日本歯科衛生学会雑誌
Online ISSN : 2760-1196
Print ISSN : 1884-5193
ISSN-L : 1884-5193
原著
スパイラル毛歯ブラシの人工プラーク除去効果に関する検討
―ラウンド毛およびテーパード毛との比較からの考察―
石原 優里磯貝 友希新井 麻実古賀 恵畑田 晶子花谷 早希子畠中 能子大岡 知子
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2026 年 21 巻 1 号 p. 2-15

詳細
Abstract

本研究では,歯ブラシの毛の形状,歯ブラシ圧,ストローク幅がプラーク除去率に与える影響を検討した。実験にはラウンド毛歯ブラシ,ラウンド毛とテーパード毛の二段植毛歯ブラシ,そしてスパイラルテーパード毛とスパイラルラウンド毛の二段植毛歯ブラシの計3種類を用い,人工プラークを塗布した顎模型のレジン歯を被検歯とした。各歯ブラシに歯ブラシ圧(100g,150g,200g)とストローク幅(10mm,15mm,20mm)を設定して,スクラビング法に準じた方法でブラッシングを頬側から実施し,除去された人工プラークの面積を画像処理ソフトウェアで定量的に測定し,プラーク除去率を計算した。歯ブラシの毛の形状別にプラーク除去率を比較した結果,テーパード毛と比べて,ラウンド毛とスパイラル毛のプラーク除去率が有意に高かった。ストローク幅および歯ブラシ圧との相関についてみると ,ラウンド毛は歯ブラシ圧と正の相関,テーパード毛はストローク幅と正の相関,スパイラル毛は歯ブラシ圧とストローク幅の両方と正の相関が認められた。スパイラル毛とラウンド毛はテーパード毛よりもプラーク除去率が高い傾向にあり,条件によってはスパイラル毛の除去率が最も高くなった。本研究結果からプラーク除去率が最も高くなったのは,スパイラル毛の歯ブラシを選択して,歯ブラシ圧を強く(200g),ストローク幅を大きく(20mm)した条件であった。

Translated Abstract

The aim of this study was to examine the effects of toothbrush bristle shape, including round, tapered, and spiral, as well as brushing pressure and stroke width on plaque removal rate. Using a jaw model, artificial plaque was applied to resin teeth, then brushing was performed on the buccal side using a scrubbing technique-based method. Three different brushing pressures (100, 150, 200 g) and stroke widths (10, 15, 20 mm) were tested for each toothbrush type, and quantitative measurements of the areas of removed plaque were performed using the ImageJ software package. For each combination of brushing pressure and stroke width, plaque removal rates were measured in triplicate, with the mean values obtained used for comparative analysis among the different conditions.

A comparison of plaque removal rates associated with bristle shape showed that round and spiral bristles achieved significantly greater plaque removal than tapered bristles. Regarding the correlation between brushing variables and performance, the plaque removal rates of round bristles were found to be positively correlated with brushing force and those of tapered bristles with stroke width, while those of spiral bristles showed a positive correlation with both brushing force and stroke width. Spiral bristles and round bristles tended to have higher plaque removal rates than tapered bristles, and, under certain conditions, spiral bristles demonstrated the highest removal rate.

The highest plaque removal rate was observed with spiral bristles used at a high brushing force (200 g) and large stroke width (20 mm).

【緒言】

デンタルプラーク(以下,プラーク)は,歯科の二大疾患である歯周病とう蝕の発生と深く関係しており,これらの疾患の予防にはプラークコントロールが非常に重要である1)。プラークコントロールにおいては,現在のところ歯ブラシによる日々のブラッシングが最も基本的かつ効果的な方法である2)

歯ブラシの作業部分である歯ブラシヘッドは,清掃目的に合わせて設計されている。歯ブラシヘッドには毛が植毛されており,現在市販されている歯ブラシの毛の材質は,人工毛であるナイロン毛と飽和ポリエステル樹脂毛が主流である。歯ブラシ毛の太さと毛先の形状は,清掃効率や細部への到達性に影響を及ぼす。太く硬い歯ブラシ毛はプラークの除去効果が高いが細部への到達性は低くなり,反対に,細く柔らかい歯ブラシ毛は細部への到達性が向上するが,プラーク除去効果は低下するとされている3)。毛の太さと同様に,毛先の形状もプラーク除去効果に影響しており,毛先が細く加工されているほど細部への到達性は高くなるが,清掃効率は低下する3)

