコロニー数が最も多く,キャップをつけなかった場合が最も少なかったが,5つの条件間で有意な差は認められなかった。このことから,細菌増殖を抑えるには先行研究のとおり歯ブラシを乾燥させることが重要であると考えられるが,十分な洗浄や水分の拭き取りを行えば保管容器の形態やキャップの有無は細菌増殖に大きな影響を与えない可能性が示唆された。
【結論】 歯ブラシの洗浄方法,キャップの有無,保管容器,保管期間の違いにより歯ブラシ付着細菌数に有意な差はみられなかった。
○岩﨑由依 安達奈穂子 品田佳世子
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科口腔疾患予防学分野
キーワード 留学生 歯科保健行動 歯科受診行動
【目的】 近年,日本における外国人留学生は増加傾向にあり,留学生は日本の学生に比べて口腔の健康状態が不良であることが報告されている。しかし,留学生が口腔内の問題を抱えていることを自覚しているか,歯科受診する必要があるにもかかわらず受診控えをした経験はあるか等の情報は少ない。そこで,留学生を対象に口腔に関する情報と歯科受診の現状を調査し,留学生の受診控えの有無と受診控え減少のために歯科医療従事者が改善できる点を検討した。
【対象および方法】 対象は某日本語学校に在籍する留学生195名で,6項目(出身国や日本語能力等の基本属性,生活習慣,ヘルスリテラシー,口腔状況,歯科保健行動,歯科受診に関する項目)について質問紙調査を行った。2群間の比較にはカイ二乗検定用い,有意水準は5%とした。本研究は東京医科歯科大学歯学部倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:D2023-030)。
【結果および考察】 192名から回答を得た(回答率98.5%)。自分の口・歯に関して気になることがあると回答した者は135名(70.3%),受診控えの経験がある者は55名(28.6%)であった。口腔の健康観が低い群は高い群に比べ,また,アルバイトをしている群はしていない群に比べ,有意に受診控えをしていた。日本語能力や行動決定に関するヘルスリテラシーも受診控えとの関連がみられた。受診控えを減らすために,口腔の健康観の改善や言語面でのサポート,また専門用語の言い換えや「やさしい日本語」などの工夫が必要であると考察される。
【結論】 留学生の受診控えは口腔の健康観,アルバイトの有無,日本語能力や行動決定に関する口腔のヘルスリテラシーと関連しており,これらの問題を解決することが受診控え減少につながることが示唆された。
○弘中まみ1) 鈴木 瞳2) 杉本久美子3) 安達菜穂子3) 則武加奈子4) 徳丸慶安2) 藤本来さき2) 佐藤由香2) 吉田直美2)
1)松下歯科医院
2)東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科口腔健康教育学分野
3)東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科口腔疾患予防学分野
4)東京医科歯科大学病院歯科総合診療科
キーワード 歯科衛生学生 歯科保健指導 口腔衛生習慣 意識変容
【目的】 歯科保健指導は,患者の口腔衛生習慣獲得を促すために重要であるが,指導のどのような要因が口腔保健行動の変容に効果があるのかについてはほとんど報告がない。本研究では,某大学歯科衛生学生(以下,DHS)が実施した口腔衛生指導による患者の口腔内状態および意識の変容の分析から,効果的な指導内容について検討した。
【対象および方法】 DHS4年生が2回連続して口腔衛生指導を行った患者37名を対象とした。毎回,医療面接や指導内容,口腔内状態について記録し,2回目に自記式質問票への回答を得た。得られたデータより,10%以上のPCR値減少を認めた改善群とそれ以外の非改善群に分類し,口腔内状態の特徴と行動変容に関わる要因について分析した。本研究は,本学歯学部倫理審査委員会の承認を得た(D2015-569)。
【結果および考察】 改善群(n=11)では,初診時のPCR値が非改善群より有意に高い状態にあったが,再診時には口腔への興味・関心の有意な上昇と指導内容実践への自信度の上昇傾向が認められ,これらの意識の変化がPCR値の改善に繋がったと考えられる。一方,非改善群(n=26)では,初診時から低かったPCR値が再診時も維持され,口腔清掃行動,口腔への意識に有意な変化はみられなかった。口腔衛生指導の特徴として,改善群では,患者のモチベーションアップを重視した内容が多く,非改善群では,現状容認と具体的な清掃方法に関する内容が多かった。
【結論】 PCR値が高めで口腔への関心が低い患者に対しては,モチベーション強化を重視した指導が効果的であり,良好な状態を維持している患者では,現状容認のみならず,さらに意識を高める指導が必要であることが示され,患者の状態に応じた指導の工夫が重要であることが検証された。
○藤村知都1) 山田愛海2) 吉川正芳3) 金子 潤3)
1)新東京歯科技工士学校歯科技工士科学生
2)株式会社モリタ
3)明海大学保健医療学部口腔保健学科
キーワード デンタルフロス プラーク除去率 人工プラーク
【目的】 本研究は各歯間に連続的に使用した場合(A群)と,歯間ごとにガーゼで拭い取り再度使用した場合(B群)のホルダータイプデンタルフロスのプラーク除去率と耐久性を検証することである。
【対象および方法】 顎模型に装着した34,35,36,37の4本の人工歯に人工プラークを塗布し自然乾燥させる操作を3度繰り返し行った。人工歯は顎模型に一定の力で装着した後,同一術者がフロッシングを実施した。使用したホルダータイプデンタルフロスはクリニカアドバンテージデンタルフロスY字タイプ(ライオン:以下,フロス)で,被験歯の歯間部に順番に挿入し,舌側,中央,頬側を各3回ずつ合計9回上下にフロッシングを行なった。なお,A群ではフロスを連続的に各歯間に使用し,B群では歯間ごとにフロスを清潔なガーゼで拭い取り別歯間に再度使用した(n=3)。フロッシング後,人工歯を顎模型から取り外し,写真撮影後に画像処理ソフトImageJ(NIH)を用いてプラーク除去率を算出した。両群間の歯面ごとの比較をt検定により行った(α=0.05)。
