抄録
本稿は、2013年フィリピン台風ヨランダの被災地であるセブ州北部の農村・漁村において、災害復興過程の中で設立された住民組織(People’s Organization: PO)を取り上げ、POを構成する人々の生活状況やPOに対するとらえ方、及び評価を明らかにし、今後POが持続・発展するために必要なことを考察するものである。POは女性、そして決して学歴や所得が高くはない人々を中心に構成されている。調査参加者は家計の向上やコミュニティの結束を目的にPOに参加しており、POに対する評価や参加度、貢献度はおおむね高い。POの持続・発展に必要なこととして調査参加者の多くは「協力」や「結束」を挙げている一方、うまく進んでいないと言われるPOでは個別具体的な課題も抱えている。POの活動は問題に直面した当事者らが主体性を獲得し、長期的な視点で生活向上や地域再生に寄与するボトムアップの動きと見ることができる。POを起点としたよりよい市民社会を構築していくには、POを超えた交流によってメンバーが刺激し合い、お互いの問題を共有・相談しながら取り組むことが求められる。