2025 年 19 巻 2 号 p. 13-22
広島県で歯科訪問診療に従事する歯科衛生士の業務内容と課題を把握し,訪問診療の経験年数による違いを明らかにすることを目的とした。2023年1月,広島県歯科衛生士会会員446名および2021年度に歯科訪問診療の実績がある広島県内の歯科医療機関406ヵ所の歯科衛生士を対象に,質問紙調査を実施した。調査項目は年齢,訪問診療の経験年数,業務内容,業務上の課題とし,訪問診療の経験年数に基づき3群に分類して分析を行った。分析対象は歯科訪問診療に従事していた203名(平均年齢45.5±12.9歳)であった。歯科衛生士の業務で実施率が高かったのは「口腔観察」(95.6%),「口腔衛生管理」(89.6%),「口腔清掃指導」(88.5%)であり,経験年数による有意差がみられた業務は「義歯の清掃・取り扱い指導」(p=0.011)および「摂食嚥下訓練・口腔機能向上訓練」(p=0.006)であった。業務上の課題では「多職種連携」(80.3%)が最も多く,経験年数と有意に関連した課題は「スタッフの教育」(p=0.047)であった。広島県の歯科訪問診療における歯科衛生士業務では,口腔衛生管理の実施率が高く,義歯の管理および摂食嚥下・口腔機能向上訓練の実施には経験年数が影響していた。また,スタッフ教育が課題として明らかになったことから,経験年数に応じた研修の充実の必要性が示唆された。
The aim of this study was to understand the work duties and issues of dental hygienists engaged in dental house calls in Hiroshima Prefecture and to elucidate the differences based on their years of experience providing this service. In January 2023, we conducted a questionnaire of 446 members of the Hiroshima Prefecture Dental Hygienists’ Association along with dental hygienists at 406 dental institutions across Hiroshima Prefecture who had actually gone on dental house calls in 2021. The questionnaire covered age, years of experience in dental house calls, work duties, and work issues. The results were analyzed by categorizing them into three groups based on years of experience. The analysis covered a total of 203 dental hygienists engaged in dental house calls (mean age: 45.5 ± 12.9 years). The most common jobs of these dental hygienists were “Oral observation” (95.6%), “Oral hygiene management” (89.6%), and “Oral cleaning instruction” (88.5%). The jobs that showed significant differences based on years of experience were “Instruction on cleaning and handling dentures” (p = 0.011) and “Dysphagia training / Training for oral function improvement” (p = 0.006). The most common work challenge was “Interprofessional collaboration” (80.3%), and the challenge that was significantly related to years of experience was “Training other staff” (p = 0.047). In conclusion, the most common job among dental hygienists engaged