日本透析医学会雑誌
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原著
透析患者の二次性副甲状腺機能亢進症に対するシナカルセト塩酸塩投与時の副作用発現状況の調査
高津 千裕古久保 拓松永 千春根来 早紀子和泉 智奥野 仙二前川 きよし山本 忠司山川 智之
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2009 年 42 巻 12 号 p. 931-938

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抄録

シナカルセト塩酸塩(シナカルセト)は,カルシウム(Ca)感知受容体に作用して副甲状腺ホルモンの分泌を抑制する二次性副甲状腺機能亢進症治療薬であり,これまでの臨床試験において,消化器症状や低Ca血症の副作用が多いと報告されている.今回,シナカルセトを投与された透析患者93名を対象とし,副作用発現状況について24週間の追跡調査を行った.シナカルセトは25 mg/日で開始され,血清intact-PTH値の中央値は519 pg/mLから追跡終了時に193 pg/mLへと有意に低下した.93名中51名(55%)に副作用が生じ,消化器症状が34名と最も多く,低Ca血症は18名において認められた.消化器症状を発現した34名中17名で内服開始1週間以内に症状が発現した.消化器症状への対策として,消化器系薬剤の追加処方が12名になされ,投薬の中止は7名であった.また,低Ca血症を発現した18名のうち,15名は内服開始4週間以内に発現した.低Ca血症を発現した患者のうち15名に活性型ビタミンD製剤や炭酸Ca製剤の追加あるいは増量が行われ,ほとんどの例で中断することなく継続投与が可能であった.今回の観察研究により,シナカルセトによる消化器症状の発現率は高く,内服開始時と増量時に特に注意が必要と思われた.また,低Ca血症も早期に発現することから,低Ca血症を回避するために活性型ビタミンD製剤や炭酸Ca製剤の適切な使用が必要であると思われた.

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© 2009 一般社団法人 日本透析医学会
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