時代が昭和から平成に変わる頃,歯科における器材の研究テーマはチタン鋳造と可視光線重合型コンポジットレジンに重点が置かれるようになった.金属材料は金属イオンの溶出や審美性に欠ける問題があったものの,靭性が高く耐久性に優れていることから,噛むために欠かせない臼歯の補綴修復には第一選択肢となった.歯科用合金は鋳造で製作するしかなかったが,チタンは従来の歯科用合金と比べて融点が高く(約1670℃),しかも酸化することにより基礎的な物性が低下するため,適用が非常に困難であった.そのため,この分野では,鋳型材料や鋳造方法など,鋳造プロセスの見直しに関する研究が数多く行われてきた.本稿ではチタンの歯科鋳造の変遷を振り返ることにする.
本研究の目的は,外面が硬く内面が軟らかい2層構造アライナーが歯の移動に与える効果を調べることである.上顎左右の中切歯を遠心へ歯体移動させる場合を有限要素法によってシミュレーションした.1層アライナーでは厚さを0.5 mmあるいは0.3 mmとし,ヤング率を1000 MPaとした.2層アライナーでは外層の厚さとヤング率を0.25 mmと1000 MPa,内層の厚さとヤング率を0.25 mmと100 MPaとした.すべてのアライナーにおいて,アライナー装着後,歯が傾斜して歯冠が目標位置まで移動した.その後,時間の経過に伴って歯が整直して歯体移動に近づいた.2層アライナーでは,0.5 mmの1層アライナーより剛性が低下したことによって歯の整直が遅くなった.1層アライナーの厚さを0.3 mmにすると,2層アライナーと剛性が同じになり,歯の移動状態も同じになった.今回の計算モデルでは,アライナーを2層にしたことの効果はなかった.
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