日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
在宅高齢者における嚥下障害と生活時間構造の関連性
田上 裕記太田 清人南谷 さつき杉浦 弘通鈴木 剛東嶋 美佐子酒向 俊治金田 嘉清
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 14 巻 1 号 p. 3-10

詳細
抄録

【目的】在宅高齢者における嚥下機能の生活時間構造との関連を明らかにすることである.

【対象】訪問リハビリテーションを利用した39 名(平均年齢:80.7±7.5 歳,男性18 名,女性21 名)とした.

【方法】摂食状況(① 摂食状況,② 食物形態,③ むせの有無,④ 食事時間,⑤ 肺炎の既往)および嚥下機能検査(⑥ RSST,⑦ WST),ADL 評価としてBarthel index を行い,生活時間構造として総臥位時間,座位時間,1 日の座位時間に対し摂食時の座位姿勢が占める割合を調査した.嚥下障害と診断されたものを嚥下障害群,それ以外のものを非嚥下障害群とし,各項目について2 群間の比較を行った.

【結果】摂食状況および嚥下機能に対する比較では,摂食状況,食物形態,肺炎の既往,食事時間,むせの有無,水のみテスト,Barthel index において有意差が認められた.また,生活時間構造として総臥位時間,座位時間において有意差が認められた.

【考察】嚥下機能に影響を及ぼす因子は多岐にわたるため,全身的な要素を考慮する必要性がある.高齢者において夜間の不顕性誤嚥の頻度が高いため,摂食時よりも臥床時の状況を把握しておく必要がある.総臥位時間は1 日の臥床時間の総和であり,この時間の管理が重要であると推察した.今回の結果より,嚥下障害者に対しADL 評価のみではなく,生活時間構造を調査する重要性が示唆された.

著者関連情報
© 2010 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
次の記事
feedback
Top