【結果および考察】 プラーク除去率はA群が24.25-49.51%,B群が50.39-67.30%の範囲で,すべての歯面でA群に比べてB群が高い傾向にあり,35の近心面および遠心面では有意差が認められた(p=0.043,p=0.031)。フロスの耐久状況の観察では,A群はB群に比べて初期のフロス繊維の変化が大きかった。これは,最初の歯間に使用した際に付着したプラークが残留したまま順次歯間に使用されたため,摩擦抵抗が大きくなりフロス繊維に影響を与えたものと思われる。
【結論】 フロスを歯間ごとに拭い取り使用することで,フロス繊維を整えてプラーク除去率を向上させる効果が期待できる。
○藤本来さき1) 安達奈穂子2) 鈴木 瞳1) 吉田直美1) 品田佳世子2)
1)東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科口腔健康教育学分野
2)東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科口腔疾患予防学分野
キーワード 歯垢染色剤 口腔内スキャナー 染色割合 使用感
【目的】 本研究では,歯垢染色剤について,市販品と歯科専売品(以下,専売品)の染色性および使用感の違いを比較し,その活用について検討を行った。
【対象および方法】 研究協力の得られた6名を対象に,市販品(「こどもハミガキ上手」丹平製薬株式会社),専売品(「メルサージュPCペレット」株式会社松風)の順で染色し,それぞれの染色状態を記録した。記録は,口腔内スキャナー(「i700オーラルスキャナ」株式会社ヨシダ)を用いた。染色性の評価は,16,12,24,36,32,44の頬舌側面の画像をImageJで処理し,染色割合を算出した。味,不快感,見やすさ等の使用感は,Visual Analog Scaleを用いたアンケートにて評価した。分析にはSPSSを用い,市販品と専売品の2群に対して対応のあるt検定を行った。有意水準は5%とした。本研究は東京医科歯科大学歯学部倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号第D2023-006番)。
【結果および考察】 染色割合は,専売品が市販品に比べ全体では有意に高かった。部位別では臼歯部や舌側では有意差があったが,前歯部や頬側では認められない部分もあった。一方,使用感は,専売品よりも市販品の方が良好だと回答した者の割合が高かった。市販品は,専売品に比べ染色性で劣るものの,前歯部や頬側といった自己観察しやすい部位では染色割合に違いがなく,使用感がよいため,セルフケアへの関心を高め,効果的な口腔清掃へのきっかけづくりになると考えられる。
【結論】 歯垢染色剤は,染色性および可視性では専売品,使用感では市販品の方が優れていた。専売品は,歯垢付着状態をより正確に評価できる一方,手軽さや使用感という点で市販品のセルフケアでの活用可能性が示唆された。
○佐藤由香1) 鈴木 瞳1) 杉本久美子2) 安達奈穂子2) 森岡典子3) 柏木聖代3) 吉田奈永4) 徳丸慶安1) 藤本来さき1) 吉田直美1)
1)東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科口腔健康教育学分野
2)東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科口腔疾患予防学分野
3)東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科ヘルスサービスリサーチ看護学分野
4)東京医科歯科大学病院 オーラルヘルスセンター
キーワード 他職種連携 口腔ケア 健康教育
【目的】 近年,歯科衛生士と他職種との連携機会が増加し,卒前における連携教育の重要性が高まっている。本研究では,某大学歯科衛生学生(以下DHS)が主導して看護学生(以下NS)との連携プログラムを実施し,NSのフィードバックの分析により教育効果について検討した。
【対象および方法】 DHS4年生18名が,NS2年生55名への口腔ケアに関する健康教育実習を企画・実施した後,混合グループ討論のファシリテーターを務めた。実施後,NSより,各実習ならびにグループ討論へのフィードバックを得た。その内容についてテキストマイニングを行い,共起ネットワーク図を作成して,関連の強い用語のカテゴリー分けを行った。分析結果からプログラムを通して得られた学びと連携意識について検討した。なお,本研究は本学統合教育機構倫理審査委員会の承認(C2022-011)を得た。
【結果および考察】 NS48名よりフィードバックを得た(回答率87%)。実習の感想から,「体験による患者感覚の理解,配慮の必要性」「他者への歯磨き方法の理解と難しさ」「義歯に触れる体験」等の実習テーマに則したカテゴリーが抽出され,体験を通して知識獲得,患者の立場理解が促進されたことが示された。全体の感想からは「他職種との連携の重要性の実感」「各職種の専門性に関する実感」等のカテゴリーが抽出され,他職種の専門性と連携の重要性への理解が促進されたことが示唆された。
【結論】 DHSが主導した連携プログラムを通して,NSの口腔ケアに関する実践的知識,理解が深まるとともに,他職種の専門性と連携の重要性への理解が促進されたことが示され,卒前教育における多職種合同の体験学習を組み込んだプログラムが,将来のチーム医療への基礎を培う上で有用であることが示唆された。