in dental house calls in Hiroshima Prefecture was oral hygiene management, and both dentures management and oral function improvement training were associated with their years of experience. Furthermore, this study showed that training other staff is a challenge, indicating a need to enhance training based on years of experience.
超高齢化社会が進展する日本では,在宅歯科医療を提供できる体制の整備と確保が急務となっている。現在,歯科訪問診療を実施している歯科医療機関数は全体の約2割であり,地域差も大きいことが報告されている1),2)。在宅歯科医療の実施と関連する因子として,常勤または非常勤の歯科衛生士数が挙げられており3),4),5),在宅歯科医療サービスの充実には歯科衛生士の存在は欠かせない。
近年,歯科衛生士が関与する口腔健康管理が肺炎発生率の低減6),ADLの改善や自宅退院率の向上7),8)に寄与することが報告され,口腔と全身の関連性から,歯科衛生士のさらなる関与が期待されている。また,2018年以降,歯科衛生士による居宅療養管理指導の算定回数は増加傾向にあり,歯科訪問診療において「口腔衛生」は「歯周病治療・処置」および「補綴・義歯関係」に次いで実施件数の多い診療行為となっている2)。さらに,終末期9)や緩和ケア10)における口腔管理の重要性も認識されつつあり,今後,歯科衛生士の役割はますます重要となることが予想される。
一方,歯科訪問診療における歯科衛生士の業務を具体的に示した資料は少なく,日本歯科衛生士会が会員を対象に5年ごとに実施している歯科衛生士の勤務実態調査11)においても,歯科訪問診療に関する項目は限られている。また,広島県においては在宅療養支援歯科診療所数および訪問口腔衛生指導を実施している診療所・病院の数は減少傾向にあり12),要介護者の口腔管理の体制整備が課題となっている。歯科訪問診療は,単に要介護者の口腔健康管理を行うだけでなく,全身状態や生活環境の把握,介護サービスとの連携も必要とされるため,高度な専門性が求められる仕事である。そのため,豊富な知識と経験が重要であるが,これまでの研究では経験年数による業務内容の違いについてほとんど調査されていない。そこで本研究では,広島県で歯科訪問診療に従事する歯科衛生士の業務内容を把握し,訪問経験年数による業務内容や課題の違いを明らかにすることを目的として調査を行った。
広島県歯科衛生士会の全会員446名(2022年10月30日時点),および2021年度に歯科訪問診療の実績があった広島県内の歯科医療機関406ヵ所13)に勤務する歯科衛生士を対象とした。
Ⅱ. 調査方法2023年1月,無記名の自記式質問紙を対象者に郵送し,調査を実施した。回答方法は,郵送による質問紙の返送またはGoogle Forms(Google LLC, United States)での送信のいずれか1回とした。調査期間は2023年1月15日から1月31日までで,期間中に広島県歯科衛生士会の公式LINE(LINEヤフー株式会社,東京)を通じ,期日までの回答を促す投稿を2回行った。
Ⅲ. 調査項目調査項目は先行研究11)を参考に,以下の内容とした。広島県歯科衛生士会への所属の有無,年齢,歯科訪問診療の経験年数,就業場所(診療所・障害者診療所,病院・大学病院,介護保険施設,その他),雇用形態(常勤,非常勤),歯科訪問診療における歯科衛生士の業務12項目(口腔内の観察,口腔ケア・アセスメント表の作成,要介護者(本人)への口腔清掃指導,歯科衛生士による口腔衛生管理,義歯の清掃・取り扱い指導,フッ化物の歯面塗布,口腔機能の評価,摂食嚥下訓練・口腔機能向上訓練,関連職種への口腔ケアに関する教育研修,担当者会議への参加,入・退院時カンファレンスへの参加,ミールラウンド),歯科訪問診療における業務上の課題10項目(療養者に対する口腔健康管理の知識,療養者に対する口腔健康管理の技術,診療中の全身管理,患者・家族とのコミュニケーション,歯科医師との連携,多職種との連携,行政や病院・施設との連携,医療保険・介護保険の理解,診療時間の確保,スタッフの教育)について調査した。
歯科訪問診療における歯科衛生士の業務については「実施している/実施していない」,業務上の課題については「課題である/課題ではない」の二択で回答を求めた。
