本研究の目的は,長時間にわたる歯の移動を観測するため,歯の移動に伴う力系の変化を考慮したシミュレーションを汎用の有限要素法ソフトウェアを用いて構築し,矯正装置の性能を評価することである.今回は,このシミュレーションの有効性を確認するため,TMAワイヤーによる圧下スプリングの性能とその有効性を評価した.その結果,圧下スプリングの形状に係わらずどのスプリング形状を用いても,歯をほとんど傾斜させずに圧下・挺出できることがわかった.しかし,1回の活性化で小臼歯を最も圧下することのできるスプリングは,大きなレクタンギュラーループに22°の面外曲げを付与した装置であることが判明した.