従来は,毛の先端のみを削ることで毛先が丸められたラウンド毛が植毛された歯ブラシが一般的であったが,近年では,毛先を細く加工したテーパード毛が植毛された歯ブラシも一般化している4)。ラウンド毛は太く,先端面積が大きいため歯面の清掃効果が高いとされ,テーパード毛は歯間部,歯頸部および歯周ポケットに毛先が届くように加工されている5)。また,テーパード毛とラウンド毛を二段植毛した歯ブラシが市販されており,この二段植毛歯ブラシは,ラウンド毛だけでは届かない歯間部や歯頸部にテーパード毛の毛先が到達することが期待されている6)。しかし,二段植毛歯ブラシとラウンド毛歯ブラシでは,ほぼ同等の清掃効果であったとの報告もある7)。テーパード毛の細部到達性を活かしつつ,プラーク除去効果の低さを改善できれば,歯間部や歯頸部,歯肉縁下も含めた清掃性の高い歯ブラシが得られると考えられる。

さらに近年では,テーパード毛をらせん状にねじった「スパイラルテーパード毛」が歯ブラシに取り入れられている。このらせん形状は,歯面との接触面積を従来の歯ブラシよりも拡大できるため,プラーク除去効果の向上が推測されるが,現時点ではスパイラル毛を採用した手用歯ブラシのプラーク除去効果を検証した文献は見当たらない。

また,プラーク除去効果は歯ブラシの設計だけでなく,歯ブラシの動かし方も影響するとされており,特に歯ブラシの移動距離(ストローク幅)と加重(歯ブラシ圧)は,ブラッシング運動の評価によく用いられている8),9)

本研究では,ラウンド毛歯ブラシ,ラウンド毛とテーパード毛の二段植毛歯ブラシ,そしてスパイラルテーパード毛とスパイラルラウンド毛の二段植毛歯ブラシの計3種類を用いて,毛先の形状の違い,ストローク幅,歯ブラシ圧の違いがもたらすプラーク除去効果を比較および検証した。これにより,プラーク除去効果の高い歯ブラシの設計の可能性を探ることを目的とした。

【材料および方法】

Ⅰ. 供試した材料

1. 試験歯ブラシ(表1
表1

試験歯ブラシ


試験歯ブラシには,毛の形状の異なる歯ブラシを市販している1メーカーのもので,現在よく使用されているラウンド毛歯ブラシ(OTK-01,株式会社タナベ,奈良:以下ラウンド毛),テーパード毛とラウンド毛の2段植毛歯ブラシ(KWM-04,株式会社タナベ,奈良:以下テーパード毛)に加えてスパイラルテーパード毛とスパイラルラウンド毛の2段植毛歯ブラシ(CBF-01,株式会社タナベ,奈良:以下スパイラル毛)の3種類の歯ブラシを用いた。

2. 顎模型および人工プラーク

本研究では,顎模型(500H-1,株式会社ニッシン,京都)のレジン歯を用いた。被験歯はプラーク測定に必要な大きさとブラッシング幅の測定に必要な幅がある3歯(下顎左側第二小臼歯,下顎左側第一大臼歯,下顎左側第二大臼歯)を用いた。顎模型から外した各歯の被験歯面に人工プラーク(株式会社ニッシン,京都)を,滝口ら10)の方法に準じて,専用の筆を用いて塗り残しができないように3往復塗布して乾燥させた。被験歯3本は元の顎模型にセットして実験に供した。

