2019 年 52 巻 4 号 p. 227-232
本検討は, 経皮的冠動脈形成術 (PCI) 後の翌日血液透析 (HD) 時における透析中低血圧 (IDH) の発生因子について検討した. 対象は待機的PCI後, 翌日HDを施行した慢性HD患者連続83名 (年齢70±7歳, 男性64名). IDHの定義は, 収縮期血圧20mmHg以上の低下で, 症状を伴いかつHD中断を要したものとした. また, HD記録よりIDHを後方視的に調査し, Logistic回帰分析にてIDHの予測因子を検討した. IDH群 (12名) は非IDH群 (71名) に比して, 有意に低体重 (52.0±3.8 vs. 62.9±1.5kg; p=0.007), 造影剤量/体重が多く (2.5±0.3 vs. 1.8±0.1mL/kg; p=0.018), 低左室駆出率で (45.8±4.2 vs. 56.0±1.8% ; p=0.030), E/e’ が高値 (22.9±3.8 vs. 17.2±0.9cm/sec; p=0.038) であった. また, 冠動脈病変や侵襲的な治療について有意差は認めなかった. Logistic回帰分析では, 造影剤量/体重 (OR, 6.87; 95%CI, 1.83-25.8; p=0.004) がIDHの有意な予測因子であった. 造影剤使用量が多い症例は, IDHを生じる危険性が高いことが示唆された.