症例は63歳, 女性. 1型糖尿病および糖尿病性神経因性膀胱を合併している. 糖尿病性腎症による末期腎不全のため2005年に血液透析導入, 2007年に夫をドナーとして生体腎移植を受けたが, 繰り返す腎盂腎炎にて移植腎機能が低下し, 2011年血液透析再導入となった. 透析導入9か月後に発熱と右下腹部の腫脹, 皮膚潰瘍と排膿を認め受診. CTにて移植腎は腫大し, 内部構造は不明瞭であり, 一部液状化とガス像を認め気腫性腎盂腎炎の診断にて当科入院となった. 経皮的ドレナージと抗生剤投与を施行し, 臨床症状および炎症反応は改善した. しかしドレナージ排液は減少せず, これ以上の保存的治療は治療困難であると判断し第98病日に移植腎摘出術を行った. 術後炎症所見は改善し, 感染の再燃なく経過良好である. 気腫性腎盂腎炎は腎実質や腎周囲に細菌による特徴的なガス産生像を認め, 時に外科的治療が必要となる重篤な壊死性尿路感染症であり, 移植腎での報告はまれである. 早急な診断と外科的治療を含めた治療方針の決定が重要であり, 文献的考察を加え報告する.