日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
最新号
日本嚥下リハビリテーション学会雑誌
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
原著
  • 西 美保, 深田 順子
    2026 年30 巻1 号 p. 5-23
    発行日: 2026/04/30
    公開日: 2026/08/31
    ジャーナル フリー

     【目的】摂食嚥下障害看護認定看護師( Certified Nurse:CN)が transdisciplinary team approach に活用できる質指標を開発する.

    【方法】質指標案は,医療の質評価のうちプロセスに焦点をあて文献等を基に作成された.技術的側面(A)と対人的側面(B)で構成され, Aがスクリーニング等 4概念 21項目, Bが風土等 10概念 39項目,合計 60項目となった.質指標の内容・表面妥当性を検討するために,CNに対し質問紙調査と専門家パネルを,チームを構成する多職種による内容妥当性を検討するために,日本摂食嚥下リハビリテーション学会評議員に対し質問紙調査を行った.構成概念妥当性と信頼性等を確認するために,病院勤務の CNに対し質指標の実践頻度を Web調査し,統計解析した.

    【結果】CN 9名による質指標の妥当性・重要性・適切性・実施可能性に関する 9段階評価の中央値(Mdn)は 5~9で,Mdn 5・6の項目を専門家パネルで検討,修正した.評議員 45名による質指標の妥当性・重要性・適切性に関する 9段階評価の結果, 59項目の Mdnが 7~9だった.Mdnが 6だった 1項目は変更せず,[他チームとの連絡調整]を追加し,全体で 61項目となった. CN 200名(有効回答 24.4%)の調査の結果,Bの 5項目に天井効果を認め,共通性 .16未満の 2項目以外の IT相関は Aで r=.37~.60,Bで r=.55~.81だった.GP分析は 58項目で上位群が有意に高かった.既知集団として CNがチームに所属,チームメンバーが 5職種以上および 9名以上,OJT頻度が高い,チーム加算の算定ありの場合, A・Bともに項目合計値が有意に高かった.探索的因子分析では Aが 5因子, Bが 4因子で解釈可能な項目で構成された.Cronbach’s αは Aで .875,Bで .980だった.

    【結論】61項目の質指標は妥当性・信頼性が確認された.

  • 園井 みか, 金田 麻央, 小山 洋子, 栢下 淳
    2026 年30 巻1 号 p. 24-31
    発行日: 2026/04/30
    公開日: 2026/08/31
    ジャーナル フリー

    【背景】嚥下造影検査( VF)は嚥下障害の評価に不可欠であるが,主食である米飯 VF用試料の標準化は未確立であり,なかでも粉末混合法におけるバリウム濃度の検討は十分とはいえない.固形食品では濃度や含水量により粒子凝集や物性変化が生じやすく,再現性確保のため濃度設定の妥当性検証が求められている.

    【目的】粉末混合法で試作した米飯 VF用試料を対象に,バリウム濃度が物性および混和性に及ぼす影響を比較し,適切な濃度域を検討することを目的とした.

    【方法】試料総重量に占めるバリウム比率を 15・20・25%(w/w)とし,粉末に水を加えて懸濁化後,米飯 100 gへ混和した.各試料は 45℃で保持し,テクスチャー分析により硬さ・付着性・凝集性を評価した(n=8).混和性は,粒散乱および均一性の肉眼的観察により判定した.

    【結果】一元配置分散分析により,硬さ・付着性・凝集性のいずれも濃度間で有意差を認めた( p= 0.003,p<0.001,p<0.001).硬さは濃度間で有意差を認め, 15%は低濃度群と高濃度群の中間的な値を示した.付着性は 0%と比較して 15%以上で有意な差を認め,15~25%では低値で安定した.凝集性は濃度間で有意な差を認め,0%と 20・25%間では有意差を認めたが,0%と 15%,15%と 20・25%の間には有意差を認めなかった.混和性は 15~20%で均一像が得られ,25%では粒散乱と団塊化を認めた.

