日本透析医学会雑誌
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原著
維持血液透析患者の身体活動セルフ・エフィカシーに対する運動療法の介入効果について
忽那 俊樹齊藤 正和松永 篤彦南里 佑太石井 玲米澤 隆介松本 卓也山本 壱弥高木 裕羽切 佐知子吉田 煦増田 卓
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2007 年 40 巻 9 号 p. 789-797

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抄録

維持透析を受ける血液透析 (HD) 患者は身体機能が低下しているため, 習慣的な運動を続けることが困難な場合が多い. HD患者の身体機能を維持・向上するためには, HD患者の特徴を考慮した効果的な運動療法の介入方法を構築する必要がある. 本研究は, 維持HD患者の運動継続に影響を及ぼすセルフ・エフィカシー (SE) を評価し, 身体機能とSEとの関係からHD患者に対する運動療法の効果について検討した. 維持HD患者122例を運動群と非運動群に分類して, 運動群には運動療法としてelastic resistance training (ERT) を2か月間施行し4か月間の観察期間を設けた. 6か月の研究期間を終了した運動群24例と非運動群20例を対象に, 患者背景因子としてHD期間, dry weight, body mass index, ヘマトクリット, 血清アルブミン, 症状得点, 身体機能 (PF) 偏差得点を, 身体機能の指標として握力と等尺性膝伸展筋力を測定した. 日常身体活動に対するSEの評価として身体活動SE尺度を用い, 上肢の運動に対するSE (上肢SE), 下肢の運動に対するSE (下肢SE) を算出した. 上肢SEを規定する因子として握力とPF偏差得点 (p<0.01, p<0.01), 下肢SEを規定する因子としてPF偏差得点, 等尺性膝伸展筋力, 年齢が認められた (p<0.01, p<0.01, p<0.05). ERT介入前後の等尺性膝伸展筋力は, 非運動群で有意な変化を認めなかったのに対し, 運動群では有意に改善した (p<0.05). 一方, 非運動群の上肢SEと下肢SEは有意に低下したのに対し (p<0.01, p<0.05), 運動群の上肢SEと下肢SEは有意な変化を示さなかった. 以上より, 維持HD患者のSEは身体機能やADLと密な相関を示し, 本研究で実施したERTはHD患者の身体機能を改善するとともに, SEを維持する一つの手段となることが示された.

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© 2007 一般社団法人 日本透析医学会
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