日本透析医学会雑誌
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第62回日本透析医学会学術集会・総会 男女共同参画推進委員会企画より
透析施設の男女共同参画に関するアンケート調査報告
稲熊 大城森石 みさき
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2018 年 51 巻 1 号 p. 54-61

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抄録

【背景】 「働き方」 が見直されている現在の日本において, 男女共同参画社会の実現は一億総活躍社会につながる. 透析医療は医師, 看護師, 臨床工学技士, 管理栄養士ならびに薬剤師などの職種からなるチーム医療の代表である. また, 女性の占める割合が多い職場であると思われる. 日本透析医学会の男女共同参画推進委員会は, 対象を透析医療に関わるあらゆる職種に広げ, 多職種の男女共同参画に関する小委員会を構成し活動している. 今回, 全国の透析施設に男女共同参画に関するアンケート調査を実施したため報告する. 【方法】日本透析医学会会員施設のうち1,113施設にアンケートを郵送した. また調査期間は2016年9月1日~30日とした. アンケート郵送施設に対しては, 以下に示す趣旨を文書で伝えた. ① 男女共同参画推進委員会ではこれまでに, 女性医師の専門医取得率は男性医師に比較して低い傾向にあったことを報告し, 専門医制度改定の手がかりとした. ② 多職種の男女共同参画の現況調査では, 職種による男女共同参画の進行状況には差があり, 職種間の連携を深める必要性が確認された. ③ 視点を透析に関連した医療者全体の勤務環境に移し, 透析施設の男女共同参画とワークライフバランスの現況と問題点を把握するために, アンケート調査をすることにした. 【結果】アンケートを郵送した1,113施設中, 51.3%にあたる571施設からの回答が得られた. 男女共同参画推進に対する取り組みに関して, 「積極的にしている」 が162施設 (28.4%), 「できるだけしている」 が287施設 (50.3%), 「していない」 が104施設 (18.2%), 未回答が18施設 (3.2%) であった. 施設での保育施設の設置の状況に関しては, 349施設 (61.4%) で 「ある」 との回答が得られた. また, 夜間保育施設の設置の状況に関しては, 135施設 (23.9%) で 「ある」 との回答が得られた. 病児保育施設の設置の状況に関しては, 162施設 (23.9%) で 「ある」 との回答が得られた. 透析従事者の産休・育休取得職種に関しては, 医師37施設, 看護師317施設, 臨床工学技士89施設, 管理栄養士27施設ならびに薬剤師24施設で現在産休・育休が取得されていた. 男女共同参画の相談窓口の設置状況に関しては, 105施設 (18.8%) で 「ある」 との回答が得られた. 【結論】男女共同参画社会の実現に向けての意識はある程度根付いた感はあるが, 専門性の取得, 保育施設の設置ならびに教育システムの構築などの課題が浮き彫りとなった.

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© 2018 一般社団法人 日本透析医学会
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