3. 歯ブラシ圧およびストローク幅の調整

一般健常人の歯磨き圧測定結果の平均値4)9)11)を参考に一般的なブラッシングを再現した設定として100g,150g,200gの歯磨き圧とした。ストローク幅は,スクラビング法では近遠心方向に数ミリ程度で動かすとあること12),また実際のブラッシング運動解析から歯ブラシの近遠心方向の移動距離を測定した結果8)9)13)を参考に,一般的なブラッシングを再現した設定としてストローク幅を10mm,15mm,20mmとした。歯ブラシ圧は,歯みがき力測定器(有限会社三栄エムイー,神奈川)を用いて,約100g,約150g,約200g に調整した。歯みがき力測定器に歯ブラシを装着して,それぞれ100g±10g,150g±10g,200g±10gの圧で歯ブラシを当てた時にメロディが鳴るように設定して,ストローク中はメロディが鳴ることを確認しながらブラッシングを行った。

ストローク幅は,あらかじめ計測しておいたマスキングテープ(10mm,15mm,20mm)を被験歯の下部に貼付し,そのマスキングテープの幅と同じ幅でかつ,できるだけ平行に歯ブラシを動かすことで調整した。

Ⅱ. 実験方法

1. ブラッシング条件

ブラッシング方法は,スクラビング法に準じた方法で,ストローク幅を変化させた条件下での比較をした。歯みがき力測定器に歯ブラシを装着し,歯ブラシを被験歯の頰側方向から直角に当て,一定の歯ブラシ圧およびストローク幅で1往復し,これを5往復繰り返した。ストローク回数は高木ら14)の方法に準じた。同一条件でのブラッシングは各3回行い,ブラッシング後にプラーク除去率を算出した。また,使用する歯ブラシや清掃部位の順番は実験計画者が無作為に決定し,実験結果への影響をなるべく排除できるように配慮した。なお,すべての実験は同一実験者が実施した。

2. プラーク除去率の測定

プラーク除去率の測定は,高木らの方法14)に準じた。まず,人工プラークを塗布したブラッシング前の被験歯を,プラーク塗布部に触れないように模型から撤去し,事前に歯科用シリコン印象材(エグザファインパテタイプ,株式会社ジーシー,東京)で作製した固定台に装着し,カメラ及び被験歯を定位置に置いて被験部位規格写真撮影(距離12.5cm)を行った(図1)。撮影した画像をコンピューターソフトImageJに読み込み,対象歯の歯冠部の人工プラーク付着部分を「Threshold」機能により二値化し,Hue:0-255,Saturation:95-255,Brightness:0-255の条件で処理を行い,面積を自動計測した15)。この面積をブラッシング前の面積とした(図2A)。ブラッシング後も,プラーク残存箇所に触れないように被験歯を模型から撤去して固定台に装着し,被験部位規格写真撮影(距離12.5cm)を行った。撮影した画像をImageJに読み込み,ブラッシング前と同じ条件で,歯冠部のプラーク付着部位の面積を計測した。この面積をブラッシング後の面積とした(図2B)。

図1

被験部位規格写真撮影の様子

図2

ブラッシング前の被験歯(A)とブラッシング後の被験歯(B)

各歯の除去率は,「プラーク除去率(%)=(ブラッシング前の面積-ブラッシング後の面積)/ブラッシング前の面積×100」で求めた。

3歯全体の除去率は,「3歯全体のプラーク除去率(%)=(ブラッシング前の3歯の面積(合計値)-ブラッシング後の3歯の面積(合計値))/ブラッシング前の3歯の面積(合計値)×100」で求めた。

3. 統計解析

歯ブラシの毛の形状別のプラーク除去率の差の検定には,正規性が認められた場合に一元配置分散分析を行い,さらに多重比較検定(等分散の場合はTukey法,不当分散の場合はGames-Howell法)を行った。正規性が認められなかった群間の検定にはクラスカル= ウォリス検定を実施してから多重比較検定(Dunn-Bonferroniの方法)を行った。歯ブラシの毛の形状別のプラーク除去率と歯ブラシ圧,ストローク幅との相関にはSpearmanの順位相関係数を用いた。いずれも統計解析ソフトIBM SPSS Statistics ver.26(IBM 東京)を使用し,統計学的有意差を危険率5%未満とした。

