日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
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最新号
日本嚥下リハビリテーション学会雑誌
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原著
  • ―退院時の経口摂取の可否に関連する要因の検討―
    小山内 奈津美, 森永 伊昭, 花田 和可子, 成田 秀美
    2025 年29 巻2 号 p. 41-50
    発行日: 2025/08/31
    公開日: 2026/01/14
    ジャーナル フリー

     【目的】脳血管障害発症後に嚥下障害が残存し,当院にて経皮内視鏡的胃瘻造設術(percutaneous endoscopic gastrostomy:以下,PEG)を施行した患者(以下,PEG 患者)に対する短期集中集学的嚥下リハビリテーションの効果,退院時の経口摂取の可否に関連する要因について検討した.対象は2020 年4 月1 日から2023 年3 月31 日までの期間に,術前後の短期集中集学的嚥下リハビリテーションを実施したPEG 患者71 例である.

    【方法】嚥下リハビリテーションでは,入院当日に嚥下内視鏡検査(videoendoscopic evaluation of swallowing:以下,VE)を実施し,検査結果に基づき嚥下能力に応じた直接嚥下訓練と間接嚥下訓練を,医師,看護師,言語聴覚士,理学療法士,作業療法士,歯科衛生士,管理栄養士等の多職種と連携し術前後に実施した.PEG 患者の入院時と退院時の摂食状況レベル(Food Intake Level Scale:以下FILS)を比較検討し,また,退院時転帰をFILS 4 以上の経口摂取可とFILS 3 以下の経口摂取不可の2 群に分け比較検討した.

    【結果】入院時に比し退院時のFILS は有意に高かった(Wilcoxon の符号付順位検定,p<0.001).単変量解析では退院時経口摂取可と入院時のFILS 高値,兵頭スコア低値,入院時の機能的自立度評価法(Functional Independence Measure:以下FIM)高値,入院時運動FIM 高値,入院時認知FIM 高値の5 変数との間には有意な正の関連があり,多変量解析では兵頭スコア低値(調整オッズ比0.62,95% 信頼区間0.47–0.82,p<0.001),入院時FIM 高値(調整オッズ比1.08,95% 信頼区間1.02–1.03,p<0.001)は有意な経口摂取予測因子であった.

    【結論】PEG患者においては,VE等による嚥下機能評価と術前後の集学的嚥下リハビリテーションの実施が望ましい.

  • 天白 陽介, 大森 政美, 渡邉 哲, 小黒 秀樹, 辰巳 寛, 長神 康雄
    2025 年29 巻2 号 p. 51-60
    発行日: 2025/08/31
    公開日: 2026/01/14
    ジャーナル フリー

     【目的】脳卒中急性期では高率に摂食嚥下機能障害を呈することが知られており,早期から退院時の摂食嚥下機能を予測し,目標に向けたリハビリテーションや,早期からの代替栄養を検討することは重要である.しかし,簡便かつ,摂食嚥下機能障害に精通しない医療者でも容易に実施可能な評価法は少ない.そのため,我々は高齢者肺炎の摂食嚥下機能法として開発され,医療従事者であれば誰でも簡便に定量化した評価が可能であるAssessment of Swallowing Ability for Pneumonia(ASAP)を用い,急性期脳卒中患者に対する摂食嚥下機能評価法としての有用性を検討した.

    【方法】対象は2023 年1 月から12 月までの間,名古屋掖済会病院へ脳卒中で入院し,言語聴覚士による評価が可能であった211 名(中央値:75 歳 男/ 女:130/81)とした.評価項目は患者一般情報,脳卒中に関する諸情報,栄養評価,ASAP を含む摂食嚥下機能評価,認知機能検査,ADL 評価,体格評価とした.統計学的解析は退院時Functional Oral Intake Scale(FOIS)を目的変数,先行研究において交絡因子と予測された項目を説明変数とした順序ロジスティック回帰分析を用いて検討した.関連する因子に対してROC 曲線を用い,退院時嚥下食経口摂取可否(FOIS:4 以上),普通食経口摂取可否(FOIS:6 以上),それぞれを予測するカットオフ値,曲線下面積,感度,特異度を算出した.

    【結果】順序ロジスティック回帰分析の結果,年齢(オッズ比:0.951,95% 信頼区間:0.917–0.984,p=0.005),ASAP(オッズ比:1.110,95% 信頼区間:1.080–1.150,p<0.001),Barthel Index(オッズ比:1.010,95% 信頼区間:1.000–1.030,p=0.021)が,関連する因子として抽出された.退院時の嚥下食経口摂取・普通食経口摂取とASAP におけるROC 曲線はそれぞれ,カットオフ値:63,曲線下面積:0.968,感度:92%,特異度:90% とカットオフ値:86,曲線下面積:0.948,感度:91%,特異度:92% であった.

    【結論】ASAP は急性期脳卒中患者の摂食嚥下機能を簡便に評価しうる可能性が示唆された.

  • 重政 光彰, 服部 宜裕, 竹岡 雅美, 辻村 萌, 栢下 淳
    2025 年29 巻2 号 p. 61-71
    発行日: 2025/08/31
    公開日: 2026/01/14
    ジャーナル フリー

     【目的】誤嚥性肺炎の発症及び重症化の危険因子として,低栄養と摂食嚥下障害が報告されている.誤嚥性肺炎患者における摂食嚥下機能を摂食状況のレベル(food intake level scale: FILS)で3 群に分類し,エネルギー摂取量と転帰との関連を明らかにすること.また,Global Leadership Initiative on Malnutrition(GLIM)基準を含めた栄養関連項目と生存退院との関わりを明らかにすることである.

