日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
脳血管障害後の中等症から重度摂食嚥下障害に対する摂食嚥下訓練強化の検討:多施設共同無作為化第二相臨床試験
吉田 操池田 友記濱部 典子中川 賢守屋 淳一井上 真一岸本 裕佑後藤 啓人榎本 卓也青木 崇池村 健荒尾 徳三武久 敬洋武久 洋三
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2021 年 25 巻 3 号 p. 208-214

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抄録

【目的】 脳血管障害後の摂食嚥下障害を有する症例に対して,摂食嚥下訓練を強化することの臨床的効果を通常の摂食嚥下訓練と比較することを目的とした.

【対象と方法】 対象は14 病院の回復期リハビリテーション病棟へ入院した症例で,65 歳以上,発症60 日以内の脳血管障害による初発の摂食嚥下障害,Food Intake Level Scale(FILS)7 以下の症例とした.登録症例を無作為化し,通常の摂食嚥下訓練を行う標準治療群と,摂食嚥下訓練を1 日3 単位実施する強化療法群に割り付け,それぞれの群に対して1 カ月間介入した.摂食嚥下訓練以外のリハビリテーションは両群とも同様に行った.評価項目はFILS,食物形態,反復唾液嚥下テスト,改訂水飲みテスト,経鼻胃管,誤嚥性肺炎の発症で,評価は介入前後に行った.

【結果】 55 例の登録症例は標準治療群28 例と強化療法群27 例に割り付けられた.摂食嚥下訓練時間は,1 カ月間の介入期間中に1 日平均で強化療法群は3.0 単位/ 日,標準治療群は2.2 単位/ 日実施された.FILS が改善した症例の割合は,標準治療群が57%(16 例/28 例)に対して強化療法群は81%(22 例/27 例)であり,FILS 改善症例数は強化療法群で有意に増加した.主食の食物形態が米飯および全粥の症例の割合は,標準治療群が介入前14%(4 例/28 例)から介入後36%(10 例/28 例)へと有意な改善がみられないことに対し,強化療法群では介入前7%(2 例/27 例)から介入後35%(11 例/27 例)へと有意に改善した.また,入院中の誤嚥性肺炎の発症は,強化療法群で有意に少なかった.その他の反復唾液嚥下テスト,改訂水飲みテスト,経鼻胃管の抜去については,両群で有意な差はみられなかった.

【結論】 通常の摂食嚥下訓練よりも強化して訓練を行うことは,脳血管障害後の摂食嚥下障害をさらに改善できる可能性が示唆された.

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© 2021 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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