【結果】

Ⅰ. 歯ブラシ圧別の歯ブラシの歯面への到達度

各歯ブラシの歯ブラシ圧別の歯面への毛先の当たり方を写真に示す(図3)。ラウンド毛は200gの圧をかけても毛先部分が歯間部まで到達することはなく,歯面のみに圧がかかっていた。一方,テーパード毛及びスパイラル毛は100gの歯ブラシ圧でも毛先部分が歯間部まで到達しており,150g,200gと圧が大きくなるにつれて歯間部に到達する幅も毛先量も多くなった。

図3

歯ブラシ圧による歯ブラシの歯面への到達度

Ⅱ. 歯ブラシの毛の形状の違いによるプラーク除去効果の比較

1. 下顎左側第二小臼歯でのプラーク除去効果

下顎左側第二小臼歯における歯ブラシの形状,ストローク幅(10mm,15mm,20mm),歯ブラシ圧(100g,150g,200g)の違いによるプラーク除去率を表2,図4に示す。ストローク幅10mmの場合の平均プラーク除去率は,テーパード毛46.2±2.0~54.1±0.8%,ラウンド毛76.0±7.0~82.6±6.4%,スパイラル毛66.8±5.4~89.6±3.3%であり,ラウンド毛およびスパイラル毛はテーパード毛よりも高いプラーク除去率を示した。ラウンド毛のプラーク除去率は,100g,150g,200gの各ブラッシング圧において,テーパード毛よりも有意に高値であった(それぞれp<0.01,p<0.01,p<0.05,図4)。また,スパイラル毛のプラーク除去率も,すべてのブラッシング圧においてテーパード毛より有意に高値であった(いずれもp<0.01,図4)。

表2

下顎左側第二小臼歯における歯ブラシの毛の形状、歯ブラシ圧およびストローク幅の違いによるプラーク除去率(n=3)


図4

下顎左側第二小臼歯における歯ブラシの毛の形状およびストローク幅の違いによるプラーク除去率(n=3):一元配置分散分析,多重比較(Tukey*p<0.05,**p<0.01),多重比較(Games-Howell*bp<0.05,**bp<0.01)

ストローク幅15mmの場合の平均プラーク除去率は,ストローク幅10mmの場合と同様の傾向を示し,テーパード毛よりもラウンド毛およびスパイラル毛の方が高い除去率を示した。ラウンド毛のプラーク除去率は,150gおよび200gの歯ブラシ圧において,テーパード毛よりも有意に高値であった(いずれもp<0.01,図4)。また,スパイラル毛のプラーク除去率は,100g,150g,200gのすべての歯ブラシ圧において,テーパード毛よりも有意に高値を示した(それぞれ p<0.05,p<0.01,p<0.01,図4)。さらに,歯ブラシ圧200gでは,ラウンド毛よりもスパイラル毛の方が有意に高い除去率を示した(p<0.01,図4)。

ストローク幅20mmの場合の平均プラーク除去率もストローク幅10mmおよび15mmの場合と同様の傾向を示しテーパード毛よりもラウンド毛およびスパイラル毛の方が高い除去率を示した。特に,歯ブラシ圧100gでは,ラウンド毛のプラーク除去率はテーパード毛よりも有意に高値であった(p<0.05,図4)。

2. 下顎左側第一大臼歯でのプラーク除去効果

下顎左側第一大臼歯における歯ブラシの形状,ストローク幅(10mm,15mm,20mm),歯ブラシ圧(100g,150g,200g)の違いによるプラーク除去率を表3,図5に示す。

表3

下顎左側第一大臼歯における歯ブラシの毛の形状、歯ブラシ圧およびストローク幅の違いによるプラーク除去率(n=3)


図5

下顎左側第一大臼歯における歯ブラシの毛の形状およびストローク幅の違いによるプラーク除去率(n=3): 一元配置分散分析,多重比較(Tukey*p< 0.05,**p<0.01)

ストローク幅10mmの場合の平均プラーク除去率は,テーパード毛72.0±4.9~80.6±7.2%,ラウンド毛87.1±2.3~90.8±1.5%,スパイラル毛91.3±0.5~91.8±1.2%であり,テーパード毛よりもラウンド毛およびスパイラル毛の方が高い除去率を示した。ラウンド毛およびスパイラル毛のプラーク除去率は,歯ブラシ圧100gおよび200gにおいて,テーパード毛の除去率よりも有意に高い値を示した(いずれもp<0.01,図5)。

