日本透析医学会雑誌
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症例報告
無治療の経過で腎クリーゼと心筋炎を併発した強皮症の1剖検例
川西 邦夫小池 美菜子木村 和生佐々木 裕子高橋 正毅松上 桂子中川 典明中野 雅行武井 卓新田 孝作
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2010 年 43 巻 10 号 p. 865-871

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抄録
症例は57歳,女性.約1年前より両側手指の腫脹,両膝関節痛を自覚し,同時期より次第にADLが低下した.さらに全身の衰弱が著明となったため,2008年12月13日,家族が救急要請し,当院へ搬送された.腎不全(血清クレアチニン6.38mg/dL,尿素窒素104.9mg/dL),高カリウム血症(血清カリウム7.0mEq/L),および心電図異常を指摘され同日緊急入院となった.入院後,血液透析により,高カリウム血症は是正したが,乏尿であり,血液透析を継続した.顔貌,皮膚所見,抗Scl-70抗体陽性より,全身性強皮症と診断した.生理・画像検査上,心嚢液貯留,肺高血圧,間質性肺炎の所見を認めた.心保護目的にカプトプリル6.25mg/日を開始し,第9病日よりプレドニゾロン20mg/日の投与を開始した.徐々に血圧の変動が改善し,経口摂取も可能となっていたが,第16病日の早朝,突然心停止となり,蘇生するも循環動態は改善せず,第18病日に死亡した.病理解剖を行ったところ,皮膚硬化のほか,肺では軽度の間質性肺炎,肺高血圧性変化を認め,心臓では心筋炎・心外膜炎の所見,腎では強皮症腎クリーゼ様の所見を認めた.特に心臓ではびまん性の線維化病変と,活動性の炎症細胞浸潤の混在を認め,繰り返す心筋炎が疑われ,伝導障害から心停止に至ったと考えられた.
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© 2010 一般社団法人 日本透析医学会
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