日本透析医学会雑誌
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症例報告
銅欠乏による汎血球減少症とESA療法低反応性を呈した維持血液透析患者の1例
中野 素子鎌田 真理子古谷 昌子酒井 健史渡会 梨紗子翁 千香子村野 順也佐野 隆齋藤 毅櫻井 健治鎌田 貢壽
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2014 年 47 巻 1 号 p. 85-90

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抄録
 80歳, 男性. 32歳時より糖尿病, 65歳時に胃癌で胃部分切除施行. 71歳時に糖尿病性腎不全で維持血液透析を開始. 77歳時から入院までの31か月間, 亜鉛含有胃粘膜保護薬 (ポラプレジンク) を服用した. 79歳時, 遺伝子組み換え・ヒト・エリスロポエチン9,000単位/週の投与中に, 汎血球減少症とESA療法低反応性貧血が発症し, 2か月の間に増悪して本院に紹介となった. 入院時には, 末梢血WBC 2,800/μL, Hb 7.4g/dL, 血小板8.2万/μLの汎血球減少症を呈した. 血清銅2μg/dL (基準値 : 68~128), 血清セルロプラスミン5mg/dL (基準値21~37) と著しい低値を示した. 肺炎のためCRPは, 20.9mg/dLと上昇し, 血清鉄23μg/mL, 血清フェリチン1,471ng/mLを呈した. また, 血清亜鉛は140μg/dL (基準値70~110) と高値を示した. 骨髄穿刺所見はmyelodysplastic syndrome (MDS), refractory anemia with ringed sideroblastsと診断した. これらの所見から汎血球減少症とESA療法低反応性貧血は, 銅欠乏症が原因と診断した. 銅欠乏症の発症に亜鉛過剰の関与が示唆された. 亜鉛含有胃粘膜保護薬の投与を中止して銅の補充を行ったところ, 汎血球減少症とESA低反応性貧血は, 血清銅値, 血清セルロプラスミン値の上昇に伴って改善し, 3か月後に治癒した.
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© 2014 一般社団法人 日本透析医学会
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