ストローク幅15mmの場合の平均プラーク除去率はストローク幅10mmの場合と同様の傾向を示し,テーパード毛よりもラウンド毛およびスパイラル毛の方が高い除去率を示した。ラウンド毛は,100gおよび200gの歯ブラシ圧において,テーパード毛よりも有意に高いプラーク除去率を示した(それぞれp<0.05,p<0.01,図5)。また,スパイラル毛も,100gおよび200gの歯ブラシ圧において,テーパード毛よりも有意に高いプラーク除去率を示した(いずれもp<0.01,図5)。

ストローク幅20mmの場合の平均プラーク除去率は,テーパード毛81.1±1.9~84.4± 5.6%,ラウンド毛76.9±3.8~86.2±4.5%,スパイラル毛91.3±3.1~94.5±3.0%であり,歯ブラシ圧100gおよび200gにおいて,スパイラル毛,テーパード毛,ラウンド毛の順にプラーク除去率が高かった。スパイラル毛のプラーク除去率は,100gおよび200gの歯ブラシ圧において,ラウンド毛と比較して有意な高値を示した(それぞれp<0.05,p<0.01,図5)。また,スパイラル毛は,歯ブラシ圧100gおよび150gにおいて,テーパード毛よりも有意に高いプラーク除去率を示した(それぞれp<0.05,p<0.01,図5)。

3. 下顎左側第二大臼歯でのプラーク除去効果

下顎左側第二大臼歯における歯ブラシの形状,ストローク幅(10mm,15mm,20mm),歯ブラシ圧(100g,150g,200g)の違いによるプラーク除去率を表4,図6に示す。

表4

下顎左側第二大臼歯における歯ブラシの毛の形状、歯ブラシ圧およびストローク幅の違いによるプラーク除去率(n=3)


図6

下顎左側第二大臼歯における歯ブラシの毛の形状およびストローク幅の違いによるプラーク除去率(n=3): 一元配置分散分析, 多重比較(Tukey 又はGames-Howell*p<0.05,**p<0.01),クラスカル=ウォリス検定,多重比較(Dunn-Bonferroni,p<0.05)

ストローク幅10mmの場合の平均プラーク除去率は,テーパード毛63.7±7.5~76.1±2.2%,ラウンド毛79.7±3.3~82.7±2.0%,スパイラル毛79.6±1.9~87.9±2.0%であり,ラウンド毛およびスパイラル毛がテーパード毛よりも高い除去率を示した。特に歯ブラシ圧100gにおいて,ラウンド毛およびスパイラル毛は,テーパード毛よりも有意に高いプラーク除去率を示した(それぞれp<0.05,p<0.01,図6)。歯ブラシ圧 200gでは,スパイラル毛のプラーク除去率がテーパード毛よりも有意に高かった(p<0.05,図6)。

ストローク幅15mmの場合の平均プラーク除去率はストローク幅10mmと同様の傾向を示し,ラウンド毛およびスパイラル毛がテーパード毛よりも高い除去率を示した。歯ブラシ圧200gにおいて,ラウンド毛およびスパイラル毛は,テーパード毛よりも有意に高いプラーク除去率を示した(それぞれp<0.05,p<0.01,図6)。

ストローク幅20mmの場合の平均プラーク除去率は,テーパード毛76.2±6.5~89.2±7.3%,ラウンド毛 74.4±5.0~91.3±3.3%,スパイラル毛87.0±0.6~92.2±0.6%であり,いずれの歯ブラシ圧およびストローク幅においても,歯ブラシの毛の形状によるプラーク除去率の有意差は認められなかった(図6)。

4. 3歯全体のプラーク除去効果

3歯全体のプラーク除去率における歯ブラシの形状,ストローク幅(10mm,15mm,20mm),歯ブラシ圧(100g,150g,200g)の違いによるプラーク除去率を表5,図7に示す。

表5

3歯全体における歯ブラシの毛の形状、歯ブラシ圧およびストローク幅の違いによるプラーク除去率(n=3)


