日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
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短報
前口蓋弓への冷圧刺激が注水刺激による嚥下反射惹起に与える影響
須藤 崇行真貝 富夫山村 千絵
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2014 年 18 巻 3 号 p. 282-288

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抄録

【目的】嚥下障害に対する間接訓練として,冷圧刺激(Thermal-tactile stimulation:以下TTS)が知られている.TTS は,嚥下誘発の感受性を高めるとされている一方で,その効果は必ずしも得られないという報告もあり,効果や作用機序は明確になっていない.本研究は,TTS 効果の基礎的研究を進めるために,嚥下反射惹起の刺激として舌根部への注水刺激を用い,前口蓋弓へのTTS が嚥下の潜時に及ぼす影響を検討した.

【対象と方法】被験者は,摂食嚥下機能に問題のない健常若年成人10 名とした.空嚥下させた後に,舌背後部へ水を1.0 ml/min の速度で注水し,嚥下反射が惹起されるまでの潜時を5 回測定した.休憩の後にTTS を行い,再び注水により惹起される嚥下反射の潜時を5 回測定した.そして,TTS 前後の潜時を比較した.

【結果】TTS 施行前の全被験者5 回分の平均潜時は13.8±6.7 秒(平均値±標準偏差)であるのに対して,TTS 施行後は11.2±5.6 秒となり,TTS 後に有意な潜時の短縮が認められた(p<0.05).また,TTS 後の各回の平均潜時は,1 回目から5 回目(TTS から約10 分経過時)まで順に,11.3±4.7 秒,10.7±5.1 秒,11.7±6.9 秒,11.2±5.8 秒,11.4±5.5 秒であった.TTS 後,各回すべてにおいて,潜時の有意な短縮が認められた(p<0.05).

【結論】注水刺激による嚥下反射の潜時は,前口蓋弓へのTTS 施行後すぐに短縮し,その効果は10 分以上継続した.TTS は,嚥下反射の惹起を促進する方法として,臨床的にも有用であることが示唆された

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© 2014 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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