    【対象・方法】65 歳以上の誤嚥性肺炎入院患者115 例(男性76 例,女性39 例)とした.FILS ごとに3 群(経口摂取なし群,代替栄養併用群,経口摂取のみ群)に分類し,エネルギー摂取量,GLIM 基準との関連を調査し,生存退院に関する影響を評価した.

    【結果】FILS ごとの分類では,経口摂取なし群32 例(27.8%),代替栄養併用群23 例(20%),経口摂取のみ群60 例(52.2%)であった.体重1 kg あたりの摂取エネルギー量(kcal/kg)は,経口摂取なし群14(6.9–21.3)kcal/kg,代替栄養併用群13.3(8.6–19.3)kcal/kg,経口摂取のみ群20.6(15.6–25.9)kcal/kg で,経口摂取のみ群は,経口摂取なし群および代替栄養併用群と比較して有意に高かった(p<0.01).GLIM基準の内訳として,重度低栄養60 例(52%),中等度低栄養34 例(30%),低栄養なし21 例(18%)であった.FILS で3 つに分類した場合の栄養状態は,経口摂取なし群は,重度低栄養24 例(75%),中等度低栄養5 例(16%),低栄養なし3 例(9%)であった.経口摂取のみ群は,重度低栄養25 例(42%),中等度低栄養23 例(38%),低栄養なし12 例(20%)で,FILS とGLIM基準において有意な関連がみられた(p<0.05).生存退院は,経口摂取なし群19例(59.4%),代替栄養併用群18例(78.3%),経口摂取のみ群53例(88.3%)で,経口摂取のみ群は,経口摂取なし群と比較して,生存退院が有意に多かった(p<0.01).生存退院に対する多変量解析を行った結果,体重1 kg あたりの摂取エネルギー量(OR: 1.09,95%CI: 1.01–1.17,p<0.01)において有意な関連がみられた.

    【結論】誤嚥性肺炎患者において,摂取エネルギー量と生存退院に有意な関連がみられた.経口摂取のみ群では,摂取エネルギー量が有意に高値な結果となったことから,FILS や摂取エネルギー量を評価する重要性が示唆された.

短報
  • 山口 知子, 石﨑 晶子, 金田 智美, 渡邊 賢礼, 弘中 祥司
    2025 年29 巻2 号 p. 72-79
    発行日: 2025/08/31
    公開日: 2026/01/14
    ジャーナル フリー

     【目的】本研究は,摂食嚥下障害児を養育する保護者の感じる育児負担感に影響する因子を明らかにすることを目的とした.

    【対象と方法】オンラインの患者の家族会に対し,摂食嚥下障害と育児負担感に関するアンケートへの協力を求めた.こどもが19 歳未満の35 名の結果について検討した.

    【結果】アンケートの回答者は全員母親で,35 名中31 名(88.6%)がこどもに食事の課題があると回答した.食事の課題は,「調理」「食事介助」「外食」の3 つのカテゴリーに分けられ,課題の内容は非常に多岐に渡った.育児負担感は活動制限とこどもへの負の感情に分類して検討した.摂食嚥下障害児の保護者が感じる育児負担感は,こどもへの負の感情よりも活動制限が有意に強かった(p<0.01).活動制限は月齢と正の相関(r=0.40, p=0.02)を,ソーシャルサポートと負の相関(r=-0.40, p=0.02)を示した.こどもへの負の感情は経済状況と負の相関(r=-0.38, p=0.03)を示した.

    【結論】摂食嚥下障害児を養育する保護者は,様々な食事の課題を抱えていた.育児負担感の軽減のため,ソーシャルサポートの充実など社会的支援の必要性が示唆された.

  • 寺島 涼子, 河南 典子, 石間 恵美, 若佐 麻依子, 飯田 良平, 新野 直明
    2025 年29 巻2 号 p. 80-90
    発行日: 2025/08/31
    公開日: 2026/01/14
    ジャーナル フリー

     【目的】オーラルフレイル(Oral Frailty)は口腔機能のささいな衰えを示し,高齢者のフレイルやサルコペニア,要介護状態の予測因子となりうることが明らかになっている.オーラルフレイルは,適切な時期に予防的介入を受けることにより機能を取り戻す可逆性がある.我が国におけるオーラルフレイル対策は地域包括支援センター等で実施しており,歯科専門職以外の医療・介護・福祉職が高齢者に対応することが多い.そこで歯科専門職以外の医療・介護・福祉職が評価可能なオーラルフレイル評価指標の作成を考えた.本研究ではその第Ⅰ段階として,摂食嚥下障害看護認定看護師を対象としたデルファイ法による調査から,歯科専門職以外の職種が活用できるオーラルフレイル評価項目を検討した.

    【対象と方法】オーラルフレイル概念図19 年版の第1~第3 レベルに基づき,関連論文などから評価項目を抽出し,研究チームで検討した《第1 レベル:10 項目》《第2 レベル:50 項目》《第3 レベル:28 項目》計88 項目をデルファイ法の1 回目調査項目とした.多職種によるオーラルフレイル評価のための各項目の必要度について,デルファイ調査を2 回実施した.対象は,全国の摂食嚥下障害看護認定看護師とし,同意率80% 以上をコンセンサスの基準とした.

    【結果】1 回目調査の分析対象者は240 名(回収率26.7%),2 回目調査は120 名(回収率48.7%)であった.最終的に,オーラルフレイル評価項目は88 項目から68 項目に精選された.

    【結論】本研究で精選されたオーラルフレイルの評価項目は,オーラルフレイルの特徴を踏まえた包括的で多面的な内容であることが示唆された.本研究で精選された評価項目は,歯科専門職以外の多職種が実施できるオーラルフレイル評価へ向けた有益な情報となると考える.

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