図7

3歯(下顎左側第二小臼歯、第一大臼歯、第二大臼歯)全体における歯ブラシの毛の形状およびストローク幅の違いによるプラーク除去率(n=3):一元配置分散分析, 多重比較(Tukey*p<0.05,**p<0.01),一元配置分散分析,多重比較(Games-Howell*bp<0.05,**bp<0.01)

ストローク幅10mmの場合の平均プラーク除去率は,テーパード毛64.8 ±1.2~72.2±2.6%,ラウンド毛83.3±2.3~84.4±1.5%,スパイラル毛83.0±0.6~89.7±1.1%であり,テーパード毛よりもラウンド毛およびスパイラル毛の方が高い除去率を示した。ラウンド毛は,100g,150g,200gの各歯ブラシ圧において,テーパード毛よりも有意に高いプラーク除去率を示した(それぞれp<0.01,p<0.05,p<0.01,図7)。また,スパイラル毛も,100g,150g,200gの各歯ブラシ圧において,テーパード毛よりも有意にプラーク除去率が高かった(それぞれp<0.01,p<0.05,p<0.01,図7)。さらに歯ブラシ圧200gでは,スパイラル毛のプラーク除去率がラウンド毛よりも有意に高かった(p<0.01,図7)。

ストローク幅15mmの場合の平均プラーク除去率は,ストローク幅10mmの場合と同様の傾向を示し,テーパード毛よりもラウンド毛およびスパイラル毛の方が高い除去率を示した。ラウンド毛とテーパード毛との比較では,100g,150g,200gの各歯ブラシ圧において,ラウンド毛のプラーク除去率が有意に高かった(ぞれぞれ p<0.05,p<0.05,p<0.01,図7)。また,スパイラル毛とテーパード毛との比較においても,すべての歯ブラシ圧でスパイラル毛が有意に高値を示した(いずれもp<0.01,図7)。さらに,歯ブラシ圧100gと200gではスパイラル毛のプラーク除去率がラウンド毛よりも有意に高い値を示した(いずれもp<0.05,図7)。

ストローク幅20mm の場合の平均プラーク除去率は,テーパード毛74.6±5.8~82.4±6.0%,ラウンド毛77.1±2.7~84.6±1.6%,スパイラル毛87.2±0.9~91.8±1.0%であり,スパイラル毛のプラーク除去率は,テーパード毛およびラウンド毛よりも高く,歯ブラシ圧100gおよび200gではスパイラル毛のプラーク除去率はラウンド毛よりも有意に高く(いずれもp<0.05,図7),歯ブラシ圧150gではスパイラル毛のプラーク除去率がテーパード毛よりも有意に高い値を示した(p<0.01,図7)。

Ⅲ. 歯ブラシの毛の形状別のプラークの除去率と歯ブラシ圧,ストローク幅との相関関係

ラウンド毛歯ブラシのプラーク除去率と歯ブラシ圧,ストローク幅の相関係数を表6に示す。歯ブラシ圧は下顎左側第二小臼歯,下顎左側第二大臼歯および3歯全体のプラーク除去率の3項目と有意な正の相関がみられ,Spearmanの相関係数はそれぞれr=0.408,0.600,0.530であった。ストローク幅は,下顎左側第一大臼歯のプラーク除去率の1項目と有意な負の相関(r=-0.577)がみられた。ラウンド毛のプラーク除去率は,歯ブラシ圧との正の相関が認められ,ストローク幅とは負の相関が見られた。

表6

ラウンド毛歯ブラシのプラーク除去率と歯ブラシ圧、ストローク幅の相関


テーパード毛歯ブラシのプラーク除去率と歯ブラシ圧,ストローク幅の相関係数を表7に示す。歯ブラシ圧は下顎左側第二小臼歯のプラーク除去率の1項目と有意な正の相関がみられSpearman相関係数はr=0.431であった。ストローク幅は下顎左側第二小臼歯,下顎左側第一大臼歯,下顎左側第二大臼歯,3歯全体のプラーク除去率の4項目と有意な正の相関がみられ,Spearman相関係数はそれぞれr=0.652,0.466,0.635,0.780であった。テーパード毛のプラーク除去率は歯ブラシ圧よりもストローク幅との正の相関が強い傾向が見られた。

