2016 年 20 巻 1 号 p. 31-35
【目的】2012 年に厚労省の事業として,「高齢者の摂食嚥下障害に対する人工的な水分・栄養補給方法の導入をめぐる意思決定プロセスの整備とガイドライン」(以下,ガイドライン)が発表された.2014 年度には,経管栄養から経口摂取へ移行すべく,よりいっそうリハビリテーション(以下,リハ)の促進を求める一連の改定がなされた.当院における過去5 年間の3 食経口摂取移行件数(以下,経口摂取移行件数)と経皮内視鏡的胃瘻造設術(以下,PEG)件数の推移を調査し,ガイドラインや診療報酬改定が回復期リハ病棟のアウトカムにいかなる影響を与えたかを検討した.
【方法】2010 年から2014 年にわたり,当院回復期リハ病棟入院時に3 食経管栄養を行っていた患者(36~45 人/ 年)のカルテを後方視的に調査した.
【結果】経口摂取移行件数は,2010 年の8 人(19%)から2014 年の17 人(38%)まで一貫して漸増傾向にあった.2010, 2011 年と2012~2014 年の2 群比較では,経口摂取移行件数が有意に増加し,逆にPEG数は34 人(79%)から19 人(42%)へと有意に減少していた.
【考察】経口摂取移行件数が上昇した理由の一つに,5 年間で入院中FIM 利得が5 点程度上昇したことが考えられた.PEG 件数は2010 年以降,一貫して減少傾向にあり,2014 年度診療報酬改定の影響とは考えにくい.ガイドライン公表後,新聞や著書でPEG の倫理的問題がしばしば取り上げられ始めたことが,影響した可能性が考えられる.