    【結論】粉末混合法による米飯 VF用試料では, 15~20%が最も再現性の高い濃度域であり,特に 15%は均質性と調製容易性の両立点として有望である.本研究はバリウム濃度による物性差と混和性の特徴を数値的に示し,米飯 VF用試料の標準化に向けた基礎的知見を提供する.

短報
  • 田永 大樹, 坂口 遥
    2026 年30 巻1 号 p. 32-37
    発行日: 2026/04/30
    公開日: 2026/08/31
    ジャーナル フリー

     嚥下性肺疾患による呼吸状態の悪化で入院した患者において,疾患の違いにより入院時の嚥下機能や経口摂取再獲得の可否等に差があるか否かを検討した.対象は呼吸状態の悪化を伴う嚥下性肺疾患で入院し,STが早期より介入を実施した患者 135例(平均年齢 84.9±8.7歳)を誤嚥性肺炎群 113例,誤嚥性肺臓炎群 22例の 2群に分類し,後方視的に比較を行った.結果として誤嚥性肺臓炎群と比較し誤嚥性肺炎群が,入院時アルブミン値,MWST, 退転院時 FOISにおいて有意に低下が認められた(p<0.05).急性期において,誤嚥性肺臓炎群と比べ誤嚥性肺炎群は経口摂取の再獲得が難しく,嚥下機能の低下を認める可能性が本研究より示唆された.

  • ―バリウムカプセルを用いた VF検査―
    大坪 博子, 松原 麻梨子, 飯島 伸介, 大隅 寛之, 倉田 なおみ
    2026 年30 巻1 号 p. 38-45
    発行日: 2026/04/30
    公開日: 2026/08/31
    ジャーナル フリー

    【目的】食物の嚥下が問題とならない患者でも,内服薬嚥下障害(錠剤やカプセル,散剤等の内服薬による嚥下困難な状況)患者は存在する.そこで嚥下造影(VF)検査でバリウムカプセルを使用し,食事と内服薬嚥下状況を比較し違いを検討した.

    【方法】回復期リハビリテーション病棟入院の VF検査患者のうち,カプセル剤を服用していて,水やとろみ水で喉頭侵入がない患者を対象とした.バリウムカプセルは検診用硫酸バリウム散 250 mgを 4号カプセルに充填して調製し,水またはとろみ水 20 mLで服用した.食事重症度分類(FILS)レベル 9以下を摂食嚥下障害患者と評価した.内服薬嚥下障害はカプセルの嚥下状況や口に入れてから食道入口部を通過する時間を測定し評価した.年齢,性別,認知機能,顎の位置 (頸椎–下顎下縁の角度),薬剤数,抗コリン薬などとの関連もサブ解析した.

    【結果】対象患者は 38名であり,年齢 85.5歳[75.8, 87.3]であった.むせがある患者 18名,顎の位置が平常時より上向き以上の患者 8名,認知機能障害患者 23名であった.摂食嚥下障害患者は 28名であった.カプセルの通過に 11秒以上要した内服薬嚥下障害患者は 14名であり,このうちカプセルを嚥下できない患者は 2名いた.摂食嚥下障害患者 28名のうち 16名には内服薬嚥下障害はなく,摂食嚥下障害のない患者 10名のうち 2名は内服薬嚥下障害であった(p=0.269).内服薬嚥下障害は認知機能障害(p=0.020)や服用時の顎の位置(p=0.034)と関係が認められた.一方,摂食嚥下障害はむせ(p<0.001)や年齢(p=0.048)と関係が強かった.

    【結論】摂食嚥下障害と内服薬嚥下障害の有無や要因は異なる可能性が示唆された.医療や介護に従事するすべての者は,摂食嚥下障害とは別に,内服薬嚥下障害があることを認識すること,また我々薬剤師にも内服薬嚥下障害患者の評価と対応に対して大きな責務があると考える.

