日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
脳卒中急性期における誤嚥性肺炎のリスク評価アルゴリズムの開発
山根 由起子鎌倉 やよい深田 順子片岡 笑美子安井 敬三長谷川 康博波多野 範和関 行雄
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2015 年 19 巻 3 号 p. 201-213

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抄録

【目的】誤嚥性肺炎発症のリスクを評価するためのアルゴリズムを開発することを目的とした.

【対象】2013 年4 月~ 8 月の間に,脳梗塞または脳出血を発症して5 日以内に研究実施施設に緊急入院した患者で,気管挿管がなされず保存的治療が実施され,本人または家族から研究参加の同意が得られた160 名を対象とした.

【方法】大学および研究実施施設の研究倫理審査委員会の承認を受けて実施した.対象者の基本情報および誤嚥性肺炎に関連した情報は,診療記録から収集し,身体診査,口腔内の観察および細菌数・舌水分量測定は,入院第2~14 病日まで隔日に実施した.対象者を,肺炎群と非肺炎群の2 つに分類した.次に,アルゴリズムの身体診査に基づき,誤嚥性肺炎リスクを判定し,肺炎群を至適基準として感度および特異度を求めた.

【結果】対象者160 名は,肺炎群23 名(誤嚥性肺炎発症16 名,発症疑い7 名)と非肺炎群137 名に分類された.入院第5 病日までに14 名(87.5%)が誤嚥性肺炎を発症したため,第2 病日と第4 病日に着目した.アルゴリズムの身体診査により判定された摂食嚥下障害による肺炎リスクは,第2 病日57 名,第4 病日60 名であった.それらの感度,特異度は,第2 病日がそれぞれ0.86,0.71,第4 病日が0.75,0.67 であった.次に,舌苔および口腔内付着物が観察された条件下で,誤嚥性肺炎のリスクを判定した感度,特異度は,第2 病日において共に0.75 であった.また,身体診査の評定者間一致率は82.0~95.3% であり信頼性が確保された.

【結論】誤嚥性肺炎リスク判定のアルゴリズムを開発し,その妥当性が示唆された.入院第2 病日に誤嚥性肺炎のリスク者をスクリーニングする感度は0.86,特異度は0.71 であった.さらに,舌苔および口腔内付着物が観察された条件下では,感度,特異度とも0.75 であった.

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© 2015 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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