Ⅳ. 分析方法回答を得た474名(会員300名,非会員172名,不明2名)のうち,歯科訪問診療に従事していた203名を分析に用いた。歯科訪問診療の経験年数については,先行研究14)を参考に「5年未満」,「5年以上10年未満」,「10年以上」の3群に分けた。3群間の比較は,Fisherの正確検定またはKruskal Wallis検定を行い,有意水準を5%未満とした。また,有意差が確認された項目については,Bonferroni補正で有意水準を補正して多重比較を行った。解析は統計ソフトJMPⓇ Pro ver.16(SAS Institute Japan,東京)を用いて行った。
Ⅴ. 倫理的配慮本研究は,広島県歯科医師会臨床研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:広県歯倫-20221206_04)。調査対象者に対して本研究の目的,研究協力の任意性と協力辞退の事由,研究方法,個人情報の保護,調査結果の開示について文書にて説明した。質問紙は無記名自記式とし,回答は任意とした。郵送またはWebフォームによる回答の送信をもって同意を得たものとした。
対象者の属性を表1に示す。歯科訪問診療に従事していた203名のうち,広島県歯科衛生士会の会員は83名(40.9%),非会員は120名(59.1%)であった。年齢,訪問診療経験年数の中央値(25-75パーセンタイル値)はそれぞれ47(36-55)歳,6(3-13)年であった。就業場所は診療所・障害者診療所が181名(89.2%)と最も多く,病院・大学病院が9名(4.4%),介護保険施設が8名(3.9%),その他5名(2.5%)であった。雇用形態は127名(62.5%)が常勤であった。
経験年数区分ごとの人数は,5年未満群65名(32.0%),5年以上10年未満群56名(27.6%),10年以上群82名(40.4%)であった。経験年数(5年未満群,5年以上10年未満群,10年以上群)間で有意差がみられたのは,広島県歯科衛生士会の会員・非会員(p=0.009),年齢(p<0.0001),訪問経験年数(p<0.0001),雇用形態の常勤・非常勤(p<0.0001)であった。広島県歯科衛生士会の非会員の割合は,経験年数5年未満群および5年以上10年未満群が10年以上群に比べて有意に多かった。また,年齢および訪問経験年数はすべての群間で有意な差があり(p<0.01, p<0.0001),年齢は訪問経験年数が増すにつれて上昇していた。さらに,非常勤雇用の割合は,5年未満群に比べて10年以上群が有意に多かった(p<0.0001)。
歯科訪問診療における歯科衛生士業務に関する記述統計の結果を図1に示す。実施率の高い業務は「口腔内の観察」95.6%,「歯科衛生士による口腔衛生管理」89.6%,「要介護者(本人)への口腔清掃指導」88.5%であった。一方,実施率が最も低い業務は「入・退院時カンファレンスへの参加」4.5%であった。歯科衛生士業務と経験年数の比較を表2に示す。経験年数間で有意な差が認められた業務は「義歯の清掃・取り扱い指導」(p=0.011)であり,5年未満群に比べて5年以上10年未満群および10年以上群の実施率は有意に高かった(p=0.022, p=0.009)。また,「摂食嚥下訓練・口腔機能向上訓練」も経験年数間で有意差がみられ(p=0.006),5年未満群に比べ10年以上群の実施率は有意に高かった(p=0.002)。

歯科訪問診療における歯科衛生士の業務内容
歯科訪問診療における業務上の課題に関する記述統計の結果を図2に示す。課題として最も多かった回答は「多職種との連携」80.3%,次いで「療養者に対する口腔ケアの知識」および「療養者に対する口腔ケアの技術」が同数の79.8%,「診療中の全身管理」が79.3%であった。経験年数間で有意な差が認められた課題は「スタッフの教育」(p=0.047)であり,5年未満群に比べ10年以上群で課題と感じている者が有意に多かった(p=0.027)(表3)。

歯科訪問診療における業務上の課題
歯科訪問診療に従事する歯科衛生士の業務実態を把握することを目的として,広島県内の歯科衛生士を対象に質問紙調査を実施した。今回,分析対象者の約6割が広島県歯科衛生士会の非会員であったことから,会員・非会員を含めた広島県内の歯科衛生士の現状の一部を把握できたと考えられる。
歯科訪問診療における歯科衛生士の業務は,口腔衛生管理,口腔機能管理,多職種連携など多岐にわたる。要介護者や介護スタッフに対する専門的な管理・指導に加え,食支援や介護サービスについての知識も求められるため,本研究では年齢や歯科衛生士としての就業年数ではなく,歯科訪問診療の経験年数によって業務内容や課題に違いがあるかどうかを分析した。その結果,業務内容では,義歯の清掃・取り扱いの指導および摂食嚥下訓練・口腔機能向上訓練において,業務上の課題では,スタッフの教育において,経験年数と有意な差があることが明らかになった。
