2020 年 53 巻 2 号 p. 71-76
【目的】血液透析患者の低亜鉛血症に伴う貧血に対する亜鉛補充療法の投与基準がいまだ確立されていないことから, 本療法の有用性と投与方法について検討した. 【対象・方法】エリスロポエチン9,000U/週以上の投与で血清亜鉛値79μg/dL以下の血液透析患者 (33名) に亜鉛45~50mg/日を3か月間補充投与した. 【結果】血清亜鉛値は, 開始時57.9±9.71μg/dLであったが, 3か月後は92.4±24.2μg/dLと有意に改善した (p<0.0001). しかし, 血清銅値の低下が23名に認められた. 赤血球造血刺激因子製剤低反応性指数は, 開始時23.1±15.9U/week/kg/Hb (g/dL) であったが, 3か月後は12.4±6.1U/week/kg/Hb (g/dL) と有意な改善がみられた (p=0.0002). 【結語】血液透析患者における貧血の管理に亜鉛補充療法は有用である. しかし, 本療法は短期間であっても低銅血症のリスクが高く注意が必要である.