  • 天白 陽介, 渡邉 哲, 小黒 秀樹, 辰巳 寛, 後藤 縁, 笠井 史人
    2026 年30 巻1 号 p. 46-53
    発行日: 2026/04/30
    公開日: 2026/08/31
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究の目的は人工呼吸管理中の気管切開患者に対して摂食嚥下機能評価を実施し,早期からの直接嚥下訓練の実現可能性及び安全性を検討することである.

    【方法】研究デザインは後方視観察研究である.対象は 2022年 12月から 2023年 12月までに名古屋掖済会病院集中治療室へ入室し,気管切開を実施された後に 48時間以上の人工呼吸管理を必要とした患者のうち,人工呼吸器装着下で言語聴覚士(ST)の介入があり,除外基準に該当しなかったものとした.評価項目は患者属性,入院経過,摂食嚥下機能評価に関する項目,摂食嚥下機能評価・直接嚥下訓練開始後の有害事象の有無とし,診療録より後方視的に収集した.摂食嚥下機能評価開始基準として意識状態や昇圧剤・鎮静剤の不使用,人工呼吸器設定などの項目を定め,クリアした場合に評価を実施した.摂食嚥下機能評価は Modified Evan’s Blue Dye Testのプロトコルに準じた評価を 3日間実施した.誤嚥所見を認めた場合は,カフ上部吸引チューブより酸素を投与するコンスタントフロー法を併用して再度評価した.評価期間において誤嚥所見を認めず,バイタルサインや呼吸様式の変動がない場合を「通過」と定義し,直接嚥下訓練を開始した.摂食嚥下機能評価においてコンスタントフロー法を要した場合,直接嚥下訓練もコンスタントフロー法併用下に実施した.

    【結果】研究対象は 10名(年齢中央値は 73歳,男性が 4名)であった.うち 9名は有害事象を生じることなく,摂食嚥下機能評価・直接嚥下訓練を実施できた. 1名は直接嚥下訓練開始後に肺炎を合併し人工呼吸器の離脱が困難となった.

    【結論】人工呼吸管理を要する気管切開患者に対して,開始基準を明示し,厳重なリスク管理下で摂食嚥下機能評価を実施することにより,直接嚥下訓練を実施できる可能性がある.

症例報告
  • 大島 友貴, 南都 智紀, 栄元 一記, 附田 紘介, 笹沼 直樹, 内山 侑紀, 道免 和久
    2026 年30 巻1 号 p. 54-60
    発行日: 2026/04/30
    公開日: 2026/08/31
    ジャーナル フリー

     症例はクローン病の 37歳男性,食後の嘔吐と頻回な下痢を認め, A病院に入院した.病理診断では確定には至らなかったが,病歴からクローン病が疑われ,加療目的で当院へ転院した . 患者は発達障害により治療途中の絶食指示を守れず,穿孔性腹膜炎を発症し人工肛門造設術が施行された.術後に抜管するも誤嚥性肺炎に起因する呼吸状態の悪化により再挿管を繰り返し,気管切開術が施行された.その後,術後の侵襲や不活動,低栄養によるサルコペニア性嚥下障害を認め,嚥下機能の精査のために実施した嚥下造影検査では,咽頭残留・誤嚥が確認された.患者は発達障害によるこだわりの強さや理解力の低下に加えて耐久力低下を認めており,頭部挙上訓練や開口訓練,舌抵抗訓練などの従来の嚥下訓練を適切に実施することが困難であった.そのため,反復した嚥下反射の惹起に神経筋電気刺激療法を併用した訓練を実施した.その結果,意欲的に訓練に取り組むことで嚥下機能の改善を認め,普通食の摂取が可能となった.サルコペニア性嚥下障害患者に対して,本訓練が有効である可能性が示唆されたため,若干の文献的考察とともに報告する.

臨床報告
調査報告
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