歯科訪問診療での歯科衛生士の業務では「口腔内の観察」が最も多く,次いで「歯科衛生士による口腔衛生管理」,「要介護者(本人)への口腔清掃指導」,「義歯の清掃・取り扱い指導」が全体の8割以上で実施されていた。一方,「口腔機能の評価」は5割程度であり,「入・退院時カンファレンスへの参加」,「ミールラウンド」の実施は1割にも満たなかった。厚生労働省の調査によると,歯科衛生士等による居宅療養管理指導では,口腔ケアに関する指導は毎回9割以上で実施されているが,食事姿勢や食形態に関する指導は毎回1割程度であり,口腔衛生に関する指導が中心になっていることが報告されている15)。また,日本歯科衛生士会の調査では,介護施設に勤務する歯科衛生士は,日常業務における研修や多職種連携よりも口腔衛生管理を優先する傾向があり,誤嚥性肺炎を含む感染予防のための口腔衛生管理を重要な業務として認識している可能性が示唆されている16)。本研究においても歯科訪問診療に従事する歯科衛生士は,主に口腔衛生管理を行っており,口腔機能管理や多職種連携に関する業務の実施率は低かったことから,先行研究と同様の結果と考えられる。カンファレンスやミールラウンドの参加には,多職種とのコミュニケーションや連携が不可欠である。特に,要介護者とサービス事業者等との連絡調整を担う介護支援専門員との連携は重要である。しかし,介護支援専門員が歯科医師や歯科衛生士に利用者の情報提供を依頼しても,実際に情報を受け取った割合は約5割であることが報告されている2)。このことから,カンファレンス等への参加が進まない一因として,介護支援専門員との連携不足が挙げられる。また,ミールラウンドでは,食事場面の観察を通じて摂食嚥下機能の評価が求められる。さらに,評価後に開催されるカンファレンスでは,経口摂取を維持するためのケアプランを提案する必要がある。これらの活動には専門的な知識や技術が必要であり,実施率が低い背景には,歯科衛生士自身の知識や技術の不足が影響している可能性があると考えられる。
経験年数と有意差が認められた業務は,「義歯の清掃・取り扱い指導」および「摂食嚥下訓練・口腔機能向上訓練」であった。いずれも経験年数5年未満群で有意に実施率が低かった。本調査の回答者の約9割は歯科診療所に勤務する歯科衛生士であり,経験年数5年未満群の年齢は他の2群に比べ有意に若く,常勤の割合も高かった。歯科訪問診療を実施する歯科診療所の約8割が,外来診療時間内やその前後,昼休みなどに訪問診療を行っていると報告されている2)。このことから,訪問診療に割ける時間は限られていると推測される。限られた時間の中で効率的かつ効果的なケアを提供するためには,要介護者の状況や状態を考慮したアセスメントを行い,ケアプランを策定した上で実践する必要がある17)。しかし,経験年数の浅い歯科衛生士は,このアセスメントが十分に行えていない可能性がある。その結果,義歯管理や摂食嚥下訓練が優先されず,口腔衛生管理が優先される傾向が見られると考えられる。
口腔健康管理において,口腔衛生管理と口腔機能管理の両方が重要であることは言うまでもない。近年,高齢者の口腔環境は複雑化しており,保有歯数の増加やインプラント,部分義歯装着者の増加,さらに4㎜以上の歯周ポケットを有する者も増えている18)。その結果,歯科訪問診療では誤嚥性肺炎などの感染予防だけでなく,う蝕や歯周病などの口腔疾患の重症化予防と摂食嚥下リハビリテーションなどの口腔機能への対応がますます重要になっている。最近の研究では,義歯洗浄の頻度が低いほど肺炎の発生率が高くなることや19),ぶくぶくうがいの可否と食形態との関連20)が報告されている。これらのことから,歯科衛生士が介入時から義歯を含む口腔機能を評価し,その状態をカンファレンス等で多職種と共有することは,要介護者の食生活を支える上で必要な業務であると示唆される。
業務上の課題については,「多職種連携」,「療養者に対する口腔ケアの知識・技術」,「診療中の全身管理」を課題と感じている者が多かった。特に,これらの3項目については,経験年数5年未満群と10年以上群の8割以上が「課題である」と回答していた。一方,経験年数5年以上10年未満の歯科衛生士はこれらを課題と感じておらず,熟練度が向上したことで対応できるようになったと推察される。さらに,「スタッフの教育」が課題と回答した者の割合は,経験年数5年未満群よりも10年以上群の方が有意に高かった。病院看護師の口腔ケアに対する認識を調査した研究では,臨床経験5年未満の看護師よりも10年以上の看護師の方が口腔ケアの重要性を強く認識しており,生涯研修として学ぶ意欲が有意に高い傾向がみられた14)。つまり,経験年数が10年以上になると,教育や生涯研修の重要性をより強く認識するようになるのではないかと考えられる。
