日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
臨床報告
経鼻胃経管栄養高齢者の臨床的研究
長谷川 嘉哉山本 俊信稲垣 俊明鈴木 幹三
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1997 年 1 巻 1 号 p. 69-73

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抄録

経鼻胃経管栄養開始となった102例(男29例;女73例)を対象として経鼻胃経管栄養の開始から死亡までの臨床的検討を行った.さらに死亡した経鼻胃経管栄養高齢者95例を対象として平均死亡年齢,経鼻胃経管栄養開始後の平均余命,死因を検討した. 経鼻胃経管栄養開始に最も関与した疾患は脳血管障害とアルツハイマー型老年痴呆であった.脳血管障害では病変の大小に関わらず,主に左半球側が直接原因となった.脳血管障害患者はアルツハイマー型老年痴呆患者に比し,経鼻胃経管栄養開始以前から死亡に至るまで呼吸器感染症の影響が強く,アルツハイマー型老年痴呆は食欲異常が経鼻胃経管栄養開始の主たる原因となっていた. 経鼻胃経管栄養開始時の平均年齢は84.0±8.7歳(平均±標準偏差),最高は102歳,最低60歳であった.疾患別の経鼻胃経管栄養開始時の平均年齢は脳血管障害が81.3±8.0歳,アルツハイマー型老年痴呆は89.1±7.9歳,パーキンソン病86.2±5.8歳であった.経鼻胃経管栄養開始後の平均余命は701.9±60.7日(平均±標準誤差).疾患別の平均余命は脳血管障害群780.5±99.6日,アルツハイマー型老年痴呆620.8±96.3日,パーキンソン病851.8±288.5日であった。アルツハイマー型老年痴呆患者は脳血管障害患者に比し約8歳高齢で経鼻胃経管栄養が開始されていたが,死亡までの期間に差はなかった. 高齢なアルツハイマー型老年痴呆への経鼻胃経管栄養導入については再考の余地があったが,食事に対する意欲がある嚥下障害が強い患者に対しての積極的な嚥下リハビリが望まれた.

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© 1997 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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