日本透析医学会雑誌
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原著
血液透析用非カフ型カテーテルに合併したカテーテル関連血流感染症の実態と経験的治療としての抗MRSA薬投与の重要性
村上 穣萩原 正大大沢 紘介北本 匠降籏 俊一西野 克彦山崎 諭山口 博池添 正哉
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2012 年 45 巻 12 号 p. 1125-1131

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抄録
カテーテル関連血流感染症(catheter-related bloodstream infection:CRBSI)は血液透析用カテーテルの使用に伴う最も重篤な合併症である.今回われわれは非カフ型カテーテルに合併したCRBSIの現状を明らかにし,今後の課題や治療戦略について検討するため実態調査を行った.当院において2006年4月から2009年3月までの3年間に非カフ型カテーテルを挿入された患者は254例で,そのうちCRBSIを合併した全14例を対象に後ろ向きに調査した.非カフ型カテーテルの感染率は4.6(episodes/1,000 catheter days)であった.カテーテルの留置部位は内頸静脈が79%(11/14例)で,平均カテーテル留置期間は11.8±8.1日であった.CRBSIの起炎菌はグラム陽性球菌が全体の79%(11/14例)を占め,Staphylococcus aureusが最多であった.薬剤感受性別では起炎菌の57%(8/14例)が抗MRSA薬にのみ感受性を有していた.経験的治療として抗MRSA薬が投与された群(7/14例)の30日後の死亡率は14%(1/7例),非投与群の死亡率は57%(4/7例)であった(p=0.078).治療開始から72時間以内の解熱率は抗MRSA薬投与群では86%(6/7例)であったのに対し,非投与群では14%(1/7例)で有意差を認めた(p=0.0291).非投与群では合併症として敗血症性ショックを2例,化膿性血栓性静脈炎と転移性感染症としての肝膿瘍をそれぞれ1例ずつ認めた.本結果より,非カフ型カテーテルに合併したCRBSIの起炎菌としてMRSAを始めとする耐性化したグラム陽性球菌が多いことが明らかになった.CRBSIを早期に診断し,抗MRSA薬による経験的治療を開始することが重要であると考えられる.
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© 2012 一般社団法人 日本透析医学会
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