歯科訪問診療の対象は多様であり,全身状態に応じて介入の意義や目標も異なるため,生活環境を把握し,多職種と連携して療養生活を支援することが求められている17)。歯科衛生士が歯科訪問診療に携わるためには,On the Job Training(OJT)を含む職場内・外での教育・研修プログラムの充実が不可欠であると考える。2008年に実施された在宅歯科医療の研修に関する全国調査では22),都道府県歯科医師会や歯科衛生士会が研修会を多く開催していることが報告されている。広島県歯科衛生士会では,2018年より広島県地域医療介護総合確保事業の補助金を受けて在宅歯科医療の推進に係る研修事業を実施しており,これまでに延べ800名以上の歯科衛生士が受講している。2023年度には,本調査の結果を踏まえ,病院や施設,在宅での見学実習を設定し,それぞれの現場で働く歯科衛生士の姿を観察し学ぶ機会を提供した。見学実習後のアンケートでは,約9割の参加者が見学実習前に比べて訪問歯科衛生士への関心が高まったと回答していた。恒石ら22)は,「在宅の現場を見ることは,学生に対する教育効果を上げる最良の方法である」と述べており,見学実習は学生のみならず,訪問に携わる歯科衛生士の人材育成にも有効な研修方法であることが示唆された。
一方,歯科訪問診療において歯科衛生士が単独で訪問しているケースは約6割に上り,約75%の歯科衛生士が訪問時に不安や心配を抱えていると回答している2)。不安の原因は明確ではないが,ハラスメントや知識・技術不足によるものが考えられる。実際に,約5割の歯科衛生士が患者本人から蹴られた,叩かれた,つねられたといったハラスメントを経験しており2),訪問現場でのハラスメント対策は,安全で安心な労働環境の確保や患者への適切な対応のために不可欠である23)。今回の調査ではハラスメントに関する項目は含まれていないが,訪問現場での多職種との情報共有がハラスメント防止に寄与する可能性があり,多職種連携の重要性は今後さらに高まっていくと考えられる。また,歯科訪問診療に必要な知識・技術の習得については,日本老年歯科医学会が2022年に策定した「老年歯科医学 歯科衛生士教育基準」24)に示されており,幅広い分野の知識の習得が求められている。今後,歯科訪問診療における歯科衛生士の課題や不安を解決するためには,専門的な知識・技術に関する研修に加え,ハラスメント対策や経験年数に応じた人材育成の方法についても検討する必要があると考える。
本研究にはいくつかの限界がある。まず,調査対象となった歯科医療機関に勤務する歯科衛生士の人数や会員・非会員の内訳を把握できなかったため,全体および非会員の正確な母数を確認することができなかった。そのため,調査結果の一般化には注意が必要である。また,無記名の回答を郵送またはWebのいずれか1回のみで依頼したが,重複回答の可能性も否定できず,データの信頼性に影響を与える可能性がある。
令和4(2022)年衛生行政報告例25)によると,広島県の就業歯科衛生士数は4,051名であり,そのうち会員は446名(11.0%)であることから,約9割が非会員であるといえる。したがって,非会員からの回答は広島県における歯科衛生士の実態をより正確に把握するための貴重なデータとなり得る。今後は,重複回答の防止や非会員からの回答数の増加を図るため,郵送による再通知などデータの信頼性を確保するための対策を盛り込んだ研究計画を検討する必要があると考える。
広島県内の歯科訪問診療に従事する歯科衛生士は,口腔衛生管理を主な業務としており,訪問診療の経験年数が5年未満の歯科衛生士は,義歯の清掃・取り扱い指導および摂食嚥下訓練・口腔機能向上訓練の実施率が有意に低かった。また,経験年数10年以上の歯科衛生士は,5年未満の歯科衛生士に比べてスタッフ教育を課題と感じていた。これらの結果から,訪問経験年数に応じた専門的なスキルの向上と教育・研修プログラムのさらなる充実が必要であると考えられた。
本論文には利益相反に相当する事項はない。
本調査にご理解,ご協力をいただきました広島県内に就業する歯科衛生士の皆様および一般社団法人広島県歯科衛生士会会員の皆様に深謝いたします。 本研究は,令和4 年度広島県地域医療介護総合確保事業の助成を受けて実施した。なお,本研究の一部は,日本歯科衛生学会第18 回学術大会(2023 年9 月18 日,静岡市)およびInternational Symposium on Dental Hygiene 2024(2024 年7 月11-13 日,Seoul, South Korea)にて発表した。