表7

テーパード毛歯ブラシのプラーク除去率と歯ブラシ圧、ストローク幅の相関


スパイラル毛歯ブラシのプラーク除去率と歯ブラシ圧,ストローク幅の相関係数を表8に示す。歯ブラシ圧は下顎左側第二小臼歯と下顎左側第二大臼歯及び3歯全体のプラーク除去率の3項目と有意な正の相関がみられ,Spearmanの相関係数はそれぞれr=0.652,0.408,0.641であった。ストローク幅は下顎左側第二大臼歯及び3歯全体のプラーク除去率の2項目と有意な正の相関がみられ,Spearman相関係数はr=0.498,0.501であった。スパイラル毛のプラーク除去率は,歯ブラシ圧とストローク幅の両方と正の相関が認められた。

表8

スパイラル毛歯ブラシのプラーク除去率と歯ブラシ圧、ストローク幅の相関


【考察】

本研究では,歯ブラシの毛の形状(ラウンド毛,テーパード毛,スパイラル毛),歯ブラシ圧(100g,150g,200g)とストローク幅(10mm,15mm,20mm)が人工プラーク除去率に与える影響を検討した。

歯ブラシ圧による毛先の歯面への到達度について見ると,ラウンド毛は200gの圧を加えても歯間部への到達が困難であったのに対し,テーパード毛およびスパイラル毛は100gの圧でも歯間部に到達しており,圧が増すにつれて毛先の到達範囲と毛量が増加していた。これは,毛の細さや形状が歯間部への到達性に影響することを示しており,歯間部の清掃にはラウンド毛よりもテーパード毛やスパイラル毛が有効である可能性が示唆された。

各歯におけるプラーク除去率をみると,ラウンド毛およびスパイラル毛がテーパード毛よりも高い除去率を示す傾向にあり,その傾向はストローク幅20mmの条件を除くと一貫して認められた。ストローク幅20mmでは,スパイラル毛の除去率が最も高くなる傾向にあった。

また,テーパード毛とスパイラル毛はどちらもストローク幅が大きくなるにつれてプラーク除去率が向上する傾向が見られ,さらにスパイラル毛は,歯ブラシ圧が強くなると高い除去率を示していた。このことはテーパード毛とスパイラル毛は同程度,歯面に接触するがスパイラル毛の方がテーパード毛よりもプラーク除去効率が良いことを示しており,スパイラル毛の細さとらせん形状の毛の側面にできた凹凸が,歯間部への到達性とプラーク除去効果に影響していると考えられた。3歯全体での除去率においても,ストローク幅が10mmと小さい場合はラウンド毛およびスパイラル毛が同程度の除去率で,テーパード毛よりも高い結果を示したが,ストローク幅が大きくなるにつれてスパイラル毛が最も高いプラーク除去率を示す傾向が見られた。

歯ブラシ圧およびストローク幅とプラーク除去率との相関関係をみると,スパイラル毛は歯ブラシ圧とストローク幅の両方で正の相関が認められた。スパイラル毛は大きく動かすブラッシングにおいても細い毛先が細部に到達すると共にらせん状の毛の形状によって効率的にプラークを除去したのではないかと考えられた。ラウンド毛は歯ブラシ圧との正の相関が認められ,下顎左側第一大臼歯の除去率のみではあるがストローク幅との負の相関が示された。従って,ラウンド毛は歯ブラシ圧を増すことでプラーク除去効果が高まるが,大きく動かすと細部に毛先が到達しにくくなる恐れが示された。これは,歯ブラシの太く硬い毛束はブロッキング効果を起こし歯間に毛先が届きにくくなるという指摘16)があるように,ラウンド毛の太さや先丸の形状が原因である可能性が高い。テーパード毛は,ストローク幅との正の相関が他の毛よりも強く,特に3歯全体での除去率とストローク幅との相関係数が高かった。これは,毛先が細く柔軟であるため,大きく動かすブラッシングにおいても細部に到達し歯面に接触しやすいことを示しているが,除去率は他の毛の形状に比べて低かった。地主ら17)はアクリル平面板で歯ブラシによる清掃効果を調べ,スーパーテーパード毛や柔らかい毛の歯ブラシは,ラウンド毛や硬い毛の歯ブラシよりも清掃効果が低いことを示し,その理由として細い毛先はブラッシング時にたわみが生じて清掃面に力が伝わりにくくなると報告している。従って,テーパード毛の到達性とプラーク除去率の結果の原因はテーパード毛の細さや先細の形状にある可能性が高い。

以上の結果から,歯ブラシによるプラーク除去効果を高めるためには,歯ブラシの毛の形状選択が重要であると言え,テーパード毛に比べて,ラウンド毛とスパイラル毛はプラーク除去効果に優れている可能性が示唆された。また,歯ブラシの毛の形状に応じて歯ブラシ圧とストローク幅を調節することは,プラーク除去効果に影響することも示唆された。従って,最もプラーク除去率が高かった組み合わせは,スパイラル毛の歯ブラシを用いて,ストローク幅を大きくし(20mm),ブラッシング圧を増加させた(200g)場合であった。

本研究の限界について述べる。本研究では頬側面からスクラビング法に準じた方法で磨いた際のプラーク除去率を用いて歯ブラシの毛の形状の違いを検討した。そのため,歯ブラシ角度の違いや歯の部位別の違いについては検討していない。小野ら18)は歯ブラシ角度によって清掃性が異なることを示し,藤川ら19)は,歯間部・歯肉辺縁部においては高度テーパード毛歯ブラシの方がラウンド毛歯ブラシよりも,毛先が届きやすくプラーク除去効果も有意に高いことを報告している。今後は,咬合面や歯間部,歯頸部,舌側といった部位における特徴や歯ブラシ角度などについても検討する必要があるだろう。特に,歯間部・歯頸部のみのプラーク除去率を詳細に測定すれば,歯ブラシの毛の形状による除去率の特徴がより顕著に出ると推測できる。

また,本研究では,歯ブラシ圧が高くなるほどプラーク除去率が向上する傾向が認められた。しかし,過剰な刷掃力が歯肉退縮を引き起こすことは広く知られている。一方で,どの程度の刷掃力が「過剰」とみなされるかについては,明確な基準を示す結論には至っていないと報告されている20)。岡本ら11)の報告の成人健常者の平均歯みがき圧が200.2g,富摩ら13)による報告では歯科衛生士で121.1g,一般成人で137.1gとされている。これらの値を踏まえると,200gの歯ブラシ圧は臨床現場で推奨される歯ブラシ圧としては上限に近い可能性がある。したがって,本研究結果を歯科保健指導に応用する際にはプラーク除去効果と歯周組織への影響の両面を考慮し,適切な圧の範囲を示すことが重要である。今後は,ヒトを対象とした臨床実験を含め,さらなる検討をする必要がある。

本研究の成果として,プラーク除去効果の高い歯ブラシの設計の可能性を探り,個別の患者に適した歯ブラシを選択するための判断材料を提供できると考えられる。これにより,より効果的なブラッシング指導の実現につながることが期待される。

【結論】

本研究では,歯ブラシの毛の形状(ラウンド毛,テーパード毛,スパイラル毛),歯ブラシ圧(100g,150g,200g),ストローク幅(10mm,15mm,20mm)がプラーク除去率に与える影響を顎模型上で検討した。頬側からスクラビング法に準じた方法でブラッシングした場合のプラーク除去率を比較検討した結果,ラウンド毛およびスパイラル毛の歯ブラシのプラーク除去率は,テーパード毛に比べて有意に高かった。また,プラーク除去率は歯ブラシ圧やストローク幅とも有意に相関があり,スパイラル毛の歯ブラシを用い,ストローク幅を大きくし(20mm),ブラッシング圧を増加させた(200g)場合に,最も高いプラーク除去効果を示した。

本研究に使用しました歯ブラシは,(株)タナベより無償提供を受けました。

本研究に関して利益相反に相当する事項はありません。

References
 
© 日本歯科衛生学会
feedback
Top